転生転移転禍為福〜こんなクソゲー作るんじゃなかった⁈〜

やた

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♯33 絶望的な後遺症

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ルディをソファに座らせた私は、ルディに気づかれないように部屋に無詠唱で防音の魔法をかけようとする。

しかしまた魔法がうまく発動できなかったので、仕方なく意識を集中させて「防音壁」と詠唱して部屋に防音の魔法をかけた。

そしてルディに向かい合うように反対側のソファーに腰をかけた。

「ごめんなさい姉さん…今朝のこと思い出したらついカッとなっちゃって…」

ルディは見るからにしょんぼりした様子で呟いた。


「気持ちはわからなくはないけど…そもそもね?もう夜だし、ミーチェもねてるんだからね…?あまり大きい声は…ね…?」

「はい…」

私がなるべく優しく諭すとルディは素直に返事を返した。

さっきあれだけ興奮していたのに随分物分かりがいいなとは思ったが、しばらく様子を伺っていると、沈黙して俯いていたルディが意を決したように顔を上げてこちらを見つめた。

「でも…!やっぱり姉さんも不用心だよ…?なんであんなやつにまた体を許したの…?それだけは納得できない!!姉さんはあのゴミ野郎とは婚約破棄したいんだよね??なのにお父様もいるこの屋敷でも…す…るなんて…!!どうかしてるよ!!もしお父様にバレたら何もかもおしまいだよ?!絶対無理やり結婚させられちゃうじゃん!!」

「ちょっとまって、ルディおちついて。」

ルディがどんどんとヒートアップしていくのでとりあえず途中で口を挟んで制止を試みるが、ルディは納得できない様子でこちらを睨みつけた。

「落ち着いてってなに??僕の言ってること間違ってる?僕は間違ってないと思うんだけど?」


こっちはまだ『ナニ』も自分の口から昨晩あった事に関して核心をついたことを言っていない。
にも関わらずルディの中ではもう今回も『シたこと』が確定事項なんだなと思い、今更言い訳を並べたところで無意味だなとため息をついた。

「はぁ…それは…間違ってない。」

「じゃあ!!」

私が肯定した事によりルディがさらに食い気味に攻めてくる。

でもここで誤魔化したりしても仕方がない。

ちゃんとハッキリと言っておかなければ。


私は強い意志を持って真っ直ぐルディの目を見つめて口を開いた。

「でも、じゃあ。私とエルが『ナニをしてようが』、『結婚する事になろうが』、ルディに関係ないでしょ?」

「え…?ねえ…さん…?」

私の言葉が予想外だったのか、ルディはショックを受けたように目を見開いて固まった。

ルディはまだ私に『そういう好意』を抱いている。
でもそれ以外にも、純粋に『家族として心配してくれている』のもあるだろうとは思う。

だからそんな気持ちを踏み躙るような酷な言い方をするのは私としても良心がジクジクと痛む。

けど私は別にこの先ルディの気持ちに応える気もない。

というか、答えられない。

それなのに中途半端なことを言ってルディに変な期待を持たせるよりかは、こうやってハッキリと突き放していった方がよっぽどいいに決まっている。

それに、先ほどからだんだん身体のだるさが重くなってきてる気がする。

ルディを招き入れた時は少しは話ができると思ったが見積もりが甘かった。

今すぐにでも早く話を終わらせて寝てしまいたい。

明日が1番大事な日なのにここで体調を崩したなんてシャレにならない。


「私が言ってること、何か間違ってる?」


私は早く話を終わらせるためにダメ押しと言わんばかりに先ほどのルディと全く同じ質問をしてやった。

するとルディは酷く傷ついたような顔をしてゆっくりと俯いた。

「それは…間違ってない…です…」

「じゃあこの話はおしまいにしよ。それに今朝のことは何とも思ってないから大丈夫。申し訳ないけど私ちょっと疲れてるからもう寝るね。」

私は急いで立ち上がりルディを早急に追い返すためにドアを開けようと入り口に向かって歩き出す。



すると突然ルディに後ろから抱きしめられた。



その拍子にふわっとお風呂上がりの石鹸のいい香りと共に、ルディ自身の香りにつつまれる。



その瞬間。



急に心臓がドクンと跳ねた。



え…?


何今の…?



私はわけがわからず慌てて自分の胸に手を当てた。



「ごめんなさい。また僕カッとなっちゃって…でもちがくて…姉さんと喧嘩したくてここにきたわけじゃない…から…姉さんが心配だったから…それだけはわかって欲しい…」


ルディがそう呟いて抱きしめる腕に力を込めた。

それだけでも身体がカッと熱くなるのに、ルディの吐息が首筋にかかり思わず体がビクッと震えてしまう。



これはまずい。

身体が明らかにおかしい。

だるいとか疲れているとかそういう話じゃない。


これは…たぶん…あの時と同じ…



心当たりはすぐに思い浮かんだ。



でも今回はそれはあり得ないとすぐに頭の中で否定する。

なぜならルディがこの部屋に入ってきてから『一切何も口にしていなかったから』だ。

それにもう『あの薬』は私が回収して持っている。

そんなはずはないとルディを疑いそうになった思考を打ち消す。


「あ…あぁ、うん、わかってるよ…私も…心配してくれてるルディの気持ちはわかってるから。それはありがとう。でも私にも考えてることがあるら。これ以上は…ね?」

今の身体の状態をルディに絶対に悟られてはいけないと平静を装いながらゆっくりとルディの腕を振り解いた。

するとルディも抵抗することなくすぐ腕を解いたので、ホッとして急いでそのままドアのところまで行ってドアノブに手をかけた。


「あ、そういえば…」


すると今度は突然何か思い出したかのような声をルディが上げたので、何事かと思って振り返ると、ルディはいつのまにかドアとは真反対の方向の窓の近くで空を見上げていた。

早く出ていって欲しいのに今度は一体何なのだろうか…?

身体がおかしいせいでソワソワして、もしかして私の体がおかしいことに気付いてわざとやってるのか?とさえ思ってしまう。

いや、でもあまりすぐにそうやって決めつけるのは良くないと思考をフラットにする。

「今度は何…?もう今日は寝よ?本当、申し訳ないけど私ちょっと今日だいぶ疲れてるみたいで。明日また改めて話聞くからさ。ほら、早くもう部屋に帰って?」

なるべく焦っていることをルディに気取られないように落ち着けと自分に言い聞かせながら言葉を必死に絞り出す。

「あ…ごめんなさい。ただ、今日は新月だから外が暗いなと思って。」

そう言ってルディがこちらに振り返りニコッと笑った。

「え…?あ、あぁ…そういえばそうだったっけ…?だから今日は外が暗く感じたのか…」

一瞬、そんなことをいうためにわざわざ窓際まで言ったのか?!と少しモヤッとしてしまったが、ルディのその言葉で先ほどの帰り道、やけに暗いなと感じたのを思い出して、そういえばと思い思わずボソッと呟いた。


「姉さんも強いとはいえ女の子なんだから。あんまり新月の夜は遅くまで出歩くのは良くないと思う」

ルディがそう言ってこちらを真っ直ぐに見つめながら近づいてくる。

そのルディの何を考えているかわからないようなミステリアス視線に思わず釘付けになってしまいまたドクンと心臓が跳ねたので、慌てて目を逸らした。

「し…心配してくれてありがと。でもここは王都だし街灯も多いから。だいじょぶだよ。」

しかしルディは私の目の前まで辿り着き立ち止まると、わざわざ私の顔を覗き込んでまた目を合わせてきた。



「でも昔から災いが起こるのは新月の夜って言うでしょ?」



その真っ直ぐと私を捉えるルディの強い瞳に、心臓が大きくドクンと跳ねた。


まずい、これはまずい。



「そ…れは、そうだね」


心拍数が上がったせいで思わず声が上擦りそうになったのを慌てて落ち着かせる。


こんな態度、不自然すぎて頭のいいルディには何かバレてるかもしれない。

でも先日あんなことがあったばかりだ。

あまり隙を見せるのは非常によろしくない。

それなのに。

脈拍が上がる一方で全然落ち着かない。


ルディはそんな私の動揺を気付いているのかいないのか、優しくニコッと微笑むと私が手をかけてるドアノブに手を重ねてきた。

「ひっ」

その瞬間、心臓がまたドクンと跳ねたので、思わず重ねられたルディの手を振り解くように自分の手を引っ込めてしまった。


まずい、まずいまずい。

今のはあからさますぎた。


ルディに身体に異変が起こっていることがバレてしまっただろうかと恐る恐るルディの顔を見上げると、ルディは一瞬驚いて目を見開いたが、すぐにしょんぼりとした表情になって苦笑いした。

「そんな警戒しなくても僕からは姉さんにもう何もしないから安心して?」

「えっ?!あ、うん、、わかってる、、ごめんなんか…」

そのあまりにも悲しげなルディの顔に、バレてなかったことに安堵したと同時に、露骨に避けすぎたなと思って思わず謝ってしまった。

「んーん、姉さんが警戒するのは僕のせいだから、自業自得だよ。謝らないで?じゃあ、僕そろそろ部屋に帰るね?遅くまでごめんなさい。明日は朝早いもんね。」

ルディのその言葉に若干複雑な気持ちになりながらも、やっと部屋から出ていってくれることにホッとしてルディから目を逸らしながら「うん、おやすみ。」と返した。

ルディも「おやすみ」と言い残すとすぐにドアを開け出ていった。

私はひとまず安心して肩を撫で下ろして、急いでドアの鍵を閉めて崩れるようにベットへとダイブした。

そして魔力を使い続けるのもしんどいので部屋の防音魔法を解除する。



ベッドに仰向けに大の字になりながらこのモヤモヤした気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸する。


何だってこんな急にこんなことになったのだろうか。

心当たりを必死に探るも、さっきも考えた通り、ルディからなにも食べ物をもらったりしてないし、そもそもルディがこの部屋に来てから何も口にしていない。

だからルディに薬を盛られたわけでは無い。

…と思う。

だとしたらあとは考えられるのは。


昨日仮説を立てた『後遺症』の可能性だ。


「最悪だ…」


あまりの絶望的状況に思わず言葉が口をついて出てしまった。




◇◇◇



姉さんの部屋から出た僕は、扉を閉めてすぐに思わず口がにやけそうになって慌てて口元を押さえた。

そして姉さんの隣の部屋である自分の部屋に足早に戻り、ドアの鍵を閉めるとベッドに寝転びいつもの姉さんのクッションに顔を埋めた。


ちゃんと薬が効いたかどうか確かめるために姉さんの部屋に行ってみたけど。

たったあれだけしか入れてないのに、想像以上の効き具合で何度もにやけそうになるのを必死に堪えた。



甘い。

甘すぎるよ姉さん。



頭いいくせにすぐに情に流される。

『あんなこと』を姉さんにしたのに、まだ姉さんは僕を『まともな人間』として扱ってくれようとしている。

僕を信じすぎている。

姉さんの場合はもっと『世の中には悪しか存在しない』ぐらいに考えて生きた方がいいと本気で思う。


でも、そんなところが愚かで愛おしい。


姉さん自身は必死に僕を突き放すような態度をとって見せているつもりだろうけど。

あんなのじゃぬるすぎる。

まあ、流石に姉さんが『アイツと結婚する』みたいなこと口走った時は本気でムカついて思わず頭の中であのゴミクズのことを滅多刺しにしちゃったけど。

僕が『傷つきました』みたいな顔をしてやればすぐに姉さんは罪悪感が顔に滲み出る。

姉さんが申し訳ないと思う必要なんて何一つないのに。


姉さんは本当に。

真面目で。

純粋で。

愚かで。


なんて可愛いいのだろう。


姉さんへの愛しさが込み上げてきて思わず目の前のクッションを抱きしめる腕に力を込める。



でもまあ、だからあのクソ婚約者にだってずっとつけいられるのだろうけど。

きっと姉さんは何か『アイツの手出しを断れない理由』があるんだろうとは思う。

あのゴミのやることだ。
きっと汚い手でも使ったのだろう。

そんなのは僕だってわかっている。

だから僕が姉さんに八つ当たりするのはお門違いだ。

わかってはいるけど。

アイツと姉さんが『そういうことをしている』と想像すると胸の辺りがドス黒いもので埋め尽くされてギリギリと痛む感覚がして耐えられない。

「はやくあいつシんでくんないかなぁ」

あまりにも願望が強すぎてつい口をついて出た。


というか、早くコロしてやりたい。

僕の手で。


でもそんなことしたら姉さんの近くにいられなくなる。

それだと意味がない。

なぜならアイツを殺したところで、まだ姉さんを狙ってる害虫は腐るほどいるのだから。

本当にムカつく。
ただ、『血が繋がってない』というだけでアイツらは当然の権利があるような顔をして姉さんに近づいてくる。

お前ら程度のクソ虫どもにはそもそもそんな資格無いっていうのに。

姉さんには釣り合わない。

勘違いも甚だしい。


でもアイツらはバカだから気づかない。


本当、バカすぎてムカつく。




まあ、でも。



今日はこのあと姉さんといっぱい楽しめそうだし。

そんなクソくだらないことを考えるのはやめよう。



さっき、姉さん、辛そうだったな。

魔法もなんかうまく発動できてなさそうだったし。

ちょっと調子に乗って露骨に煽りすぎたからバレちゃうかな?とは思ったけど。

でも全然僕がやったって疑ってなかった。


「ふふ、あはは。本当にかわいそう。」

あまりに哀れすぎて思わず声を出して笑ってしまった。

かわいそうな姉さん。

僕が後でちゃんと責任持って助けてあげるからね?



まっててね?




ねえさん?

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