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第十一話 雷電獣と初テイム

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 僕はモンスターを倒しながらどんどん奥へと進んでいた。
 このダンジョンに出てくる全てのモンスターは【麻痺無効】のスキルを持っているらしい。
 そのため新しく手に入れたスキルはこのダンジョンでは全く無意味なものとなってしまった。

「なんだよぉ! 帯電、まったく役立たないじゃん!」

 僕は吐き捨てるように文句を言う。
 それでも【麻痺無効】を持っているので他のプレイヤーよりは楽にモンスターを倒せている訳なので、そんなにイライラはしていないのだが……。
 
「やべぇ……疲れてきたなぁ……」

 そうなった理由はこのダンジョンに入ってから楽しすぎて、一時間ぐらい休憩なしで戦い続けていためである。
 
「よし! ここで休憩しよ!」

 僕は安全地帯でもなんでもない場所で腰を下ろして休憩を始めた。そんな僕にさっきからずっと麻痺ブレスをかけてくる可愛い白兎や僕の上に上って一生懸命に麻痺状態にしようとしている可愛い黒兎が合計で二十匹いた。

「少しピリッとして気持ちいよ! もっとお願い!」

 白兎と黒兎の攻撃は当然、【麻痺無効】を持っている僕には通用しないのでマッサージをされている気持になって疲れが取れていく気がした。僕は目をつむって疲れを癒す。
 三十分くらいその状態は続いた。

【瞑想を獲得しました‼】

「おっ! なんか新しいスキルが手に入ったぞ! 確認してみよ」

 僕は白兎と黒兎を無視してスキルを確認する。

【瞑想、このスキルを発動して十分間、STR、VIT、DEX、AGI、INTの中でプレイヤーが一番ステ振りを行っているものの半分だけAGIが上昇する。 獲得条件、攻撃を受けながら三十分間死なずに目を閉じ続ける 発動条件、三十秒間目を閉じる】

「これは強い! これでAGIがない僕でもAGIの高いプレイヤーに対応できるかも……でも発動条件が厳しいなぁ……時間を掛けずに発動するように進化しないかなぁ……」

 そんなに都合の良いスキルは手に入らないと思うが……でも期待を捨ててはいけない。
 僕は白兎と黒兎に謝罪をしながら倒していく。

【レベルが26になりました‼】

 そして白兎と黒兎が一匹ずつ残ったときに二匹は何かを恐れるように背中を丸くしている。
 (この二匹は僕に怯えているな……悪いことしたなぁ……食べ物でも与えて逃がしてあげよう)僕は白兎と黒兎にべとべとのモンスターを飲んだ時にドロップしたアイテムを渡す。

「頑張って生き延びろよぉ!」
 
 僕は白兎と黒兎に手を振ってその場を去ったが、白兎と黒兎は僕の後ろをちょこちょこついてくる。

「どうしたんだ……? お前たち」

 僕はまだ腹が減っているのかなと思い、白兎と黒兎に右手を差し出す。すると白兎と黒兎は食べ物に目もくれずに腕を上ってきて、それぞれ右肩と左肩で止まる。

「お前らも一緒に行きたいのか?」

 僕は白兎と黒兎の頭を人差し指で触る。攻撃してくる様子もない、どうやら懐かれてしまったようだ。
 僕は二匹を連れていくことに決め、名前を付けてあげることにした。

「お前はこれから《アサ》だ!」
「ラビィィ!」

 僕は右肩に乗っている白兎に名前を付けると、アサは嬉しそうに鳴き声をあげた。(白兎が鳴いたぁぁ! 貴重な瞬間を見たな!)僕は心の中でナニコレ珍百景に応募したいと思ってしまう。

「そしてお前は《ヨル》だ!」
「ラビリィィ!」

 僕は左肩に乗っている黒兎に名前を付けた。ヨルも嬉しそうに鳴き声をあげる。(お前もかい!)やっぱり応募したい……。 
 僕は新しいペットを連れて奥へと進んでいく。
 五分くらい歩いていると、目の前に一体の銅像が現れる。手には大きな大剣を持っている。

「動かないよなぁ……」

 僕は小声で呟きながらこっそりと銅像の前を抜けていこうとしたが、急に大剣が振り落とされる。

「ですよねぇぇ!」

 僕はこうなることは予想できていたので、その攻撃を後方に跳んで回避する。そして大剣を抜き戦闘態勢に入る。
 僕は銅像が降り下ろしてきた大剣を受ける。

「重い!」

 どうやらこいつは動きが遅いが、攻撃力が非常に高いモンスターだということが分かった。
 押して引き胴と言う技を使おうと思ったが失敗だったようだ……。

「しまったな……押し切られそう……」

 STRが高い僕でも押されている。もうすぐで頭に攻撃が当たってしまうと思ったとき、両肩に乗っていたアサとヨルが鳴きながらものすごい量の雷を発生させた。

「ラビィィィ‼」
「ラビリィィ‼」

 僕を守るために攻撃してくれていたのだ。その攻撃を受けた銅像の動きが鈍くなった。

「何でだ?」

 僕は頭の中にハテナが浮かぶ。
 それに銅像と同様に僕の動きもなんか鈍くなったような気がするし、HPも少しずつ減っている。ダメージの方はヒーリングブレスレットがあるので気にしない。

【雷耐性(小)を獲得しました‼ 雷耐性(小)が雷耐性(中)に進化しました‼ 窮地を獲得しました‼ 雷耐性(中)が雷耐性(大)に進化しました‼ 雷耐性(大)が雷無効に進化しました‼】

「あれ? 動き鈍くなくなったぞ! それに力が湧いてきた! これなら押し返せる!」

 僕は銅像が振り落とした大剣を押し上げ、銅像の胴体に一撃‼

「胴‼」

 銅像は真っ二つになり、消滅した。

「……ふぅ……終わった……」

 僕はそっと息を吐いた。
(それにしてもアサとヨルに助けられたな……後でえさをあげよう)僕はそう決め、獲得したスキルを確認する。

【雷無効、雷の状態異常を無効化する 獲得条件、雷属性の攻撃を四分間受け続ける】
【窮地、属性攻撃を三十秒間受け続けると、五分間STRが二倍になる 獲得条件、属性ダメージを二分間受け続ける】

「アサとヨルの攻撃を三十秒、受けるだけでSTRが二倍だと! さらにアサとヨルの攻撃は効かないと来た! 強すぎないかぁ!」

 僕は歓喜の声を上げながら、歩いていく。
 数分後、僕の目の前に大きな扉が出現した。

「なんだ? とりあえず入ってみるか!」

 僕は扉を開けて中へと入っていく。
 中に入ると扉が閉まり、少しずつ明るくなっていき全体が見えるようになった。
 僕の目の前に広がっていたのは、きれいな光景は全くなく寂しい鋼色の空間が広がっているだけだった。
 そしてこの空間の中心に全長は三メートルくらいで、白色の胴体に黒い縞模様。そしてたくましい足が四本、エメラルドグリーン色の瞳がこちらを睨みつけていた。あれはネコ科の動物でおそらくホワイトタイガーだ。

「グアルラァァァァ‼」

 ホワイトタイガーが吠えると上に名前とHPゲージが表示される。ホワイトタイガーの名前は雷電獣白虎《らいでんじゅうびゃっこ》そしてHPは一万五千と表示されていた。さらに体から雷を発生させ己に纏わせる。

「なんだ、こいつ‼ HP高すぎねぇか‼」

 僕は白虎のHPを思わず二度見してしまう。

「でもやらないとなぁ……! よし! 頑張ってみよ!」

 僕は念のために【帯電】を発動して、その場で目をつむる。白虎に雷落しをされたが僕には効かないので無視をする。
 三十秒経って【瞑想】が発動する。

「アサ! ヨル! 僕に雷の攻撃をしてくれ!」
「ラビィィ!」
「ラビリィィ!」

 アサとヨルは鳴き声を出して僕に銅像の時みたいにものすごい量の雷を発生させること三十秒【窮地】も発動した。

「よし! これで準備万端だ! かかってこい!」

 僕は気合を入れて白虎と戦闘を開始した。
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