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第参章 深雪×???
第壱話 滅んだ世界、滅ぼすべき世界
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親友が死んだ。今噂のお呪いに失敗して。
彼女の遺体は綺麗なもので、その横に倒れてた遺体も綺麗なものだった。
一人暮らしをしていた彼女の、合鍵も持っていた美雪は、そこで彼女の亡骸を前にして、絶望する。
それから美雪はその日の夜、もう一人の遺体を山に埋め、親友の少女の足に結ばれた赤い糸を解き、新しい赤い糸を結ぶ。
そして美雪は親友の少女の事しか考えなかった。
好きな人も、パートナーも、どちらも親友だった少女だったから。
目を醒ました深雪の目に映るのは、旧校舎・・・・・・の、保健室だった。
「深雪ちゃん、目を醒ました?」
「・・・・・・私どれくらい寝てた?」
「分からない。私が登校してきた時には、もう保健室で眠ってたから」
およそ綺麗とは言いがたい、木造建築の高校。
深雪は死んだ彼女がいつものように笑い掛けてくれるのを見て安堵する。
生きた人間を異世界に連れ込んで殺す、その魂は異世界に囚われたまま。
であれば、その魂を異世界から元の世界に戻すこと(反魂)が可能ではないか。
現実世界で彼女の肉体が綺麗なまま死んでいた理由は、魂がこの世界にとらわれていたから。
足についた腐りは彼女達の心、鎖(心)が解放されるか、壊れるか。
謎の少女・詩織と佳奈、雫と柚希が生きていた理由は、鎖が壊れていなかったから。
朱音と沙夜が撲殺体として殺された理由は、鎖が黒い靄で壊されたから。
では、捉えることも壊れることもこれ以上無い、遺体に心を通わせてたなら?
それは、世界にバグを発生させる要因となる。
赤い糸は彼女達の心を繋ぐ楔、その心が深雪からの一方的なものになっている。
そして想い人も、パートナーも同じ人であれば、世界がお呪いのために動くのは逆ベクトルの感情だけ。
しかし、0の感情に向きも強さも無い。
世界はエラーを引き起こし、原型となる世界を再構築する。
せめて0の感情が1となりさえすれば、絶望の試練を与えられるから。
深雪は保健室のベッドから降りると、鈍い音が聞こえる。
制服姿だが、靴も靴下も履いていない裸足の彼女の足に足枷がついていた。
しかし、その先には何も捕まえていない鎖の先があった。
彼女の鎖(心)は壊れていない代わりに、何も繋ぎ止められていない。
繋ぐべき魂は目の前にあるのだ、その魂にさえ繋いでしまえば、彼女を元の世界に戻せるはずだ。
だが、この世界は平和で、彼女のことを知る人間は自分以外に誰もいない、元の世界に戻る必要がどこにあるのだろうか。
「深雪ちゃん?」
「そう思わせることが、貴女の役割?」
疑いの眼差しを少女に向けると、少女は不適な笑みを浮かべる。
そして、見知った少女の顔が砕け、世界が砕け、あるのは招かれた客が目覚めるボロボロの教室と、見知らぬ少女がただ一人だった。
「ここが地獄なのかしら、詩織?」
「この世界だけじゃなくて、私のことも知ってるのね?」
「えぇ、勿論知ってるわよ。このお呪いが流行ったのは最近だけど、存在したのは40年以上前だもの。今でこそ「呪い師」だけど、その当時は「幸せの赤い糸」という名前のお呪いだった。そして貴女は40年以上前に殺された、この「幸せの赤い糸」と言うお呪いが生まれ変わりかのように、貴女の恨みを代行して」
「・・・・・・」
「この境界線にある崖下の少女達の亡骸の数だけ、貴女の恨みが晴れた数と言うこと。でも、底知れない憎悪の固まりは一端の終止符を迎え撃つも、永遠の終止符にはならない」
文武両道、頭も良く、朱音の様に化け物を向かい打てる女子生徒が二人お呪いをしたとき、人間の力に初めて敗れた。
彼女達はお互いを愛し、お互いの愛を強固にするためにお呪いをし、お呪いという困難を乗り越えるためにゴールの無いはずのこの世界で境界線を突破された。
彼の世と此の世の境が壊れ、彼女達は現実世界へと還って来た。
境界が無くなった二人が目覚めたとき、彼女達には唯一記憶が残っていた。
40年後、その二人はそれぞれ事故と病気で亡くなっているけど、そのお呪いの真相については残されていた。
それは代々自分の娘達に伝えようとしたものだ。
片方が病気で亡くなり、もう一人が普通に結婚した。
そして生まれてきた娘に、この真実が託される。
「それが貴女という訳ね」
「母さんが言っている意味は理解出来なかった、何せ証拠も裏打ちできる根拠も無い、お伽噺に近いものだったから。それに、直ぐに亡くなってるしね。だけど、私は大好きな母が伝えたかったことを反芻して考え、自らの足でこの学校のモデルとなった場所へ行き、歴史を知って辿り着いた」
その際に後輩の少女に出会い、共に調べ、そして彼女が一人でお呪いをして、パートナーと共に命を落とした。
それでも彼女のことが好きだから、彼女のために命を賭けてこの世界にやって来た。
詩織はそんな深雪を見て、考える。
彼女をこの世界から排除しなければ、この世界を再び滅ぼされ、今度は二度と復活出来なくなる、と。
彼女の遺体は綺麗なもので、その横に倒れてた遺体も綺麗なものだった。
一人暮らしをしていた彼女の、合鍵も持っていた美雪は、そこで彼女の亡骸を前にして、絶望する。
それから美雪はその日の夜、もう一人の遺体を山に埋め、親友の少女の足に結ばれた赤い糸を解き、新しい赤い糸を結ぶ。
そして美雪は親友の少女の事しか考えなかった。
好きな人も、パートナーも、どちらも親友だった少女だったから。
目を醒ました深雪の目に映るのは、旧校舎・・・・・・の、保健室だった。
「深雪ちゃん、目を醒ました?」
「・・・・・・私どれくらい寝てた?」
「分からない。私が登校してきた時には、もう保健室で眠ってたから」
およそ綺麗とは言いがたい、木造建築の高校。
深雪は死んだ彼女がいつものように笑い掛けてくれるのを見て安堵する。
生きた人間を異世界に連れ込んで殺す、その魂は異世界に囚われたまま。
であれば、その魂を異世界から元の世界に戻すこと(反魂)が可能ではないか。
現実世界で彼女の肉体が綺麗なまま死んでいた理由は、魂がこの世界にとらわれていたから。
足についた腐りは彼女達の心、鎖(心)が解放されるか、壊れるか。
謎の少女・詩織と佳奈、雫と柚希が生きていた理由は、鎖が壊れていなかったから。
朱音と沙夜が撲殺体として殺された理由は、鎖が黒い靄で壊されたから。
では、捉えることも壊れることもこれ以上無い、遺体に心を通わせてたなら?
それは、世界にバグを発生させる要因となる。
赤い糸は彼女達の心を繋ぐ楔、その心が深雪からの一方的なものになっている。
そして想い人も、パートナーも同じ人であれば、世界がお呪いのために動くのは逆ベクトルの感情だけ。
しかし、0の感情に向きも強さも無い。
世界はエラーを引き起こし、原型となる世界を再構築する。
せめて0の感情が1となりさえすれば、絶望の試練を与えられるから。
深雪は保健室のベッドから降りると、鈍い音が聞こえる。
制服姿だが、靴も靴下も履いていない裸足の彼女の足に足枷がついていた。
しかし、その先には何も捕まえていない鎖の先があった。
彼女の鎖(心)は壊れていない代わりに、何も繋ぎ止められていない。
繋ぐべき魂は目の前にあるのだ、その魂にさえ繋いでしまえば、彼女を元の世界に戻せるはずだ。
だが、この世界は平和で、彼女のことを知る人間は自分以外に誰もいない、元の世界に戻る必要がどこにあるのだろうか。
「深雪ちゃん?」
「そう思わせることが、貴女の役割?」
疑いの眼差しを少女に向けると、少女は不適な笑みを浮かべる。
そして、見知った少女の顔が砕け、世界が砕け、あるのは招かれた客が目覚めるボロボロの教室と、見知らぬ少女がただ一人だった。
「ここが地獄なのかしら、詩織?」
「この世界だけじゃなくて、私のことも知ってるのね?」
「えぇ、勿論知ってるわよ。このお呪いが流行ったのは最近だけど、存在したのは40年以上前だもの。今でこそ「呪い師」だけど、その当時は「幸せの赤い糸」という名前のお呪いだった。そして貴女は40年以上前に殺された、この「幸せの赤い糸」と言うお呪いが生まれ変わりかのように、貴女の恨みを代行して」
「・・・・・・」
「この境界線にある崖下の少女達の亡骸の数だけ、貴女の恨みが晴れた数と言うこと。でも、底知れない憎悪の固まりは一端の終止符を迎え撃つも、永遠の終止符にはならない」
文武両道、頭も良く、朱音の様に化け物を向かい打てる女子生徒が二人お呪いをしたとき、人間の力に初めて敗れた。
彼女達はお互いを愛し、お互いの愛を強固にするためにお呪いをし、お呪いという困難を乗り越えるためにゴールの無いはずのこの世界で境界線を突破された。
彼の世と此の世の境が壊れ、彼女達は現実世界へと還って来た。
境界が無くなった二人が目覚めたとき、彼女達には唯一記憶が残っていた。
40年後、その二人はそれぞれ事故と病気で亡くなっているけど、そのお呪いの真相については残されていた。
それは代々自分の娘達に伝えようとしたものだ。
片方が病気で亡くなり、もう一人が普通に結婚した。
そして生まれてきた娘に、この真実が託される。
「それが貴女という訳ね」
「母さんが言っている意味は理解出来なかった、何せ証拠も裏打ちできる根拠も無い、お伽噺に近いものだったから。それに、直ぐに亡くなってるしね。だけど、私は大好きな母が伝えたかったことを反芻して考え、自らの足でこの学校のモデルとなった場所へ行き、歴史を知って辿り着いた」
その際に後輩の少女に出会い、共に調べ、そして彼女が一人でお呪いをして、パートナーと共に命を落とした。
それでも彼女のことが好きだから、彼女のために命を賭けてこの世界にやって来た。
詩織はそんな深雪を見て、考える。
彼女をこの世界から排除しなければ、この世界を再び滅ぼされ、今度は二度と復活出来なくなる、と。
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