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7章 魔法の力
東中戦争 3
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赤の巨鎧兵は、魔導砲の衝撃でぼろぼろだった。
耐えたことに驚くオージェスの兵同様、ローゼリエッタも耐えきったことに驚く。
ローゼリエッタは、迫る魔導砲に対し、巨鎧兵に内蔵する魔法石を発動していた。
発動したのは防御魔法の『英雄の盾』。あらゆる攻撃を防ぐことができる、万能防御魔法だ。
しかし、これだけでは不十分と思った彼女は、更に内蔵されている全ての魔法石を発動し、少しでも魔導砲の威力を下げようと試みた。
その甲斐あって、大きな欠損も無く耐えきることができたのだ。
耐えるには耐えた。
だがその装甲はひしゃげていて、隙間から入り込んだ衝撃の余波により、中の糸も所々断絶されている。
(腕は……駄目。足も右が動かない!これじゃあ戦えない……!)
今はオージェスの兵も狼狽えているから、後続の砲弾は跳んでこない。だが動くことも儘ならぬ今、彼らが我を取り戻した時、集中砲撃されてしまうだろう。
(とりあえず……胸の装甲を外さないと……!)
操縦席から外に出るには、胸の装甲を外さなければならない。
その胸の装甲を動かす機構さえもが、糸で制御されている為に、完全に身動きが取れなくなる前に開けなければならなかった。
動くことを願いながら、操作を始める。すると前方から何かが外れる大きな音がした。
胸の装甲が外れ落ちたのだ。
緑の繭から這い出たローゼリエッタは、魔法都市へと砲撃をする巨鎧兵の背中を見た。
「ローゼリエッタ様!大丈夫ですか!?」
背後にある繭の中から零れる微かな声が、シャルルだと教えてくれる。
「心配いらないわ!このまま退避します。援護を!」
シャルルは、慕う上司が無事だったことを喜び、城壁の上に狙いを定めた。
「良かったぁ!……よくも……よくもローゼリエッタ様をこんな姿に!許さない!!」
背中にある砲身が吠える。
吐き出された砲弾は、瞬く間に防壁の上にある兵器を破壊していった。
防壁に夢中な巨鎧兵の隙をつき、セリアはウルカテとアルストロイに守られたまま、ぼろぼろになった赤の巨鎧兵へと駆ける。
(あれが隊長格であることは明白。もしあれを倒すことができたら、巨鎧兵団は一旦退くかもしれない!)
魔導砲は全て壊されてしまった。無事な大砲も残り少ない。
地面から這い出る魔法人形は後を絶たないが、巨鎧兵の一振りで崩れ落ちる程脆く、無限というわけでもあるまい。
傀儡師たちも頑張ってはいる。しかし余りにも多勢に無勢。数の暴力の前に今や防戦一方といった状況だ。
防壁に気を取られる巨鎧兵の背後へ回り、赤の巨鎧兵を見上げた。
その時だ。両者が出会ってしまったのは。
仮面をつけたローゼリエッタは、初めて見た筈の顔を見て固まった。
敵兵であることに委縮したというのもあるが、大部分は別の理由。
(誰……?どこかで……)
仲の良かった傀儡使いの女性と、その付き人。
小さなころから一緒だった優しき男性。
一年前に失った記憶がぶり返す。
だが、あと少しで思い出せるというところまで来ると、恐ろしいまでの頭痛が襲って来た。
「ああ!!あああああ!!!」
頭を抱えて叫ぶローゼリエッタ。
彼女の頭の中には、同じことを囁き続ける不気味な声が木霊する。
『奴らは敵だ。お前の仲間を殺した敵だ!殺せ。殺せ!殺せ!!』
恐ろしい頭痛を避けるために、ローゼリエッタは懐かしき記憶をしまい込む。
シャルルは気づいた。愛しい人に迫る敵兵の魔の手に。
真っ赤な巨鎧兵目掛け、小さな人形に乗って跳ねまわる二人の害虫。不敬にもその命を害さんする存在に。
シャルルは身を翻し、手を振り下ろす。
「やめろおおお!!」
怒号と同時に、巨大な影がセリアらを覆い隠した。
赤の巨鎧兵の胸部から逃げようとしていた女。
仮面をつけ、髪も長くなってしまっているが、セリアとアルストロイは確かにその面影に見覚えがあった。
二人は彼女の名を確信して同時に叫ぶ。
「「ロゼェェエエエ!!」」
アルストロイは、傀儡の上から思わず身を乗り出し手を伸ばした。
差し伸ばした手は、届くこと叶わず。
無情にも巨大な塊が落ちてくる方が早かった。一握りにされるのか、潰されるのかは分からない。
いずれにしても、理不尽な力が降りかかる。
だが……彼らは諦めない。
セリアが叫んだ。
「行くわよ!アルストロイ!」
アルストロイは彼女の意思を一瞬で察する。
「……ああ!頼む!!」
力強く頷いたアルストロイを見て、セリアは傀儡に命令を下した。
セリアの傀儡は、空中にいるにもかかわらずアルストロイを投げ飛ばす。
同時に彼も跳躍することで、更に速度は増し、あっという間に巨鎧兵の手の範囲を逃れる。
次に傀儡は、セリア自身も投げ飛ばした。
加減なんてしてる場合ではない。力の限り、空中へと放り出される。
何とか二人は難を逃れたが、セリアの傀儡だけは、巨大な鉄の手に叩きおとされ、そのまま潰されてしまった。
地面を転がり、急いで起き上がったセリアは、地面についた巨大な手を見て、悔しそうに視線を逸らす。
アルストロイは、項垂れている赤の巨鎧兵の胸元へと飛んでいく。
その勢いは凄まじく、巨鎧兵の部品に身体を強かに打ち付けた。
肺から空気が抜けせき込む。何とも格好がつかないが……だが漸く、二人は出会うことができた。
兄は、変わり果てた愛する妹を強く抱きしめる。
抱き寄せた勢いで仮面が外れ、それは遥か下の大地に落ちた。落ちた仮面は、踏み均さらた硬い大地に衝突し砕け散る。
現れた顔は、一年前に別れた妹の顔その物。
僅かに目は虚ろで、反応も鈍いがそれでも妹に変わりはない。
「ロゼ!……ロゼ!!」
抱きしめたまま、アルストロイは何度も名前を呼び続けた。
やがて、虚ろだった目は正気に戻り、細い手が兄を抱きしめる。
「……兄さん?兄さん!!ああ……漸く会えた!」
兄妹は互いに、再会を喜び合う。
抱きしめ合う二人を見て、困惑したのはセリアとシャルルの二人だ。
敵である巨鎧兵団の隊長機を操っていたのが、実は仲間だったのだ。
敵である傀儡師と共にいる男が、慕う上司と嬉しそうに泣きながら抱き合っているのだ。
余りに突然な状況に、兄妹が再会を喜ぶ姿を見た二人は、言葉を発することも出来ない。
兄妹は感動の再会を果たす。だがここは戦場。
呆然と立ち尽くした、シャルルの巨鎧兵の背中に、大砲の弾が直撃した。
耐えたことに驚くオージェスの兵同様、ローゼリエッタも耐えきったことに驚く。
ローゼリエッタは、迫る魔導砲に対し、巨鎧兵に内蔵する魔法石を発動していた。
発動したのは防御魔法の『英雄の盾』。あらゆる攻撃を防ぐことができる、万能防御魔法だ。
しかし、これだけでは不十分と思った彼女は、更に内蔵されている全ての魔法石を発動し、少しでも魔導砲の威力を下げようと試みた。
その甲斐あって、大きな欠損も無く耐えきることができたのだ。
耐えるには耐えた。
だがその装甲はひしゃげていて、隙間から入り込んだ衝撃の余波により、中の糸も所々断絶されている。
(腕は……駄目。足も右が動かない!これじゃあ戦えない……!)
今はオージェスの兵も狼狽えているから、後続の砲弾は跳んでこない。だが動くことも儘ならぬ今、彼らが我を取り戻した時、集中砲撃されてしまうだろう。
(とりあえず……胸の装甲を外さないと……!)
操縦席から外に出るには、胸の装甲を外さなければならない。
その胸の装甲を動かす機構さえもが、糸で制御されている為に、完全に身動きが取れなくなる前に開けなければならなかった。
動くことを願いながら、操作を始める。すると前方から何かが外れる大きな音がした。
胸の装甲が外れ落ちたのだ。
緑の繭から這い出たローゼリエッタは、魔法都市へと砲撃をする巨鎧兵の背中を見た。
「ローゼリエッタ様!大丈夫ですか!?」
背後にある繭の中から零れる微かな声が、シャルルだと教えてくれる。
「心配いらないわ!このまま退避します。援護を!」
シャルルは、慕う上司が無事だったことを喜び、城壁の上に狙いを定めた。
「良かったぁ!……よくも……よくもローゼリエッタ様をこんな姿に!許さない!!」
背中にある砲身が吠える。
吐き出された砲弾は、瞬く間に防壁の上にある兵器を破壊していった。
防壁に夢中な巨鎧兵の隙をつき、セリアはウルカテとアルストロイに守られたまま、ぼろぼろになった赤の巨鎧兵へと駆ける。
(あれが隊長格であることは明白。もしあれを倒すことができたら、巨鎧兵団は一旦退くかもしれない!)
魔導砲は全て壊されてしまった。無事な大砲も残り少ない。
地面から這い出る魔法人形は後を絶たないが、巨鎧兵の一振りで崩れ落ちる程脆く、無限というわけでもあるまい。
傀儡師たちも頑張ってはいる。しかし余りにも多勢に無勢。数の暴力の前に今や防戦一方といった状況だ。
防壁に気を取られる巨鎧兵の背後へ回り、赤の巨鎧兵を見上げた。
その時だ。両者が出会ってしまったのは。
仮面をつけたローゼリエッタは、初めて見た筈の顔を見て固まった。
敵兵であることに委縮したというのもあるが、大部分は別の理由。
(誰……?どこかで……)
仲の良かった傀儡使いの女性と、その付き人。
小さなころから一緒だった優しき男性。
一年前に失った記憶がぶり返す。
だが、あと少しで思い出せるというところまで来ると、恐ろしいまでの頭痛が襲って来た。
「ああ!!あああああ!!!」
頭を抱えて叫ぶローゼリエッタ。
彼女の頭の中には、同じことを囁き続ける不気味な声が木霊する。
『奴らは敵だ。お前の仲間を殺した敵だ!殺せ。殺せ!殺せ!!』
恐ろしい頭痛を避けるために、ローゼリエッタは懐かしき記憶をしまい込む。
シャルルは気づいた。愛しい人に迫る敵兵の魔の手に。
真っ赤な巨鎧兵目掛け、小さな人形に乗って跳ねまわる二人の害虫。不敬にもその命を害さんする存在に。
シャルルは身を翻し、手を振り下ろす。
「やめろおおお!!」
怒号と同時に、巨大な影がセリアらを覆い隠した。
赤の巨鎧兵の胸部から逃げようとしていた女。
仮面をつけ、髪も長くなってしまっているが、セリアとアルストロイは確かにその面影に見覚えがあった。
二人は彼女の名を確信して同時に叫ぶ。
「「ロゼェェエエエ!!」」
アルストロイは、傀儡の上から思わず身を乗り出し手を伸ばした。
差し伸ばした手は、届くこと叶わず。
無情にも巨大な塊が落ちてくる方が早かった。一握りにされるのか、潰されるのかは分からない。
いずれにしても、理不尽な力が降りかかる。
だが……彼らは諦めない。
セリアが叫んだ。
「行くわよ!アルストロイ!」
アルストロイは彼女の意思を一瞬で察する。
「……ああ!頼む!!」
力強く頷いたアルストロイを見て、セリアは傀儡に命令を下した。
セリアの傀儡は、空中にいるにもかかわらずアルストロイを投げ飛ばす。
同時に彼も跳躍することで、更に速度は増し、あっという間に巨鎧兵の手の範囲を逃れる。
次に傀儡は、セリア自身も投げ飛ばした。
加減なんてしてる場合ではない。力の限り、空中へと放り出される。
何とか二人は難を逃れたが、セリアの傀儡だけは、巨大な鉄の手に叩きおとされ、そのまま潰されてしまった。
地面を転がり、急いで起き上がったセリアは、地面についた巨大な手を見て、悔しそうに視線を逸らす。
アルストロイは、項垂れている赤の巨鎧兵の胸元へと飛んでいく。
その勢いは凄まじく、巨鎧兵の部品に身体を強かに打ち付けた。
肺から空気が抜けせき込む。何とも格好がつかないが……だが漸く、二人は出会うことができた。
兄は、変わり果てた愛する妹を強く抱きしめる。
抱き寄せた勢いで仮面が外れ、それは遥か下の大地に落ちた。落ちた仮面は、踏み均さらた硬い大地に衝突し砕け散る。
現れた顔は、一年前に別れた妹の顔その物。
僅かに目は虚ろで、反応も鈍いがそれでも妹に変わりはない。
「ロゼ!……ロゼ!!」
抱きしめたまま、アルストロイは何度も名前を呼び続けた。
やがて、虚ろだった目は正気に戻り、細い手が兄を抱きしめる。
「……兄さん?兄さん!!ああ……漸く会えた!」
兄妹は互いに、再会を喜び合う。
抱きしめ合う二人を見て、困惑したのはセリアとシャルルの二人だ。
敵である巨鎧兵団の隊長機を操っていたのが、実は仲間だったのだ。
敵である傀儡師と共にいる男が、慕う上司と嬉しそうに泣きながら抱き合っているのだ。
余りに突然な状況に、兄妹が再会を喜ぶ姿を見た二人は、言葉を発することも出来ない。
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