とっていただく責任などありません

まめきち

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舞踏会

舞踏会当日の朝。
侯爵家では、メリダ夫人の侍女たちの手によって、朝から全身を磨き上げられていた。

私はもう、ヘトヘトだ。

サファイアブルーのマーメイドドレスを着せられ、金髪はゆるく巻かれ、メイクまでばっちり。
――これ、朝から三時間コースって、ほんと無理なんですけど!

「素材がいいから、完璧よ!」

メリダ夫人が扇子をぱたぱたと揺らし、満足げに笑う。
その横で、私は今すぐソファに倒れ込みたい気分だった。

ご令嬢たちって、毎回こんな準備をしてるの?
尊敬しかない。ほんとに。

そんな状態で着飾った私を見た、リュートの反応が――まあ、面白かった。

「化けるとは思ってたが、ここまでとは!」

目を丸くして、完全にポカンとしている。

「……からかうならやめてよ!」

頬が熱くなる。
なのに内心では、ちょっとだけドキッとしてしまう。

私、こんな金髪にドレス、本当に似合ってるのかな……?

「これなら、女豹どもも誰も太刀打ちできねえな!」

リュートは悪い顔でニヤリと笑った。
けれど一瞬だけ、その目が真剣になって――心臓が跳ねる。

「……何?」と聞くと、

「いや、なんでもねえ!」

と、誤魔化すように肩をすくめた。

……きっと、気のせいだ。

王宮へはリュートと馬車で向かった。
けれどマーメイドドレスの裾が邪魔で、乗り込むのに一苦労。

「ヘイゼル、もっと優雅にしろよ」

そう笑われて、

「このドレス選んだの、誰の母さんだと思ってるの!?」

と、睨み返す。

リュートのエスコートで宮殿に足を踏み入れた瞬間、
巨大なシャンデリアがきらめき、色とりどりのドレスをまとった貴族たちが舞う光景が広がった。

――これが、舞踏会。

思わず見とれてしまう。
けれど同時に、無数の視線を感じて、背筋が自然と伸びた。

気後れしてしまい、私はリュートの腕をぎゅっと掴む。

すると彼は、私の耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。

「みんな、ヘイゼルに見惚れてるんだ。
堂々としてれば、大丈夫だ」

その言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。

ふと気づくと、フリルと宝石で飾り立てた女豹令嬢たちが、こちらをちらちら見て、ひそひそと囁いていた。

「あの子、誰?
リュート様と一緒だなんて……」

鋭い視線が、痛いほど刺さる。

――目が合ったら、終わりだ。

私は女豹令嬢たちの方を見ないよう、前だけを真っ直ぐ見つめ、
リュートのエスコートにしがみつくようについていった。
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