転生転移転禍為福〜こんなクソゲー作るんじゃなかった⁈〜

やた

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♯115 たぶん根は優しい人

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【リグ・ルミナーレ視点】

窓から部屋に入りしっかりと施錠し、手に持ってたカップをデスクに置くと、軽く全身に洗浄の魔法をかけてデスクに向かって座る。

そして加護魔法のかけられたデスクの引き出しからいつもの『禁⃝ノート』と日記帳を取り出して広げた。


とりあえずホッとした。

ビタロ・アルベルティーニという人間が想像以上に『いい人』だったことに。

彼はあんな名家にも関わらず、噂では素行もあまりよろしくないし、あんな大胆に刺青だって入れまくってるし、ふざけた言動で何を考えているか分かりにくいから、ガチもんのちょっと頭のネジが飛んでる『常識はずれ』なのかな?とも少し思ってたけど。

今までの言動と、さっき少し話した感じを見るに、どちらかというと『常識破り』なタイプだと思う。


たぶん根は優しい人だ。

理由はわからないけど、常識を理解した上で、わざと周りからの評価を下げるような態度をとっているような感じがした。

そしてよく口先だけの嘘を並べるくせに、嘘もあまり得意じゃなさそうだ。

こちらが良心に訴えるような問い方をすると、すぐに困ったような顔になって本当のことを話しだす。

本人はあれでもうまく誤魔化してるつもりだろうけど、結構顔に出まくっていると思う。


まあ、これくらいの年になれば人生いろいろあるし、ましてや貴族の家なんて、基本的にしがらみだらけで大体拗れてるもので。

今の『外面の彼』を形成する何かがきっとそこにあったのだろうなと思った。


そしてルディが『唯一心を許している』ところを見ても、たぶんそういう彼の『いい所』を理解して気に入っているからなんだろうと思う。


ルディは私に執着をしているけど、私に本性を見せることは無い。

でも、たぶん彼にはそういう私に見せたく無い部分も全部曝け出しているのだろう。

今のルディにとって1番大事なのは、おそらく私よりもビタロ・アルベルティーニの存在なんだろうと思う。


だからこそ。

私は彼を利用させてもらう。


さっき、変に構えられても困るから、彼には「あなたに何も期待してないから安心してと」適当に誤魔化したけど。

もちろんありがたく彼の存在を利用させてもらうつもりだ。


私はこの先、未来がどう転んでも、最終的にこの家を出ていくつもりに変わりはない。

そうなった時に、きっと、傷ついてボロボロになったルディを、彼の性格上、放っておくことはできないだろう。

そして、彼のような存在がいれば、多分ルディは大丈夫だ。


私の経験上、そう思う。


私は本当にずるい人間だ。

ルディをここまで歪めてしまったのも、私のせいな自覚はある。

そんなルディを、何もケアをしてあげられず、最終的には捨てて私の手で傷つけるくせに、できればどうか幸せになってほしいと願ってしまっている。

そしてそれが自分の手で叶えることができないから、ビタロ・アルベルティーニにその役割を全て押し付けようとしている。

こんなの、彼らの意思など全く無視してるし、ただの自己満足だとは分かっている。

分かっているけど。

こんなやり方しか私はできない。


「おこらないんすか…?」


さっきの彼の言葉が脳内で再生されてため息が漏れる。


結局。

捨て身でなりふり構わず良くないやり方で気持ちをぶつけてくるルディよりも、そのルディと一緒になって私で遊ぼうとしてくるビタロ・アルベルティーニよりも、それを全部分かった上で都合よく欲望の吐口にした挙句、最終的には彼の存在を利用して何もかも捨てようとしている自分が1番最低な気がして、彼らを咎める権利すらないように思えた。


確かに彼らのしてることはよくないことだと思う。

彼らの将来を考えれば、叱るなりなんなりして、大人としてしっかりと過ちを正してあげるようなことを言うべきなんだろうと思うけど。

それをお前がいえる立場か?という気持ちになってしまって何も言えなかった。


というか…

そもそもだ。

それもこれも私が目の前の欲望に負けてなかったら、まだマシだったものを…

本当に私は何か呪いでもかけられてるんじゃないか?と現実逃避をしたくなるくらい肉欲に弱い。

「人間として愚かすぎる…」

私はまた深いため息をつくと、日記帳を開き、今日あったことを備忘録として日本語で書き留めた。

カフェオレのせいもあってすっかり目が覚めてしまったし、どうせあと2日休みで夜更かししたとてなんの影響もないので、日記をつけ終えると、そのまま彼らが集めてくれた資料も机に広げ、今後の作戦を練るために『禁⃝ノート』にペンを走らせた。


◇◇◇


【ビタロ・アルベルティーニ視点】


「…おい。…おい、聞いてんのか?」

「いっ?!」

昼休み、いつもの場所で昨日のことをぼんやりと思い出しながら昼食のパンを齧っていると、突然つま先に激痛が走った。

あわてて視線を足に向けると、ルディが俺のつま先を踵でぐりぐりと踏みつけながら俺を睨んでいた。

「んあっ?!なんだよ?!いってーな?!」

俺は慌ててルディの足を払いのけると、ルディを睨みつけた。

するとルディはじとっとした目で俺を一瞥すると、視線を前方に向け、何かに気づいたようにパッと表情を明るくさせた。

「あっ。姉さんだ!」

「えっ?!」

俺が慌ててルディの視線の先を見ると、そこには誰もいなかった。

というかおねーさんは、そもそもまだ謹慎中だから、当然いるわけがない。


ん…?

ということは…?

まさか…?!


俺は嫌な予感がしてごくりと唾を飲み込むと、隣から「チッ」というでかい舌打ちが聞こえた。

恐る恐るゆっくりとルディの方に視線を戻すと、怒りというよりかは呆れたような表情のルディと目があった。

「お前…」

「な…なに?」

「はぁ…わかりやすすぎて怒る気も失せる」

「は?!何が?!」

なんのことを言われているのか、心当たりはありまくるけど、ここで認めるようなことを言えば確実に俺の命はコイツに消されるので、必死に誤魔化す言葉を考える。

そんな俺をルディはじっと見つめて、ため息をついた。

「お前…バカなの?それでバレてないつもりなの?さっきからずっと上の空のくせに、姉さん関連の話にだけはすぐ反応するし。」

あまりの核心に迫られた指摘に、俺はぎくりとした。

慌てて誤魔化すために口を開こうとすると、ルディはそれを制止するように続けた。

「いいよもう。昨日だってどうせ姉さんと二人でなんか話してたんだろ?」

「えっ…バレてたの…?」

「あとタバコの匂いも消し方が甘い」

「あっ…はい…」

想像以上に何もかもばれていて、俺はもう観念して思考を放棄した。

「もっとキレ散らかされるかとおもった…」

俺がぼそりと呟くと、ルディがまたジト目で俺を一瞥してから舌打ちをした。

「まぁ。イラっとはするけど。時間の問題だとは思ってたし。」

「え…?」

予想外のルディの言葉に、俺が目を丸くしてルディを見つめると、ルディはさも当然といったように真顔になった。

「だって、姉さんを好きにならない人なんてこの世界に存在しないでしょ?」

「あははー…なるほど…」

いや、さすがにそんなことはねーよ?

確かにおねーさんは、色んな意味でヤバくて魔性だとは思うけども…

コイツはたまにこういうツッコミどころ満載なことをいたって本気で言ってくるから反応に困る。

俺が苦笑いを浮かべると、ルディは急に嬉しそうに目を細めた。

「それに、天地がひっくり返っても姉さんがお前をそういう対象で見ることはあり得ないから。お前の気持ちなんかどうでもいい。むしろ気持ちがバレて切り捨てられる姿が容易に想像できて笑える」

「それは…その通り過ぎて何も言えねぇ…」

あまりの的を得たルディの指摘に、俺の心臓がグサリとナイフで抉られたような気持ちになった。


本当にその通りだ。

それはもう昨日気持ちを自覚した時点で、俺ですらすぐにそう思い至った。

そしてあれから時間が経つにつれ、その現実にしっかりと凹んでる自分がいて嫌になる。

散々今まで自分が女の子たちの気持ちをめんどくさいと切り捨ててきたツケを、今一気に払わされてる気分だ。


「まぁあり得ないけど、もし何かの間違えで姉さんがお前に興味を持つようなことがあっても、お前を消せばいいだけだし?何の問題もないしね。」

「あはー…」

楽しそうに話すルディに、俺はもう乾いた笑いを漏らすしかできない。

「少しは思いしればいいよ。散々お前がバカにしてたカタオモイってやつがどんだけしんどいか。ザマァ見ろ。僕を笑った天罰を味わえ」

「いや…バカにしてたつもりはねーけど…確かになぁ…」

ルディの言葉が全部正論すぎてグサグサと俺の心に刺さりまくる。

本当に俺は今まで何も分かっちゃいなかったなぁと情けなくなってくる。


「で。昨日は姉さんと何話してたの?」

「え…いや別に…大した話はしてねぇ」

ルディにメンタルを抉られまくったせいで、あんまり昨日のことを思い出したくない気分になってきたので適当に返すと、ルディは少し考え込んでからボソッと呟いた。

「ふぅん?僕が薬を盛ったことがバレたのかと思ったけど…違うのか」

「えっ?!あっ!!そう!そう言えばおねーさん気づいてたわ…!え、何?まさかおまえそこまで分かってやってたの??」

そう言えばそんな重要な話があったと思ったと同時に、ルディがそんな重要なことをサラッと言ってのけるので、一体どういうことなのかと驚いてルディの表情を伺うと、ルディはしばらく渋い顔をして考えてから、口を開いた。

「いや、もしかしたらと思っただけ。簡単にバラすつもりはなかったよもちろん。でも急に姉さんが吹っ切れた理由がいくら考えても全然わからなかったから…残る可能性てして僕が薬を盛ってたことには気づいたけど、どうやったかわからない上に、僕に何言っても無駄だと気づいて諦めたのかなぁと。普通はそんな思考には至らないだろうけど、姉さんならそれもあり得るなと思って。」

「お前ら姉弟ガチでこえぇわ…」

あまりにも、昨日俺がおねーさんの口から聞いた言葉のドンピシャすぎて、思わず苦笑いが漏れた。

おねーさんもおねーさんで、昨日の意味深な感じを見るに、きっと何か策を練ってる感じがしたけど。

ルディもルディで、それを凌駕するくらいに頭が切れる。

この二人を見てると、自分のザコさ加減がよく分かって、ルディが俺をライバル視すらしないことに納得しかなくてまた凹んでくる。


「ふぅん…そっか…なるほどねぇ…?やっぱバレてたか…残念…でもその上でお前がそんな状態になってるってことは…姉さん、大して怒ってなかったってことだよね?」

「それは…そう…大してというか…逆に反省してた…」

どこまでも鋭いルディの考察に、凹みを通り越してだんだん恐ろしくなってくる。

「へぇ…?反省ねぇ…姉さんらしいね。他には?なんか話した?」

「あとは…お前のこと…?」

「僕…?」

「あー…お前に友達がいることに安心してた…かな…?」

俺が昨日の話を思い返しながら淡々と返していると、突然ルディの顔がパァッと明るくなった。

「へぇ?そう?ふーん?そっかぁ。僕ってやっぱり姉さんに愛されてるねぇ?ビタロもそう思うでしょ?」

「うわぁ…うぜぇ…」

思わず顔が引き攣った。

気持ちを自覚する前までは、ルディのこういう惚気みたいな発言も鼻で笑って聞いていたけど。

今は無性に腹が立って仕方がない。

しかも昨日のおねーさんの、ルディを想いながら話すあの横顔をまた思い出して、さらにイラッとしてくる。

「まぁでも、そっか。ちょこちょこ餌は撒いてみてたけど、やっぱり姉さんはそこに食いついたかぁー…本当に姉さんはお人好しがすぎるよねぇ…?それに…お前も結構つかえるじゃん?」

「あ゛?」

『自分が1番おねーさんを分かってます』みたいな発言にもイラつくし、俺が色々だしに使われてるんだろうなということも今まで分かってはいたけど、こうなってくると、それもムカついてくる。

でも結局今の俺がおねーさんと関わるには、コイツの操り人形になるしか無くて、その事実にも腹が立つ。

俺がルディを睨みつけると、ルディは心から楽しそうに微笑んだ。

「次の狙い目はそこだね。これからも仲良くしてね?親友のビタロくん?」

「あ゛ー!!クソ!!お前ガチで腹立つ!!」

俺は舌打ちしながら肩にポンと置かれたルディの手を払いのけた。
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