13 / 18
12話
しおりを挟む
約一時間後、寛子は家に着いた。
今は八時半。この時間ならまだ父は家にいるはず。
寛子は静かに深呼吸をし、ゆっくりと玄関を開け、リビングに向かった。
「ただいま」
「寛子!どこに行ってたの!連絡もせずに!泊まる時 は連絡しなさいっていつも言ってるでしょう!もう、心配かけないで。」
母は物凄い勢いで心配の言葉を寛子に放った。
心配する母の姿を見て少し申し訳なく思った。
「うん、ごめんなさい」
誤った後、父を見ると何事も無かったかのように新聞を読んでいた。
寛子は父の方に足を進めた
「お父さん。お話しがあります」
父は新聞を閉じる事無く返事をした。
「なんだ。言ってみろ」
寛子は少し唾を飲み込み話し始めた。
「お父さんに私と彼の事認めて欲しい」
母は少し驚いた顔をしていたが、父は新聞を読み続けたまま寛子の方を見た
「彼。とはお前が公園で会ってる男のことか?お前はそんな関係ではないと言っていたが?」
「あの時は咄嗟にあんな風に言ってしまったけど、私は。私と彼は本気なの。それを認めて欲しい」
父は新聞を閉じ、飲みかけのコーヒーに手を伸ばし一口飲んだ。
「津田颯。工場勤務の17歳。幼い頃に父親を亡くし、去年母親が他界し、家賃3万円のボロアパートに住みながら画家という馬鹿げた将来性の無い夢を持ち、聞くに耐えない給料で暮らしてる彼のどこがいいんだ?」
寛子は全身に虫唾が走った。
「調…べたの。彼の事…」
「当然だ。大事な一人娘に馬鹿げた恋をしてるやつを調べるのは当然だ」
「なんで…なんでそんな事をする必要があるの?それに言ったでしょ?私たちは互いに惹かれあってるの。何も知らないくせになんでそんな事ができるわけ?」
「ああ、特に何も知らんが知る必要もない。こんな少しの情報だけですぐに判断がつく。彼は家に見合う能力を何一つ持ってはいない。絵を描いて儲ける事なんて叶うはずのない夢を持つ男には娘はやれんな」
寛子は拳を強く握った。
「百歩譲って私たちの関係に口を挟むのはいい。だけど…だけど彼の夢を馬鹿にするのは許せない!彼の絵は人を魅了する力があるの!あなたがいう馬鹿げた夢を実現させれるほどの力があるの!それに…それに…」
人生でこれほどの大声を出した事のない寛子は息を切らし、言葉に詰まっていた。
「言いたい事はそれだけか?どちらにしろ、もうお前はその男と会う事は出来ない。諦めるんだな」
顔色一つ変えずに父は淡々と話した。
「どういう事?会えない?彼に何をしたの?」
「さあな。知らなくていい事だ」
そう言って、父は鞄を持ち会社へと出かけた。
急に心臓を握り潰された様な感覚だった。
彼にどんな事をされるのかという恐怖で寛子はその場に蹲った。
今は八時半。この時間ならまだ父は家にいるはず。
寛子は静かに深呼吸をし、ゆっくりと玄関を開け、リビングに向かった。
「ただいま」
「寛子!どこに行ってたの!連絡もせずに!泊まる時 は連絡しなさいっていつも言ってるでしょう!もう、心配かけないで。」
母は物凄い勢いで心配の言葉を寛子に放った。
心配する母の姿を見て少し申し訳なく思った。
「うん、ごめんなさい」
誤った後、父を見ると何事も無かったかのように新聞を読んでいた。
寛子は父の方に足を進めた
「お父さん。お話しがあります」
父は新聞を閉じる事無く返事をした。
「なんだ。言ってみろ」
寛子は少し唾を飲み込み話し始めた。
「お父さんに私と彼の事認めて欲しい」
母は少し驚いた顔をしていたが、父は新聞を読み続けたまま寛子の方を見た
「彼。とはお前が公園で会ってる男のことか?お前はそんな関係ではないと言っていたが?」
「あの時は咄嗟にあんな風に言ってしまったけど、私は。私と彼は本気なの。それを認めて欲しい」
父は新聞を閉じ、飲みかけのコーヒーに手を伸ばし一口飲んだ。
「津田颯。工場勤務の17歳。幼い頃に父親を亡くし、去年母親が他界し、家賃3万円のボロアパートに住みながら画家という馬鹿げた将来性の無い夢を持ち、聞くに耐えない給料で暮らしてる彼のどこがいいんだ?」
寛子は全身に虫唾が走った。
「調…べたの。彼の事…」
「当然だ。大事な一人娘に馬鹿げた恋をしてるやつを調べるのは当然だ」
「なんで…なんでそんな事をする必要があるの?それに言ったでしょ?私たちは互いに惹かれあってるの。何も知らないくせになんでそんな事ができるわけ?」
「ああ、特に何も知らんが知る必要もない。こんな少しの情報だけですぐに判断がつく。彼は家に見合う能力を何一つ持ってはいない。絵を描いて儲ける事なんて叶うはずのない夢を持つ男には娘はやれんな」
寛子は拳を強く握った。
「百歩譲って私たちの関係に口を挟むのはいい。だけど…だけど彼の夢を馬鹿にするのは許せない!彼の絵は人を魅了する力があるの!あなたがいう馬鹿げた夢を実現させれるほどの力があるの!それに…それに…」
人生でこれほどの大声を出した事のない寛子は息を切らし、言葉に詰まっていた。
「言いたい事はそれだけか?どちらにしろ、もうお前はその男と会う事は出来ない。諦めるんだな」
顔色一つ変えずに父は淡々と話した。
「どういう事?会えない?彼に何をしたの?」
「さあな。知らなくていい事だ」
そう言って、父は鞄を持ち会社へと出かけた。
急に心臓を握り潰された様な感覚だった。
彼にどんな事をされるのかという恐怖で寛子はその場に蹲った。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる