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プロローグ
しおりを挟む玄関を出て、家の前の一本道を何気なく見やる。
……と。
懐かしい顔を見つけた。小学生の頃の友達だ。
三つ編みが似合うおっとり顔の彼女、赤井加奈ちゃんとは六年間同じクラスだった。
お向かいさんから右に進んで三件目に彼女の家がある、という近さもあって、親同士の交流も含め、とても良い友人関係を築けていたと思う。
中学に上がっても楽しいスクールライフを送っていけるだろうと思い描いたのも束の間、なんと彼女は受験組であったため、別々の学校へ通うこととなり、なかなか会えない日々となった。
その後も、予想通り市外の有名進学校へと進んだ彼女とは、互いの忙しさも相まって、もう長い間言葉を交わせていない。
そんな中での久々の再開に、つい嬉しくなって駆け寄る。
いつもふわりとした空気を纏っていた彼女が、あの有名校の制服を着て堂々と立っている姿はとても凛々しく見えた。
よく見れば彼女の他に女の子が二人立っている。
加奈ちゃんと同じ制服姿で、仲良さげに話している様子から、新しい友達なのかもしれないと思った。
「加奈ちゃん、久しぶり!」
手を振りながら声を掛けた私に、その場にいた皆が振り向き、そして…………固まった。
「え……? あれ?」
固まったのは私だ。
だって、仕方がない。
加奈ちゃんが親しそうに話していた相手が、私の高校からの友達だったのだから。
もちろん、私からはまだ紹介などできていない。
「皆、知り合いだったの? あれ……でも、彩ちゃんも美紀ちゃんも家この辺じゃなかったよね。いつの間にそんな仲良くなったの? ……いやいやいや、そうじゃなくて。なんで制服そっち!? なんでうちのじゃないの?」
長いストレートの黒髪が映えるスラッと美人な杉原彩ちゃんと、小柄で、猫目にショートボブが溌剌さを増してる藤野美紀ちゃん。
二人は、隣町とさらにその隣町に住んでいて、高校で初めて知り合った。
はずなのに。
いや、そもそもなんで加奈ちゃんと同じ制服着てるんだ?
疑問だらけ。
あれぇ? なんでぇ? と、グルグル考えていたけれど。
ふと、何気なく加奈ちゃんをもう一度よく見てみた。
……。
…………。
……………………は?
「んぇええ!? ……なんでランドセル背負ってんのぉ!?」
思わず叫んでしまった。
これもまた、仕方がない。
いや、だっておかしいでしょ。
私たち今、高校生よ?
いくら小学生の頃の懐かしい友達だって言っても今、高校生よ?
制服ちゃんと着てるじゃん。なのにランドセルよ?
彩ちゃんも美紀ちゃんもあははうふふ笑ってないで注意してやってよ、もー。
って、あれ?
なんか急に。
加奈ちゃんが、小柄な美紀ちゃんよりもさらに小さくなってるような……。
更に更に! 黄色い通学帽まで追加で見えるような……。
待て待て待って、いよいよおかしい。
初めからおかしいことしかなかったかもしれないけど、おかしい。
加奈ちゃんはそんなネタに走るような性格してなかったし。
彩ちゃんと美紀ちゃんがこの状況で突っ込まないのもおかしい。
えー?
んー……。
おー…………?
あー……………………。
――もしかして。
「これ、夢だわ」
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