ぎゅっ。

桜花(sakura)

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みんなの声が聞こえたよ

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 「マミちゃんがさ。 耳が聞こえないことは『しょうがないこと』だって 。でも 、いろんなこと言われると…… って、話してくれたんです。すごい、いっぱい悲しい思いしてきたんだろうなって、 俺心が苦しくなったんです」   

拓眞の苦しげな表情に。   

「本当に理不尽よね 。小学校に入って。さぁ、これから楽しいことがいっぱい起こるって、マミは ワクワクしてたのよ。マミは、 牛乳が嫌いなの。 飲めないの よ。きちんと担任の女の先生にも伝えたのに『飲み終わるまで、お昼休みの時間、遊んではいけません』って。    意地悪をしていた男の子たちが、パンを、 ある男の子の机の中に入れたのよ。それをマミがしたって。 聞く耳持たないで 。一度は私、謝りに行ったわ。けれど主人が、麻那斗《まなと》さんが。担任の間違いを。すごい剣幕で怒って。学校に訴えに行って。 その担任を。担任から降ろすところまで頑張ってくれたわ   

「ナミさん……」  

 ナミの後悔と、マミの父麻那斗の怒り。切なくて。   


「 私ね。保育園と小学校を。転勤族で、一回ずつ変わってるの。 その度に 、友達になった子と離れるのが悲しくて 『いつかお別れなら、誰とも仲良くなんかならない!』って……」  


「岡ちゃん……」   

 朔弥は、なんて声をかけてあげれば良いか分からなくて。  



「小学校四年でと出会って。マミに嫌がらせをしてる男子四人組がいたんだけど。 四人組は、私が秋に転校していた時に提出した、家の絵をからかって来たの。『お題は夏の思い出なのに』って。 担任も一緒になって笑ってたわ。近くで哀しそうに、じっと話を聞いてる女の子がいるなって『岡さんは、 てんこうせいだもん。まえのガッコウのしゅくだいと、ちがうはずだもん 』って。前の学校のお題は『大好きな場所』でさ」


 「岡ちゃん……」  


  「やっぱりね。マミちゃんが、困っている子を 助けないはずないんだ 『自分ばっかりが岡さんや、ママに助けられてる』なんてさ。言うんだもん」  


「うん。マミと仲良くなりたいって。心から思ったわ。お互いに『友達いらない』って心が泣き始めてた時で。でも、彼女なら信じられるって。マミも『あすみを、しんじる』って言ってくれて。ねぇ、四人組はね、小一の時、自分たちが入れたパンをマミに押し付けた奴らなのよ。信じられる? 三年以上いじめてさ」   

「マジか……」   

 拓眞はツブやいて。   

考えたくないけど…… もうそれしか頭に浮かばなくて……  

「 好きな女の子を、いじめてしまう 男って、ガキよね」   

 愛朱実の切れ味鋭い正論に。

  拓眞は。   

「やっぱり」   

  と、項垂れ。  

「岡ちゃん、カッコいいけど心痛くなった」   


朔弥は、 心当たりがなくもないセリフに。心をえぐられて。 


「マミから聞き出したの。 あの子。決して自分からは人を悪く言おうとしないんだもん。 四人組がどうしても許せなくてさ。あ、誤解しないでね?  四人組が、マミのことを好きなのは私が気がついたことで。マミは、気がついていないから。マミにとっては、嫌がらせ以外に他ならないもの。私を助けてくれたマミを今度は、私が守るんだっ。て決心したの」 

「愛朱実ちゃんには感謝しているわ。マミは 女の先生とは相性が合わなくて…… 『意地悪されるのはあなたのせいじゃないですか?』 四年生の時の担任そう言われて 。我慢強い子が、こらえきれずに、私に訴えてきて 。私は猛抗議したわ。 もう絶対に 後悔したくない。マミを守り抜くんだって。あの小学校一年のパン事件の時に誓ったんですもの。 その子達の親に、抗議しても。学校に抗議しても。 力不足で全然収まらなくて。八方塞がりだった時に。愛朱実ちゃんも担任に猛抗議してくれてたのよ。 そこから徐々に、悪ガキの 嫌がらせも、収まっていったわ」    


「ママ……ありがとう……」   

「マミっ」    
熱で、苦しい中。マミは。   


「みんなの声がね、ハッキリ聞こえたよ……」  

「ママが、助けてくれたから……嫌がらせ止まったんだよ。あす……み。ありがとう」 


 「大事な、みんなの言葉が聞こえてよかった」   

って、微笑み、再び目をつむったマミ。  

「マミちゃんは、人の心を温かくする、女の子ですね」   

 拓眞は、だからこそ、なおさら。無理解から、マミを苦しめる人たちが許せなかった。  

(俺が、守るから。マメちゃん。もう泣かせたりしないんだ)   

 拓眞は、決意したのだった。
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