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第弐章 朱音×沙夜
第肆話(エピローグ) 篠目美雪
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雨、葬儀場には多くの人が集まっていた。
但し、集まっていたのは片方だけ、それだけで普段の彼女がどのような扱いを受けていたのかがよく分かる。
朱音の葬儀には組の関係者各位が、家族が、友人が、多くお集まっていた。
それに引き換え、沙夜の葬儀には友人はおろか、家族さえも居ない。
沙夜は家族にさえ気にかけてもらえず、世間体から葬儀だけを出してもらっていたに過ぎなかった。
その中でただ一人、誰も居ない葬儀の、重い空気の中で木魚を叩きながらお経を唱える僧侶の声に耳を傾ける少女が居た。
彼女は、沙夜が霊柩車に載せられるのを最後まで見送ると、その場を去ろうとした。
「待て」
その短い、しかし有無を言わさない言葉に少女は足を止める。
振り返らず、そして声を掛けた主も近付こうとはしない。
「鬼島組の葬儀に、なぜ別の葬儀が同時に入った?」
「………」
「被害者同士は学校でイジメの関係にあった。それが鬼島朱音の別宅にて、二人共、撲殺体でみつかった」
「………」
「同じ事件は県内で複数あり、共通してあるお呪いを行った直後だった。勿論成功例もある」
「………」
「成功した者達からは一貫して、記憶が無いから証言が取れない。だから、お前から話を聞きたい」
「………」
「唯一、赤い糸が足首で繋がったまま、パートナーを亡くしている、篠目美雪」
お呪いを行った後は必ず二つのパターンに分かれていた。
赤い糸が結ばれたまま、幸せそうに目を覚ますパターン。
赤い糸が千切れたまま、尊い命が失われる犠牲パターン。
篠目美雪はその半分、赤い糸が千切れ相方を失いつつも、目を覚ましたパターンだった。
その時の相方は一つ下の後輩。パートナー役は恐らく篠目美雪だ。
後輩の少女の死因は――不明。
数ある少女達の遺体の中で、篠目美雪と一緒にお呪いを行った少女の死因のみが不明なのだ。
これが、明確な死因があれば彼女を殺人の重要参考人として検挙出来たのだが、彼女にアリバイが無く被害者の隣で生きていたとなっても死因が分からないものを検挙は出来ない。
今のところは病死に対して疑われている可哀想な被害者ということになっているが、無感情のまま同じお呪いの葬儀に現れていれば、彼女の行為は不審に映る。
「・・・・・・前にも言った筈よ。私にも記憶が無いの。此処に居るのは、あの日、私も同じ運命を辿る可能性があったことを戒めとするため」
「それは聞いた。だが、お前だけは他と違う気がする」
「刑事の勘とか言うやつ? でも、私に答えられることは何も無いわ」
そう言って深雪はその場を立ち去った。
恐らく近々、別の葬儀上でも会うだろう、だから今は声を掛けないでおく。
彼は覆面のパトカーに向かいながら、胸ポケットから取り出す写真を見る。
そこには彼と、彼の娘が楽しそうに笑っている写真が写っていた。
「真相を必ず暴いてやる・・・・・・!」
彼は最初からこの事件に対して不審に思い動いていた。
失ってから初めて動き出す、傍観を決めていた同僚上司とは異なり、彼は既に多くの情報を入手していた。
しかしそれは明かされない話。
明かされたところで、彼には結局何も出来ない話なのだから。
但し、集まっていたのは片方だけ、それだけで普段の彼女がどのような扱いを受けていたのかがよく分かる。
朱音の葬儀には組の関係者各位が、家族が、友人が、多くお集まっていた。
それに引き換え、沙夜の葬儀には友人はおろか、家族さえも居ない。
沙夜は家族にさえ気にかけてもらえず、世間体から葬儀だけを出してもらっていたに過ぎなかった。
その中でただ一人、誰も居ない葬儀の、重い空気の中で木魚を叩きながらお経を唱える僧侶の声に耳を傾ける少女が居た。
彼女は、沙夜が霊柩車に載せられるのを最後まで見送ると、その場を去ろうとした。
「待て」
その短い、しかし有無を言わさない言葉に少女は足を止める。
振り返らず、そして声を掛けた主も近付こうとはしない。
「鬼島組の葬儀に、なぜ別の葬儀が同時に入った?」
「………」
「被害者同士は学校でイジメの関係にあった。それが鬼島朱音の別宅にて、二人共、撲殺体でみつかった」
「………」
「同じ事件は県内で複数あり、共通してあるお呪いを行った直後だった。勿論成功例もある」
「………」
「成功した者達からは一貫して、記憶が無いから証言が取れない。だから、お前から話を聞きたい」
「………」
「唯一、赤い糸が足首で繋がったまま、パートナーを亡くしている、篠目美雪」
お呪いを行った後は必ず二つのパターンに分かれていた。
赤い糸が結ばれたまま、幸せそうに目を覚ますパターン。
赤い糸が千切れたまま、尊い命が失われる犠牲パターン。
篠目美雪はその半分、赤い糸が千切れ相方を失いつつも、目を覚ましたパターンだった。
その時の相方は一つ下の後輩。パートナー役は恐らく篠目美雪だ。
後輩の少女の死因は――不明。
数ある少女達の遺体の中で、篠目美雪と一緒にお呪いを行った少女の死因のみが不明なのだ。
これが、明確な死因があれば彼女を殺人の重要参考人として検挙出来たのだが、彼女にアリバイが無く被害者の隣で生きていたとなっても死因が分からないものを検挙は出来ない。
今のところは病死に対して疑われている可哀想な被害者ということになっているが、無感情のまま同じお呪いの葬儀に現れていれば、彼女の行為は不審に映る。
「・・・・・・前にも言った筈よ。私にも記憶が無いの。此処に居るのは、あの日、私も同じ運命を辿る可能性があったことを戒めとするため」
「それは聞いた。だが、お前だけは他と違う気がする」
「刑事の勘とか言うやつ? でも、私に答えられることは何も無いわ」
そう言って深雪はその場を立ち去った。
恐らく近々、別の葬儀上でも会うだろう、だから今は声を掛けないでおく。
彼は覆面のパトカーに向かいながら、胸ポケットから取り出す写真を見る。
そこには彼と、彼の娘が楽しそうに笑っている写真が写っていた。
「真相を必ず暴いてやる・・・・・・!」
彼は最初からこの事件に対して不審に思い動いていた。
失ってから初めて動き出す、傍観を決めていた同僚上司とは異なり、彼は既に多くの情報を入手していた。
しかしそれは明かされない話。
明かされたところで、彼には結局何も出来ない話なのだから。
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