ぎゅっ。

桜花(sakura)

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『月が綺麗ですね。』『ずっと月をみていましょう。』

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「『ありがとうございました』って、他意はない、素直にそのまんまの意味なんだろうけど 。なんか……もう繋がりがなくなっちゃいそうでイヤだな」  

「拓眞さん?」   

「マメちゃんって呼んでも、受け入れてくれて」  

 「訂正したって拓眞さん、改めてくれないじゃないですか。 私受け入れた覚えありません!」 

  拓眞は、ちょっと、ムっ 。て、唇を尖らせて反論して来たマミが。   

「真面目だけど 、おちゃめなマメちゃんが可愛くて、愛おしいんだ。 この先、守っていきたい」    


-ボッ-   


マミは、拓眞の不意打ちな言葉に、頬を真っ赤に 染めて。   

(う~)  


 声にならない声で唸っていると。   


 さらさらと。紙に何かを書き付けていた拓眞が。     

スッて。   

右斜め前の。はす向かいに座るマミに差し出してきて。     



  『れかもこら、とっず、てにそいば。月が綺麗ですね』     

*(夏目漱石?)   

 本が好きな人間なら、 聞いた事があるかもしれない、ロマンティックな愛の言葉。 

  (れかもこら、てにそいば?  え?)  


 夏目漱石に、引っ張られてしまったマミだったけど。   


 初めに、暗号で名前を伝え合った時の。   

   ふたりの暗号……    

 今は、愛言葉《あいことば》……    


-ボッ-    

再び、頬を真っ赤に染めたマミ。     


有名な言葉の前に記されていた言葉の意味を、理解してしまったマミ。   


マミは、深呼吸すると。 


さらさらと。何かを書きつけて。  


  『したをわ、いびみてち、たとれひく。ずっと月をみていましょう』   

 スッて。

紙を戻してきたマミ。  

 

瞬間、破顔して満面の笑顔になった拓眞。   


『 これからも、ずっと、そばいいて。 月が綺麗ですね』   


『わたしを、みちびいて、くれたひと。ずっと月をみていましょう』    


 想いを伝え合ったった二人。


  マミは幸せで、溢れてくる涙を止められなくて。   


「マメちゃん、 ちょっとマスク取るね」  


 自分のしている透明マスクを外して。マミの方へと右手を伸ばすと。マミのマスクを外した拓眞は……  


 「この先永遠に守るから。愛してる」   



       チュっ。   

 軽く唇にキス。 


  拓眞の瞳には涙が浮かんでる。   


 真剣に、思いの丈を ぶつけてくれた拓眞。   


「この先も永遠に導いてね。愛しています」    

  真剣に、思いの丈を返してくれたマミ。 


 マミの瞳にも涙が浮かんでた。    


   キスの時。マミの左耳に軽く触れてから、頬に右手を添えた拓眞の。その手に遠慮がちに、ぎゅっ。て左手で触れてきたマミ。

   (不安な時に、キミは、ぎゅっ。てするね……)   

まだ、少し不安が残ってるんだね。


  (不安なんか、感じさせないくらい、幸せにするからね。俺のマメちゃん) 


    「あわにせし」 

 「うなねろ」  

「「幸せに なろうね」」    

   その瞬間、 二人には、 お互しか映っていなかった……  



──   その時、長電話を終えたナミが。部屋から出るタイミングを失い。それでも。  

(良かった。幸せになってね。マミ。拓眞くん)    

と呟いていたのを二人は知らない……  



  ──  


 オマケ  

「愛朱実。俺、キミが好き」  


『名前の呼び捨てに出世した』  
「そこ?」  

『朔弥。私、アナタが好きよ』   


 電話の向こうの彼女は……  

(小悪魔……でした)   

 -終わり- -




--  *夏目漱石  日本の小説家 夏目漱石 が  『I Love  You 』を『月が綺麗ですね』 と「訳した」(諸説あり) とされる。 名言を使用させて頂きました。





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