転生転移転禍為福〜こんなクソゲー作るんじゃなかった⁈〜

やた

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♯30 ヤバめの黒幕

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「これについてご説明いただいてもよろしいでしょうか?」


「説明って?見ての通りだぜ?お嬢サマがいつも探してた『例の事件についての証拠』の一つだ。いつも買い取ってもらっていたものとおんなじだぜ?まぁ今回は内容の破壊力が段違いだけどな。」

私が写真に関して質問をするとJは相変わらず楽しそうにニタニタと笑いながらまた新しいタバコを箱から引っ張り出して火をつけて吸い始める。


やっぱりこのわざと勿体ぶって含みのある様な言い方がどうも気になる。
Jもおそらく何か腹に一物あるのかもしれないと思ってしまう。

おそらく私の方が何か確信的なことを言うのを待っているのだろう。

あまり自分から情報を出すのも良くないとは思うが、このまま防戦一方だと何も話が進まなそうなので仕方なく自分から口を開くことにしてみる。

「そうですね。この写真に写ってるこの特徴的な髭の男は私も見覚えがあるので。詐欺にあった十数年ほど前、うちの屋敷に来ましたから。おそらく詐欺の実行犯で間違いないでしょうね。」

私がため息混じりに答えると、隣に座っていたスティーバがぴくりと肩を揺らしたのが視界の端に映った。

「おぉ、そうか。なら話が早いなぁ?じゃぁもちろん今回もこれを買い取るだろ?」

Jが依然として楽しそうにニタニタと笑いながらコチラを見てくる。

いつも彼はこうやってふざけた態度をとるので相変わらず腹の中が読みにくい。
私はどうするべきか考えながら言葉を選ぶ。

「まぁ…それしか選択肢がないことはもうあなたにバレてるので隠しはしませんが…ただ」

「ただ?」

私が言い淀むとJは促す様に言葉を重ねてきた。
よっぽど私の考えを私の口から引き出したいのだろうか。

「これをここに持ってきた目的と経緯を聞かせてもらってもいいですか?」

しかし私も直ぐにこちらの考えを全て見せるのはやはり得策では無いと思い情報を探ることにする。

それになにより隣にはスティーバもいる。

彼を巻き込まないためにもなるべく深い話になるのは避けたかった。

「まあそうだな、まず最初に言っとかなきゃなんねーのは、『この情報』は今お嬢サマの他にあと2つの取引先と交渉中だ。というか、厳密にいえば買い取りたいと申し出てきたやつは山ほどいるが、金の余力的に実質お嬢さまと競合相手になるのはその二つだけだろうってことだ。」

ガタンという音が部屋に響いた。

私はJの口から出たあまりにも衝撃的な情報に思わず勢いよく椅子から立ち上がってしまった。

は?
今何つったこの人?!
いやいやいやちょっと待って?!
どういうことだ?!

そもそも。

大前提として。

Jは『この詐欺に関する情報』は『私としか取引しない』という契約を結んでいる。

そのためにコチラも彼にかなりの大金をつぎ込んだし、こっちが知っているゲームの知識を含む重要な情報も彼にわたした。

それなのに。

『『この情報』は今お嬢サマの他にあと2つの取引先と交渉中』だと…?!

この重要な局面に来て急な裏切り行為だよねこれ?!

ということはもしかしてJは私が先ほどから危惧している『最悪の想定』の関係者だろうか??

いやいやいや、ないでしょそれは。
流石に笑えない。

いや、まあ、この目の前の素性のわからん『J』とかいうやつをはなから信用するなんて博打みたいなもんなので、泥舟かもしれないことがわかっていて乗ったのも自分だ。

だから彼を責めたところで仕方のない話だし、もし裏切られたとて彼を信用した自業自得なのだ。

でもこちらとしても長い時間をかけて彼とは地道に信頼関係を築いてきたと思っている。
彼に身の危険が迫った時にも金や情報を渡して彼を助けたせいでコチラも多大なるリスクも負っているのだ。

それなのに『土壇場にてJの裏切りにより情報が漏れて結局ゲームのシナリオ通り第二王子派閥の重要な3本柱のうちの2本が断罪により消えました』なんていうような、チープな結末で十数年の努力が水泡に帰すのはマジで勘弁してくれと思う。


あぁ、でも。
結局これも彼を丸っと信じて貢いでしまった自分の詰めの甘さだろうな。

エルがあのチェスの時に行った『結局お前は詰めが甘い』と言う言葉が頭によぎる。

特に頭が良いわけでもない凡人の私はこういう画策は本当に向いていないと改めて思い知らされる。



私がやり場のない感情をどこにぶつければいいかわからずにぐるぐると自責の念を抱えながら渋い顔でJを見つめると、Jは「あっはっは!」と楽しそうに声を上げて笑った。


いやいやいや、『あっはっは!』じゃないでしょう!!
笑い事じゃないってば…!
こっちは命かけてやってるんだけど?!
文字通り、『私の命が助かる未来のため』に必死にな!!


どうすんのコレマジで…泣いてもいい?



「おいおい、お嬢サマのお綺麗な顔がどんなふうに怒りで歪むのか期待してたのに何だよその顔は?どう言う心境だ?そんな綺麗な顔ですがる様な目で見つめられたら興奮しちまうだろ?」

「J。悪ノリが過ぎる。」

Jがケラケラと笑いながら私を煽るのをスティーバが横から鋭い声色でJを叱りつけたので私は驚いてスティーバの方に振り返る。


ん…?
悪ノリ…?

どう言うこと?

それに何でスティーバがこんな状況でもあたかも『全て知っています』みたいに落ち着き払っているんだ?

もしかしてこれはドッキリかなんかなのだろうか。

いやもしドッキリだったらわけわからん過ぎるし悪質過ぎる…

「まぁ坊ちゃんそう怒るなって。冗談はさておき勘違いするなよ?もちろんこんな競売させるような趣味の悪い状態にしたのは俺じゃないぜ?俺はこの件に関してはお嬢サマの専属契約だからなぁ?」

そう言いながらニヤニヤと笑うJと、そのJを呆れた顔で見つめるスティーバの顔を私は交互に観察しながら頭をフル回転させる。

え、だからどう言うこと?

Jは裏切っていないけど、『競売させるような趣味の悪い状態』にはなっているってこと?

いや、どのみちそれじゃあだめじゃない?!

せっかく一つも情報を漏らさない様にやってきた意味が全然なくない?!

いや待て待て落ち着け?


隣のスティーバもこんな状況でも落ち着いてるのだ。
とりあえずここで取り乱したとて何も得られないだろうと思い私は自分に『一旦冷静になろうか。』と言い聞かせながらゆっくりと椅子に腰を下ろした。

今はとりあえずなによりも現状を正しく詳しく把握するべきだ。

「えっと…他とも交渉中ということは…この証拠の内容の情報がすでに出回ってしまってるってことですか?」

私が質問をするとJは相変わらずまるでこの状況を楽しむ様にニタニタと笑いながらタバコを美味しそうにふかした。

「いいや?俺の知っている限りではこの件に関しては『アルゼンハイト家を没落させる可能性のある重要機密の情報がある』としか公には情報は出てない。それもこれも今までお嬢サマが躍起になって他の証拠を消しまわったお陰もあるんだろうがな。」

「そう…ですか…」

Jの返答に私はひとまずホッと肩を撫で下ろす。

とりあえずJが言うことが本当だとしたら、まだ『この詐欺の事件とアルゼンハイト公爵家の関与が世間にバレる』と言う最悪の事態にはなっていないと言うことだ。

まぁ、だとしても変な匂わせが広まってしまってる時点で非常に危険な状態であるには変わりはないし、まだJが裏切っていないかどうかも確証はない。

「まあ、俺を信じるか信じないかはお嬢サマにおまかせするが。俺はお客様の信用第一でやってるからなぁ?」

私の様子を見て私がJを疑っていることを悟ったのか、Jがタバコを灰皿に擦り付けながらそう付け加えた。

灰皿はJの吸い殻で山ができつつあった。

どうでも良いけどこの人さっきからタバコ吸いすぎじゃないか?

もしかして何か隠し事か不安でもあるからこんなにもタバコが進んでいるのだろうか?

そう思うとコチラも不安になってはくるが、しかしながら今更信じるか信じないかと言われても、私は結局もう彼に頼る以外の選択肢はない。

これが泥舟だろうが折り紙の船だろうがトイレットペーパー船だろうが私に残された選択肢は『乗る』しかないのだ。

それをわかった上でこう言う煽る様な態度をとっているのだから、本当にJはいい性格をしている。

確実にコイツはドSだ。


「彼の言ってることは信頼できる可能性が高い。」

私が黙りこくって考えていると横からスティーバが入ってきた。

驚いて彼の方を見ると、スティーバは何を考えているかわからない無の表情で私を見つめ返した。

JもJだが、スティーバもスティーバでこう言う人らと情報を売り買いしながらここまで大きくなってきた商人だ。

そんな彼がそう確信を持って言うのだからきっとそうなのだろう。



「わかりました。」

私が腹を括ってため息混じりにそう呟くとJが楽しそうにクックと喉を鳴らして笑った。

「では、もしそうだとしたら、この写真はなおさらどこでどうやって手に入れたのですか?」

こんな破壊力が高そうなものがここにあると言うのに、この写真の情報が全く出回っていないと言うのはどうしても嫌な予感しかしない。
Jの手に渡までにもし誰かの目に触れていたならば、『アルゼンハイト家を没落させる可能性のある重要機密の情報がある』と言う曖昧な噂だけにとどまらないでもっと危険な憶測が飛び交っているはずじゃないかと思う。

公爵家の足を引っ張りたい奴なんて山ほどいるのだから。

私が手元の写真をJに突き出すと、Jはそれをちらっと見て笑みを浮かべて口を開いた。

「そりゃもちろんこの写真に写ってる詐欺の実行犯グループのリーダーの男からの正式依頼で直接渡されたんだ。『この写真を然るべきところに然るべき値段で売って来い』となぁ?ご丁寧にこの証明書も彼らが用意したものだし、本物だ。」

Jの返答に私はガックリと肩を落とした。

やはり予想通りの返答だ。

コレをこの写真に写っている男が自らJに託したと言うならば、ますます私がさっき気づいてしまった『最悪な想定』が妄想ではなく現実なのかもしれないと言う気になってきた。

そんな私の様子を楽しそうに見つめていたJがまた口を開く。

「ちなみにさっき言ったその『匂わせ情報』を辺りにばら撒いて『情報を買いたい奴が俺の元に交渉に来る様に仕組んだ』のもこの写真の男のグループだぜ?」


「まぁ、今の話の流れ的にはそれしかないですよね…
私としてはまだあなたが彼らから盗んできたとかの理由の方がよかったですが…」

私が渋い顔をしながらそうぼやくと、Jは「ほぉ?」といって片眉を上げニヤリと笑うとまた新しいタバコに火をつけた。

この反応を見るに、おそらくJも私が考えていることと近しいことを考えているのかもしれない。
確実に全てを分かった上でコチラを泳がせてるような反応だ。

本当に趣味が悪い。

だとしたらやっぱり絶望的状況には変わりないじゃないかと私のテンションはさらに下がった。



そんな私とJの様子をスティーバが不思議そうに見つめているのが視線の端に映り、あまり彼の前で不審な態度をとって何か勘付かれるのも良く無いなと思い気持ちを改める。

「じゃあ、ちなみに、彼らがこの写真を売りたい理由はなんですか?」

私がまた質問すると、Jはすんなりと口を開いた。

「『この男いわく』、アルゼンハイト家が自分達を切り捨てる動きを見せたそうだ。まぁ、罪を全部コイツらになすりつけてトカゲの尻尾切りでもするってところか?だから契約違反によるアルゼンハイト公爵家の断罪と自分達の国外逃亡を図る資金調達をしたいとのことだ。」

Jがあえて『この男いわく』と言うことを強調したのを聞いて、もはやこれは聞けば聞くほど私の妄想が真実であることの答え合わせ作業でしか無い空気感になってきて、私はさらに渋い顔になった。


この男が言うには、と言うことは。

本当に公爵が契約違反をしたかどうかはどうでもいいと言うことだろう。

それはつまりこの男の匙加減で事実関係なくアルゼンハイト公爵家を断罪したい時に断罪する可能性があると言うことだろう。


「まぁ…表向きにはそれが1番妥当な理由でしょうねぇ…」

「まあそうだろうなぁ?表向きにはねぇ?」

私の呟く様な独り言にJは楽しそうに返してきたので、もうJも私が考えていることに確実に気づいたのだろう。

「あちらさんとの契約上開示できる情報はここまでだ。これ以上は客との信頼問題に関わるので話せねぇ。まあ俺もそれ以上は詳しくは知らされていないって言った方が正しいがなぁ?」

Jの言葉に私は大きくため息をついて頭を抱えた。
スティーバが横にいる手前、平静を装いたい気持ちもあるのだが、目の前に突き出された事実があまりにもカロリーダイナマイトすぎて、ダメージが半端なかった。

なぜならさっきまであんなに喜んだあともう少しのところに見えていたゴールが急に消え去ってしまうかもしれないのだ。

私の10年の努力の結晶がすべて。


水の泡…



「ちょっとまってくれ。」

横から聞こえたスティーバの声に私はゆっくりと顔を上げそちらを見た。

「リグはさっきからなんでそんな絶望した顔をしているんだ?まだ詐欺事件自体が周りにバレたわけでもないし、この写真の存在も誰にもバレてないわけだろ?」

私は、心配そうにこちらを見つめるスティーバをみつめてどうするべきかと考える。

この私のもうほぼ90%くらい真実味を帯びた妄想を口に出してちゃんと事実であるかどうかJに確認を取るべきだろうか。
でもやはりもしこれが事実だとしたら今までよりもさらにめんどくさくて危険が孕んでいそうなのでスティーバにあまり聞いてほしくもない。

やはり口に出さないほうがいいだろうと思い私は口を噤んだ。

「まさかこの写真が偽装写真とでも思っているのか?言っておくがこの証明書は本物だぞ?俺が仕事でよくお世話になっている鑑定士のサインで間違いない。心配なら筆跡鑑定士も紹介するが?」

偽装…

その言葉を聞いて私はさらに渋い顔になる。

「いや、まぁ、、偽装…といえばまぁ…そう…なりますかね…?」

私があえて含みのある様にいいながら、Jに視線を送った。

もしこの言葉でJが何か肯定的な反応をしたとしたら。

Jの口からはっきりと真偽を聞かずともJは私と同じことを考えているということを意味するだろう。

そしてJも私と同じことを考えているのだとしたら。

私の妄想は99%くらい現実的な話なんだろうなと頭が重くなる。



私が最後のほぼ0%に近い希望も込めてJを見つめていると。


Jが歯を剥き出して楽しそうにニヤリと笑った。



あぁ。

やはりそうなのか。

どうすんのこれ。

私の手に負える範疇を越えすぎている。




なぜならこの詐欺事件は『アルゼンハイト公爵家とエリュシオン公爵家が手を組み自ら画策した』とずっと思い込んでいたけど。

真実はおそらく…

『アルゼンハイト公爵家とエリュシオン公爵家を嵌めるためにさらに誰かが裏で手引きし詐欺事件を起こさせる様に偽装工作した事件』だったのだ。


即ちここへ来て『詐欺の被害に遭ったうちを含む公爵家3家をこうも容易く嵌めることのできるヤバめの黒幕の存在』が浮上したのだ。


いや、マジでどうしたらいいの私…



とりあえず私は深いため息をついて頭を抱えた。
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