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5章 傀儡大会
新たな決意
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妹と別れたアルストロイは、セリア、ウルカテと共に、人形の館まで戻って来ていた。
久方ぶりに訪れた我が家は、あの時から何も変わっておらず、唯々帰って来た事を喜ぶ。
セリアも当初の目的が達成され、ともに喜んだ。
「何はともあれ、貴方が無事でよかったわ。貴方に何かあったら、あの子も悲しむもの」
それはアルストロイも感じていたこと。
大して乱暴に扱われはしなかったが、それでも一人きりにしてしまった妹の事を思えば、身を切る思いで日々を過ごしていたものだ。
無事を喜ぶ両者の後ろで、一人苛立つ男がいた。
セリアの守護者であるウルカテだ。
彼は館を懐かしむアルストロイの襟首を引っ掴むと、館の外まで引きずっていく。
「なっ、なんだ!?おい……ウルカテ!」
突然自身に降りかかった友の異常な行動に驚くアルストロイ。
セリアもまた、昔馴染みの突然の行動に目を丸くした。
ウルカテは館を出るや否や、力任せにアルストロイを放り出す。
乱雑な扱いをされたアルストロイが、転びそうになるのを必死に堪えていると、頭上から声がかかった。
「剣を抜け」
そういって、携えた剣を抜くウルカテ。
彼の真意がつかめずに、アルストロイは疑問を投げかける。
「一体何を言って……」
「いいから剣を抜け!」
有無を言わせぬ一喝。
渋々アルストロイが剣を抜き放つと、ウルカテは突如として駆け出した。
耳を劈く金属音。薄暗い森に飛び散る火花。
数合続いた攻防は、やはりアルストロイの抗議の声で止まる。
「ちょっ……一体何だっていうんだ!」
受けとめた剣を弾き、剣を正中に構えなおした彼は、目の前のウルカテを見て仰天した。
ウルカテは、涙を流していた。
ぼたぼたと頬を伝った涙が、足下を濡らしていく。
彼は、剣を掴む片方の手で涙を拭い去り叫んだ。
「お前は悔しくないのか!?情けなく感じないのか!?俺たちは守護者だ!彼女らを守る盾なんだ!だっていうのに……俺たちは守られてばかりだった!!」
ウルカテは、叫びながら力任せに剣を振う。
「悔しい!悔しいぞ、俺はぁぁ!!」
一際大きく、金属がかち合う音が響いた。
彼ら守護者は、剣術を教え込まれるわけでは無い。魔法を教え込まれるわけでは無い。
教え込まれるのは唯一つ。一から十まで心構えのみ。当然だ。彼らを育てる者達は、剣術使いではなく、魔法使いでもなく、唯の人形使いなのだから。
そんな彼らが、純粋な戦士と事を構えたところで、勝てる見込みは限りなく少ない。
守護者と言えば聞こえはいいが、彼らは戦場で傀儡師を守る一枚の盾なのだ。
飛来する魔法から、矢から、降りかかる剣から、槍から、身を挺して操者を守る肉の壁。
その一瞬で、傀儡人形が敵を殲滅する。
傀儡師と守護者とはそういう関係だった。
今回の件は、ウルカテが気に病むことではない。
戦場とは関係ない場所で起きた事であり、いずれは起こるであろう事柄であった。
例えどんなに優秀な守護者であっても、今回の件は防げなかっただろう。
だがそんなことを言っても、ウルカテにとって何の慰めにもなりはしない。
彼は何もかも承知のうえで、苦しみもがいているのだ。
そして、彼のその感情の爆発が、燻っていた魂に火を点ける。
ウルカテの剣が弾かれた。
慌てて体勢を立て直すころには、力強い斬撃が飛んで来る。
辛うじてそれを受け止め、思わず視線はその剣の持ち主に吸い込まれる。
「俺も悔しいさ!!無力な兄だった!馬鹿な兄だった!だから……せめて妹だけでも守れるように、もっと強くならなきゃいけない!」
力と力、心と心のぶつかり合いが続く。
二人はまるで、駄々をこねる子供に見えた。
力が無いことを怒り、物事が自身の思い通りにならないことに拗ねる子供。
だが彼らの内に芽吹く感情は、子供の様に一晩寝たら忘れてしまうような、ちゃちな感情では決してない。
彼らは剣を振る度に、心に強く刻み込む。
強くあらねばと、賢くあらねばと。
白熱する二人に感化され、セリアの内にも熱き思いがこみ上げる。
彼女だけは、これからこの国が描く未来図が見えていた。遅かれ速かれ、そうなるであろう事柄が。
その時の為に、彼女らは爪を研ぎ澄まさなければならない。
その時が来たら必ず、彼女らは立ち上がらなければならないのだから。
「そうよね……休んでいる暇なんかないわ!貴方達にはもっと頼りになってもらわないとね!」
そう言って、彼女は自身の傀儡に指令を与える。
二人の守護者の前には黒の騎士が立ち上がり、金属の弾ける音が夜遅くまで木霊した。
久方ぶりに訪れた我が家は、あの時から何も変わっておらず、唯々帰って来た事を喜ぶ。
セリアも当初の目的が達成され、ともに喜んだ。
「何はともあれ、貴方が無事でよかったわ。貴方に何かあったら、あの子も悲しむもの」
それはアルストロイも感じていたこと。
大して乱暴に扱われはしなかったが、それでも一人きりにしてしまった妹の事を思えば、身を切る思いで日々を過ごしていたものだ。
無事を喜ぶ両者の後ろで、一人苛立つ男がいた。
セリアの守護者であるウルカテだ。
彼は館を懐かしむアルストロイの襟首を引っ掴むと、館の外まで引きずっていく。
「なっ、なんだ!?おい……ウルカテ!」
突然自身に降りかかった友の異常な行動に驚くアルストロイ。
セリアもまた、昔馴染みの突然の行動に目を丸くした。
ウルカテは館を出るや否や、力任せにアルストロイを放り出す。
乱雑な扱いをされたアルストロイが、転びそうになるのを必死に堪えていると、頭上から声がかかった。
「剣を抜け」
そういって、携えた剣を抜くウルカテ。
彼の真意がつかめずに、アルストロイは疑問を投げかける。
「一体何を言って……」
「いいから剣を抜け!」
有無を言わせぬ一喝。
渋々アルストロイが剣を抜き放つと、ウルカテは突如として駆け出した。
耳を劈く金属音。薄暗い森に飛び散る火花。
数合続いた攻防は、やはりアルストロイの抗議の声で止まる。
「ちょっ……一体何だっていうんだ!」
受けとめた剣を弾き、剣を正中に構えなおした彼は、目の前のウルカテを見て仰天した。
ウルカテは、涙を流していた。
ぼたぼたと頬を伝った涙が、足下を濡らしていく。
彼は、剣を掴む片方の手で涙を拭い去り叫んだ。
「お前は悔しくないのか!?情けなく感じないのか!?俺たちは守護者だ!彼女らを守る盾なんだ!だっていうのに……俺たちは守られてばかりだった!!」
ウルカテは、叫びながら力任せに剣を振う。
「悔しい!悔しいぞ、俺はぁぁ!!」
一際大きく、金属がかち合う音が響いた。
彼ら守護者は、剣術を教え込まれるわけでは無い。魔法を教え込まれるわけでは無い。
教え込まれるのは唯一つ。一から十まで心構えのみ。当然だ。彼らを育てる者達は、剣術使いではなく、魔法使いでもなく、唯の人形使いなのだから。
そんな彼らが、純粋な戦士と事を構えたところで、勝てる見込みは限りなく少ない。
守護者と言えば聞こえはいいが、彼らは戦場で傀儡師を守る一枚の盾なのだ。
飛来する魔法から、矢から、降りかかる剣から、槍から、身を挺して操者を守る肉の壁。
その一瞬で、傀儡人形が敵を殲滅する。
傀儡師と守護者とはそういう関係だった。
今回の件は、ウルカテが気に病むことではない。
戦場とは関係ない場所で起きた事であり、いずれは起こるであろう事柄であった。
例えどんなに優秀な守護者であっても、今回の件は防げなかっただろう。
だがそんなことを言っても、ウルカテにとって何の慰めにもなりはしない。
彼は何もかも承知のうえで、苦しみもがいているのだ。
そして、彼のその感情の爆発が、燻っていた魂に火を点ける。
ウルカテの剣が弾かれた。
慌てて体勢を立て直すころには、力強い斬撃が飛んで来る。
辛うじてそれを受け止め、思わず視線はその剣の持ち主に吸い込まれる。
「俺も悔しいさ!!無力な兄だった!馬鹿な兄だった!だから……せめて妹だけでも守れるように、もっと強くならなきゃいけない!」
力と力、心と心のぶつかり合いが続く。
二人はまるで、駄々をこねる子供に見えた。
力が無いことを怒り、物事が自身の思い通りにならないことに拗ねる子供。
だが彼らの内に芽吹く感情は、子供の様に一晩寝たら忘れてしまうような、ちゃちな感情では決してない。
彼らは剣を振る度に、心に強く刻み込む。
強くあらねばと、賢くあらねばと。
白熱する二人に感化され、セリアの内にも熱き思いがこみ上げる。
彼女だけは、これからこの国が描く未来図が見えていた。遅かれ速かれ、そうなるであろう事柄が。
その時の為に、彼女らは爪を研ぎ澄まさなければならない。
その時が来たら必ず、彼女らは立ち上がらなければならないのだから。
「そうよね……休んでいる暇なんかないわ!貴方達にはもっと頼りになってもらわないとね!」
そう言って、彼女は自身の傀儡に指令を与える。
二人の守護者の前には黒の騎士が立ち上がり、金属の弾ける音が夜遅くまで木霊した。
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