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第五十五話 監視者と帰還

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武器【神威《かむい》】
スロット【空欄】【空欄】
スキル
天眼焔《てんげんほむら》
六明神《ろくみょうじん》
属性特攻
属性吸収
属性蓄積
消費SP五割カット
STR常時三倍
貫通攻撃
チャージ

武器【神楽《かぐら》】
スロット【空欄】【空欄】
スキル
天眼雷《てんげんいかづち》
六明神《ろくみょうじん》
属性特攻
属性吸収
属性蓄積
消費SP五割カット
STR常時三倍
貫通射撃
マルチショット

「スキル量エグいな……」

 僕はスキルを見た瞬間に目を見開いてしまう。

「さすがはレジェンダリーウェポンだ!」

 トモは驚くそぶりを全く見せずに平然としている。このゲームをやる前にレジェンダリーウェポンの武器を手に入れたことがあるのだろう。
 訳が分からないスキルがたくさんあるので、タップしてスキルの詳細を確認していく。

【天眼焔、体を回転させながら斬った後、そこを中心に六属性混合の大爆発を起こす】 
【六明神、自分の好きなタイミングで武器の属性を切り替えることができる】
【属性特攻、属性やられ状態になった敵に対してダメージが倍増する】
【属性吸収、属性ダメージを与えると相手からHPとSPを二十五ずつ奪う】
【属性蓄積、属性の蓄積量が上がる】
【チャージ、溜めスキルの威力が二倍になる】

「何これ、神性能じゃん!」 

 思わず歓声を上げてしまった。初めてやったゲームで貴重なレジェンダリーウェポンを手に入れたわけなので、喜びは計り知れない。トモもスキルの確認ができたみたいなので、奥の扉に入っていく。

〔お疲れ様でした! ダンジョンクリアです! おめでとうございます! ちなみに君たちは何回死んだのかな? ここに回数を打ち込んでね! 打ち込まないと出口の転移門が開かないからよろしく!〕

「何じゃい! この仕様! 腹立つわ~」
「同じく!」

 僕とトモはムッとしてしまった。
 (一番知られたくないであろうことを打ち込めと要求してくるなんてどうなってるんだ!)そんなことを心の中で呟きながら零と打ち込みダンジョンを後にした。

 ***

 静まり返ったボス部屋の観戦席で、男は呟いていた。

「極光騎士を、あまりダメージを受けずに倒すなんて……すごいプレイヤーもいたもんだ……」

 観戦席と言ってもボス部屋からは見えないような作りになっている。
 男は自分が試験プレイをした時もあそこまでダメージを受けずに倒すことはできなかったのだ。
 自分の自信作のボスだったのにあまりダメージを受けずに倒されてしまったので、少し悔しく思っている。それにレジェンダリーウェポンを手に入れるためには受けた総合ダメージが三千以下でないといけないという厳しい条件を付けたのにあっさりと手に入れられてしまったのだ。

「属性無効を手に入れるプレイヤーがいるとは予想外だったな。バランス調整をしなくてはならないか……それにあのプレイヤーに接触してみたいな……」

 ほとんどのプレイヤーはデバフがあるので、属性ダメージを受けようとはしないと思っていた。まさか自ら受けるものが出てくるとは……。男はそんなことを考えながら観客席を去っていった。

 ***

「長かったぁぁぁぁぁぁぁ」

 三時間ぶりくらいにゲーム世界の太陽を拝めたので、清々しい気持ちになっていた。
 太陽を見て元気が湧いてくるのは初めての体験である。太陽には人を元気にする何らかの力があるのかもしれない。

「確かに長かったなぁ……さてと、帰りますか……」

 トモは太陽を浴びながら体を伸ばした後、提案してくる。

「オッケー! 約束通りクウガで帰ろう!」
「りょーかい! ログハウスに帰ったらリリに色々、自慢してやろうぜ!」
「だな!」

 そんな話をしながら、僕とトモはクウガの上に騎乗する。

「クウガ、頼んだぞ!」
「グリフィィ!」

 クウガは明るく弾んだ声で返事をした後、空中に飛び上がる。全力で飛べば三百キロくらい出るとは思うが、クウガは僕とトモが安心して乗っていられる速度で飛んでくれている。気が効くいい奴だ。

「ヒビト、そろそろ着くぞ!」

 トモは優しく諭すように僕に声を掛けてくるので、ゆっくりと目を開ける。
 心地よい風が僕を包み込むように吹く上にクウガの体に生えている毛がとても気持ち良かったので、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
 僕は体を起こし、ログハウスを見る。ダンジョンを攻略していた最中に予想はしていたが、穴はすっかりと塞がれていた。やっぱりリリにうまいこと利用されていたようだ。それでも結果的にレジェンダリーウェポンをゲットできたので文句を言うつもりはないが……。

「ただいま!」

 僕とトモははつらつとした声を出しながらログハウスに入って行く。
 
「おかえり!」

 僕とトモの帰りを待っていてくれたパーティーメンバー全員が一斉に返事を返してくれた。

「疲れてるわね! すぐにご飯を持ってくるから待ってて!」

 ツキナたちに疲れていることを悟られないようにしていたのだが、一瞬で気づかれたらしい。

「ツキナ! どうやって、僕が疲れていることに気づいたんだ?」
「顔を見れば分かるわよ!」
「そ、そうか」

 さすがはツキナと思いながらご飯を待つ。数秒後、机の上に僕とトモのご飯が並べられた。

「いただきます!」

 僕とトモは相当腹が減っていたので、挨拶をした後物凄い速度でご飯を平らげていく。疲れた時のツキナの料理はやっぱり最高だ。

「ここで、報告があります!」

 ご飯がひと段落したので、僕は本題を切り出す。

「どうしたの? 急に大きな声を出して」

 ツキナにそう言われたので、すぐにダンジョンで手に入れたレジェンダリーウェポンを実体化させる。トモも僕と同じ行動を取る。七色に輝く剣と弓を机の上に並べる。

「レジェンダリーウェポンを手に入れたぜ!」

 今度は僕ではなくトモが代表で言った。

「トモ! ヒビト! やったじゃない!」

 リリはにっこりと微笑みながら言ってきた。僕はその表情を見てツキナに劣らず、可愛いと思ってしまう。トモもまじまじと見つめている。

「おう!」

 トモは顔を赤らめながら答えた。リリの笑顔にやられてしまったようだ。二人の機嫌はすっかりと治っていたので、本当に良かったと思う。

「ヒビトさん聞いてください! 二人がダンジョンに行ってる間、リリさんにこき使われたんですよ……」

 少しだけ疲れている様子のムサシがそんなことを言ってくる。僕はすぐに「ドンマイ!」と返す。

「男は働いてナンボでしょ! 何か、文句ある⁉︎」
「い、いいえ……文句はありません……」
 
 リリの迫力に負けてしまったムサシは、しゅんとしてしまった。
 僕は(リリの標的にならないように行動しないとな……)と心の中でそんな感想を抱くのだった。
 この後、僕とトモはリリに採掘したアイテムを渡し、ダンジョンの成果報告を続けた。

「そろそろ、現実世界で夕食になるだろうからログアウトしましょ! みんないつからやれそう?」
「現実世界で剣道の練習をしないといけないから、今日は無理だな! 次ゲームをやれるのは明後日くらいになると思う!」
「同じく!」

 僕とトモは現実世界で剣道と弓道の練習があるので、明後日までログインできないのだ。

「今、運営からメールが来たんだけど今日の二十一時から明日の四時まで緊急メンテナンスが入るんだって」
「そうなのね! なら明日の九時からできる人だけでプレイしましょ!」

 リリの話を聞いて、ツキナはプランを一瞬で決めた。
 皆んなは「りょーかい」や「オッケー」など各々の返事の仕方でツキナの提案に賛同した。そして僕は「またね」とみんなに挨拶をした後、ゲームをログアウトした。
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