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8章 激動の時
試行錯誤
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ローゼリエッタはシャルルと共に、装甲が無事で精霊石の糸が断絶してしまった巨鎧兵の前に向かう。
その周囲にはシャルルの部隊員もおり、一様に物言わぬ人形を見上げていた。
ローゼリエッタはその巨体を見て改めてあきれ返る。
「これだけ大きいと、手入れも大変ね……それじゃ始めましょう。まずは胸部の装甲を外さないと」
とはいったものの、巨大な人形によじ登るのも一苦労。ましてや相当な重量がある装甲を、不安定な足場の上で外すのは並大抵のことではない。
本来ならば専用の巨大な工機を使って行う作業なのだが、そういったものは当然ここにはない。
ここで役立つのが、傀儡師の存在である。
人間では危険な場所であっても、命無き人形は一言も文句を言わずに命令を遂行する。
実のところ、先の戦闘時に放置されていた巨鎧兵も、同様にして回収作業が行われたのだ。
数名の傀儡師と人形の協力があって、巨鎧兵の胸部が外されていった。
あらわになったのは日の光を浴びて綺麗に輝く精霊石の繭。
緑に輝くその中が、操者が乗り込む操縦席だ。
ローゼリエッタとシャルルは、その繭をかき分けると、狭い隙間に身を滑り込ませる。
繭の中は綺麗なもので、一見どこに異常があるのか見分けることは難しい。
だが実際に糸を操作してみれば一目瞭然。
現在乗り込んでいる巨鎧兵は、右腕と左足が動かない状態だった。
二人は相談しながら、途絶えてしまった糸を丁寧に紡いでいく。
結構な時間を経て、運用に耐えうるまで補強することが出来た。
二人の力によって巨鎧兵は、魔法都市に乗り込んだ時と同程度に動くことが出来るだろう。
だがここで、ローゼリエッタの傀儡師としての血が騒ぐ。
「ねぇ、シャルル。この巨鎧兵、もっと改造しちゃってもいいかな」
「改造……ですか?それはいいですけど、一体どんな風にするんです?」
ローゼリエッタは、気分を高揚させながら語り出した。
現在革命軍の手元にある巨鎧兵に、魔法石は組み込まれていない。
あれは隊長機だけの特権であり、また試作運用も兼ねていたのだ。
そこで、ローゼリエッタの案はこうだ。
先ずは巨鎧兵に魔法石を組み込んでいく。
本来はそれなりに値の張るものなのだが、幸か不幸か、この場には多くの魔法使いがいる。
彼らに頼むことで、魔法石は十分な数用意することが出来るだろう。
この改造により巨鎧兵は、魔法を扱うことが可能となる。
続いて操縦席にも手を加えようと少女は告げた。
精霊石の繭を少し拡張し、もう一人入れるように改良するのだ。
一つは従来通り、巨鎧兵の操者を。もう一つには魔法使いに座ってもらうことで、より自在に魔法を使った戦闘が可能となるのではと考えた。
当然これは、実際に操るわけではない一介の傀儡師が妄想する仮想物に過ぎない。
その操作工程も、実際に使い物になるかどうかさえもが、全くの未知数のものだ。
机上の空論。故に成功すれば見返りは大きいが、失敗すれば一機失う可能性も孕んでいる。
一種の博打ともとれる案だったが、シャルルはローゼリエッタの言葉を否定しない。
興味をひかれたというのも事実だが、そもそもシャルルはローゼリエッタの文言を拒む思考を持ち合わせていなかった。
「なんか凄そうですね……まずは一機、やってみましょうか」
シャルルの同意が得られて、ローゼリエッタも余計乗り気になる。
それから数日の間、二人は巨鎧兵の中で、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返した。
一方で、転送魔法が封じ込められた魔法石の作成は、熾烈を極めた。
一人から少数を転移させる『空間転移』の魔法は比較的容易なのだが、相当数の人間を転移させる『空間通門』の魔法は、やはり相当な難度であるようだ。
一つ失敗するたびに、集まった魔法学校の生徒らは落胆の声を上げる。
「くそう!また失敗だ!!」
失敗した魔法石を放り投げると、すぐに次の魔法石を作り出した。
リエントはこのとき、相当焦っていた。
魔法を学び、その力に自信を持っていながら、魔法都市が滅ぶ時をただ傍観しているしかなかった。
自分の無力を嘆き、自暴自棄に走ったこともある。
だが、助けてくれた革命軍の人らは、何もできなかった自分たちを頼ってくれた。
その事が嬉しくて、リエントは彼女らの頼みを意気揚々と聞き入れたのだ。
また一つ、失敗した魔法石を放り投げる。
(くそう!理論上はこれで出来る筈なんだ!何でできない!?このままじゃ僕たちは、本当に役立たずだ!)
湧き上がる焦燥感。だが魔法石作成は遅々として進まない。
そんな様子を傍から見ていた傀儡師グエノースが、転がる魔法石を拾い上げてつぶやいた。
「あーあ、もったいねぇなぁ。おい、この石、まとめてうっぱらったりできねえのかよ」
魔力操作の技術をかじっただけで、彼に魔法の知識はほとんどない。
だというのに、その何気ない言葉が、リエントの脳裏を貫いた。
「まとめて……?そうか!それならきっと……!有難うございます!」
唐突に礼を言われ、グエノースは呆気にとられる。
彼の反応を待つことなく、リエントらは新たな理論の試に掛かる。
彼らが行ったのは、術式の小分けだ。
一個の魔法石に入りきらないのであれば、二つ、三つと魔法石を用意し、分割して入れてしまえばいい。
当然ながらその作業は、これまで一度も試したことがない部類の試みであり、魔法陣を四分割する、といった安易な思考では到底成しえない。
魔法陣の構造から紐解き、それぞれが異常な反応をしない範囲で、魔法石に分けて封印していく。
それは、気の遠くなるような作業であった。
新たな試みに挑み始めてから三日後。
漸く空間通門を封印した魔法石の第一試作品が完成した。
革命軍の作戦は、順調に進んでいく。
その周囲にはシャルルの部隊員もおり、一様に物言わぬ人形を見上げていた。
ローゼリエッタはその巨体を見て改めてあきれ返る。
「これだけ大きいと、手入れも大変ね……それじゃ始めましょう。まずは胸部の装甲を外さないと」
とはいったものの、巨大な人形によじ登るのも一苦労。ましてや相当な重量がある装甲を、不安定な足場の上で外すのは並大抵のことではない。
本来ならば専用の巨大な工機を使って行う作業なのだが、そういったものは当然ここにはない。
ここで役立つのが、傀儡師の存在である。
人間では危険な場所であっても、命無き人形は一言も文句を言わずに命令を遂行する。
実のところ、先の戦闘時に放置されていた巨鎧兵も、同様にして回収作業が行われたのだ。
数名の傀儡師と人形の協力があって、巨鎧兵の胸部が外されていった。
あらわになったのは日の光を浴びて綺麗に輝く精霊石の繭。
緑に輝くその中が、操者が乗り込む操縦席だ。
ローゼリエッタとシャルルは、その繭をかき分けると、狭い隙間に身を滑り込ませる。
繭の中は綺麗なもので、一見どこに異常があるのか見分けることは難しい。
だが実際に糸を操作してみれば一目瞭然。
現在乗り込んでいる巨鎧兵は、右腕と左足が動かない状態だった。
二人は相談しながら、途絶えてしまった糸を丁寧に紡いでいく。
結構な時間を経て、運用に耐えうるまで補強することが出来た。
二人の力によって巨鎧兵は、魔法都市に乗り込んだ時と同程度に動くことが出来るだろう。
だがここで、ローゼリエッタの傀儡師としての血が騒ぐ。
「ねぇ、シャルル。この巨鎧兵、もっと改造しちゃってもいいかな」
「改造……ですか?それはいいですけど、一体どんな風にするんです?」
ローゼリエッタは、気分を高揚させながら語り出した。
現在革命軍の手元にある巨鎧兵に、魔法石は組み込まれていない。
あれは隊長機だけの特権であり、また試作運用も兼ねていたのだ。
そこで、ローゼリエッタの案はこうだ。
先ずは巨鎧兵に魔法石を組み込んでいく。
本来はそれなりに値の張るものなのだが、幸か不幸か、この場には多くの魔法使いがいる。
彼らに頼むことで、魔法石は十分な数用意することが出来るだろう。
この改造により巨鎧兵は、魔法を扱うことが可能となる。
続いて操縦席にも手を加えようと少女は告げた。
精霊石の繭を少し拡張し、もう一人入れるように改良するのだ。
一つは従来通り、巨鎧兵の操者を。もう一つには魔法使いに座ってもらうことで、より自在に魔法を使った戦闘が可能となるのではと考えた。
当然これは、実際に操るわけではない一介の傀儡師が妄想する仮想物に過ぎない。
その操作工程も、実際に使い物になるかどうかさえもが、全くの未知数のものだ。
机上の空論。故に成功すれば見返りは大きいが、失敗すれば一機失う可能性も孕んでいる。
一種の博打ともとれる案だったが、シャルルはローゼリエッタの言葉を否定しない。
興味をひかれたというのも事実だが、そもそもシャルルはローゼリエッタの文言を拒む思考を持ち合わせていなかった。
「なんか凄そうですね……まずは一機、やってみましょうか」
シャルルの同意が得られて、ローゼリエッタも余計乗り気になる。
それから数日の間、二人は巨鎧兵の中で、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返した。
一方で、転送魔法が封じ込められた魔法石の作成は、熾烈を極めた。
一人から少数を転移させる『空間転移』の魔法は比較的容易なのだが、相当数の人間を転移させる『空間通門』の魔法は、やはり相当な難度であるようだ。
一つ失敗するたびに、集まった魔法学校の生徒らは落胆の声を上げる。
「くそう!また失敗だ!!」
失敗した魔法石を放り投げると、すぐに次の魔法石を作り出した。
リエントはこのとき、相当焦っていた。
魔法を学び、その力に自信を持っていながら、魔法都市が滅ぶ時をただ傍観しているしかなかった。
自分の無力を嘆き、自暴自棄に走ったこともある。
だが、助けてくれた革命軍の人らは、何もできなかった自分たちを頼ってくれた。
その事が嬉しくて、リエントは彼女らの頼みを意気揚々と聞き入れたのだ。
また一つ、失敗した魔法石を放り投げる。
(くそう!理論上はこれで出来る筈なんだ!何でできない!?このままじゃ僕たちは、本当に役立たずだ!)
湧き上がる焦燥感。だが魔法石作成は遅々として進まない。
そんな様子を傍から見ていた傀儡師グエノースが、転がる魔法石を拾い上げてつぶやいた。
「あーあ、もったいねぇなぁ。おい、この石、まとめてうっぱらったりできねえのかよ」
魔力操作の技術をかじっただけで、彼に魔法の知識はほとんどない。
だというのに、その何気ない言葉が、リエントの脳裏を貫いた。
「まとめて……?そうか!それならきっと……!有難うございます!」
唐突に礼を言われ、グエノースは呆気にとられる。
彼の反応を待つことなく、リエントらは新たな理論の試に掛かる。
彼らが行ったのは、術式の小分けだ。
一個の魔法石に入りきらないのであれば、二つ、三つと魔法石を用意し、分割して入れてしまえばいい。
当然ながらその作業は、これまで一度も試したことがない部類の試みであり、魔法陣を四分割する、といった安易な思考では到底成しえない。
魔法陣の構造から紐解き、それぞれが異常な反応をしない範囲で、魔法石に分けて封印していく。
それは、気の遠くなるような作業であった。
新たな試みに挑み始めてから三日後。
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革命軍の作戦は、順調に進んでいく。
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