血塗れダンジョン攻略

甘党羊

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ちょっと気付く

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雪に埋まって数十分――匠は未だ動けないでいた。

「......仕方ない、か」

一定の深さまで落ちたらそれ以上は落ちない雪の様なので落ち続ける事が無かったのは幸いだったが、一度階段まで戻る為に跳躍しようと踏ん張ったらその瞬間に雪が柔らかくなって足が沈んだ。
踏ん張れないと流石に匠でも飛べなかった。跳躍は諦め、壁を固めて上に登ろうと指をかけたらその瞬間に雪の固さが消えるクソ仕様。
どうやらこの階層は入ったら攻略or死しかないらしい。因みにナイフの触手を使っても無理だったので脱出は無理と早々に見切りをつけた。

「いけ、ヒヨコ」

そんな匠は奥の手、困った時の必殺ヒヨコ爆弾を躊躇う事なく切り出した。無理なモノには理不尽なモノを当てれば大抵どうにかなると、匠は学んでいた。
爆風が自分に届かない距離まで離れたら爆発して雪を吹き飛ばせと命令を下して送り出した。最初の頃よりも全体的に羽毛がモワッと立体的になって身体が大きく見える気がした。ヒヨコに何かあったのか訝しむ匠を他所に、ヒヨコはぴよぴよと雪を溶かしながら呑気に歩いていった。

「きっと成長期なんだろうなぁ......」

湧いた疑問に適当な答えを当て嵌めてヒヨコの形に空いた雪のシルエットを眺める。そしてボケーっとしながら爆発を待つ。

「というか、火達磨になった俺が歩き回ってもよかったなぁ......一々服を脱ぐ必要があるけど」

文明に触れて、少し思い切りが無くなったな......と苦笑いを浮かべるが、蛮族スタイルに戻る気は無かった。今の文明レベルに合わせたやり方とかを少しづつ考えていかないといけないと考える。

「うーん......どうにかして身体に火を纏っても衣服や俺自身に引火しない画期的な方法無いかなぁ......そんなファンタジーな事あるわけないよなぁ......
漫画や小説の主人公とかの身体が燃えても燃え尽きない服や絶対に大破しない下半身装備とかってダンジョンで手に入ったりしないのかな......どっちも同じファンタジー的な現象だし......あ! 悪魔さんやババアに頼めばどうにかなりそうかも......」

若干現実逃避気味に、思考が脇道に逸れていく。
色々とファンタジーに引っ張られているが、重要なというか最もファンタジー化していて欲しい箇所にはキッチリと現実が残る現状を打破する方法なんて人には全く思いつかないので仕方ないだろう。
そんな匠に残された唯一の希望はファンタジーど真ん中なババアと悪魔さんだった。あの大悪魔たちならば匠が今抱えている問題をどうにかしてくれそうなのだから。匠が生まれてきて初めての縋れる他人というのも相俟って、匠から寄せられている信頼が凄いことになっていた。

「......次にババアたちに遭ったらこの事をどうにかできないか聞いてみよう。こんな凄い魔改造既製品を作れるんだもん、どうにかできるはずだ! それまではまぁ、これまでと何ら変わらないいつもの蛮族スタイルで乗り切るしかないわな。後は爆破されるまで自分を燃やさない炎が出せるか試そう」

結論、THE丸投げ&現状維持。
そもそも脳筋に頭を使えと言う方が酷というもの。

「自分だけ燃えない火......出ろ」

原理なんてわからない試みは勿論失敗し、匠の手はウルトラ上手に焼け焦げた。心做しかいつもより強い炎が出て匠の手を焼き焦がした。

「............」

何故所々炭化する程の炎が出たのか、原理も理由もさっぱりわからない。そこに残るのはいつもよりも激しく焼け焦げたとう結果だけ。
何故? どうして? 深く......深く......考えに考え、一つの心当たりに辿り着く。

「......あのクソゴミカス野郎の血縁をチリも残さず燃やし尽くす程の火出ろ」

匠の試みは成功し、さっき出したモノよりも強烈な炎が生まれ、匠の手を焼いた。
あっという間に手を包みこんで炭化させ、それがボロボロと崩れだすだけに留まらず、手首に残った炎はゆっくりゆっくりジワジワと肘まで延焼していった。その炎は消そうと思っても火は消えなかった。

答えは――出た。因みに自分を燃やさない火系の魔法は、無い。

「まさかねー俺自身が俺を焼き殺そうと思っていたなんて思わなかったわ。そりゃあこんな風になるまで燃える訳だわ」

肘から先を手刀で切り落として腕を新品にした後、その場で寝そべった。やってらんないという気持ちになる。俺自身がアレらを細胞一つも残さず殺そうと思う気持ちと共に、アレらの遺伝子が俺を構成しているのが許せないって気持ちがあればこそのこの炎魔法。
俺がこの炎魔法を得たのは、復讐心みたいなモノが炎を象ったからなのだろうか......

「心を燃やせってあの人が言ってたのってこういう事だったのかもしれないなぁ......アハハ」

思わず笑ってしまう程の強烈な諸刃クズ滅の剣。俺らしくていいわな、と思う。復讐心とかの暗い気持ちを燻らせ続けた結果、ファンタジー出現によって発現した炎魔法がこうなるなんて笑えてくる。

「......ん? 待てよ......まさか」

ダンジョンに入って力をつけていった結果、人間を卒業していっている自分。進化していく中でどんどん人から離れしていったのはアレらの遺伝子から抜け出したかったってのもあるのか?

「ファンタジー小説とかでよくある人間の上位種族って確か......ハイヒューマンとか仙人、神人とかだもんなぁ。やっぱりそういう事? とりあえず人類は敵って思っていたのもあるだろうし......あとあのクソ総帥やババア、悪魔さんとの縁もあるだろうけど」

悲しい事故が起きた結果、因子を取り込んでしまっていたというのもあるが......こうなるべくしてこうなった感が凄かった。

「なんだ、いい事ばかりじゃないか。あ!! もしかして焼き尽くそうとして全身を燃やし続ければ......あのクソ共の遺伝子からの脱却が出来るかもしれないのか?」

もしかしなくても血液ストックが無くなるまで燃え続けて死に至る可能性の方が高いのだが、匠の残念な頭脳はその可能性を排除して都合のいい可能性しか頭には残さなかった。

「............フフフフフフフフ、アハハハハハハハハハハハハ『ズドォォォォォォォォォォォォォン』ハハハハハハハハハハッ!! よし!! 次に進化する時は自分自身を燃やしながら生まれ変わるつもりでやってみよう!!!」

大仰にまるで悪役のように高笑いする匠の背後で、丁度よく大爆発が起こった。それはまるで物語の悪役、人類の......世界の敵の誕生を祝う祝砲の様であった。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
『レベルが3上がりました』

背後でアポカリプスのような破壊が起きているにも関わらず嗤う事を止めない。あのクズという呪遺伝子から脱却という可能性が出たのだ、仕方ないだろう。
そしてアナウンスを聞き逃した。

「早くレベルカンストしよう......こんなとこ早く終わらせてモンスターをぶち殺して回らなきゃ」

やる気の出てきた匠は金砕棒を振り回して周囲の雪を強引に吹き飛ばし、視界を遮る雪の壁を排除。久しぶりに外気に晒された。

「あれ? 吹雪が止んでるじゃん。んお? 空間認識も出来るし踏ん張りもきく......うん、まぁいいや。先に進める!! よーし殺しまくるぞー!!!」

雪の中に隠れたギミック担当モンスターを知らず知らずのうちに撃破した匠は一直線に階段へと向かっていった。


─────────────────────────────

 吉持ㅤ匠

 人化悪魔

 職業:暴狂血

 Lv:83→97

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:300→350
 物防:1
 魔攻:200
 魔防:100
 敏捷:290→350
 幸運:30→20

 残SP:17→59

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残502.2L
 不死血鳥
 部位魔化
 魔法操作
 血流操作
 漏れ出す混沌
 上位隠蔽
 中位鑑定
 中位収納
 中位修復
 空間認識
 殺戮
 風神那海
 状態異常耐性Lv10
 壊拳術Lv5
 鈍器(統)Lv8
 上級棒術Lv4
 小剣術Lv7
 歩法Lv10
 崩打
 強呪耐性Lv5
 石化耐性Lv4
 病気耐性Lv4
 熱傷耐性Lv8
 耐圧Lv3
 解体・解剖
 回避Lv10
 溶解耐性Lv6
 洗濯Lv3
 アウナスの呪縛

 装備:
 壊骨砕神
 悪魔骨のヌンチャク
 肉触手ナイフ
 貫通寸鉄
 火山鼠革ローブ
 再生獣希少種革のスラックス
 再生獣革のブーツ
 貫突虫のガントレット
 聖銀の手甲
 鋼鉄虫のグリーブ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 迷宮鋼の棘針×2
 魔法袋・小
 ババアの加護ㅤ残高17000

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