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序章
第五話 魔王がいなくなった!
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人族が住む東の大陸、その反対側の西の大陸では魔族が住んでいる。西の大陸の中心には魔王城があり、そこのある一室では魔王がいなくなったことが問題になっていた。
年は四十代くらいに見えるが、実際は千年以上生きているワイルドな髭を生やしたガドラスは部下に魔王様を探させていた。
魔王様はお世話掛に隙をついてどこかに行ってしまったらしい。人間と接触していたらまずい。早く探さねば……。
「ドルト! 魔王様は見つかったか?」
「いいえ、この魔王城のどこを探してもいません!」
「うむ、そうか。どこに行ってしまわれたのだ……」
ガドラスは一人で難しい顔をする。ここに居ないとなると人間が住む大陸に行ってしまわれたのだろうか。
ガドラスは三人の自慢部下を呼び出し、人間が住む世界に偵察に行かせる作戦を取ることにした。
魔族は普段は人間の姿になっており、戦闘の時以外は本来の姿に戻らないことが普通なのだ。ただ人間とは生まれ持った魔略量が違うため、手加減して打たないと一瞬でバレる。という問題もある。
「アガス、イリス、ジン! お前たちに大事な任を任せたい! やってくれるな?」
「お任せください! ガドラス様!」
「よし! お前らにはこれから人間が住む大陸に行って魔王様を探してもらいたい!」
「はっ!」
「ただ条件がある! いざとなった時以外は本来の姿になるな! 良いな!」
「はっ! おうせのままに!」
元気の良い返事をすると三人は翼を広げて人界に向かおうとする。
「今、言っただろ! いざとなる時以外は使うなと!」
「失礼しました! でも心配はなさらないで、人間が住む大陸に着く前に解除するゆえに!」
ガドラスの言葉にアガスが代表して返事を返す。
「そうか! くれぐれも気をつけてな!」
「はっ!」
三人はもの凄いスピードで魔王城を後にした。ガドラスは三人とも無事でいてくれよと願った。
「さてと……いざとなった時のために戦争準備を整えないとな!」
「ドルト! 直ぐに十鬼《じっき》のメンバーを招集せよ!」
「はっ! すぐに呼んでまいります!」
「頼んだぞ!」
「はっ!」
ドルトはそう言うと足早に去っていった。ドルトはガドラスのお世話係として非常に優秀なので目にかけているのだ。
十鬼は五大魔瘴《ごだいましょう》、いわゆる大将クラスであるアガス、イリス、ジン、そして今は消息不明のキンとギンのすぐ下の位である将軍クラスを指す。階級は下とはいえど、実力はもちろん、認めている。
十鬼のメンバーは一時間も経たずにガドラスが普段会議で使う大部屋に集まった。瓢箪型のテーブルの真ん中にガドラスは腰をかける。
「みんな、よくぞ集まってくれた!」
「おうおもよ! ガドラスの呼びかけだからな!」
と喋ったのは炎魔法を得意とするエン。見た目は三十代後半くらいのおじさんだ。
「ふあぁ~、眠い……」
いつも眠そうにしているのが水魔法を得意とするスイ。見た目は三年、男子高校生くらいだ。魔族として比較的若い時に十鬼になった。
「ねぇ、ガドラス! 今回はどんな仕事なんだ?」
こうやっていつもフレンドリーに話しかけてくれるのは風魔法を得意とするフウ。見た目はスイと同じ男子校生くらいだ。
「あいかわらず、馴れ馴れしいわね! フウ!」
「あっ! ごめーん。ついな……」
今、フウと絡んだのが土魔法を得意とするドリス。見た目は成人女性くらいだ。
「ガドラス! 久しぶりだね~」
明るく挨拶をしてくれたのが氷魔法を得意とするヒョウカ。見た目は女子大生くらいだ。言ってみればムードメーカーみたいな感じだ。
「へへ……ガドラスおじさん! 楽しそうな仕事をやらせて!」
いつもにこにこしているのが、雷魔法を得意とするライ。十鬼の中では最年少で小学六年生くらいの見た目をしている。歳が離れすぎてるのでおじさんなんて呼ばれている。
「ダメだよ、ライ! そんなこと言ったらガドラスおじさんが困っちゃうでしょ」
「は~い! 気をつけまーす!」
ライの抑止役になっているのが光魔法を得意とするヒカリ。ライと同じく最年少の少女だ。
「皆さん、静かにしてくれますか? 集中ができないです」
大事な会議中にもかかわらず静かに本を読んでいるのが闇魔法を得意とするヤミコ。メガネをかけた二十代前半くらいの女性だ。
「ガドラス、呼んでくれてありがとな! 今度はどんな仕事を任せてくれるんだい?」
「それは後でしっかり説明するよ! クウ!」
彼は空間魔法を得意とする。能力が能力なので移動役足りて使うことが多いが、どの仕事も快く受けてくれる良い奴だ。見た目は三十代前半くらいだ。
「どんな仕事でも引き受けてやるぜ! ガドラス!」
やる気が十分なのが強化魔法を得意とするカクト。見た目はプロレスラーみたいにムキムキで四十代くらいだ。
「みんな、ありがとな! さてと、本題なのだが、今人間が住む大陸に五大魔瘴の三人を行かせている。もしも魔王様が戻ってくる意思がないようなら力付くで、取り戻したい。その来たる時のために各々が持つ部隊を強化してくれ! いいか!」
「はっ!」
十鬼のいい返事を聞けたので、ガドラスは満足そうに笑みを浮かべ会議を終了させた。
来るべき時、ゆえに人間との全面戦争。全面戦争となれば魔族の仲間達が傷つくので、避けたいがきっと全面戦争になるはずだ。
古の魔王や今までの魔王。彼らは世界征服を望んだが故に時代時代の勇者に討伐されてきた。
今回の魔王カイリ様は世界征服を望んでいないらしい。魔王としては物足りないが、仕えるものが変われば従うまでだ。
そんなことを思いながら自室で仕事を始める。この時、ガドラスはまだ知らない。ある教団の脅威が迫っていることを……。
***
「クックックッ……魔王がいなくなったみたいですね」
男は西の大陸を眺めながら呟く。魔王がいなくなるのを待ち望んでいたのだ。魔王さえいなくなれば魔王軍など私の相手ではない。
「教祖様! 準備が整いました!」
「そうですか……では始めましょう! 魔王城潰しを! クックックッ……」
男は冷徹な笑みを浮かべる。これから始まる楽しいショーのことを考えるとワクワクしてならないのだ。
「行きなさい! 地獄の番人、ケルベロスよ!」
男は三体のケルベロスに命令をする。ケルベロスは神獣に匹敵する強さを持っており、神獣召喚士のいない西の大陸など全く相手にならないのだ。
「グァァルァァァァァァァァ!」
ケルベロスは忌々しい方向を上げ、魔王城に向かって走っていく。
年は四十代くらいに見えるが、実際は千年以上生きているワイルドな髭を生やしたガドラスは部下に魔王様を探させていた。
魔王様はお世話掛に隙をついてどこかに行ってしまったらしい。人間と接触していたらまずい。早く探さねば……。
「ドルト! 魔王様は見つかったか?」
「いいえ、この魔王城のどこを探してもいません!」
「うむ、そうか。どこに行ってしまわれたのだ……」
ガドラスは一人で難しい顔をする。ここに居ないとなると人間が住む大陸に行ってしまわれたのだろうか。
ガドラスは三人の自慢部下を呼び出し、人間が住む世界に偵察に行かせる作戦を取ることにした。
魔族は普段は人間の姿になっており、戦闘の時以外は本来の姿に戻らないことが普通なのだ。ただ人間とは生まれ持った魔略量が違うため、手加減して打たないと一瞬でバレる。という問題もある。
「アガス、イリス、ジン! お前たちに大事な任を任せたい! やってくれるな?」
「お任せください! ガドラス様!」
「よし! お前らにはこれから人間が住む大陸に行って魔王様を探してもらいたい!」
「はっ!」
「ただ条件がある! いざとなった時以外は本来の姿になるな! 良いな!」
「はっ! おうせのままに!」
元気の良い返事をすると三人は翼を広げて人界に向かおうとする。
「今、言っただろ! いざとなる時以外は使うなと!」
「失礼しました! でも心配はなさらないで、人間が住む大陸に着く前に解除するゆえに!」
ガドラスの言葉にアガスが代表して返事を返す。
「そうか! くれぐれも気をつけてな!」
「はっ!」
三人はもの凄いスピードで魔王城を後にした。ガドラスは三人とも無事でいてくれよと願った。
「さてと……いざとなった時のために戦争準備を整えないとな!」
「ドルト! 直ぐに十鬼《じっき》のメンバーを招集せよ!」
「はっ! すぐに呼んでまいります!」
「頼んだぞ!」
「はっ!」
ドルトはそう言うと足早に去っていった。ドルトはガドラスのお世話係として非常に優秀なので目にかけているのだ。
十鬼は五大魔瘴《ごだいましょう》、いわゆる大将クラスであるアガス、イリス、ジン、そして今は消息不明のキンとギンのすぐ下の位である将軍クラスを指す。階級は下とはいえど、実力はもちろん、認めている。
十鬼のメンバーは一時間も経たずにガドラスが普段会議で使う大部屋に集まった。瓢箪型のテーブルの真ん中にガドラスは腰をかける。
「みんな、よくぞ集まってくれた!」
「おうおもよ! ガドラスの呼びかけだからな!」
と喋ったのは炎魔法を得意とするエン。見た目は三十代後半くらいのおじさんだ。
「ふあぁ~、眠い……」
いつも眠そうにしているのが水魔法を得意とするスイ。見た目は三年、男子高校生くらいだ。魔族として比較的若い時に十鬼になった。
「ねぇ、ガドラス! 今回はどんな仕事なんだ?」
こうやっていつもフレンドリーに話しかけてくれるのは風魔法を得意とするフウ。見た目はスイと同じ男子校生くらいだ。
「あいかわらず、馴れ馴れしいわね! フウ!」
「あっ! ごめーん。ついな……」
今、フウと絡んだのが土魔法を得意とするドリス。見た目は成人女性くらいだ。
「ガドラス! 久しぶりだね~」
明るく挨拶をしてくれたのが氷魔法を得意とするヒョウカ。見た目は女子大生くらいだ。言ってみればムードメーカーみたいな感じだ。
「へへ……ガドラスおじさん! 楽しそうな仕事をやらせて!」
いつもにこにこしているのが、雷魔法を得意とするライ。十鬼の中では最年少で小学六年生くらいの見た目をしている。歳が離れすぎてるのでおじさんなんて呼ばれている。
「ダメだよ、ライ! そんなこと言ったらガドラスおじさんが困っちゃうでしょ」
「は~い! 気をつけまーす!」
ライの抑止役になっているのが光魔法を得意とするヒカリ。ライと同じく最年少の少女だ。
「皆さん、静かにしてくれますか? 集中ができないです」
大事な会議中にもかかわらず静かに本を読んでいるのが闇魔法を得意とするヤミコ。メガネをかけた二十代前半くらいの女性だ。
「ガドラス、呼んでくれてありがとな! 今度はどんな仕事を任せてくれるんだい?」
「それは後でしっかり説明するよ! クウ!」
彼は空間魔法を得意とする。能力が能力なので移動役足りて使うことが多いが、どの仕事も快く受けてくれる良い奴だ。見た目は三十代前半くらいだ。
「どんな仕事でも引き受けてやるぜ! ガドラス!」
やる気が十分なのが強化魔法を得意とするカクト。見た目はプロレスラーみたいにムキムキで四十代くらいだ。
「みんな、ありがとな! さてと、本題なのだが、今人間が住む大陸に五大魔瘴の三人を行かせている。もしも魔王様が戻ってくる意思がないようなら力付くで、取り戻したい。その来たる時のために各々が持つ部隊を強化してくれ! いいか!」
「はっ!」
十鬼のいい返事を聞けたので、ガドラスは満足そうに笑みを浮かべ会議を終了させた。
来るべき時、ゆえに人間との全面戦争。全面戦争となれば魔族の仲間達が傷つくので、避けたいがきっと全面戦争になるはずだ。
古の魔王や今までの魔王。彼らは世界征服を望んだが故に時代時代の勇者に討伐されてきた。
今回の魔王カイリ様は世界征服を望んでいないらしい。魔王としては物足りないが、仕えるものが変われば従うまでだ。
そんなことを思いながら自室で仕事を始める。この時、ガドラスはまだ知らない。ある教団の脅威が迫っていることを……。
***
「クックックッ……魔王がいなくなったみたいですね」
男は西の大陸を眺めながら呟く。魔王がいなくなるのを待ち望んでいたのだ。魔王さえいなくなれば魔王軍など私の相手ではない。
「教祖様! 準備が整いました!」
「そうですか……では始めましょう! 魔王城潰しを! クックックッ……」
男は冷徹な笑みを浮かべる。これから始まる楽しいショーのことを考えるとワクワクしてならないのだ。
「行きなさい! 地獄の番人、ケルベロスよ!」
男は三体のケルベロスに命令をする。ケルベロスは神獣に匹敵する強さを持っており、神獣召喚士のいない西の大陸など全く相手にならないのだ。
「グァァルァァァァァァァァ!」
ケルベロスは忌々しい方向を上げ、魔王城に向かって走っていく。
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