SPIRIT~スピリット~

SHOW

文字の大きさ
80 / 88
第三章 大蛇は静寂を求める

第三章 第一話 カラオケの作戦会議

しおりを挟む
 人はそれぞれ違う。

 色んな考え、色んな思考、色んな思想。

 それらを持って生きている。

 そのため価値観の違いや常識の違いで争いが生まれる。

 今のこの作戦会議のように……。

「だから! なんで打ち上げなのよ! 岩城くんが作戦会議って言ったから私来たのに」

「だからごめんって言ってるじゃないか。もう許してよ神代さん」

 長髪の黒髪を激しく揺らしながら怒り散らす神代 零、その向かいで彼女に謝るぽっちゃり体型の岩城 真吾。

「もう許してやったらいいんじゃねぇか? こうでもしねぇとあんたは来ないと思ったんだろ?」

 二人の会話に嫌気がさしたのだろう、真吾に助け船を出す髪を茶髪に染めている水島 亮夜。

 そして、この会話を部屋の隅っこで聞いている奴がいる。

 俺こと大神 宏だ。

 ではなぜこんなことになったのか、時間を戻そう。

 学校の正門を出て、真吾が俺たち以外の人に聞かれたくないからカラオケに行こうとなり、繁華街へ向かう。

 そして、カラオケ店の一室。

 男子三人、女子一人の計四人が向かい合わせで座り、これからのことを話すのかと思っていたら、真吾が開口一番に放ったのが「お疲れ様ー! 打ち上げに来てくれてありがとう!!」だった。

 それを聞いた瞬間、神代は目つきが鋭くなり、真吾を睨みこう言う。

「今なんて?」

 真吾は蛇に睨まれたかえるのように震える。

「い、いや。アンちゃん達の件が終わったから……」

「私はあなたに今後の話をしようって聞いたからここにいるのよ?」

「ご、ごめんなさーい!!」

 そして、今に至る。

 神代が「もういい」と立ち上がる。

「私、帰る」

 そう言い荷物を持ち、部屋を出ようとする。

「待って! 本当に話したいことがあるから」

 真吾が手を合わせ「お願い!」と懇願する。

 それを見た神代は大きなため息を吐き、腕を組みながら元の席に座る。

「それで真吾、話したいことってなんだ?」

「うん、レベッカ達が言っていた『オロチ様』のことなんだけど」

「あぁ、オロチ様のためとか言ってたな」

「そう、そのオロチ様なんだけど。それが気になるんだよ」

 そう言うと真吾は手を組み、続けてノコとの会話を言い始めた。

「宏くんと水島が部屋から出てから僕はノコと話してたんだ。そこで僕はこう質問したんだ。オロチ様って誰って? でも教えてくれなかった。 というよりだんまりだった。だから今日、夢の世界ヴォロでそのことを聞こうと思う」

「あいつらに会いに行くってことか?」

「そう、彼女たちに会って、オロチ様の手がかりをさぐるよ」

「待って……ていうことは。まだこの事件は終わってない?」

「そうよ、まだ終わっていない。でも岩城くん。最初ヴァンパイアの仕業って言ってなかった?」

「あれは君から情報を引き出すために言ったことだよ。気分を悪くしないでね」

「大丈夫、もう過ぎたことだから。もし次があったら、私があなたに言ってあげる」

「あ——ありがとう、楽しみにしておくよ。で、話は戻るけど。僕はこの事件を解決したい。だから……協力してくれたら嬉しいな」

 そう言い真吾は俺たちを眺める。

「こんな状況になったんだ。最後まで付きやってやる」

 そう亮夜は言った。

「僕もまだ終わってないなら付き合うよ」

「私も付き合うわ」

「ありがとう、みんな……それじゃ打ち上げしようか!」

 真吾がそう言った瞬間、神代はカバンを持ち立ち上がる。

「話は終わりね。屋敷で会いましょ。じゃ」と言い、部屋から出て行った。

 去(さ)る彼女を見て亮夜は「付き合いの悪いやつ」と言い、コーラを飲む。

 彼女がいなくなった後、俺たち男三人は曲を歌ったり、喋ったりしてカラオケを楽しむのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...