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12章 世界の法則
新兵器
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その光景を見たローゼリエッタは、思わず窓から身を乗り出した。
確かに、革命軍が屯する向こう側に、巨鎧兵の大群が見えたのだ。
地平線を覆う炎と鉄人形。
地上より遥かに高いその位置からは、バルドリンガの軍勢の姿がはっきりと見えた。
敵軍の次に気を取られるのは自軍の番だが……どうやら革命軍は、まだ迫る大群に気づいていないらしい。
更には都合悪く、巨鎧兵からもおりてしまっているようで、動きを確認できるのは二機程しかない。
ローゼリエッタは慌てて、腰につけた布袋から、小さな石を取り出した。
それは、エルフの集落に来る前に、リエントから渡された通信用の魔法石。
少女は魔法石を握りしめると、魔力を流し込みリエントに連絡を試みる。
「リエント君!!聞こえる!?敵軍がそこまで来てる!直ぐ戦闘準備を!」
その声は、遠く離れた革命軍の下へ届けられた。
革命軍の面々は、今後戦闘になった際の行動を話し合う為に、皆で集まり会議を開いていた。
見張りは勿論立ててあり、今でも二体の巨鎧兵が周囲を注視している。
だが、向こう側の視界を惑わす森の呪いは、こちら側の視界をも惑わしてしまうようだ。
世界樹の苗木周辺に限り、その呪いの影響を受けずに見ることが出来るのだが、それを知るのはこの場にいないエルフだけだ。
会議を仕切るのは場慣れしたガンフの仕事である。
「敵の巨鎧兵は六百。それに三将も姿を現すだろう。それに対し我々の戦力は巨鎧兵が僅か十機。そして歩兵が百程度だ。この戦力差を覆すには、並大抵の事では不可能だ」
「そうなるとやっぱり、翻弄しながら逃げるしかなさそうですね」
年の割に落ち着いた様子のリエントが、ガンフの話に同調して見せた。
丁度その時。
ローゼリエッタに渡した魔法石の片割れが、リエントの道具袋の中で煌々と輝きだした。
それに気づいたリエントは、慌てて魔法石を取り出し顔の前までもっていく。
「……がそこまで来てる!直ぐに戦闘準備を!」
「ローゼリエッタさん!?どうしたんですか!?」
その声は酷く慌てている。
魔法石の起動と語り出しがずれていたようで、文頭が上手く聞き取れなかった。
しかし、互いの声が認識されると、リエントの疑問はすぐに解消される。
「今森の向こうが燃えてて、バルドリンガの巨鎧兵が見えるの!もうすぐこっちに気付くと思う!直ぐに戦闘準備を。エルフの皆さんが助けてくれるそうです!」
ローゼリエッタの注意を受け、革命軍は直ぐに行動を始めた。
革命軍が戦闘準備を始めている頃、バルドリンガ軍は蠢く不気味な森を焼き払いながら、巨鎧兵団を推し進めていた。
その群れの後方にある車の中で、バルドリンガの王ハルクエルは、果実酒の入ったグラスを傾ける。
車窓から見える火の手が上がった森は、そこはかとなく幻想的で、酒の肴に最適だ。
「ふふふ……いいぞ。よく燃えているではないか」
車内には三将が一人、パシウスの姿も見える。
ところが、彼の表情は王とは違い、渋く眉間にしわが寄っていた。
「王よ。お言葉ですが、これから向かう先は戦場となります。あまり飲みすぎませんように……」
「そんなに気にするでない。酒に飲まれるような真似はせんよ。それに、お前が傍にいるのだ。私の身の安全は確実ではないか」
空っぽになったグラスに再び果実酒を注ぐと、揚々とそれをあおった。
前方を行く巨鎧兵が、遂に二つ目の呪いの境界を超えた。
偽りの地平線。先程までは見渡す限りの大森林だったが、遠くにその終わりが見え始めたのだ。
「報告申し上げます!森の終わりが見えました!加えて、革命軍の巨鎧兵も見えます!」
その報せは、瓶一つを空にしたハルクエルの下にも届けられた。
彼はグラスに残った酒を飲み干すと、椅子から立ち上がり車の屋根に備え付けられた天窓から顔を覗かせる。
「いよいよか……?なんだあれは……!なんて巨大な木だ!なぜあれが今まで見えなかったのだ!?」
それが呪いであることは直ぐに気が付いた。
上下に揺れる車上で、ハルクエルは歪に笑みを作ると、配下に指示を出す。
「よぅし!革命軍に我々の最新兵器を見せてやれ!『魔導巨兵』!充填開始!!」
少し遅れて、巨鎧兵の大群の中から、二機の巨鎧兵が歩みを止めた。
王国が新たに作った兵器。それは『魔導巨兵』と呼ばれ、あることに特化した巨鎧兵であった。
その人形が背負うのは、かつてバルドリンガを苦しめた魔法都市オージェスの兵器。魔導砲である。
彼の王国は、魔法都市の地下に眠る研究施設を突き止め、その技術を奪い去っていたのだ。
背中に背負う巨鎧兵の倍はある砲身。腰を落とし砲身が地に触れると、巨鎧兵は前かがみになり、砲身を支える土台へと変わる。
角度の調整が済むと、次は膨大な魔力を蓄えた燃料管の接続だ。
それも終えてしまえば、後は魔導砲に魔力が満ちるのを待つだけとなる。
圧倒的な威力を持つ魔導砲を武装として持ち歩く巨鎧兵。
どんな戦場であろうとも、山を吹き飛ばす威力を持つ兵器が導入できるようになり、バルドリンガの軍力は更に強力となった。
だが、その人形単体を見れば、扱いにくさが目立つ。
一発を放つのに膨大な量の魔力が必要となる為、一機が一つの戦場で放てる球数は一発が精々だろう。
また、巨鎧兵の大きさを優に超える巨大な砲身。それを担いでしまえば、他の武装など儘ならず、通常戦闘も殆ど不可能だ。
総じて魔導巨兵は、頗る強力ではあるが、極端に弾数が制限された使い切りの兵器といえた。
ところがハルクエルは、それを全て打ち込むように指示を出したのだ。
「構わん。直撃すればそれで全て終わるのだ。仮に外れたとしても、彼我の兵力差は歴然。押しつぶしてしまえ!なぁに、あれだけ大きな標的があるのだ!外すわけが無かろう!」
酔いが回っているのか、緻密とは真逆の策が取られる。
それでも、王を正すことのできる配下は、今の王国にいない。
確かに、革命軍が屯する向こう側に、巨鎧兵の大群が見えたのだ。
地平線を覆う炎と鉄人形。
地上より遥かに高いその位置からは、バルドリンガの軍勢の姿がはっきりと見えた。
敵軍の次に気を取られるのは自軍の番だが……どうやら革命軍は、まだ迫る大群に気づいていないらしい。
更には都合悪く、巨鎧兵からもおりてしまっているようで、動きを確認できるのは二機程しかない。
ローゼリエッタは慌てて、腰につけた布袋から、小さな石を取り出した。
それは、エルフの集落に来る前に、リエントから渡された通信用の魔法石。
少女は魔法石を握りしめると、魔力を流し込みリエントに連絡を試みる。
「リエント君!!聞こえる!?敵軍がそこまで来てる!直ぐ戦闘準備を!」
その声は、遠く離れた革命軍の下へ届けられた。
革命軍の面々は、今後戦闘になった際の行動を話し合う為に、皆で集まり会議を開いていた。
見張りは勿論立ててあり、今でも二体の巨鎧兵が周囲を注視している。
だが、向こう側の視界を惑わす森の呪いは、こちら側の視界をも惑わしてしまうようだ。
世界樹の苗木周辺に限り、その呪いの影響を受けずに見ることが出来るのだが、それを知るのはこの場にいないエルフだけだ。
会議を仕切るのは場慣れしたガンフの仕事である。
「敵の巨鎧兵は六百。それに三将も姿を現すだろう。それに対し我々の戦力は巨鎧兵が僅か十機。そして歩兵が百程度だ。この戦力差を覆すには、並大抵の事では不可能だ」
「そうなるとやっぱり、翻弄しながら逃げるしかなさそうですね」
年の割に落ち着いた様子のリエントが、ガンフの話に同調して見せた。
丁度その時。
ローゼリエッタに渡した魔法石の片割れが、リエントの道具袋の中で煌々と輝きだした。
それに気づいたリエントは、慌てて魔法石を取り出し顔の前までもっていく。
「……がそこまで来てる!直ぐに戦闘準備を!」
「ローゼリエッタさん!?どうしたんですか!?」
その声は酷く慌てている。
魔法石の起動と語り出しがずれていたようで、文頭が上手く聞き取れなかった。
しかし、互いの声が認識されると、リエントの疑問はすぐに解消される。
「今森の向こうが燃えてて、バルドリンガの巨鎧兵が見えるの!もうすぐこっちに気付くと思う!直ぐに戦闘準備を。エルフの皆さんが助けてくれるそうです!」
ローゼリエッタの注意を受け、革命軍は直ぐに行動を始めた。
革命軍が戦闘準備を始めている頃、バルドリンガ軍は蠢く不気味な森を焼き払いながら、巨鎧兵団を推し進めていた。
その群れの後方にある車の中で、バルドリンガの王ハルクエルは、果実酒の入ったグラスを傾ける。
車窓から見える火の手が上がった森は、そこはかとなく幻想的で、酒の肴に最適だ。
「ふふふ……いいぞ。よく燃えているではないか」
車内には三将が一人、パシウスの姿も見える。
ところが、彼の表情は王とは違い、渋く眉間にしわが寄っていた。
「王よ。お言葉ですが、これから向かう先は戦場となります。あまり飲みすぎませんように……」
「そんなに気にするでない。酒に飲まれるような真似はせんよ。それに、お前が傍にいるのだ。私の身の安全は確実ではないか」
空っぽになったグラスに再び果実酒を注ぐと、揚々とそれをあおった。
前方を行く巨鎧兵が、遂に二つ目の呪いの境界を超えた。
偽りの地平線。先程までは見渡す限りの大森林だったが、遠くにその終わりが見え始めたのだ。
「報告申し上げます!森の終わりが見えました!加えて、革命軍の巨鎧兵も見えます!」
その報せは、瓶一つを空にしたハルクエルの下にも届けられた。
彼はグラスに残った酒を飲み干すと、椅子から立ち上がり車の屋根に備え付けられた天窓から顔を覗かせる。
「いよいよか……?なんだあれは……!なんて巨大な木だ!なぜあれが今まで見えなかったのだ!?」
それが呪いであることは直ぐに気が付いた。
上下に揺れる車上で、ハルクエルは歪に笑みを作ると、配下に指示を出す。
「よぅし!革命軍に我々の最新兵器を見せてやれ!『魔導巨兵』!充填開始!!」
少し遅れて、巨鎧兵の大群の中から、二機の巨鎧兵が歩みを止めた。
王国が新たに作った兵器。それは『魔導巨兵』と呼ばれ、あることに特化した巨鎧兵であった。
その人形が背負うのは、かつてバルドリンガを苦しめた魔法都市オージェスの兵器。魔導砲である。
彼の王国は、魔法都市の地下に眠る研究施設を突き止め、その技術を奪い去っていたのだ。
背中に背負う巨鎧兵の倍はある砲身。腰を落とし砲身が地に触れると、巨鎧兵は前かがみになり、砲身を支える土台へと変わる。
角度の調整が済むと、次は膨大な魔力を蓄えた燃料管の接続だ。
それも終えてしまえば、後は魔導砲に魔力が満ちるのを待つだけとなる。
圧倒的な威力を持つ魔導砲を武装として持ち歩く巨鎧兵。
どんな戦場であろうとも、山を吹き飛ばす威力を持つ兵器が導入できるようになり、バルドリンガの軍力は更に強力となった。
だが、その人形単体を見れば、扱いにくさが目立つ。
一発を放つのに膨大な量の魔力が必要となる為、一機が一つの戦場で放てる球数は一発が精々だろう。
また、巨鎧兵の大きさを優に超える巨大な砲身。それを担いでしまえば、他の武装など儘ならず、通常戦闘も殆ど不可能だ。
総じて魔導巨兵は、頗る強力ではあるが、極端に弾数が制限された使い切りの兵器といえた。
ところがハルクエルは、それを全て打ち込むように指示を出したのだ。
「構わん。直撃すればそれで全て終わるのだ。仮に外れたとしても、彼我の兵力差は歴然。押しつぶしてしまえ!なぁに、あれだけ大きな標的があるのだ!外すわけが無かろう!」
酔いが回っているのか、緻密とは真逆の策が取られる。
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