【R18G】呪い師

黄泉坂羅刹

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エピローグ

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多くの幸福と不幸をもたらした「呪い師(旧名:幸せの赤い糸)」の見立て連続殺人事件。

明確な外部からの攻撃による暴力に、非科学的なものを信じない、信じても捜査をしないわけにはいかない警察はお呪いをやらないように学校や町に注意を呼び掛けることが関の山だった。

重要参考人である深瀬深雪は、当然ながら証拠不十分で逮捕を免れている。

ただ、ある日を境にお呪いを行っても何も起こらないという声がネット上に上がってからは一部でしか流行らず、結局時間と共に廃れていくこととなった。

なぜ現代になって深瀬伊織(詩織)のお呪いが再度流行ったのかは分からないままである。

ただこのお呪いのせいで命を落とした少女の数も多いが、お陰で幸せにパートナーと過ごしているカップルも多かった。

ただし、このお呪いは意中の相手と仲良くなるという話だったが、意中の相手と結ばれたという報告は一件も無く、全てそのお呪いを共に行ったパートナーと結ばれている状況だった。

そのため現在では元々意中の相手はパートナーで、両想いになったカップルだけが結ばた。両想いになれなかった二人は無理心中したのではないか。というのが有力になっていた。

お呪いの呪いと言うことにしておけば、無理心中をしても不審点は何も出ないからである。

彼女達に記憶が無いとされていたのは、本当に何も無いからではないか。それをある日男女でやってしまったり、男同士でやってお呪いの真相に触れたから慌てて効力が無くなったことにしたのではないか、と様々な憶測が飛び交っている。

そして深瀬深雪の存在もまた、深瀬伊織を特定したネット民の手によって、お呪いに纏わる特別な存在として祭り上げられていた。



「私のパートナーが、伊織さん・・・・・・」

詩織のパートナーだった佳奈は、立場上は深雪と同じ相方が居ない状態であの世界に入った人間になる。

だが、彼女がお呪いを行ったときにはまだお呪いが何か分かっておらず、流行ってすらいなかったため、影響は大きくなかった。

そのためパートナーだった詩織に対して恋愛感情が出たわけでもなく、噂で実は重要人物だと知っても尚特に彼女に影響したものは無かった。

ただ一点あるとすれば、1年後、彼女は自分が通う高校のオカルト研究会会長を勤めたことくらいだろうか。



雫と柚希は高校でも休日でも、普通の仲睦まじいカップルとなっていた。

理想のカップルということで、女子高では無いにも関わらず女子同士のカップルが多く出来上がっていた。

男子生徒は好きな女子が他の女子に取られたことに対してなんとも複雑な感情ではあったが、男に取られたわけではないのでアプローチを続けたり、逆に幸せならと見守る生徒が増えた。

高校の男女で付き合う割合が極端にこの年こそ減ってはいたが、何もこの年に付き合わなければならないわけではなく、結果彼等彼女等が数年後にでも異性と付き合えば問題は無いため国も重要視はしていなかった。



深雪は深瀬家本家の門をくぐり、深瀬伊織の墓前に手を会わせる。

彼女は高校を卒業後葬祭ディレクターの1級試験を目指すために専門学校に通う予定である。

40年以上前の話であり彼女もまた被害者ではあるのだが、身内が迷惑をかけ、未来ある少女達の人生を奪ったということから死と常に隣り合わせの職に就くことを深雪は墓前で誓っていた。

結局の所、深瀬伊織は深瀬深雪の母である深瀬香織の姉であり、深雪の叔母にあたる人物であることが分かった。

当時姉のイジメを妹である香織は知っていても止めることが出来なかった。

それを家族も同様に見てみぬ振りをしており、当年と40年越しに復讐が果たされたのである。

その事実を娘の深雪の口から聞くまでは香織も、深瀬家自体も、全く関係の無い事件だと思っていた。

その事実を知り、叔母の墓前で誓った言葉に誰も何も言わなかった。

それは深瀬家で負うべき業であるにも関わらず、結局全ての業を深雪に押し付けているのだから。



その数年後、深瀬家で火災が発生し、深瀬深雪含む全員が焼死体として見付かったことに、ネット民は魔女狩りのように全ての罪を押し付けてお祭り状態になっていた。

更にその数年後、再びお呪いが流行ったこと、記憶を無くしはするが、お呪いで飛ばされた学校で、深瀬深雪の手によって再び少女達が選別されたのは言うまでもないことだろう。

この連鎖は、真実を知った者が既にこの世を去った今、断ち切ることは出来ないだろう。



このお呪いの顛末はまた別の話、燃え盛る旧校舎で彼女達は幸せを手に入れることが出来たのだろうか。
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