異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

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ハチミツ罠

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 ――皆さんはハニートラップというモノをご存知だろうか

 そのまま訳すと蜂蜜の罠

 ざっくり言うと、ハニートラップ――スパイが行う色仕掛けによる諜報活動。女性スパイ等が、男性に仕掛ける場合を指す甘い罠という事ですね。

 甘い匂いに誘われてしまったカブトムシみたいにホイホイされてしまうと、後はズルズルと機密情報やら漏らすだけの愚か者に成り下がる。


 ちなみに男が仕掛けるバージョンでもそのままハニートラップ、もしくは逆ハニートラップなんだってね。上手い名称を考えろよとは思う。俺に聞かれても上手い名前は思いつかんけど。

 このトラップで、男はいい女に嵌められるがハメられる。女はミッションを達成。お互い良い思いをできるからwin-winだと思うかもしれないけど、嵌められたとわかった男はすっごく情けなく、やるせない気持ちになるんだよね。

 ......この罠で一番酷いところは、傍から見ると見え見えの罠に飛び込んで被害者ヅラすんなや......と、思うところだろう。同情なんて一切されない。
 しかし実際に仕掛けられてみると非難していたヤツらでも嵌められると思う。

ㅤ死ぬほど抗い難いトラップであり、以後近付いてくるヤツらが全て、ハチミツを塗りたくった擬似餌にしか見えなくなる。

 人間不信製造機。

 ハニトラなんて言葉が世間に浸透していても、ハニートラップや美人局は無くならない。
 だんだんとやり口が巧妙になっていたりもするけど、根本的なところは不変なのが笑える。いつの時代もアホばかり。

 なぜならヤラれた男は、こんな女性に言い寄られるなんて一生に一度あるかないか......楽しまなきゃ損だ、自分だけは大丈夫、そんな物に引っかかる訳がない、モテ期キターーーーーなどと思ってしまうからだ。
 キャバクラやそれに似た接待業も、一種のハニートラップみたいな物。


 騙された愚か者は、自分がハチミツ塗れにされていたという真実を知った時に何を思うのだろうか。この罠ほど被害者に同情できない罠は無いと思う。女性からの信頼はもちろん男性からの信頼も、事が発覚した同時に地に落ちてしまう。

 エグい罠だよねぇ......

 純情な男心(笑)を弄ばれたと憤る被害者アホ
 見え見えの罠に飛び込んでいった勇気ある被害者(笑)に、怒りと呆れが入り混じった周囲の人達
 そして、笑いが止まらない仕掛け人達



 ハハハッ......ん?

 ......何故今こんなことを考えているのかって? それと支離滅裂な思考だねって......

ㅤ知ってる。ちょっと自分でも何言ってるかわからないもの。

 HAHAHAHAHAHA......そりゃあ仕方のねぇ事なんだよ......


 ハニートラップに引っ掛かっちまったからだよ!!

 クソがっ!!

 人の心の隙間に、アホほどデスソースを塗りたくった剣山を差し込んできやがって......こんな事をしてきたヤツらはぜってぇ許さねぇからな......


 ウチの子たちが俺をゴミクズや汚物を見るような目で見てきていて辛すぎたねん......

 鬱だ......死のう......



 そう思ってしまう程に追い詰められた俺は、現在全力で走っている。
 元凶を苦しめて苦しめて......苦しみ抜かせてから殺すためだ。

 ヤツらには、前から考えていた魔法を使ってみようと思っている。魔法のイメージはしっかりと出来ているし八割方成功するとは思うが......ぶっちゃけ試運転無しのぶっつけ本番でいい。
 失敗しても成功しても、面白い結果になると確信しているから。


 ......あー、ダメだ。怒りが収まらん......早く元凶の元へと行こうか――



 ◆◆◆



 ハラミを内緒で食べて即バレした日からずっと、いつもと変わらない平穏な日々が続いていた。

 シューティングゲームは最近はお休みの日が多い。手詰まりになったあんこたちは、手詰まりな現状を打開するために独自の攻撃方法を編み出そうと必死になっているからだ。

 その光景を草葉の陰でニヤニヤしながら見守っている俺。

 気持ち悪いとか変質者みたいとか言わないでね。ちゃんと自覚はしているから!

 そんなこんなで数日が経過し、自信満々な顔で俺の元へ集う天使たち。

 そう......今日は、この子たちの頑張りの成果を発表する為のお披露目の式典が開催される。

 あんこはいつも通りドヤ顔可愛い。
 ピノちゃんはいつもよりキリッとした顔をしている。
 ツキミちゃんだけは......ちょっと気負いすぎかなーって感じ。
 ダイフクは興奮気味で微笑ましい。
 ヘカトンくんは精神統一をしているのか、一つの顔以外は目を閉じている。

 子どもたちを個別に撫でながら激励の言葉を掛けていく。

 終わった後もいっぱい撫でてねって上目遣いで可愛いおねだりをされて、危うく天に召されかけた。危ない危ない......ギリギリ致命傷程度の被害で済んだぜ......


 あんこやピノちゃんでも単独クリアは無理と言っているレベルなので、ツキミちゃんとダイフクはペアで挑む。頑張ってほしい。


「はい、それじゃあ最初にプレイしたい子はだーれ?」

 その問い掛けに間髪入れずに手等を挙げていく天使たち。俺のアルティメットな動体視力でも、誰が一番最初に挙手したかの判別が難しかった。

 うん、難しかっただけで、しっかりと一番からビリの子まで判定できましたよ。

 恐ろしく早い挙手......俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!


 天使たちがジャイアントでストロングにエントリーした結果――

 エントリーNo.1:ヘカトンくん
 エントリーNo.2:ツキミダイフクペア
 エントリーNo.3:あんこ
 エントリーNo.4:ピノちゃん

 俺としても意外な結果だったけど、公正公平な判定の結果はこうなった。
 鳥ちゃんズの成長が著しいと言えるだろう。

 悔しそうなあんことピノちゃんが可愛い。よーしよしよし一番取れなかったの残念だったね。



 ◇◇◇



 お披露目会の結果は、皆の成長を実感することが出来たとてもいい時間だった。

 一位はあんこ。
 デカい敵にワザと大きめの氷弾を撃ち込み、それが着弾と同時に氷弾が炸裂。
 これまであんピノ玉で似たような事をしていたけど、ここから一味違った。

 散らばった氷弾は無差別に周囲を襲う事はなく、明確な意志を持って敵に向かっていっていた。
 その氷弾の制御だけでいっぱいいっぱいになるかと思ったけど、それらを制御しながらも新しく弾を生み出して敵を迎撃する。

 多分この子は【多重思考】かそれに似たスキルが生えている。強かわなあんこちゃん激らぶりー。


 そして二位はピノちゃん。
 三位と僅差だったけど、最後の最後で踏ん張って勝ちきった。
 いつも通りのレーザーと炎弾で序盤から中盤まで戦っていた。
 そしていつも越せなかった箇所まで辿り着くと、新技が飛び出した。

 ......これがね、どうみても気〇斬なのよ。

 だけどピノちゃん曰く、俺の使うチャクラムを見て閃いた技らしい。
 それをギュンギュン自由自在に操って敵を刻んでいっていた。大猿の尻尾も余裕で切り落とせるね!!
 レーザーや炎弾も絶え間なく撃っていたので、この子も【多重思考】的なのが生えたっぽい。ウチの子たちはやはり天才。


 三位はヘカトンくん。
 いつもよりも頑張っていたけど、惜しくも最後に捲られて三位となった。
 岩投げ以外にも別の攻撃手段が欲しいかもしれない。けれどもこの子の本領が発揮されるのは防衛戦。
 ゲームではなく本番だと形振り構わず最終ラインを防衛してくれそうだし、俺から何かを言う事はない。物理無効な敵にはエンジェルたちが対応してくれると思うし。

 いつもありがとね。


 四位はツキミダイフクペア。まぁ予想通りだけど、この子たちは頑張ってた。悪いのは俺である。

 て言うか......本当にごめんね。
 この子たちが必死に考えたであろう作戦が、俺の生み出した幻影には通じなかったのだ。作戦が嵌ればもっと健闘出来ていた。

 ......うん、この子たちが行った作戦は視界潰し。闇魔法を使っての強制目隠しや、ダイフクフラッシュは凄かった。絶対本番では通用すると言える程に凄かった。俺は発光したダイフクを直視してしまったせいで一瞬目がヤられたもん。

 満を持して発動させたのに効果がなかったって悲しいよね。本当にごめん。
 そこら辺の事に対応していなかった運営側の怠慢です。申し訳ございません。

 拗ねたツキミとダイフクをよしよしして、お披露目会は終了となった。


 鳥ちゃんズを慰めながら一人で脳内反省会。
 内容は今回の目潰しやらの、バッドステータス系への対応について。部位破壊の時に思い付いておけよと思った。

 閃光玉の無いモン〇ンは辛いからね。特にあの砂漠に出てくる角の生えたアレとか、歩くゴーヤとか。

 もふもふさわさわと必死に手を動かしながらも、頑張って対応策を考えていった。


 拠点まで戻った俺ら。最初の約束通り、頑張っていた子どもたちを平等に撫でくりまわし、甘やかして過ごした。

 子どもの成長は早い。成長する姿をなるべく見逃さないようにしないといけない。
 今なら全国のパパママ達が子の成長を映像に残したり、写真に残したりする気持ちがよくわかるよ!!


 その後はいつもと変わらない夜を過ごし、少しだけ長くお風呂に浸かる。気持ちを込めて全身のケアをした。手と目が幸せだったのは言うまでもない。

 一日の締めくくりは、皆で仲良く眠りについた。毎日一緒に寝てくれてもいいのよ。









 そして深夜......俺らのサンクチュアリに招かれざる客が侵入してきやがった。
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