反魂の傀儡使い

菅原

文字の大きさ
29 / 153
6章 時代の変動

北中戦争 1

しおりを挟む
 北にある小国は、大国と対等に渡り合う為に同盟を連ね、一つの連合国として活動していた。
その連合国はパラミシアと呼ばれ、バルドリンガにも匹敵する広大な領土を持ち、多国色が混ざった独特な兵術を用いる強国である。
暴君ダイガニスの強力な軍をも退けたその力は、賢王ガノッサも恐れる程だ。


 連合国を束ねる立場にある国の王“ガンフ”は、自らの居城にて、諜報員から報せを受け取った。
「王よ!バルドリンガの軍が、進軍を開始いたしました!」
「ぬぅ……ついに攻めて気おったか!!真っ先に我らを敵に回したこと、後悔させてくれるわ!全軍進撃!」
パラミシアの民は、王も含め血の気が多い。
王の号令を受け、パラミシア軍はバルドリンガ目掛けて進軍する。

 両軍は、バルドリンガとパラミシアの国境で相まみえることになった。
そこは大群同士の戦にはもってこいの大草原。
一早く戦場についたパラミシア軍は、迫るバルドリンガ軍を打ち破らんと隊列を成す。
 張り詰めた声が敵軍の訪れを報せた。
「敵影発見!敵影発見!!直ちに戦闘体勢を取られたし!繰り返す!……」
その報せを受けた兵士たちは、剣を抜き放ち、王の号令を待つ。

 軍が現れたという報せは、伝令兵によりガンフの下まで届けられる。
「王よ!敵影です!」
「あい分かった!して、戦力はいかほどだ?」
現在のパラミシア軍は、約二万の兵を従えていた。
 兵自体の地力はパラミシアに軍配が上がり、その兵が二万もいれば、滅多なことでは負けることがない。
しかし、彼の国は技術改心により、新兵器を手に入れたとの噂があった。
(いかにバルドリンガが高性能な兵器を持ち出してこようとも、一万までは抗える)
パラミシアにも大砲や爆弾のような兵器はいくつかある。
それらを駆使すればもう少しは戦えるはずと、ガンフは予想した。

 更にガンフには、バルドリンガの兵力に際し幾つかの予想があった。
まず、侵略を明言しているからには、万を超える兵を連れてくるはずである。
それ以下で落とせる国など、この時世に幾らも無い。
ましてやパラミシアは、暴君でも落としきれなかった強国だ。
バルドリンガとしては、出来るだけ多くの兵を動員したいことだろう。
 しかし、万は超えるであろうと予想建てしながらも、耳を疑う程膨大な量を引き連れてくることは無いとガンフは確信していた。
それは彼の国を取り巻く各国の位置状況が関係する。

 大陸の中心にあるバルドリンガは、貿易を行う際に必ず足を運ぶ重要な国であった。
どの国を訪れるにしても、全ての目ぼしい国と隣接するバルドリンガは、旅人にとってなくてはならない存在なのだ。
 所が一度、戦となればその利点が大きな欠陥となる。
今回のように、全ての国に対し喧嘩を売ってしまえば、四方全てが敵国となってしまうのだ。
故に、パラミシアに限らず、一つの国に対し膨大な量の兵を派遣してしまえば、自国の防衛が儘ならなくなり、そこをついて攻めて来た国から、領地と民を守ることが出来ない。


 ガンフ王の予想はずばり、一万五千であった。
それ以上の兵力差は、兵器を持って埋めようという考えなのだろうと。
だが、伝令兵の次の言葉で、彼は驚嘆の声を上げる。
「そ……それが……数にして三百程で……」
「三百だと!?貴様ぁ!このような状況で嘘を申すな!」
思いもよらぬ返答に、ガンフは困惑した。
 平和な時代が続き、人口が増加傾向にある諸国において、一万の兵を揃えるのは大して苦ではない。
それこそ頭数だけを揃えるのであれば、大きな町一つから徴兵するだけで、容易に満たせてしまうだろう。
だというのに、彼の大国バルドリンガが揃えた兵力は僅か三百。
(三百など、そこらにある農村ですら超えられる数だろうに)
詰問された伝令兵は、更に言葉を連ねる。
「本当でございます!どうぞこれを」
そう言って、彼は王に望遠筒を差し出した。


 望遠筒を覗き込んだガンフは、草原に立つ人影を見る。
確かにその数は、万には程遠く、三百くらいであると見て取れた。
「舐めおって……!皆の者、遠慮はいらん!敵兵を恐怖のどん底に……」
皆を発奮しようと声を張り上げた瞬間。

 ドォォオオオン!!

 地面を揺るがす程の振動。
自国の兵が人形のように吹き飛ぶ様子が、視界の端にうつった。
首を向けてみれば、兵士が並んでいた筈の場所に、大きな穴が開いている。
ガンフは直ぐに望遠筒を覗き込み、敵兵の観察をする。
 確かに頭数は三百余り。
だがガンフは気づいた。
その大きさが、人間のそれではないことに。
(もしや……人ではないのか?距離があるとしても、人間の大きさではない!)
筒越しに見る軍団は動き始めた。
遂にバルドリンガが、パラミシアの蹂躙を始める。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...