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制御不能
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何時間くらい寝たかわからないが、いつもと変わらずにダンジョンの中で目が覚める。
時間や人目に追われる生活から、危険はあるが寝たい時に寝て動きたい時に動ける生活はいい。とても性に合っている。
「......んんっ......普通に生きていた頃にはあれだけ嫌だった目覚めが全く嫌じゃなくなっている。ダンジョンがいいのか、他人のいない生活がいいのかわからないけど、とっても楽しい。......さ、今日も頑張ろう」
現代を生きる人間らしい生活から野生動物のような生活になった事でストレスから解放され、これまで鬱だった生きるという事が楽しくなってきている。
そんな事を考えながら一つ伸びをし、固くなった身体を解しながら身支度を整えていく。
「ふぅ......さて、この元呪いの武器上手く扱えるようにしないと。どう扱えばいいのか全然わからないや」
身支度を終えたら、寝る前に練習してから先へ進むと決めた目の前の禍々しい武器と向き合う。相変わらず触ると呪われそうな見た目をしている。
三節棍の練習をすると決めていたので、服装はなるべく手持ちの中でボロボロな物を選んで着た。
「............」
解呪されているとわかっていても触るのを躊躇してしまうが、意を決して棒を手に取り感触を確かめるように軽く素振りをしてみる。
これ、三節棍と言われているけれど、今はただの頑丈な細めの棒。禍々しい彫り物があるが手には馴染むし、とても振りやすい。
だが、コレはどうやって三節棍タイプにすればいいのだろうか。悪魔さんはギミックの使い方の説明をしてから帰って欲しかったなぁ......
あまりベタベタ触りたくはないけれど使い方を覚えておけば戦闘時の選択肢が増える。今でも楽しい楽しいダンジョン攻略を、もっともっと楽しく、より快適に進めるようにここは妥協してはいけない。
「............まず継ぎ目がどこにあるのかからなんだけど......コレ、すっごい精巧に作られているよ。目視ではもちろん、指でなぞっても全然わからないんだけど......えぇぇぇ......」
怪しそうな場所を弄っても、触っても、引っ張ったり捻ったりしてもウンともスンともいわない。ダンジョンで一人禍々しい棒を真面目に弄り回していると、妥協してはいけないとさっき決意したが早くも心変わりしてしまいそうなくらい気が滅入る......やっぱりコレ、まだ呪いかなにかが残っているのではないだろうか。
「振っていればそのうち何かが起こるかもしれない。とりあえず無心で振り続けてみよう......」
その後しばらくビュンビュン、ヒュンヒュンと誰もいない洞窟の部屋の中に素振りの音が木霊した。
◆◆◆
......
............
..................
「だぁぁぁぁぁっ!! なーんにも起きないじゃないかぁぁぁぁっ!! 本当に三節棍なのかよコレ!?」
手の皮がズル剥け、この身体のパッシブスキルで勝手に再生という事を三度繰り返したところで匙を投げた。もう無理、わけがわらないよ。
「......あははははっ!! まさか悪魔さんに騙されたとか? そしてこうやって自分があたふたしてるのを何処かから見て楽しんでたりするのかな?」
人、もしくは人型の生き物は意地が悪いって理解した。ましてや悪魔さんは悪魔だから意地が悪いのは仕方ないのだろう。きっとそれが悪魔というモノ。
「次に会った時はこの棒で思いっきりシバいてやろう。腕を引っこ抜かれたからお互い様って事で......」
次に悪魔さんに会ったらやる事を決めた事でモチベーションが回復し、再び素振りを始める。
回復したモチベーションに呼応するように、三節棍もどきを振れば振るほどに洗練されて鋭くなっていく振り。それは三節棍もどきが金砕棒や金棒よりも、振ることに適していたからか......
習った事はもちろんないので完全に自己流だが、豊富な実戦経験とえげつない膂力、身体能力のおかげだろうか......素振りだけならば、最早常人では目視できない程のレベルにまで到達していた。
「あはははははははっ!! 楽しいっ!!」
目に見えて振りの鋭さが、速さが、キレが、風切り音が変化していくのがわかる。
握り方一つ取ってもそうだし、力の入れ加減、力の入れ方、力の入れ時、手首の返し、捻り、重心、スタンス......改善点が沢山見つかり、一つ一つ改善していく毎に明らかに変わる。それがとても楽しい。
三節棍の練習をしていた筈が、途中からただの棒術の練習へと変化していた。が、トレーニングでハイになっている彼は全く気付いていない。
――そして彼に悲劇が訪れる......
「なるほど......捻りながら突けば貫通するのか。ただ突くよりもいいな......ただ少し隙が大きくなる......か」
振りの練習から今度は突きの練習に変え、黙々とトレーニングに勤しんでいた彼は、ついに三節棍のギミックを発動させる事となる。
「んんーっ!! かなり長い時間やってたみたいだなぁ......手の修復を何度やったかわからないくらい血液が減ってるわ......塵も積もれば山となると言うかなんて言うか......細かいモノも案外バカにならないな」
ステータスをチェックし、血液の残量やスキルを確認する。棒術が生えていた事に喜んだ後に正気に戻った。
「......途中から完全にただ棒を振るっていただけだったわ。どれもこれもコレがただの棒なのがいけないんだ......ハァ」
溜め息を一つ零した後、最後に炎を纏わせる技を試して次の階層へ行こうと考え、実行に移した。
手頃な岩を見つけたので棒を振りかぶり大上段に構えを取る。
「ふぅぅぅぅぅぅ.........シッ!!!」
深呼吸をして心を落ち着け、今の自分に出来る最速で振り下ろす。そして、振り下ろすと同時に魔法を発現させる。
――カシャン
そんな不穏な音が聞こえてきた。
慌てて棒を確認すると、なんと三節棍に早変わりしている。
「――ッッッ!!!」
慌てて振り下ろしを中断するがもう遅い。むしろそのまま振り下ろした方が正解のようだった。
ブチブチッと腕の筋繊維が嫌な音を立てたが振り下ろしは止まる。
が、棒ならばそれでよかったが、今の獲物は三つに別れた三節棍。手元のモノを止めても振り子のようになった先の二つは急には止まれない。
「......あ゛ぁっ!!?」
コを描くように地面を抉りながら先端が己に帰ってきて、股間に直撃。
それならばまだ不幸な事故で済んだが、豆腐ボディは棒の攻撃力に勝てず......呆気なく身体を分断させられ、二つの汚い音を奏でた。
─────────────────────────────
吉持ㅤ匠
闘人
Lv:67
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:6
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残199.8L
不死血鳥
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
棒術Lv4
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
呪耐性Lv3
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
溶解耐性Lv2
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨の三節棍
肉食ナイフ
貫通寸鉄
鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ
快適なパンツ
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
微速のベルト
ババァの店の会員証ㅤ残高220
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時間や人目に追われる生活から、危険はあるが寝たい時に寝て動きたい時に動ける生活はいい。とても性に合っている。
「......んんっ......普通に生きていた頃にはあれだけ嫌だった目覚めが全く嫌じゃなくなっている。ダンジョンがいいのか、他人のいない生活がいいのかわからないけど、とっても楽しい。......さ、今日も頑張ろう」
現代を生きる人間らしい生活から野生動物のような生活になった事でストレスから解放され、これまで鬱だった生きるという事が楽しくなってきている。
そんな事を考えながら一つ伸びをし、固くなった身体を解しながら身支度を整えていく。
「ふぅ......さて、この元呪いの武器上手く扱えるようにしないと。どう扱えばいいのか全然わからないや」
身支度を終えたら、寝る前に練習してから先へ進むと決めた目の前の禍々しい武器と向き合う。相変わらず触ると呪われそうな見た目をしている。
三節棍の練習をすると決めていたので、服装はなるべく手持ちの中でボロボロな物を選んで着た。
「............」
解呪されているとわかっていても触るのを躊躇してしまうが、意を決して棒を手に取り感触を確かめるように軽く素振りをしてみる。
これ、三節棍と言われているけれど、今はただの頑丈な細めの棒。禍々しい彫り物があるが手には馴染むし、とても振りやすい。
だが、コレはどうやって三節棍タイプにすればいいのだろうか。悪魔さんはギミックの使い方の説明をしてから帰って欲しかったなぁ......
あまりベタベタ触りたくはないけれど使い方を覚えておけば戦闘時の選択肢が増える。今でも楽しい楽しいダンジョン攻略を、もっともっと楽しく、より快適に進めるようにここは妥協してはいけない。
「............まず継ぎ目がどこにあるのかからなんだけど......コレ、すっごい精巧に作られているよ。目視ではもちろん、指でなぞっても全然わからないんだけど......えぇぇぇ......」
怪しそうな場所を弄っても、触っても、引っ張ったり捻ったりしてもウンともスンともいわない。ダンジョンで一人禍々しい棒を真面目に弄り回していると、妥協してはいけないとさっき決意したが早くも心変わりしてしまいそうなくらい気が滅入る......やっぱりコレ、まだ呪いかなにかが残っているのではないだろうか。
「振っていればそのうち何かが起こるかもしれない。とりあえず無心で振り続けてみよう......」
その後しばらくビュンビュン、ヒュンヒュンと誰もいない洞窟の部屋の中に素振りの音が木霊した。
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手の皮がズル剥け、この身体のパッシブスキルで勝手に再生という事を三度繰り返したところで匙を投げた。もう無理、わけがわらないよ。
「......あははははっ!! まさか悪魔さんに騙されたとか? そしてこうやって自分があたふたしてるのを何処かから見て楽しんでたりするのかな?」
人、もしくは人型の生き物は意地が悪いって理解した。ましてや悪魔さんは悪魔だから意地が悪いのは仕方ないのだろう。きっとそれが悪魔というモノ。
「次に会った時はこの棒で思いっきりシバいてやろう。腕を引っこ抜かれたからお互い様って事で......」
次に悪魔さんに会ったらやる事を決めた事でモチベーションが回復し、再び素振りを始める。
回復したモチベーションに呼応するように、三節棍もどきを振れば振るほどに洗練されて鋭くなっていく振り。それは三節棍もどきが金砕棒や金棒よりも、振ることに適していたからか......
習った事はもちろんないので完全に自己流だが、豊富な実戦経験とえげつない膂力、身体能力のおかげだろうか......素振りだけならば、最早常人では目視できない程のレベルにまで到達していた。
「あはははははははっ!! 楽しいっ!!」
目に見えて振りの鋭さが、速さが、キレが、風切り音が変化していくのがわかる。
握り方一つ取ってもそうだし、力の入れ加減、力の入れ方、力の入れ時、手首の返し、捻り、重心、スタンス......改善点が沢山見つかり、一つ一つ改善していく毎に明らかに変わる。それがとても楽しい。
三節棍の練習をしていた筈が、途中からただの棒術の練習へと変化していた。が、トレーニングでハイになっている彼は全く気付いていない。
――そして彼に悲劇が訪れる......
「なるほど......捻りながら突けば貫通するのか。ただ突くよりもいいな......ただ少し隙が大きくなる......か」
振りの練習から今度は突きの練習に変え、黙々とトレーニングに勤しんでいた彼は、ついに三節棍のギミックを発動させる事となる。
「んんーっ!! かなり長い時間やってたみたいだなぁ......手の修復を何度やったかわからないくらい血液が減ってるわ......塵も積もれば山となると言うかなんて言うか......細かいモノも案外バカにならないな」
ステータスをチェックし、血液の残量やスキルを確認する。棒術が生えていた事に喜んだ後に正気に戻った。
「......途中から完全にただ棒を振るっていただけだったわ。どれもこれもコレがただの棒なのがいけないんだ......ハァ」
溜め息を一つ零した後、最後に炎を纏わせる技を試して次の階層へ行こうと考え、実行に移した。
手頃な岩を見つけたので棒を振りかぶり大上段に構えを取る。
「ふぅぅぅぅぅぅ.........シッ!!!」
深呼吸をして心を落ち着け、今の自分に出来る最速で振り下ろす。そして、振り下ろすと同時に魔法を発現させる。
――カシャン
そんな不穏な音が聞こえてきた。
慌てて棒を確認すると、なんと三節棍に早変わりしている。
「――ッッッ!!!」
慌てて振り下ろしを中断するがもう遅い。むしろそのまま振り下ろした方が正解のようだった。
ブチブチッと腕の筋繊維が嫌な音を立てたが振り下ろしは止まる。
が、棒ならばそれでよかったが、今の獲物は三つに別れた三節棍。手元のモノを止めても振り子のようになった先の二つは急には止まれない。
「......あ゛ぁっ!!?」
コを描くように地面を抉りながら先端が己に帰ってきて、股間に直撃。
それならばまだ不幸な事故で済んだが、豆腐ボディは棒の攻撃力に勝てず......呆気なく身体を分断させられ、二つの汚い音を奏でた。
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吉持ㅤ匠
闘人
Lv:67
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:6
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残199.8L
不死血鳥
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
棒術Lv4
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
呪耐性Lv3
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
溶解耐性Lv2
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨の三節棍
肉食ナイフ
貫通寸鉄
鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ
快適なパンツ
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魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
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