ナウパカ

金澤雪

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7話

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次の水曜日、例年より長く続いている秋雨前線が空を薄暗く覆っていた。

肘に顎を乗せ、ただ流れていく雲を鏡越しに見ていた。

「ねえ。寛子聞いてる?」

「え、あ、ごめん。ボーっとしてて。なんだっけ?」

「この前彼氏を親に合わせたんだけど両方めちゃくちゃ緊張しててさ笑
まだ結婚って歳でもないのにね笑」

寛子は学校終わりに小学校のときからの親友の仁科(にか)とカフェでお茶をしていた。

「ねえ、目のクマすごいよ。どうしたの?」

「ああ、まぁいろいろあって…」

ここ1週間まともに寝れていなかった。

1週間に彼に言い放った言葉がずっと心の中に刺さっている。

どんなに後悔しても拭えない。そのくらい彼を傷つけた。

それでも彼は言った。
 ”来週もいつもの時間にここで待ってるから”

後悔と共に彼の言葉がずっと心に残っていた。

仁科はうつむく寛子の手を取って語りかけるように話した。

「ねえ。溜め込んでないで吐いちゃいなよ。私たちそんな薄っぺらい仲じゃないでしょ。辛いときは支えあうのが親友でしょ?」

彼女の言葉に目頭が熱くなった。そして事の顛末をすべて話した。

話し終わると、自然に涙があふれていた。

「もう、私どうしたらいいかわからなくて…」

仁科は鞄の中からハンカチを取り出し寛子に渡した。

「そっか、お父さんが出てきたのね。確かに寛子のお父さん昔から極端に人を選ぶよね」

仁科はカフェモカを一口飲み話をつづけた。

「でも、たったそれだけのことで簡単に諦められるの?」

「たったそれだけって。仁科にはわかんないよ。私の気持ちなんて」

「確かに私の家はお金持ちじゃない。恋人の縛りなんてない。寛子とは違うかもしれない。だけど、そんなことで諦められるほど恋は簡単じゃない。愛はいろんな逆境を超えるの。 だから人は恋に落ちて、溺れて、泣くの。今の寛子みたいにね」

外はまるで寛子の心の中を表すかのように強い雨が降り出した。

時刻は17時30分を少し回っていた。

「早く行っておいで。彼、まだきっと待ってるよ」

そう言って仁科は鞄の中に入っていた折り畳み傘を差し出した。

溢れる涙を拭って傘を受け取り、立ち上がった。

「仁科。ありがと」

そう言って、寛子は店を出て駅に向かって走った。

いろんな感情が混ざっている。その中で一番強い気持ちを心から取り出して足を前に進める。

”会いたい”

今はそれだけでいい。
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