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♯143 バレバレの裏工作
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【ビタロ・アルベルティーニ視点】
「もうおしまい」
おねーさんはフラフラとしながらも体を起こすと、「洗浄」と唱えて、自分だけでなく俺たちとベッドも一緒にサッと軽く魔法で洗い上げた。
「姉さん待って??まだだよ!まだ出来るもん!」
ルディがヨタヨタと腰をあげておねーさんの腕を掴むが、おねーさんにそっとその手を外される。
俺も何とかして引き止めたい気持ちはあるも、自分でもびっくりするほど体がかったるいので、ひとまず2人のやり取りを傍観することにする。
「もう充分したでしょ。約束は果たしたから。これ以上はあなたたちの身体に障るからダメ。」
ため息混じりにおねーさんが言うと、ルディがハッとしてキラキラした瞳をおねーさんに向ける。
「えっ?!『僕ら』のこと心配してくれるの?」
「当たり前でしょ??大事な弟なんだから!…と、その大事なお友達だし…」
少し困った様な顔をして、目を逸らしたおねーさんの口から絞り出されたその取ってつけたような自分の位置付けに、俺は更にドッと疲れが増した気がした。
いや、別に今更期待なんてしないけどさぁ…?
とは思いつつも。
あんだけ俺のちん◯愛おしそうにスキスキー♡って求めてたくせに…どこまで行ってもお姉さんにとって、俺はただの『弟の友人』止まりかぁとか…
なんだかんだで結局期待しちゃってる自分もいて余計に萎える。
そんなんなら、たとえ『弟』でも愛されてるだけ全然マシ…いやマシどころか羨ましすぎる…
ぼんやりとそんなことを考えながらふと視線をずらすと――
おねーさんに気づかれないようにこちらに視線を向けて、にんまりと笑っているルディと目があった。
ん?!
コイツっ?!
まさかわざわざ俺にマウントを取るだけのためにあえておねーさんに聞き返したのか??
ほんと性格わりーなおまえっ!?
マジで腹立つなっ!!
「――解除」
ルディに気を取られていると、突然おねーさんが空間に向かって詠唱した。
すると“バチバチッ”という破裂音が部屋の数箇所から鳴った。
俺の心臓がどきりと跳ねる。
当然だけどやっぱバレてるよな…
に…しても、こんな一瞬であっさり全ての隠蔽魔法を解くとか…
おねーさんさすがエグい…
ルディーと一緒に魔石まで使って魔力を補填しながら結構念入りに隠蔽工作したのに…
「風運」
おねーさんがさらに詠唱すると、部屋の至る所に小さな旋風が巻き起こり、おねーさんの元へ集まっていく。
「硬化光障壁」
そしてその集まった竜巻を閉じ込めるように、魔法で手元に30センチ四方くらいの光の立方体を作った。
目を凝らすと、風魔法が消失したその立方体の中に手のひらサイズの小ぶりな透明な球体が5つ入っている。
そう…それは俺らが先ほどせっせと設置した記録球の全てだ…
あーあ…
やっぱ一つ残らず全部バレたか…
せめて一個でも持ち帰って一生のおかずにしたかったのになぁ…
おねーさんはその記録球の入った立方体を手のひらの上に浮かべながら、じろりとルディに視線を向ける。
「何か言い訳ある?」
その冷ややかな声に、またどきりと心臓が跳ねて背筋に冷たいものが走る。
こうなることまではルディと打ち合わせした通り、想定済みではあったけど、今回ばかりはだいぶお怒りなようで、おねーさんの声色がいつもに増して鋭くて、胃がキュッと縮んだ。
「なんだバレちゃったかぁ…残念」
しかしルディはそんなおねーさんの威圧に臆することなく、薄笑いを浮かべながらわざとらしくしょんぼりしたあざとい顔を作って項垂れた。
それを見たおねーさんはキッとルディを睨みつける。
けれどしばらく睨みつけてもルディは全く反省するそぶりを見せない。
おねーさんは、ぎゅっと眉間に皺を寄せて渋い顔になると、諦めたように大きなため息をついた。
「はぁ…だからね?ルディ?『バレちゃったかぁ』…じゃないでしょ?…本当にいい加減にしなさい」
その甘さが窺えるおねーさんの声色に俺もひとまずホッと肩を撫で下ろす。
あーあー…
完全におねーさんが根負けしてる…
結局こうなるんだなぁ…
ルディは相変わらずメンタルつえーな…とは思うけど、それより何より、おねーさんもそんな簡単に諦めていいのだろうか…
こんなまるで子供のいたずらでも叱るようなテンション感で「いい加減にしなさい」なんて言われてもルディが辞めるわけがない。
俺もバリバリ加担しといてナンだけど、今回も俺らがやろうとした事はだいぶヤバい。
『ハメ撮り』して『この動画を世間にばらされたくなきゃ俺らと関係続けましょーね』とおねーさんを脅そうだなんて。
卑劣で非道すぎる。
おねーさんだってその俺たちの企みに気づいてるから怒ってるん…だよなぁ?
まさか気づいてないわきゃあるまいし…
結局こんなにもずぶずぶ甘々なのは相手がルディだからという事なんだろうな。
そう考えると鳩尾がぎゅっとなって思わず眉を顰める。
おねーさんは何か言いたげにしばらくルディを渋い顔で眺めていたけど。
ルディがおねーさんを見つめ返して甘えたようにニコッと微笑むと、諦めたようにまた大きなため息をついて口を開いた。
「爆砕」
おねーさんが詠唱すると、光のキューブの中に入っていた記録球たちが、一瞬で全て粉々に弾け飛んだ――
って――
おいおいおいおいうそだろ?!
「あ゛!!!ちょ?!それ一個30万するやつ!!!」
ハッとして自分の口を手で押さえた。
ミスった…
ルディに命令されて、泣く泣くはたいた150万が一瞬で吹き飛んだから思わず声が出てしまった…
おねーさんの視線がギロリとこちらに向いた。
目が合った瞬間、その眼光の鋭さに背筋が一瞬で凍りつく。
「あっ…いやっ…その…俺はこんなことやめようって必死に止めたんすよ…?でも『大親友』のルディに、どーしてもって頼まれたら断れねーっすよ…アハハ…」
苦し紛れに言い訳を並べて、『大親友』というところを強調してみると、おねーさんの眉がぴくりと動いた。
しかし依然として無言で俺を睨みつけてくる。
まっすぐに俺を捉える赤く透き通る瞳に、俺の心の中まで全て見透かされてるんじゃねーかと心臓がバクバクと脈打つ。
このままだと『全て』がバレてしまうんじゃないかと不安すぎて、反射的に視線を『俺の鞄』の方に移しそうになるが、必死に堪えて誤魔化すためにルディに視線を固定して口を開く。
「ほらルディ!やっぱ俺の言った通りになったじゃん?!もういい加減諦めよーぜ??来週合コンでも組んでやるからさ??そろそろお前はほかのご令嬢にも目を向けるべきだって何度も言ってるだろ?!俺もおねーさんにアドバイスもらった通り『恋人』ってやつを作ってみようと思うしさ??一緒に新しい恋さがそーぜ!?なぁ?相棒!?」
慌てて引き攣った笑いを浮かべなが早口に出まかせを並べていると、おねーさんは諦めたようにまた大きなため息をついて額に手を当て首を横に振った。
その少し和らいだ表情に、再びほっと肩を撫で下ろす。
やっぱりルディの考察は正しい。
俺とルディが仲良しアピールすればするほどおねーさんが絆されると。
なぜならおねーさんは――
ルディのことが大切だから…
喉の奥に苦々しいような後味の悪さが残った。
クソ…
結局どこまで行っても俺はルディのおまけかよ。
「転送」
おねーさんが顔からスッと表情を消して、気を取りなおすように詠唱すると、手のひらの上に転移陣が現れ、粉々になった記録球が入った魔力障壁のキューブごと消失した。
「まぁ…どのみちもうこれで本当におしまいだから」
おねーさんはさらに「風運」と唱えて下着やガウンを風魔法で手元まで引き寄せると、淡々と身につけ始めた。
まるでルディを突き放すように、すっかり感情を消してしまったお姉さんの表情を見て、ルディは俺に聞こえるくらいの小ささでチッと舌打ちをすると、すぐに目を細めて悲しそうな笑顔を作った。
「あーぁ…完敗だよ姉さん。まぁ、こんな愚かなことしてもどうせバレるとは思ってたけどね…信じてもらえないかもしれないけど…自分でもこんなことしちゃダメだってもちろんわかってるんだよ。」
ルディは瞳をじんわりと潤ませる。
「でも――姉さんを想うと…自分がまるで自分じゃないような――悪魔にでも乗っ取られてしまったんじゃないかって…思うくらい感情がめちゃくちゃになって勝手に身体が動いてしまって…っ…」
そう言いながらルディはポロポロと涙をこぼし始めた。
うわぁ…出たよ嘘泣き…
怖すぎて鳥肌立つわ…
チラッとおねーさんの方に視線を移すと、おねーさんはじっと無表情でルディを見つめている。
何を考えているか分かりにくいけど、ほんのりと瞳が潤んでる気がする。
あーぁー…
完全にルディの思う壺だわ…
「でもだからこそ…これでよかったのかもしれない…姉さん、僕を止めてくれてありがとう…もうこんな関係やめられる…やっと僕もこれで救われるのかも…今更だけど…今までごめんなさい…こんなダメな弟で…ごめんなさい…」
ルディは顔を手で覆って肩を揺らしながら鼻を啜った。
それをおねーさんはじっと硬い表情で見つめているけど、よくよく観察してると、だんだんと表情が緩んできてるのがわかる。
何も知らなかった頃は、この微々たる表情の変化ではおねーさんが何を考えているか察せられなかったけど、おねーさんと身体を重ねて、人となりを知って、ルディから色々とおねーさんについて聞いた今ならおねーさんが考えそうなことがよくわかってしまって、余計にモヤモヤとした感情が胸の中に渦巻いた。
いや……俺が突っ込むのもなんだけどさ?
こんなことまでしといて今更『魔が刺しただけですごめんなさい』で許される内容じゃねーけどな?!
おねーさんも許しちゃダメじゃね?!
なんでそんな優しい目で見てるん?!
あー…なんかだんだん腹立ってきたな…
相思相愛の恋人同士の痴話喧嘩でも見せつけられてる気分だわ…
おねーさんはこれで絆されて、またルディにベタ甘にもどるんかぁ??
想像しただけでムカつきすぎて吐きそうだわ。
ルディもこれ、どうせおねーさんを洗脳しつつも俺にも見せつけてるんだろうなぁ…
あー…ぶん殴りてぇ…
顔面グーでぶん殴ってやりてぇ…
そう思いながらルディを睨みつけると、ルディは俺の視線に気づいて、おねーさんに見えないように口の端をにんまりとあげた。
マジクソが。
あんま俺を馬鹿にすんなよ?
「でもおねーさんもおねーさんっすよねー?俺たちとする気でここに自ら来たのに、わざわざ見せつけるように『痕』なんて残してるなんてお人が悪いっすよ?首より薄くてぱっと見わかんねーっすけど、俺の目は誤魔化せねーっすよ?身体中にありますよねぇ?その噛み跡とキスマーク。どんだけ激しいセック◯したんすかぁ?」
ルディがこのままやんわりとおねーさんに許されるのは癪に触ったので、あえてルディがまだ気づいてなさそうなことをぶっ込んでやった。
すると案の定、ルディの表情が一瞬で凍りついた。
ザマァ見ろ。
なんでも思い通りに行くと思うなよ?
暴走する感情に振り回されて、少しはお前に振り回されるこっちのしんどさを味わうがいい。
チラッとおねーさんに視線を向けると、おねーさんも僅かに顔を引き攣らせたのがわかった。
「まだ俺ら、おねーさんからソレについての『言い訳』聞いてないっすよぉ?なんも教えてくれないんでしたら、勝手に『俺らを煽るために残した』って解釈しますけどぉ?それって要するにイヤイヤなフリして実は無理やり激しく犯してって言うことでしょ?イコール立派な合意っすよねぇ?それなら今後も喜んでおねーさんを犯して差し上げますからね?」
俺がにんまりと笑ってさらに追い打ちをかけると、ルディがゆっくりと顔を上げ、おねーさんをギロリと睨みつけた。
「へぇ…ふぅーん?そっかぁ…なるほどぉ?姉さんも僕にめちゃくちゃに犯されたかったってことかぁ。なぁんだ、相思相愛でなんの問題もないじゃない?」
ルディがどす黒い瞳でおねーさんににじりよると、おねーさんが慌ててルディに向けて手をかざした。
「待ってルディ、これは違くてね??おちついて??それ以上近づいたら魔法で拘束するからね??」
「すれば?」
全く動じず歩みを止めないルディに、おねーさんが顔をくしゃっと歪ませて手を下ろした。
「だぁーもー!!わかった、わかったから!全ては話せないけどちゃんと説明するから!その代わり殿下のとこにも、エルのとこにも余計なことしに行かないって約束して?」
おねーさんの言葉に思わず目を見開いてしまった。
あれだけめちゃくちゃシても全く口を割らなかったし、どうせはぐらかされるだろうと思ってたから、ルディの感情を少し掻き回して、ついでにおねーさんも少し困らせてやろう程度で言っただけなのに。
まさかここへ来て本当に教えてくれるだなんて。
一体どういう心境の変化なのだろうか。
ルディも想定外だったのか、ピタッと止まってじっとおねーさんを見つめている。
その不信感の募ったルディの瞳に、おねーさんはため息混じりに付け加えた。
「ちなみに、好きとか本命とかそう言う話じゃ全くないからね?命かけてもいい。だから2人には絶対に理不尽なちょっかい出しに行かないで。」
「…わかった」
おねーさんの押しの強い口調に、ルディは渋々うなづいた。
こんなことに命かけていいんか?とか突っ込みたい気持ちもよぎったが、おねーさんがそこまで強く否定したことにかなり心がスッと軽くなったことに気づき、思わず苦笑いが漏れたので慌てて手で口元を隠した。
「もうおしまい」
おねーさんはフラフラとしながらも体を起こすと、「洗浄」と唱えて、自分だけでなく俺たちとベッドも一緒にサッと軽く魔法で洗い上げた。
「姉さん待って??まだだよ!まだ出来るもん!」
ルディがヨタヨタと腰をあげておねーさんの腕を掴むが、おねーさんにそっとその手を外される。
俺も何とかして引き止めたい気持ちはあるも、自分でもびっくりするほど体がかったるいので、ひとまず2人のやり取りを傍観することにする。
「もう充分したでしょ。約束は果たしたから。これ以上はあなたたちの身体に障るからダメ。」
ため息混じりにおねーさんが言うと、ルディがハッとしてキラキラした瞳をおねーさんに向ける。
「えっ?!『僕ら』のこと心配してくれるの?」
「当たり前でしょ??大事な弟なんだから!…と、その大事なお友達だし…」
少し困った様な顔をして、目を逸らしたおねーさんの口から絞り出されたその取ってつけたような自分の位置付けに、俺は更にドッと疲れが増した気がした。
いや、別に今更期待なんてしないけどさぁ…?
とは思いつつも。
あんだけ俺のちん◯愛おしそうにスキスキー♡って求めてたくせに…どこまで行ってもお姉さんにとって、俺はただの『弟の友人』止まりかぁとか…
なんだかんだで結局期待しちゃってる自分もいて余計に萎える。
そんなんなら、たとえ『弟』でも愛されてるだけ全然マシ…いやマシどころか羨ましすぎる…
ぼんやりとそんなことを考えながらふと視線をずらすと――
おねーさんに気づかれないようにこちらに視線を向けて、にんまりと笑っているルディと目があった。
ん?!
コイツっ?!
まさかわざわざ俺にマウントを取るだけのためにあえておねーさんに聞き返したのか??
ほんと性格わりーなおまえっ!?
マジで腹立つなっ!!
「――解除」
ルディに気を取られていると、突然おねーさんが空間に向かって詠唱した。
すると“バチバチッ”という破裂音が部屋の数箇所から鳴った。
俺の心臓がどきりと跳ねる。
当然だけどやっぱバレてるよな…
に…しても、こんな一瞬であっさり全ての隠蔽魔法を解くとか…
おねーさんさすがエグい…
ルディーと一緒に魔石まで使って魔力を補填しながら結構念入りに隠蔽工作したのに…
「風運」
おねーさんがさらに詠唱すると、部屋の至る所に小さな旋風が巻き起こり、おねーさんの元へ集まっていく。
「硬化光障壁」
そしてその集まった竜巻を閉じ込めるように、魔法で手元に30センチ四方くらいの光の立方体を作った。
目を凝らすと、風魔法が消失したその立方体の中に手のひらサイズの小ぶりな透明な球体が5つ入っている。
そう…それは俺らが先ほどせっせと設置した記録球の全てだ…
あーあ…
やっぱ一つ残らず全部バレたか…
せめて一個でも持ち帰って一生のおかずにしたかったのになぁ…
おねーさんはその記録球の入った立方体を手のひらの上に浮かべながら、じろりとルディに視線を向ける。
「何か言い訳ある?」
その冷ややかな声に、またどきりと心臓が跳ねて背筋に冷たいものが走る。
こうなることまではルディと打ち合わせした通り、想定済みではあったけど、今回ばかりはだいぶお怒りなようで、おねーさんの声色がいつもに増して鋭くて、胃がキュッと縮んだ。
「なんだバレちゃったかぁ…残念」
しかしルディはそんなおねーさんの威圧に臆することなく、薄笑いを浮かべながらわざとらしくしょんぼりしたあざとい顔を作って項垂れた。
それを見たおねーさんはキッとルディを睨みつける。
けれどしばらく睨みつけてもルディは全く反省するそぶりを見せない。
おねーさんは、ぎゅっと眉間に皺を寄せて渋い顔になると、諦めたように大きなため息をついた。
「はぁ…だからね?ルディ?『バレちゃったかぁ』…じゃないでしょ?…本当にいい加減にしなさい」
その甘さが窺えるおねーさんの声色に俺もひとまずホッと肩を撫で下ろす。
あーあー…
完全におねーさんが根負けしてる…
結局こうなるんだなぁ…
ルディは相変わらずメンタルつえーな…とは思うけど、それより何より、おねーさんもそんな簡単に諦めていいのだろうか…
こんなまるで子供のいたずらでも叱るようなテンション感で「いい加減にしなさい」なんて言われてもルディが辞めるわけがない。
俺もバリバリ加担しといてナンだけど、今回も俺らがやろうとした事はだいぶヤバい。
『ハメ撮り』して『この動画を世間にばらされたくなきゃ俺らと関係続けましょーね』とおねーさんを脅そうだなんて。
卑劣で非道すぎる。
おねーさんだってその俺たちの企みに気づいてるから怒ってるん…だよなぁ?
まさか気づいてないわきゃあるまいし…
結局こんなにもずぶずぶ甘々なのは相手がルディだからという事なんだろうな。
そう考えると鳩尾がぎゅっとなって思わず眉を顰める。
おねーさんは何か言いたげにしばらくルディを渋い顔で眺めていたけど。
ルディがおねーさんを見つめ返して甘えたようにニコッと微笑むと、諦めたようにまた大きなため息をついて口を開いた。
「爆砕」
おねーさんが詠唱すると、光のキューブの中に入っていた記録球たちが、一瞬で全て粉々に弾け飛んだ――
って――
おいおいおいおいうそだろ?!
「あ゛!!!ちょ?!それ一個30万するやつ!!!」
ハッとして自分の口を手で押さえた。
ミスった…
ルディに命令されて、泣く泣くはたいた150万が一瞬で吹き飛んだから思わず声が出てしまった…
おねーさんの視線がギロリとこちらに向いた。
目が合った瞬間、その眼光の鋭さに背筋が一瞬で凍りつく。
「あっ…いやっ…その…俺はこんなことやめようって必死に止めたんすよ…?でも『大親友』のルディに、どーしてもって頼まれたら断れねーっすよ…アハハ…」
苦し紛れに言い訳を並べて、『大親友』というところを強調してみると、おねーさんの眉がぴくりと動いた。
しかし依然として無言で俺を睨みつけてくる。
まっすぐに俺を捉える赤く透き通る瞳に、俺の心の中まで全て見透かされてるんじゃねーかと心臓がバクバクと脈打つ。
このままだと『全て』がバレてしまうんじゃないかと不安すぎて、反射的に視線を『俺の鞄』の方に移しそうになるが、必死に堪えて誤魔化すためにルディに視線を固定して口を開く。
「ほらルディ!やっぱ俺の言った通りになったじゃん?!もういい加減諦めよーぜ??来週合コンでも組んでやるからさ??そろそろお前はほかのご令嬢にも目を向けるべきだって何度も言ってるだろ?!俺もおねーさんにアドバイスもらった通り『恋人』ってやつを作ってみようと思うしさ??一緒に新しい恋さがそーぜ!?なぁ?相棒!?」
慌てて引き攣った笑いを浮かべなが早口に出まかせを並べていると、おねーさんは諦めたようにまた大きなため息をついて額に手を当て首を横に振った。
その少し和らいだ表情に、再びほっと肩を撫で下ろす。
やっぱりルディの考察は正しい。
俺とルディが仲良しアピールすればするほどおねーさんが絆されると。
なぜならおねーさんは――
ルディのことが大切だから…
喉の奥に苦々しいような後味の悪さが残った。
クソ…
結局どこまで行っても俺はルディのおまけかよ。
「転送」
おねーさんが顔からスッと表情を消して、気を取りなおすように詠唱すると、手のひらの上に転移陣が現れ、粉々になった記録球が入った魔力障壁のキューブごと消失した。
「まぁ…どのみちもうこれで本当におしまいだから」
おねーさんはさらに「風運」と唱えて下着やガウンを風魔法で手元まで引き寄せると、淡々と身につけ始めた。
まるでルディを突き放すように、すっかり感情を消してしまったお姉さんの表情を見て、ルディは俺に聞こえるくらいの小ささでチッと舌打ちをすると、すぐに目を細めて悲しそうな笑顔を作った。
「あーぁ…完敗だよ姉さん。まぁ、こんな愚かなことしてもどうせバレるとは思ってたけどね…信じてもらえないかもしれないけど…自分でもこんなことしちゃダメだってもちろんわかってるんだよ。」
ルディは瞳をじんわりと潤ませる。
「でも――姉さんを想うと…自分がまるで自分じゃないような――悪魔にでも乗っ取られてしまったんじゃないかって…思うくらい感情がめちゃくちゃになって勝手に身体が動いてしまって…っ…」
そう言いながらルディはポロポロと涙をこぼし始めた。
うわぁ…出たよ嘘泣き…
怖すぎて鳥肌立つわ…
チラッとおねーさんの方に視線を移すと、おねーさんはじっと無表情でルディを見つめている。
何を考えているか分かりにくいけど、ほんのりと瞳が潤んでる気がする。
あーぁー…
完全にルディの思う壺だわ…
「でもだからこそ…これでよかったのかもしれない…姉さん、僕を止めてくれてありがとう…もうこんな関係やめられる…やっと僕もこれで救われるのかも…今更だけど…今までごめんなさい…こんなダメな弟で…ごめんなさい…」
ルディは顔を手で覆って肩を揺らしながら鼻を啜った。
それをおねーさんはじっと硬い表情で見つめているけど、よくよく観察してると、だんだんと表情が緩んできてるのがわかる。
何も知らなかった頃は、この微々たる表情の変化ではおねーさんが何を考えているか察せられなかったけど、おねーさんと身体を重ねて、人となりを知って、ルディから色々とおねーさんについて聞いた今ならおねーさんが考えそうなことがよくわかってしまって、余計にモヤモヤとした感情が胸の中に渦巻いた。
いや……俺が突っ込むのもなんだけどさ?
こんなことまでしといて今更『魔が刺しただけですごめんなさい』で許される内容じゃねーけどな?!
おねーさんも許しちゃダメじゃね?!
なんでそんな優しい目で見てるん?!
あー…なんかだんだん腹立ってきたな…
相思相愛の恋人同士の痴話喧嘩でも見せつけられてる気分だわ…
おねーさんはこれで絆されて、またルディにベタ甘にもどるんかぁ??
想像しただけでムカつきすぎて吐きそうだわ。
ルディもこれ、どうせおねーさんを洗脳しつつも俺にも見せつけてるんだろうなぁ…
あー…ぶん殴りてぇ…
顔面グーでぶん殴ってやりてぇ…
そう思いながらルディを睨みつけると、ルディは俺の視線に気づいて、おねーさんに見えないように口の端をにんまりとあげた。
マジクソが。
あんま俺を馬鹿にすんなよ?
「でもおねーさんもおねーさんっすよねー?俺たちとする気でここに自ら来たのに、わざわざ見せつけるように『痕』なんて残してるなんてお人が悪いっすよ?首より薄くてぱっと見わかんねーっすけど、俺の目は誤魔化せねーっすよ?身体中にありますよねぇ?その噛み跡とキスマーク。どんだけ激しいセック◯したんすかぁ?」
ルディがこのままやんわりとおねーさんに許されるのは癪に触ったので、あえてルディがまだ気づいてなさそうなことをぶっ込んでやった。
すると案の定、ルディの表情が一瞬で凍りついた。
ザマァ見ろ。
なんでも思い通りに行くと思うなよ?
暴走する感情に振り回されて、少しはお前に振り回されるこっちのしんどさを味わうがいい。
チラッとおねーさんに視線を向けると、おねーさんも僅かに顔を引き攣らせたのがわかった。
「まだ俺ら、おねーさんからソレについての『言い訳』聞いてないっすよぉ?なんも教えてくれないんでしたら、勝手に『俺らを煽るために残した』って解釈しますけどぉ?それって要するにイヤイヤなフリして実は無理やり激しく犯してって言うことでしょ?イコール立派な合意っすよねぇ?それなら今後も喜んでおねーさんを犯して差し上げますからね?」
俺がにんまりと笑ってさらに追い打ちをかけると、ルディがゆっくりと顔を上げ、おねーさんをギロリと睨みつけた。
「へぇ…ふぅーん?そっかぁ…なるほどぉ?姉さんも僕にめちゃくちゃに犯されたかったってことかぁ。なぁんだ、相思相愛でなんの問題もないじゃない?」
ルディがどす黒い瞳でおねーさんににじりよると、おねーさんが慌ててルディに向けて手をかざした。
「待ってルディ、これは違くてね??おちついて??それ以上近づいたら魔法で拘束するからね??」
「すれば?」
全く動じず歩みを止めないルディに、おねーさんが顔をくしゃっと歪ませて手を下ろした。
「だぁーもー!!わかった、わかったから!全ては話せないけどちゃんと説明するから!その代わり殿下のとこにも、エルのとこにも余計なことしに行かないって約束して?」
おねーさんの言葉に思わず目を見開いてしまった。
あれだけめちゃくちゃシても全く口を割らなかったし、どうせはぐらかされるだろうと思ってたから、ルディの感情を少し掻き回して、ついでにおねーさんも少し困らせてやろう程度で言っただけなのに。
まさかここへ来て本当に教えてくれるだなんて。
一体どういう心境の変化なのだろうか。
ルディも想定外だったのか、ピタッと止まってじっとおねーさんを見つめている。
その不信感の募ったルディの瞳に、おねーさんはため息混じりに付け加えた。
「ちなみに、好きとか本命とかそう言う話じゃ全くないからね?命かけてもいい。だから2人には絶対に理不尽なちょっかい出しに行かないで。」
「…わかった」
おねーさんの押しの強い口調に、ルディは渋々うなづいた。
こんなことに命かけていいんか?とか突っ込みたい気持ちもよぎったが、おねーさんがそこまで強く否定したことにかなり心がスッと軽くなったことに気づき、思わず苦笑いが漏れたので慌てて手で口元を隠した。
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※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
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転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
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(そんな……死にたくないっ!)
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2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
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