【R18】復讐者は公園で眠る

黄泉坂羅刹

文字の大きさ
1 / 9

第1話:復讐のはじまり

しおりを挟む
ちゅんちゅん……。
小鳥のさえずりに目を覚ますと、朝日が差し込んでいた。段ボールで雨風を凌ぐだけの簡易的な家を出ると、通行人達が私の姿を見て陰口を言う。
「汚い」「可愛そう」「みすぼらしい」既に聞きなれた言葉の数々で、こんな生活がもう1年にはなるだろうか。
元は一般家庭で暮らしていたけれども、とある貴族の令嬢に嵌められて学園を追いやられ、スラム街では余所者を受け入れられないために、私は近くの公園で過ごすことになった。
盗みや残飯漁りだけで明日も見えない、来年には死んでいるかもしれない日常に、私は自分の人生を呪った。
昨夜は空腹に耐えかねてゴミを漁ったが、その成果は無かった。ゴミはどこかの孤児が拾うか、誰かが拾っていく。
その日は結局惨めで空しい気持ちで寝ていると、私は夢を見た。
何故か夢の中で私は貴族になっており、学園でいじめられることもなく友人にも恵まれていた。
(何で私だけこんなに不幸なの……)
夢の中の自分に嫉妬するほど幸福な光景だった。現実にはありもしない光景で、目が覚めれば現実は依然として苦しい生活。
心が折れそうだ。だけど、今日でそれも終わりだ。私は路地裏から、これから行くべき場所を見た。
スラム街の出口にある門を潜ると、その先には広い石畳の道があり、道の先には、この国唯一の教育機関である学園が建っていた。

――学園の名は、王立クレム学園。貴族のご子息やご令嬢も多く通う超名門の学園だ。

貴族から平民まで、様々な身分の人間が通う王立の学校である。
その学園を入学するには、入学試験を突破する高い教養と才能が必要とされる。
この学園の中に、私を追いやった伯爵令嬢が居る。もう私は死んでも構わない、否、だからこそ、一矢報いたかった。
私は門の前で大きく深呼吸すると、学園の敷地に足を踏み入れた。
(広い……)
広大な敷地に手入れの行き届いた庭、石造りの立派な校舎が目に映る。美しい花々が咲き誇る庭園でお茶を飲む少女やベンチに座って談笑する少年少女達を見れば、貴族出身であろうことは一目瞭然だった。
今の時間帯は人通りも少なく目撃者も居ない。この格好のまま表に立ち続ければ直ぐに通報されるだろう。
私は人目に触れないように草木の合間を縫うと、伯爵令嬢に復讐するために王立クレム学園へと潜入した。

朝の図書館。人気がほぼ全く無い場所に、本が好きそうな大人しい少女が入って来る。
私は彼女の背後からそっと近づくと、声を出させない様に鼻と口を塞ぎつつ、ナイフを首に突き刺した。
苦しそうに呻き、息が苦しくなって必死に暴れる少女を抱きかかえる様に拘束してナイフを更に深く刺せば、やがて彼女は静かに絶命した。
白いセーラー服が赤く染まる。図書館の静寂に、少女のうめき声と血飛沫が飛び散って広がっていった。
彼女の体を床に寝かせると、私は首に刺さっていたナイフを抜いた。これだけ出血すれば、どんな人間も死んでいるだろう。
(よし……やったわ)
ナイフを引き抜くと、少女はバタリと倒れて、私の前で痙攣しながら動かなくなる。
私は少女を裸にして、彼女の制服を奪い去る。この制服を私が着てしまえば、誰も私が学園の生徒ではないと気が付かないだろう。
私は制服に袖を通すと、少女はそのままにして図書館を後にした。
(問題はこの夥しい返り血ね。まずは体を洗わないといけない)
私の制服には夥しい返り血が付いており、このままではこの格好で学園をうろつけば間違いなく不審者扱いされる。私は図書館のトイレに入ると、水で血を落としていった。

それから私は何食わぬ顔で伯爵令嬢の姿を探す。きっと私の顔など覚えて居ないだろう。その予想は的中して、私は伯爵令嬢を見つける。
しかし、彼女は1人では無かった。もう1人、別の女生徒が傍に居る。
彼女が公爵令嬢だろう。金髪で気品溢れる雰囲気を纏っている。そして、その隣にも別の女子生徒が座っていた。赤髪の短い髪で、活発そうな印象だ。
私が近づいても、3人は私に気が付かない。私は、彼女たちの勉強している本を見て、唖然とした。
「『伯爵令嬢と平民少女』……」
伯爵令嬢は、私の事を憎むべき人間なのに、何呑気に本を読んでいるのだろうか?
私は伯爵令嬢に近付くと、そっと彼女のポケットに手紙を忍ばせる。
中身は『貴女が過去に殺した少女の秘密を知っている。放課後、王立記念公園に一人で来てください』と書かれたメモ。
私が去った後、彼女はどんな反応をするだろうか。私はほくそ笑んでその場を立ち去ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...