39 / 92
第三十八話 戦国兄弟再び
しおりを挟む
「お前が行けよ!」
「やだよ! お兄が行けよ!」
桜の木に囲まれたログハウスの近くで、ムサシとコジロウはどっちがインターホンを鳴らすかで口論していた。
ムサシとコジロウはヒビトさんたちが九尾の狐乗って立ち去ろうとしたときに九尾の狐の尻尾にしがみつきこの場所に連れてきてもらった。そしてヒビトさんが九尾の狐を収納しようとした三秒前に木の影に隠れたのである。
あの時はバレないかどうか心配だったが、無事に隠れることに成功した。しばらく口論は続きムサシがインターホンを押すことになった。
「お兄! ファイト!」
コジロウは自分がインターホンを押さないで良くなったので、他人事のように言ってくる。少しだけ憎たらしく思う。
ムサシとコジロウは双子なのだが、先に生まれたのがムサシなのでコジロウに(お兄)と呼ばれている。
ムサシは緊張で手に汗を握りながらインターホンを鳴らした。
***
祝賀会がひと段落した頃、プレイヤーホームであるログハウスのインターホンが鳴る。
「誰だ? この場所、簡単には見つけれないんだろ?」
「見つけれないはずだよ!」
僕はリリとそんな会話をして、玄関に向かって行く。
この家にはカメラとかはないので扉を開けないと相手を見ることができない。(面倒くさい奴がいたらどうしよう)と思いながら、僕はゆっくりログハウスの扉を開ける。
「ヒビトさん! お久しぶりです!」
ムサシとコジロウが活気のある声で挨拶をしてくる。
「お前たち、誰だっけ?」
僕は緊張しているムサシとコジロウをからかう。
「やめて下さいよ~!」
ムサシがコジロウよりも先にそんなことを言ってくる。
「ヒビトさん会ったのは数時間前ですよ~!」
コジロウはムサシの言葉に続けるような形で話してきた。二人で一文を完成させるなんてどうやったらできるんだ……。
「誰だったけな……弱い奴は覚えてないな……」
「勘弁してください……」
僕がさらに追い討ちをかけたので、ムサシとコジロウの表情が同時に曇り始めた。(作戦失敗か!)と思ったので、ここでやめておくことにする。
「冗談、冗談! しっかり覚えてるよ!」
「良かったです……」
ムサシとコジロウはほっとしているようだ。同時に何度も同じ言葉を喋るなんてさすが双子だ。
「そんなに改まらなくていいよ!」
「それはダメです! 一応、年上ですから!」
ムサシの言葉に(一応じゃなくて、年上なんだけど!)とツッコミを入れたくなったが、また気落ちしてしまったら困るのでやめておく。
「どうしたんだ?」
聞きたいことはたくさんあったが、最初はここに来た理由を聞くことにした。
「僕たちを仲間にしてください!」
ムサシがそう言うと同時に深々と頭を下げてくる。
「みんなと相談してから決めるから、とりあえず家に上がって!」
「分かりました!」
ムサシとコジロウは同時に返事をし、見ているだけで面白くなってしまうほど揃った動きで家に上がる。
「みんな! 客を連れてきたよ!」
僕はそう言いながらムサシとコジロウを家のリビングに入室させる。ツキナたちは一斉にこちらに顔を向ける。
「ム、ムサシと言います! よ、よろしくお願いします!」
「コ、コジロウと言います! よ、よろしくお願いします!」
ムサシとコジロウは緊張が漏れ出ないようにぎゅっと手のひらを握っている。
僕はガチガチになっている二人の背中を軽く押して、席に座らせる。
「あら! 《戦国兄弟》じゃない! ヒビトいつ会ったの?」
リリは好奇心でいっぱいになった少女のような表情で質問してきた。
「イベントの時に戦った!」
「本当?」
「おう! 見てなかったのか?」
「いろいろあって見逃してたよ……ヒビトでも苦戦したでしょ?」
「いや……! 全く苦戦しなかったよ!」
僕の言葉にムサシとコジロウはしょんぼりしてしまう。
ムサシとコジロウはトッププレイヤーとして名前が知られているので、僕がまったく苦戦せずに勝ってしまったことに対してすごくショックを受けているようだ。
「しょうがないよ! ヒビトは普通のプレイヤーの人たちと思考が違うから!」
「おい! リリ! それはどう言う意味だ⁉︎」
「ふふっ……それは内緒!」
リリはいろんな意味に取れそうな笑みを浮かべながら言う。リリの言葉にツキナたちも頷いている。
「全員、揃って! 僕のことをそんなふうに思ってたのか?」
「普通のプレイヤーではないと思っていたわよ!」
ツキナにもそんなことを言われてしまった。
「みんな! 勘弁してくれよぉ~!」
僕は誰かに助けを求めるように叫ぶが、この場の全員が共謀しているので意味はなかった。
ムサシとコジロウはその光景を見て、少年のような明るい笑みを浮かべていた。
「おっ! やっと笑顔になったな! このパーティーにいる間は楽しくプレイしような!」
「えっ? 仲間にしてくれるんですか? みんなと相談するんじゃ……」
ムサシは戸惑いを隠せない様子だ。コジロウも同じような表情になっている。
「あれは嘘だ! ムサシたちと僕が顔を合わせた瞬間からすでに仲間にすると決めてたんだよ!」
そう、僕はムサシとコジロウが会った瞬間から緊張していたことを感じていたので、ムサシとコジロウをわざとからかって笑顔にしようと思っていたが失敗してしまった。
そして思いついた案が一旦、ムサシとコジロウをしょんぼりさせといて、ツキナたちに僕をからかってもらうと言うものだった。
僕はこの案を成功させるためにムサシとコジロウが深々と頭を下げたときにツキナたちにチャットを送り、今の状況を説明した。そしてムサシとコジロウを家に上げ、作戦を実行したところ見事に成功した。
ツキナとリリのうまい演技を見るに僕のことを本当に変人だと思っているのかもしれない……。
「改めまして! 僕たちのパーティーへようこそ!」
僕はツキナたちを一通り見てからムサシとコジロウを歓迎した。
「ヒビトさん! ありがとうございます!」
「これからよろしくお願いします!」
ムサシとコジロウはこぼれるような笑顔を僕たちに向けてくれた。
僕たちはムサシとコジロウに一人ずつ、軽い自己紹介を行った。
これでパーティーメンバーは七人。パーティーの人数上限が来てしまったので、そろそろギルドを作らないといけない。
僕たちはムサシとコジロウを加えて、テーブルの上に残っている食事を片付ける作業に入った。
「やだよ! お兄が行けよ!」
桜の木に囲まれたログハウスの近くで、ムサシとコジロウはどっちがインターホンを鳴らすかで口論していた。
ムサシとコジロウはヒビトさんたちが九尾の狐乗って立ち去ろうとしたときに九尾の狐の尻尾にしがみつきこの場所に連れてきてもらった。そしてヒビトさんが九尾の狐を収納しようとした三秒前に木の影に隠れたのである。
あの時はバレないかどうか心配だったが、無事に隠れることに成功した。しばらく口論は続きムサシがインターホンを押すことになった。
「お兄! ファイト!」
コジロウは自分がインターホンを押さないで良くなったので、他人事のように言ってくる。少しだけ憎たらしく思う。
ムサシとコジロウは双子なのだが、先に生まれたのがムサシなのでコジロウに(お兄)と呼ばれている。
ムサシは緊張で手に汗を握りながらインターホンを鳴らした。
***
祝賀会がひと段落した頃、プレイヤーホームであるログハウスのインターホンが鳴る。
「誰だ? この場所、簡単には見つけれないんだろ?」
「見つけれないはずだよ!」
僕はリリとそんな会話をして、玄関に向かって行く。
この家にはカメラとかはないので扉を開けないと相手を見ることができない。(面倒くさい奴がいたらどうしよう)と思いながら、僕はゆっくりログハウスの扉を開ける。
「ヒビトさん! お久しぶりです!」
ムサシとコジロウが活気のある声で挨拶をしてくる。
「お前たち、誰だっけ?」
僕は緊張しているムサシとコジロウをからかう。
「やめて下さいよ~!」
ムサシがコジロウよりも先にそんなことを言ってくる。
「ヒビトさん会ったのは数時間前ですよ~!」
コジロウはムサシの言葉に続けるような形で話してきた。二人で一文を完成させるなんてどうやったらできるんだ……。
「誰だったけな……弱い奴は覚えてないな……」
「勘弁してください……」
僕がさらに追い討ちをかけたので、ムサシとコジロウの表情が同時に曇り始めた。(作戦失敗か!)と思ったので、ここでやめておくことにする。
「冗談、冗談! しっかり覚えてるよ!」
「良かったです……」
ムサシとコジロウはほっとしているようだ。同時に何度も同じ言葉を喋るなんてさすが双子だ。
「そんなに改まらなくていいよ!」
「それはダメです! 一応、年上ですから!」
ムサシの言葉に(一応じゃなくて、年上なんだけど!)とツッコミを入れたくなったが、また気落ちしてしまったら困るのでやめておく。
「どうしたんだ?」
聞きたいことはたくさんあったが、最初はここに来た理由を聞くことにした。
「僕たちを仲間にしてください!」
ムサシがそう言うと同時に深々と頭を下げてくる。
「みんなと相談してから決めるから、とりあえず家に上がって!」
「分かりました!」
ムサシとコジロウは同時に返事をし、見ているだけで面白くなってしまうほど揃った動きで家に上がる。
「みんな! 客を連れてきたよ!」
僕はそう言いながらムサシとコジロウを家のリビングに入室させる。ツキナたちは一斉にこちらに顔を向ける。
「ム、ムサシと言います! よ、よろしくお願いします!」
「コ、コジロウと言います! よ、よろしくお願いします!」
ムサシとコジロウは緊張が漏れ出ないようにぎゅっと手のひらを握っている。
僕はガチガチになっている二人の背中を軽く押して、席に座らせる。
「あら! 《戦国兄弟》じゃない! ヒビトいつ会ったの?」
リリは好奇心でいっぱいになった少女のような表情で質問してきた。
「イベントの時に戦った!」
「本当?」
「おう! 見てなかったのか?」
「いろいろあって見逃してたよ……ヒビトでも苦戦したでしょ?」
「いや……! 全く苦戦しなかったよ!」
僕の言葉にムサシとコジロウはしょんぼりしてしまう。
ムサシとコジロウはトッププレイヤーとして名前が知られているので、僕がまったく苦戦せずに勝ってしまったことに対してすごくショックを受けているようだ。
「しょうがないよ! ヒビトは普通のプレイヤーの人たちと思考が違うから!」
「おい! リリ! それはどう言う意味だ⁉︎」
「ふふっ……それは内緒!」
リリはいろんな意味に取れそうな笑みを浮かべながら言う。リリの言葉にツキナたちも頷いている。
「全員、揃って! 僕のことをそんなふうに思ってたのか?」
「普通のプレイヤーではないと思っていたわよ!」
ツキナにもそんなことを言われてしまった。
「みんな! 勘弁してくれよぉ~!」
僕は誰かに助けを求めるように叫ぶが、この場の全員が共謀しているので意味はなかった。
ムサシとコジロウはその光景を見て、少年のような明るい笑みを浮かべていた。
「おっ! やっと笑顔になったな! このパーティーにいる間は楽しくプレイしような!」
「えっ? 仲間にしてくれるんですか? みんなと相談するんじゃ……」
ムサシは戸惑いを隠せない様子だ。コジロウも同じような表情になっている。
「あれは嘘だ! ムサシたちと僕が顔を合わせた瞬間からすでに仲間にすると決めてたんだよ!」
そう、僕はムサシとコジロウが会った瞬間から緊張していたことを感じていたので、ムサシとコジロウをわざとからかって笑顔にしようと思っていたが失敗してしまった。
そして思いついた案が一旦、ムサシとコジロウをしょんぼりさせといて、ツキナたちに僕をからかってもらうと言うものだった。
僕はこの案を成功させるためにムサシとコジロウが深々と頭を下げたときにツキナたちにチャットを送り、今の状況を説明した。そしてムサシとコジロウを家に上げ、作戦を実行したところ見事に成功した。
ツキナとリリのうまい演技を見るに僕のことを本当に変人だと思っているのかもしれない……。
「改めまして! 僕たちのパーティーへようこそ!」
僕はツキナたちを一通り見てからムサシとコジロウを歓迎した。
「ヒビトさん! ありがとうございます!」
「これからよろしくお願いします!」
ムサシとコジロウはこぼれるような笑顔を僕たちに向けてくれた。
僕たちはムサシとコジロウに一人ずつ、軽い自己紹介を行った。
これでパーティーメンバーは七人。パーティーの人数上限が来てしまったので、そろそろギルドを作らないといけない。
僕たちはムサシとコジロウを加えて、テーブルの上に残っている食事を片付ける作業に入った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
181
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる