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父と娘と息子の涙
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-爽の部屋-
楓禾姫の大きな美しい瞳から、みるみる涙溢れ。右隣に座る、湖紗若の黒目がちな瞳からも……
楓禾姫も、湖紗若も。父を凝視したまま動かない。
父の言葉が、頭の中で回っているのだが……衝撃の強さに、とまどっていた。
一方の、爽。
真っ直ぐに見つめてくる瞳に。いたたまれない。居心地悪いといおうか……
「 楓禾姫、湖紗若。そんなに見つめられたら、私は、穴が開いてしまう」
苦笑交じりに言うも。反応してこない二人……
──
『お父上様。湖紗若様に六年前の事。私が知っている事はお話致しました』
そう、告げて来た楓禾姫。
覚悟の強さが見えて。
(そうだよな……落ち着くまで待とう)
思い直すと。
「お父上様、誠の事にございますか?」
「ちちうえ さま ほんとう で……すか?」
凛とした声音で楓禾姫が。つっかえながらも、ハッキリした発音で尋ねた湖紗若。
爽が頷くと。
「お父上様が、時折、城を抜け出した理由が府に落ちました」
「そうか……」
「乳母のゆずなが、手紙の宛先を教えてくれなかった事の意味が府に落ちました」
「うん……」
「『もう……楓禾姫と、湖紗若を……大人の都合に巻き込みたく無いと……好きにしたら良いと、外喜殿に申してしまいました。元は、政岡家も桜家の……鈴様が統治しても構わないのです。私は……成人するまで……外喜殿に……子供達が成人してから……』お母上様の言葉に『外喜の毒牙から守りつつ、力を付けさせて。得意になっている奴より、取り戻そう? ですね?』お父上様は答えられたと。ゆずなは泣きながら教えてくれました。持女達の手紙にも」
「そうか……」
「お父上様は、お母上様の言葉に答える為に、動いていらしたのですね?」
時に、事情を知らない新規の家臣達に、統治を放棄していると言われながら。
「その為に、 楓禾姫。湖紗若。鈴を苦しめた……」
事情を知る家臣達は、我が世の春を謳歌し、有頂天の外喜や、派閥の者達の嫌みに耐えながら。いつの日か……の為に我慢してくれて。
「敵を欺くには、まず見方から。お父上は、二心は無いと示す為に冴多の姓に変えたり……湖紗若を守る為に冴多姓を名乗らせたり。一部の家臣達の不満を真摯に受け止めながらも……」
「情けない領主に映ったであろうな。 楓禾姫には……」
「時に……」
「ハハ。正直だな。 楓禾姫は」
「それは、私を、湖紗若様を。鈴兄上様を。そして凛実の方様を守る為……お母上様との約束を守る為……」
ポロリと、両目より涙を落とした楓禾姫。湖紗若も楓禾姫の横顔をじっと見つめ涙している。
爽も……
「桜家……稜禾詠ノ国の統治に再び力を入れ出したお父上様に。私と、鈴兄上様。湖紗若様が動き出した事。外喜殿が黙っている訳ありませんから。お母上様の願いを叶える為に立ち上がりとうございます」
楓禾姫の強き決意に。
「無理はしないでくれ ……楓禾姫」
爽は……涙が止まらず、それを言うので精一杯だった。
「おちちうえさま。わたしは りんみのかた さまに やさしくされても あまえられませんでした。うれしかったのに…… りんみのかたさま に あやまりたいです」
それまで、口を挟まずに楓禾姫と爽の話を聞いていた湖紗若。
「うむ……凛実の方は分かっているから。喜ぶよ……」
自分の中の正義の為に、苦しい思いをさせたはずなのに……
楓禾姫と湖紗若の決意と懺悔。
愛しい二人を守り、幸せにすると……爽は誓った……のだか。
涙が止まらなくなった爽だった。
楓禾姫の大きな美しい瞳から、みるみる涙溢れ。右隣に座る、湖紗若の黒目がちな瞳からも……
楓禾姫も、湖紗若も。父を凝視したまま動かない。
父の言葉が、頭の中で回っているのだが……衝撃の強さに、とまどっていた。
一方の、爽。
真っ直ぐに見つめてくる瞳に。いたたまれない。居心地悪いといおうか……
「 楓禾姫、湖紗若。そんなに見つめられたら、私は、穴が開いてしまう」
苦笑交じりに言うも。反応してこない二人……
──
『お父上様。湖紗若様に六年前の事。私が知っている事はお話致しました』
そう、告げて来た楓禾姫。
覚悟の強さが見えて。
(そうだよな……落ち着くまで待とう)
思い直すと。
「お父上様、誠の事にございますか?」
「ちちうえ さま ほんとう で……すか?」
凛とした声音で楓禾姫が。つっかえながらも、ハッキリした発音で尋ねた湖紗若。
爽が頷くと。
「お父上様が、時折、城を抜け出した理由が府に落ちました」
「そうか……」
「乳母のゆずなが、手紙の宛先を教えてくれなかった事の意味が府に落ちました」
「うん……」
「『もう……楓禾姫と、湖紗若を……大人の都合に巻き込みたく無いと……好きにしたら良いと、外喜殿に申してしまいました。元は、政岡家も桜家の……鈴様が統治しても構わないのです。私は……成人するまで……外喜殿に……子供達が成人してから……』お母上様の言葉に『外喜の毒牙から守りつつ、力を付けさせて。得意になっている奴より、取り戻そう? ですね?』お父上様は答えられたと。ゆずなは泣きながら教えてくれました。持女達の手紙にも」
「そうか……」
「お父上様は、お母上様の言葉に答える為に、動いていらしたのですね?」
時に、事情を知らない新規の家臣達に、統治を放棄していると言われながら。
「その為に、 楓禾姫。湖紗若。鈴を苦しめた……」
事情を知る家臣達は、我が世の春を謳歌し、有頂天の外喜や、派閥の者達の嫌みに耐えながら。いつの日か……の為に我慢してくれて。
「敵を欺くには、まず見方から。お父上は、二心は無いと示す為に冴多の姓に変えたり……湖紗若を守る為に冴多姓を名乗らせたり。一部の家臣達の不満を真摯に受け止めながらも……」
「情けない領主に映ったであろうな。 楓禾姫には……」
「時に……」
「ハハ。正直だな。 楓禾姫は」
「それは、私を、湖紗若様を。鈴兄上様を。そして凛実の方様を守る為……お母上様との約束を守る為……」
ポロリと、両目より涙を落とした楓禾姫。湖紗若も楓禾姫の横顔をじっと見つめ涙している。
爽も……
「桜家……稜禾詠ノ国の統治に再び力を入れ出したお父上様に。私と、鈴兄上様。湖紗若様が動き出した事。外喜殿が黙っている訳ありませんから。お母上様の願いを叶える為に立ち上がりとうございます」
楓禾姫の強き決意に。
「無理はしないでくれ ……楓禾姫」
爽は……涙が止まらず、それを言うので精一杯だった。
「おちちうえさま。わたしは りんみのかた さまに やさしくされても あまえられませんでした。うれしかったのに…… りんみのかたさま に あやまりたいです」
それまで、口を挟まずに楓禾姫と爽の話を聞いていた湖紗若。
「うむ……凛実の方は分かっているから。喜ぶよ……」
自分の中の正義の為に、苦しい思いをさせたはずなのに……
楓禾姫と湖紗若の決意と懺悔。
愛しい二人を守り、幸せにすると……爽は誓った……のだか。
涙が止まらなくなった爽だった。
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