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第4-18話 仲間割れ
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「早く、早くこいつの心臓をひと突きしてください!」
「裏切る気か、蓮至!」
髭男の体格は蓮至を圧倒している。激しく身をよじる髭男を長くは抑えきれないだろう。その証しに蓮至が悲鳴じみた声をあげた。
「照勇さまッ、早くッ!」
照勇は剣をかまえて髭男に突きつけた。だが剣先は髭男の胸を指したまま微動だにしない。
殺すしかない。好機はいましかない。いまを逃したら自分だけでなく蓮至も殺される。
頭では理解していても身体が硬直していた。
「照勇さま!」
相手が悪人とはいえ、殺すのは相当の勇気がいる。少なくともいままで照勇が発揮したことがない勇気が。
だがこのときは勇気より嫌悪が勝った。
剣先が地面に触れた。支える力がなくなったのだ。
それを見た蓮至が小さく舌打ちをする。
照勇の足になにかがまといつく。手だった。岩男が両足首を掴んでいる。
「うあ……っ!」
「舐めやがって、ガキがッ!」
完全復活した岩男が照勇を引き倒した。うつぶせになった照勇の背に馬乗りになった岩男は蓮至にがなる。
「仲間を放せ、宦官野郎!」
こうなっては剣があっても何の訳にも立たない。
殺せるときに殺しておくべきだった。いまさら後悔してももう遅すぎる。
ゴリュと異様な音が響いた。
「な……」
岩男の絶句が続く。視線の先を追うと、髭男が地面に倒れていた。首があり得ない方向に曲がっていた。蓮至が素手で髭男の首をへし折ったのだ。
「貴様、よくも……」
背に重くのしかかっていた髭男の気配がふいに消えた。
「ふげえ」
髭男が後方に弾け飛ぶ。蓮至が拳をふるったのだ。
髭男も殴られたままでいるわけがない。跳ねるように蓮至と組み合う。
「くそうっ!」
李高の声に振り向くと、独眼の前に膝をついた彼が見えた。呼吸が荒く、頭が揺れている。体力が尽きたのだ。
一方の独眼は息一つ乱れていない。
蓮至が髭男を殺したことはまだ気がついていない。
「ふん、飽きたな。素人がよく頑張ったよ」
「わああああああ!」
剣を横に薙いだ。独眼の横腹に刃がめり込んだ。と思ったのは甘かった。刃が斜めを向いていたのだ。これでは棒きれで叩いたのと変わらない。だが独眼はよろめいた。
照勇の頭突きがまだ効いているのだ。あの頭突きは独眼の肋骨に確実にひびをいれた。剣の殴打は砕いた
幸運はここまでだった。二回目の殴打は避けられた。手首に手刀を受けた。剣が弾け飛ぶ。頬を叩かれ、短剣の反射光が視界を奪う。
今度こそ殺される。そう思ったとき、
「兄貴!」
光が遠のいた。独眼は照勇を放置して、もうひと組の戦いに加わった。
それは一瞬の出来事だった。独眼の短剣が岩男の胸を深く抉る。
岩男は信じられないといった表情でおのれの胸を見た。
仲間であるはずの独眼がなにを血迷ったのか。
次の瞬間、独眼がするりと手を引く。蓮至はさっと身を退けた。そこへ熱い血が勢いよく噴き出す。
冷たい空気に触れた血はもうもうと白い気を立ち昇らせた。声を出す間もなく、岩男は横倒しに崩れ落ちた。
「照勇さま、ご無事ですか!」
蓮至が照勇に駆け寄り、怪我がないかを確認した。独眼がそのようすを黙って見ている。
「……どういうこと?」
「よかった、大きな怪我はありませんね」
「どうしてぼくを心配するの。独眼はなんで蓮至を助けたの?」
蓮至は立ち上がると独眼の横に並んだ。
「兄弟なのです、この──」
「兄貴、おれのことはこれからは独眼と呼んでくれ。本当の名は捨てる」
「わかった。名を変えても独眼は弟だ。永劫、変わりない」
兄弟と言われればどことなく似ている。照勇はぽかんと口を開けてしまった。
「照勇! まだ油断するな!」
李高が照勇をかばうように立ちはだかった。だが独眼にいたぶられた身体は
立っているのがやっとのありさまだ。
「おれは仲間を殺した。もうガキを狙うことはしない。任務は失敗だ」
「信じられるもんか、なあ、そうだろう、照勇」
蓮至は地面に落ちていた守り珠を拾い、しげしげと眺め、ほっと息をついた。
「少し傷がつきましたが、割れなくてよかった」
それはなんなの。そんなに大事なものなの。照勇が問う前に、大きな影が通り過ぎた。
空を見上げると巨大な鳥が飛んでいた。逆光で黒い色が際立つ。不気味だ。
「なにあれ……?」
「怪鳥の類か?」
「裏切る気か、蓮至!」
髭男の体格は蓮至を圧倒している。激しく身をよじる髭男を長くは抑えきれないだろう。その証しに蓮至が悲鳴じみた声をあげた。
「照勇さまッ、早くッ!」
照勇は剣をかまえて髭男に突きつけた。だが剣先は髭男の胸を指したまま微動だにしない。
殺すしかない。好機はいましかない。いまを逃したら自分だけでなく蓮至も殺される。
頭では理解していても身体が硬直していた。
「照勇さま!」
相手が悪人とはいえ、殺すのは相当の勇気がいる。少なくともいままで照勇が発揮したことがない勇気が。
だがこのときは勇気より嫌悪が勝った。
剣先が地面に触れた。支える力がなくなったのだ。
それを見た蓮至が小さく舌打ちをする。
照勇の足になにかがまといつく。手だった。岩男が両足首を掴んでいる。
「うあ……っ!」
「舐めやがって、ガキがッ!」
完全復活した岩男が照勇を引き倒した。うつぶせになった照勇の背に馬乗りになった岩男は蓮至にがなる。
「仲間を放せ、宦官野郎!」
こうなっては剣があっても何の訳にも立たない。
殺せるときに殺しておくべきだった。いまさら後悔してももう遅すぎる。
ゴリュと異様な音が響いた。
「な……」
岩男の絶句が続く。視線の先を追うと、髭男が地面に倒れていた。首があり得ない方向に曲がっていた。蓮至が素手で髭男の首をへし折ったのだ。
「貴様、よくも……」
背に重くのしかかっていた髭男の気配がふいに消えた。
「ふげえ」
髭男が後方に弾け飛ぶ。蓮至が拳をふるったのだ。
髭男も殴られたままでいるわけがない。跳ねるように蓮至と組み合う。
「くそうっ!」
李高の声に振り向くと、独眼の前に膝をついた彼が見えた。呼吸が荒く、頭が揺れている。体力が尽きたのだ。
一方の独眼は息一つ乱れていない。
蓮至が髭男を殺したことはまだ気がついていない。
「ふん、飽きたな。素人がよく頑張ったよ」
「わああああああ!」
剣を横に薙いだ。独眼の横腹に刃がめり込んだ。と思ったのは甘かった。刃が斜めを向いていたのだ。これでは棒きれで叩いたのと変わらない。だが独眼はよろめいた。
照勇の頭突きがまだ効いているのだ。あの頭突きは独眼の肋骨に確実にひびをいれた。剣の殴打は砕いた
幸運はここまでだった。二回目の殴打は避けられた。手首に手刀を受けた。剣が弾け飛ぶ。頬を叩かれ、短剣の反射光が視界を奪う。
今度こそ殺される。そう思ったとき、
「兄貴!」
光が遠のいた。独眼は照勇を放置して、もうひと組の戦いに加わった。
それは一瞬の出来事だった。独眼の短剣が岩男の胸を深く抉る。
岩男は信じられないといった表情でおのれの胸を見た。
仲間であるはずの独眼がなにを血迷ったのか。
次の瞬間、独眼がするりと手を引く。蓮至はさっと身を退けた。そこへ熱い血が勢いよく噴き出す。
冷たい空気に触れた血はもうもうと白い気を立ち昇らせた。声を出す間もなく、岩男は横倒しに崩れ落ちた。
「照勇さま、ご無事ですか!」
蓮至が照勇に駆け寄り、怪我がないかを確認した。独眼がそのようすを黙って見ている。
「……どういうこと?」
「よかった、大きな怪我はありませんね」
「どうしてぼくを心配するの。独眼はなんで蓮至を助けたの?」
蓮至は立ち上がると独眼の横に並んだ。
「兄弟なのです、この──」
「兄貴、おれのことはこれからは独眼と呼んでくれ。本当の名は捨てる」
「わかった。名を変えても独眼は弟だ。永劫、変わりない」
兄弟と言われればどことなく似ている。照勇はぽかんと口を開けてしまった。
「照勇! まだ油断するな!」
李高が照勇をかばうように立ちはだかった。だが独眼にいたぶられた身体は
立っているのがやっとのありさまだ。
「おれは仲間を殺した。もうガキを狙うことはしない。任務は失敗だ」
「信じられるもんか、なあ、そうだろう、照勇」
蓮至は地面に落ちていた守り珠を拾い、しげしげと眺め、ほっと息をついた。
「少し傷がつきましたが、割れなくてよかった」
それはなんなの。そんなに大事なものなの。照勇が問う前に、大きな影が通り過ぎた。
空を見上げると巨大な鳥が飛んでいた。逆光で黒い色が際立つ。不気味だ。
「なにあれ……?」
「怪鳥の類か?」
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