血塗れダンジョン攻略

甘党羊

文字の大きさ
53 / 146

ババアと悪魔、時々モブ

しおりを挟む
 ダンジョン生活の唯一の安らぎスポットと化している十層毎に訪れるババアの店に到着した。今回はどんなアイテムがあるのかとワクワクするし、嫌悪感を抱かれずに普通に接してくれる人? との交流は荒んだ自分の精神に優しい。

 ‎......の、だったが......

「‎.........‎‎...えっ!? 誰っ!?」

 ババアは居た。いつもの様に商品の前に座っている。ここまではいつもの光景。

 だが、今回はそこに一つ見慣れないモノがあった。

「‎......えっと......紫色の肌をしてイカつい角が二本生えている......女性? 女性......であってるよね?」

 悪魔族とか魔族とかなんだろうとは思う。寧ろそうとしか見えないボーイッシュな感じの人がババアの後ろに立っている。余りにも現実感のない物で、作り物のようにしか自分の目からは見えない。
 雰囲気では女性の物なんだろうなとは思うけど、如何せん胸部の装甲が紙。ペラッペラの胸部装甲のせいで男装の麗人とも、男の娘ともどっちとも取れてしまう。ほんの微かな膨らみなのか......それとも大胸筋か全然区別ができない。
 対人スキルが全くと言って良いほど鍛えられていない自分にとって、ここは相手側から何かアクションを起こしてくれるまで待つのが正解だろう。

『ヒッヒッヒ......マダイキテイタネ。イラッシャイ』

「......あっはい......じゃあ見せてもらうよ」

 まるで後ろの人は商品かマネキンとでも言うのだろうか。一番気になっている事には全く触れられずにいつも通りの挨拶をもらう。
 微動だにしていないから本当に作り物か何かで商品なのだろうか? 買いたいとは思えない。

「......あ、そうだ。ねぇ、ババアはこのダンジョンが何階層まであるのか知ってたりする?」

『ナンジャキュウニソンナコトキキオッテ。マァ、シッテオルヨ。ソレヨリモ......ヨウヤクウシロノコレニツイテ、キクキニナッタカトオモッタンジャガノウ......ヤレヤレ、コレダカラサイキンノワカゾウハ......』

「......ソレは何か触れちゃいけないモノかと思ったからスルーしてた。だって怖いじゃん......人か道具かもわからない悪魔のような姿形したナニカなんて」

『コンナババアニハチュウチョナクハナシカケルクセシテ......キモッタマノチイサイヤツダネ』

「生き物とわかっていればまだ......でもこの人? 全く動かないからさ......もし人じゃなかったら人形に話しかけちゃった痛いヤツにはなるじゃん」

『キヒヒッ......ハナシカケテゴランヨ。モシカシタラヘンジシテクレルカモヨ......ヒヒッ』

「............えぇぇぇ」

『ヒヒヒッ......アーアーカワイソウダネェ......セッカクコゾウノタメニヨウイシタコノコナノニ......』

 ババアの片言も相俟ってものすごく胡散臭く、わざとらしい演技になったババアにイラッとする。終いにはヨヨヨ......と、泣き真似さえ始めてしまったババアを見て観念した自分は、このナニカを徹底的にスルーする事にしようと決める。

「......ハァ」

 さて、気を取り直して十層毎のご褒美タイムだ。ゆっくりじっくり必要な物や、この先必要になりそうな選んでいこう。

 簡易鑑定を掛けながらじっくり商品を吟味していく。階層を経る毎に物品の質が少しずつ上がっているのはRPGあるあると言ったところか。
 効果が見えないし、ババアは説明してくれないので名前だけで判断するしかない......なので若干ギャンブルになってしまうが、この偏屈ババアにそこまで求めるのは無理だから素直に諦める。ここまではクソみたいな効果の物や呪われた装備品のような物は無かったから信用はしている。

「......あっコレ......コレも良さそう」

〈微速のベルト〉〈硬質化の手袋〉〈貫通寸鉄〉〈快適なパンツ〉〈鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ〉

 特に目を引いたのはこの五つ。
 先程のスライム戦で溶けて燃えた剣帯とバンテージの代わりになるベルトと手袋、禍々しい尖り方をしている寸鉄、名前に惹かれたパンツ、長持ちしそうなシャツ。
 寸鉄については詳しい事はわからないけど、殴打の威力アップと刺突武器の合わさった暗器みたいな認識がある。刺突武器と言っていいのか分からないほどにエグい返しと、多分毒とかを仕込める溝みたいな物が付いてとても心を揺さぶられた。

 それと普通に替えの衣類を数点購入し、手持ちの魔石を売払って買い物は終了した。ここまで来ると結構値段が上がるらしくて手持ちのポイントがゴッソリ減ってしまった。
 特に快適なパンツが高かったけどコレは必要経費だから仕方ない...‎...

『ヒヒッ‎......マイドアリ。サテ、ボウズヨ......オヌシハサンザンムシヲシテイタガ、ボウズニコヤツヲショウカイシヨウ』

 買い物を終えたのでいつも通り寝ようと思い、布団替わりの毛布を敷いて寝床を作っていた所にババアから声がかかる。

「えっ......ソレ、本当に生き物だったの!? ババアの演技が大根すぎて揶揄ってるのかと思ったよ」

『ウルサイノウ......マァヨイ。ホレ、ジコショウカイデモシナ』

 ババアに促されたその人形が本当に動き出し、丁寧な礼をしてから話し始めた。

『初メマシテ、私ハ悪魔■■■デス。以後オ見知リ置キヲ』

 ババアよりも聞き取りやすい喋りをする悪魔さん。声が女性のものに聞こえたので、この人はきっと女性なんだろう。名前はノイズが掛かったように聞こえなかった。

「はじめまして、自分は吉持    匠です。何十分も動きも瞬きもせずに立ってたから作り物かと思ってスルーしてました。ごめんなさい」

 聞き返すのもアレなのでそのまま挨拶を返し、スルーしていた事を謝る。なんだろう......外にいた頃よりも人間らしい会話をしている気がする。

『イエ、オ気ニナサラズ。良イト言ウマデ絶対ニ動クナト彼女カラノ指示ガアリマシタノデ、貴方ハ悪クアリマセン』

 全ての元凶はババアであると判明した。まぁババアの機嫌を損ねてお店が閉店してしまうのが怖いから何も言わないけど。

『ヒヒヒッ......ナンジャ、ワラワガワルイミタイニイイオッテ』

『ミタイデハ無イト思イマスガ......』

『マァヨイ......ボウズ、イマカラコヤツトタタカッテミロ』

「............は!?」

 ババアと悪魔さんのやり取りを眺めていると、急に圧倒的に格上と思われる悪魔と戦えとババアからの宣告が下った。


 ─────────────────────────────

 吉持ㅤ匠
 闘人

 Lv:65→67

 HP:100%
 MP:49%

 物攻:130
 物防:1
 魔攻:70
 魔防:1
 敏捷:130
 幸運:10

 残SP:2→6

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残205.4L
 不死血鳥
 状態異常耐性Lv8
 拳闘Lv7
 鈍器Lv9
 小剣術Lv4
 簡易鑑定
 空間把握Lv8
 投擲Lv7
 歩法Lv5
 呪耐性Lv3
 病気耐性Lv4
 解体・解剖
 回避Lv4
 溶解耐性Lv2
 ■■■■■■

 装備:
 魔鉄の金砕棒
 肉食ナイフ
 貫通寸鉄
 鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ
 快適なパンツ
 再生獣革のブーツ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 丈夫なリュック
 厚手の肩掛け鞄
 微速のベルト
 ババァの店の会員証ㅤ残高220

──────────────────────────────
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...