ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉

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第70話 クリスマス2 1(2)

 12月になってから勉強と並行して進めていたのが、バイト探しである。去年はイベントのスタッフをやったが、外の仕事で寒くて大変だった。今年は早くから探し始めた結果、工場で軽作業をすることになった。奈都も一緒だ。
 ちなみに食品関係なので、盛り付けとかもするかも知れないと話すと、涼夏が羨ましがっていた。是非変わっていただきたい。
「みんなが単発バイトを見つけてくるたびに、いつもちょっとやってみたくはなるのだよ。私は特定の雑貨屋での働き方しか知らない」
 涼夏が無念だと首を振る。色々な経験をしたいという意味ではいいが、将来役に立つかと言えば、別にずっと雑貨屋を続けていて得られるものと大差ないだろう。むしろ、軽作業は本当に誰でも出来る単純な作業の繰り返しなので、ただの体力勝負だ。12月に入った頃から、エクササイズ動画を見ながら体力作りをしている。
 絢音はもう少し直前でも入れる、本当に単発のバイトを3日か4日くらいする予定らしい。まだ日にちが決まっていない私たちに合わせたいという意味もあるし、週間予報で天気の良さそうな日に入れたい思いもあるそうだ。
「冬休みにしか出来ない遊びって実際少ないから、冬休みはお金を稼ぐ期間にしたい」
 絢音が決然としてそう言ったが、それでも私や涼夏より少ない。じっくり音楽系の取り組みもしたいそうだ。奈都もクラスや部活の子と遊ぶ予定がいくつかあるらしいし、相変わらず忙しい人たちだ。
 そうこうしている内にテスト期間になり、午後は帰宅部の活動は控えて勉強に打ち込んだ。いつもだと、テスト期間はこれ幸いとバイトを入れる涼夏も、今回は最終日にしか入れなかったので本気である。大丈夫だとは思うが、元々ポテンシャルの高い子なので、抜かれたらどうしようと少し心配になる。
 テストが終わった後の休みの日、解放感に包まれる遊びをしている最中に、涼夏がこう切り出した。
「そう言えば、今年のクリスマスの企画を考えたから発表する。意見を聞きたい」
 去年に引き続き、今年もクリスマスは涼夏の担当だ。協力するつもりはあったのだが、誕生日の京都旅行のお返しがしたいと涼夏が立候補した。
「去年は鍋を作ったね」
 絢音が楽しかったと笑う。みんなで具材を持ち寄って鍋を作り、ケーキも作って、後はボードゲームをしたり、絢音がギターを教えてくれたりと、盛り沢山なクリスマスだった。もっとも、企画した本人は妹に邪魔されたとむくれていた。
 涼夏はうむと頷いてから、今年は外に出ようと語った。
「題して、千紗都とラブラブクリスマス」
「ひどいタイトルだ」
 奈都と綺麗に声がハモる。涼夏に仲良しかと突っ込まれたが、実際にひどいタイトルなので仕方ない。
 詳細を求めると、涼夏は得意げに胸を張った。
「クリスマスについて調べたところ、日本ではこの日はカップルで過ごす人が多いことがわかった」
「周知の事実だね。自明」
「衝撃的な事実だ。私は友達と過ごしたことしかない」
 涼夏が大袈裟に首を横に振る。そもそも恋人がいたことがないので当たり前だし、学生に限定すれば、友達と過ごしている人の割合も同じくらい多いのではなかろうか。
「そこで、もし恋人と過ごしたらどんな感じなのかを体験しようというのが、今年の企画の趣旨である」
 涼夏がそう続ける。絢音と奈都が身を乗り出しながら頷いた。どうやら企画の意図が刺さったようである。
「4人でデートするの?」
「いや、時間を切って3回に分ける。その間、残った二人は何かしてる」
「組み合わせごとに仲が深まって良さそうではあるね」
 私がそう評価すると、涼夏に少しズレていると指摘された。あくまでタイトル通り、私とラブラブするのが目的の企画とのことだ。
「千紗都は別に構わない? 嫌なら言ってね」
「みんながしたいなら全然いいけど。私もデートプランを考えた方がいい?」
「千紗都をエスコートするのが趣旨だから、千紗都は受け身でいいぞ? 考えたいなら考えてくれていいけど」
 涼夏が期待する眼差しを向けたが、静かに首を振った。デートプランを考える遊びも楽しそうではあるが、それよりも3人が何を持ってくるかの方が興味がある。
「チサとデートか」
 奈都がどうしたものかと呟く。言い出しっぺもまだ何も考えていないようで、どうしようねと乗っかった。
「千紗都と二人でいることは多いけど、デートだって意識して行動したことは一度もない気がする。その点では、千紗都を常に性的な目で見てるナッちゃんは強そうだ」
「見てないから」
「私も比較的千紗都のことを性的な目で見てるけど、デートだって考えたことはないね。ナツと違って緊張してる」
「私も緊張してるから!」
 奈都が必死にそう言うが、大して緊張してなさそうだ。そもそも絢音も緊張感のない顔で笑っている。
「デートねぇ」
 前に奈都と水族館に行って、帰りに観覧車に乗ってキスしたが、恐らくああいうものだろう。まあ、悪くはない。
 キスと言えば、いっぱいチューするゲームはどうなったのかと聞くと、涼夏は当然覚えていると頷いた。
「そもそもそれが発端。自然にキスするシチュエーションを考えたらデートに行き着いた。だから各位、デートの途中もしくは最後に千紗都とキスするように」
「そういうゲームなんだね」
 奈都が頑張るぞと拳を握る。キスなど四六時中しているが、3人ともまだそれを目的にしても楽しめるくらいには飽きていないようだ。有り難い。
 どんな一日になるか想像もつかないが、風邪だけは引かないよう気を付けて当日を待つことにしよう。
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