ぎゅっ。

桜花(sakura)

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キミと一緒にいたいから

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  熱も直ぐに下がり、PCR検査も陰性だったマミ。     あの日、あの後。糸さんに。陽良に。山際夫婦に。謝罪を受けたマミ。     


   『自分のイライラを、人のせいにして苦しめるなんて最低な奴のすることだよ!』   

  陽良に、正面切っていい放った拓眞。 

  なぜか、約束の日に、家に来て山際一家と対峙した拓眞。    

『拓眞くん!   私の言いたいこと言ってくれてありがとう!』  


  拓眞は、ナミの心を掴んだのだった。  

     マミは、糸さんが泣いて謝罪をされたことが……  

『陽良くん。 おばあちゃんをもう泣かせないでね』  

『はい。 本当にすいませんでした』   

 心が血の涙を流すくらい、悲しくて。苦しかった 。     

その想いは、一生消えないだろうな。って思う。     

  心の底から謝罪を受け入れた訳じゃないけれど。     

 陽良には、陽良を 愛してる人がいる。  

   マミを。    

  無償の愛で愛してくれたパパとママのように。    

『 あんたって子は……バカよ』


    愛朱実に、 呆れられたけど 。でも。    

ぎゅっ。てしてくれた。   

 (私こんなに愛されて幸せだよね)    

 決して辛いばかりじゃなかった人生。 

   『明日からまた前を向いて歩いて行こう』      

   マミは、また頑張るって。      

   少し前向きに生きてみよう      って、思うのだった。     


    -- その後再び訪れた穏やかな日々。


     図書館で、少し話をした後。遠慮するマミを説き伏せて、自宅マンションにまで送って来た拓眞に。  


「私、拓眞くんとお話したかったの! 上がって行って? お茶でもいかが?」   


 と、テンションの上がったナミにまで、押しきられたマミ。   


拓眞も。  

「本当ですか? じゃあ、遠慮なく」  


 なんて答えてるし。

  「私からの『色々頑張ったね』のプレゼント。マミの好きなビーフシチューを作ったの。出塚くんも一緒に食べましょ」  


 結果。三人で、ビーフシチューに、ローストチキンに、ロールパン、サラダの夕飯を。  

「凄い、美味しい!」   

と、拓眞は喜んでくれて。   

 食後に紅茶を頂いた後。   

 拓眞とマミは。リビングにて話をしていた。   

  ちなみに。ナミは友達からの電話に。自室向かったきり、長電話をしているらしく、一向に戻って来る気配がない。   


「なんか、色々すみません。拓眞さん」 

 「なんで、謝るの? キミって子は……遠慮しいで……」  

「 自己評価低いのか?」  

「うん」  

「それを言ったら、拓眞さんも『図書館を引き継いだから、融通がきくから……』って話された時、一瞬苦しそうな顔されたじゃないですか」  

「鋭いな。マメちゃん。司書の仕事を選んだのは本当に夢でさ。別にね『世襲制』じゃないんだから、祖父から父へと館長が変わった『場所を継げ』なんて一言もね、言ってないの。二人とも。でも俺は、子供の頃から慣れ親しんで来たその場所が大好きで。自然とそこを選んでた。もちろん、司書の資格を取るための学校にきちんと行ってね」  

「はい」   

いったん言葉を切った拓眞に、 マミは頷いて。  

「祖父と父が作り上げた図書館だから。自分は自由にして良い。だなんて勘違いしないように。って。あの日。スーパーで出逢った日は、ホントたまたま休みになっただけだし。けどね……マメちゃんと紙芝居を一緒にする事になって。日程だって調整している内に、やっぱりたまたま火曜日になって……マメちゃんと一緒にいたいから。 休館にしようって……」  

「……なんで、私に……拓眞さんは『頑張り屋さん』って、言って下さるの?」   

( なんで涙出ちゃうの?)
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