反魂の傀儡使い

菅原

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13章 世界の管理者

山の主 2

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 全ての説明を聞き終えたマシリオンは、再び草原の上に立つ巨鎧兵を見つめる。
それから、誰かに語り掛けるでもなく呟いた。
「ヒトは、良くも悪くも進化したということか」
視線を切るとテーブルにつく三人を見渡す。
「了解しました。我々も力をお貸ししましょう。それで、当面の予定はどうなっているのですか?」
ドワーフもエルフやセリオン同様、二言目には話を受け入れた。
 エルフのカーシンは、今後の予定を語り出す。
「期限は三月。その限られた時間の中で我らは、エルフの知識によってヒトの魔法使いを、セリオンの技術によってヒトの戦士を、ドワーフの能力によってそれぞれの武具の強化を図る」
これにより、バルドリンガ軍との戦いを可能とする水域まで革命軍の戦力を向上させる思惑だ。
その願は無事聞き届けられ、マシリオンは頷いた。


 目下の問題は、革命軍達の居住空間の確保である。
現在の革命軍は、エルフ、セリオンを含みその数は三百を超える。その数を寝泊まりさせるには、ドワーフの都市の大きさでは足りない。
そして彼らには、更に追加の勢力が待っていた。
「それで、エルフは後どれだけ参戦するのでしょう」
「二つ……いや、三つは来るだろう」
「ふむ、ではセリオンは?」
「我らは四つだな。皆気性の荒い者達で、暴れたがっているようだ」
「なる程。ではそれを踏まえた数の住居を用意せねばなりませんね」
ローゼリエッタを置き去りに、話しを続ける三人。
その内容は少女が疑問に思う物ばかりで、とてもではないが要領を得ない。
 話についていけず首をかしげるローゼリエッタに気付いたマシリオンは、一番の年長者カーシンに尋ねた。
「カーシン様。彼女には説明していないのですか?」
「む?していなかっただろうか……それは申し訳ないことをした。ローゼリエッタ殿、世界には貴女が訪れた各種族の集落の他にも、無数に集落が点在するのだ。エルフは十、セリオンは七、ドワーフは八、細かく分ければ更にあるが、大きく分けてそれだけの集落が、世界を調整する作業を行っている」
彼らの話では、その内の幾つかの集落が、ヒト同士の争いに力を貸してくれるらしい。

 居住空間の確保はドワーフが買って出る。そもそも拠点となる集落はドワーフの物であるから当然だ。
加えて物作りが性分である彼らにとって、建築は得意分野である。人手が足りない場合でも、手の空いたセリオンやエルフの協力を得れば、問題はなさそうだ。
 次いで上がる問題は食糧問題である。
この時、ドワーフの集落には四百を超える数のドワーフが住んでいた。これに革命軍を加えると八百を超え、更に援軍が加われば千を優に超えてくる。これだけの量の頭数を食わすには、それ相応の食糧が必要となるだろう。
とてもではないが、ドワーフが持つこぢんまりとした畑程度では到底賄えない。
だがその問題も、彼らのおかげで全て解決した。
森を管理するエルフが果物や野草を、草原を管理するセリオンが肉や飲み水を、これにドワーフが作る酒が入れば、毎日の食事に打ち上げ用の酒まで付いてきて、存外豪勢なものとなった。


 当面の問題の解決法を模索し終え、彼らの話し合いは終了となる。
各種族は生活の基盤作成に加え、ヒトの強化を主な目的と掲げ、ヒトは仕事らしい仕事を与えられはしないが、戦力向上に尽力することになった。
 話し合いの締めに、マシリオンが高らかに宣言する。
「ではこれより、エルフ、ドワーフ、セリオン、ヒトによる連合軍を立ち上げましょう。最高指揮官はエルフである……」
その言葉をカーシンが遮った。
「最高指揮官は彼女に任せよう。元はヒト同士の争い。我々が上に立つべきではない。尤も、いざとなれば出ざるを得ないが……」
彼の視線は、隣に座るローゼリエッタへと向かう。
グォンは何も語らない。マシリオンは何かを訪ねようと口を開いたが、最高責任者としての命令と割り切りそれに頷いた。
一番納得できなかったのは、当人であるローゼリエッタだ。
分かっているだけでもグォンは齢二百を超え、カーシンに至っては齢六百という想像もつかない時間を生きている。
一方でローゼリエッタは、まだ二十年も生きていない幼子。
とてもではないが、この役職はあべこべと言わざるを得ない。
それでも少女には、カーシンの先の言葉を否定することが出来なかった。

 世界は今、激動の最中にある。
ヒトのせいで大きな争いが起き、ヒトのせいで一つの重要施設が失われ、ヒトのせいで世界の調和が崩れようとしている。
これに対し世界の管理者らは、ヒトのしでかした罪はヒトで裁くことを願った。
 ローゼリエッタは、強い決意と共に明言する。
「分かりました。その任全うさせて頂きます。至らぬ所はご助力願います」
少女は立ち上がり三方に頭を下げる。
人間の軍隊である革命軍の主は、一躍四つの種族からなる連合軍の主となった。
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