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♯51 青年実業家の憂鬱
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俺は馬車へと消えていく2人をただただ無言で見送るしかできなかった。
俺にはあの2人の間に割って入る権利などありもしないのだ。
彼のリグへの執着は度が過ぎている。
リグが学園で友人ができないのも見た目のせいは無いとは言わないが、彼女の持ち前の明るさと差別のない社交性があれば人に囲まれていてもおかしくない。
平民が多いこの学校なら尚の事だ。
貴族は派閥や対面的なものがあるから難しい人も多いとは思うが、平民はそこまでリグの見た目を気にしていない。
良くも悪くも平民は立場や思想などにしがらみが少ない分、噂や世相に簡単に流されるからだ。
まぁそれもリグがコツコツ社会貢献に力を入れてきた結果なのだが。
だからリグが普段学園で孤立ぎみなのは9割は彼のせいと言っても過言ではない。
彼はリグと話してる人が居ようものなら眼力で射殺せるんじゃないかというほどの威圧をかける。
リグに言わせればアレでも本人は自制しているらしいが。
あんなの貴族社会で生きてく上ではもっと感情を上手く隠せるようにならなきゃどう考えてもダメだろう。
まあ、彼の父親みたいに身分に胡座をかいて好き勝手できてしまってる前例があるのが問題だが、それももう時代は変わってきているのだ。
これからの社会では貴族も変わらなくては生きていけないと俺は考えている。
それなのに。
リグは優しすぎる。
というか、彼に関してやけに甘い。
あんなの彼のためにもリグのためにもなりはしないのに。
そういうところが垣間見える度に俺は『婚約破棄するつもりならそんな態度を取るべきじゃないだろ?』とリグに言ってしまいたくなる。
さっきの、リグがアイツの発言に感心していた時もそうだ。
あんなの当然すぎるくらいのはなしなのに。
『庶民は黙ってろ』なんて、確かに彼なら言いかねないが、そんな愚かなことを口にするなんて俺からしたらあり得ない。
なんなら常識すぎてそんなことを言うなんて頭によぎりもしなかった。
それなのに、『言わなかった』というだけであんなにリグは感心して嬉しそうな顔をしていた。
そんな馬鹿げたことがあるだろうか?
そんなのよくある『不良が少し良いことをしただけで、好感度が簡単に上昇するアレ』と一緒だ。
そんなのずるすぎるだろ。
真面目に生きてきたこっちがアホらしくなる。
いや…
よくない…
やめよう。
わかってる。
こんな幼稚で低レベルな醜い嫉妬をしている俺が1番情けないことを。
現状、俺とリグが結ばれるなんて、天地がひっくり返ってもむりだ。
俺はちゃんと俺の立場を弁えているつもりだし、リグの幸せも願っている。
だから、自分がリグとどうこうなりたいとか、そういうわけじゃない。
わけじゃないけれど。
別にリグが誰かのものになるまでは、この気持ちを心の中にひっそり抱いていているくらいは許されるだろと自分に言い訳をする。
まあでも、個人的な感情を抜きにしても彼はやめたほうがいい。
あの家のやり方はもう時代に合わなくなってきている。
リグはあの家を潰さないように色々奔走してはいるけど。
今回の件を揉み消したところで、今のままならいずれあの家は潰れるだろう。
だからそう言う意味でも婚約破棄というリグの判断は正解だと思う。
昨日カフェで打ち合わせをした時。
少しリグを騙すような形にはなってしまったが、リグに全面的に協力させて貰えるような形に持ち込めた。
人を巻き込んだり頼ることを極端に渋るリグを丸め込むにはなかなか骨が折れたけど。
俺だって今までリグにビジネスとしても友人としてもたくさん助けられてきたんだから、これくらいのお礼はさせてほしい。
最終的にどういう方向で『Jと契約したあの事』に関して作戦を決行するかはリグが考えたいということに合意はしたけど。
リグが予定通り『婚約破棄』出来るまで、俺は自分の持ち得る全てを使ってサポートするつもりだ。
そしてもし婚約破棄できて全ての問題が片付いたとしたら。
リグに今温めている新しい事業の提案をしよう。
彼女の生涯のパートナーにはなれなくても、ビジネスパートナーとして彼女の隣に立たせて貰うくらいは許されるだろう。
そのポジションはきっと、今のところ俺だけにしか確立できない唯一無二のポジションだから。
俺はそれだけで十分だ。
それに。
今日初めてリグの妹…『聖女』であり、『ルミナーレ家の次期当主』を見たけど。
予想通りだった。
あの子にはリグのように一人であの家を切り盛りしていくのは難しい。
ビジネスの世界では、他人の意図や動機を理解して必要に応じて対策を講じる能力が重要だ。
あの場で瞬時に全員の性格と周りの目を判断して弟にあの指示を出したリグはやはり流石だと思う。
俺としても今考えればアレが最適解だと思う。
一方あの子は全くあの場に渦巻く人間の悪意に気づけていないようだった。
リグがあの子を社交界に出すのを不安がる理由もよくわかる。
だからきっと、あの子を溺愛しているリグはあの子の将来を考えていくらでも家の地盤を固められるようなことがあれば今からでも準備したいはずだし、今までもおそらくそのために努力してきたのだろうと思う。
だからもちろんそれも計算のうちだ。
リグは必ず俺の提案を受ける。
人を動かすのに1番大切なのは結局『情』なのだ。
俺は四人の乗った馬車を見送ると、午後の陽射しが優しく照らす中、校門を出て事務所へと向かう帰路についた。
俺にはあの2人の間に割って入る権利などありもしないのだ。
彼のリグへの執着は度が過ぎている。
リグが学園で友人ができないのも見た目のせいは無いとは言わないが、彼女の持ち前の明るさと差別のない社交性があれば人に囲まれていてもおかしくない。
平民が多いこの学校なら尚の事だ。
貴族は派閥や対面的なものがあるから難しい人も多いとは思うが、平民はそこまでリグの見た目を気にしていない。
良くも悪くも平民は立場や思想などにしがらみが少ない分、噂や世相に簡単に流されるからだ。
まぁそれもリグがコツコツ社会貢献に力を入れてきた結果なのだが。
だからリグが普段学園で孤立ぎみなのは9割は彼のせいと言っても過言ではない。
彼はリグと話してる人が居ようものなら眼力で射殺せるんじゃないかというほどの威圧をかける。
リグに言わせればアレでも本人は自制しているらしいが。
あんなの貴族社会で生きてく上ではもっと感情を上手く隠せるようにならなきゃどう考えてもダメだろう。
まあ、彼の父親みたいに身分に胡座をかいて好き勝手できてしまってる前例があるのが問題だが、それももう時代は変わってきているのだ。
これからの社会では貴族も変わらなくては生きていけないと俺は考えている。
それなのに。
リグは優しすぎる。
というか、彼に関してやけに甘い。
あんなの彼のためにもリグのためにもなりはしないのに。
そういうところが垣間見える度に俺は『婚約破棄するつもりならそんな態度を取るべきじゃないだろ?』とリグに言ってしまいたくなる。
さっきの、リグがアイツの発言に感心していた時もそうだ。
あんなの当然すぎるくらいのはなしなのに。
『庶民は黙ってろ』なんて、確かに彼なら言いかねないが、そんな愚かなことを口にするなんて俺からしたらあり得ない。
なんなら常識すぎてそんなことを言うなんて頭によぎりもしなかった。
それなのに、『言わなかった』というだけであんなにリグは感心して嬉しそうな顔をしていた。
そんな馬鹿げたことがあるだろうか?
そんなのよくある『不良が少し良いことをしただけで、好感度が簡単に上昇するアレ』と一緒だ。
そんなのずるすぎるだろ。
真面目に生きてきたこっちがアホらしくなる。
いや…
よくない…
やめよう。
わかってる。
こんな幼稚で低レベルな醜い嫉妬をしている俺が1番情けないことを。
現状、俺とリグが結ばれるなんて、天地がひっくり返ってもむりだ。
俺はちゃんと俺の立場を弁えているつもりだし、リグの幸せも願っている。
だから、自分がリグとどうこうなりたいとか、そういうわけじゃない。
わけじゃないけれど。
別にリグが誰かのものになるまでは、この気持ちを心の中にひっそり抱いていているくらいは許されるだろと自分に言い訳をする。
まあでも、個人的な感情を抜きにしても彼はやめたほうがいい。
あの家のやり方はもう時代に合わなくなってきている。
リグはあの家を潰さないように色々奔走してはいるけど。
今回の件を揉み消したところで、今のままならいずれあの家は潰れるだろう。
だからそう言う意味でも婚約破棄というリグの判断は正解だと思う。
昨日カフェで打ち合わせをした時。
少しリグを騙すような形にはなってしまったが、リグに全面的に協力させて貰えるような形に持ち込めた。
人を巻き込んだり頼ることを極端に渋るリグを丸め込むにはなかなか骨が折れたけど。
俺だって今までリグにビジネスとしても友人としてもたくさん助けられてきたんだから、これくらいのお礼はさせてほしい。
最終的にどういう方向で『Jと契約したあの事』に関して作戦を決行するかはリグが考えたいということに合意はしたけど。
リグが予定通り『婚約破棄』出来るまで、俺は自分の持ち得る全てを使ってサポートするつもりだ。
そしてもし婚約破棄できて全ての問題が片付いたとしたら。
リグに今温めている新しい事業の提案をしよう。
彼女の生涯のパートナーにはなれなくても、ビジネスパートナーとして彼女の隣に立たせて貰うくらいは許されるだろう。
そのポジションはきっと、今のところ俺だけにしか確立できない唯一無二のポジションだから。
俺はそれだけで十分だ。
それに。
今日初めてリグの妹…『聖女』であり、『ルミナーレ家の次期当主』を見たけど。
予想通りだった。
あの子にはリグのように一人であの家を切り盛りしていくのは難しい。
ビジネスの世界では、他人の意図や動機を理解して必要に応じて対策を講じる能力が重要だ。
あの場で瞬時に全員の性格と周りの目を判断して弟にあの指示を出したリグはやはり流石だと思う。
俺としても今考えればアレが最適解だと思う。
一方あの子は全くあの場に渦巻く人間の悪意に気づけていないようだった。
リグがあの子を社交界に出すのを不安がる理由もよくわかる。
だからきっと、あの子を溺愛しているリグはあの子の将来を考えていくらでも家の地盤を固められるようなことがあれば今からでも準備したいはずだし、今までもおそらくそのために努力してきたのだろうと思う。
だからもちろんそれも計算のうちだ。
リグは必ず俺の提案を受ける。
人を動かすのに1番大切なのは結局『情』なのだ。
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