反魂の傀儡使い

菅原

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14章 新たな力

エルフと魔法使い 1

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 エルフと魔法都市オージェスの生徒らは、ドワーフの集落郊外にて、魔法の訓練を開始する。
彼らの魔法は、巨鎧兵を用いずに巨鎧兵と戦える唯一の手段である為、他方よりも重点的に強化せねばならない。
長老であるカーシンと、その直下にあたる四人の司祭が中心となり、教鞭が振るわれることになった。

 頭数的には一対一で教えることも可能な為、大まかな知識をあらかじめ与えた後は、個別での訓練が始まる。
魔法学校の生徒を率いるリエントは、カーシンの下で、詠唱を呟きながらその杖を振るった。
魔法の行使が確認され、地面に真っ赤な魔方陣が現れると、炎が逆巻き大きな火柱を作り出す。
やがてその柱は、火の粉を散らしながら霧散し、周囲を包む熱気と共に消え去った。
 一連の魔法行使を見て、カーシンは唸る。
「素晴らしい力だ。まだ若くとも良く努力しているようだな」
魔法とは、武術のように日ごろの鍛錬が物を言う。ほんの数日鍛錬を疎かにするだけで、魔法技術は見る見るうちに下降線を辿るのだ。
だというのにまだ幼きヒトの魔法使いは、エルフの予想を上回る力を見せつけた。
これに対しカーシンは、理想の形を見せることで褒美とする。
 カーシンが手を一つ振り払うと、先程同様地面に真っ赤な魔方陣が現れた。
そこから発せられた炎は、先のリエントの物とは比べ物にならない程強力な物。
逆巻く炎は天高く上り、防壁の内側にいるドワーフの目にもとまる高さに至る。
その魔法は、柱の大きさ、炎の速度、どれをとってもヒトの魔法を超えていて、リエントは余りの熱気に顔を顰め、腕で顔を覆いながら、吹き荒れる熱風を堪えていた。

 逆巻く炎は、そこにあった事を疑うほどあっけなく消え去り、草が焼けた焦げ臭い匂いだけが辺りを漂う。
この力に心を奪われたのは、周囲に散らばっていた魔法学校の生徒たちだ。
当時尊敬の念を抱いていた、魔法学校の教師ですら凌駕する、エルフが持つ魔法の力。
その力は、魔法の力を究めんとする純粋な子供らの心を鷲掴みにした。
そしてカーシンは、その心を更に掌握する為の言葉を放つ。
「皆にはせめて、これくらいの事は出来るようになって貰うつもりだ。気を抜かず鍛錬なさい」
偉大なる魔法使いの言葉に、リエントは思わず、杖を握る手に力を籠めた。


 ヒトの心に火を灯すことは出来たが、こから先の工程は一向に進まなかった。
そもそも種族の有する能力に差がありすぎるのだ。エルフは自身の出来ることを、ヒトの魔法使いにも強要する。だがヒトは、その領域に達することは出来ず、遂には杖を振るのをやめてしまうのだ。
圧倒的な知識と魔力を持つエルフたちは、頗るものを教えるのことが苦手だった。
 それでもカーシンは諦めない。今回だけでなく、今後ヒトが争う時、正しき心を持つ彼らが力を持たなければ、再び今回のような争いが起きてしまうだろう。
そうさせない為にも、彼は新たな打開策を模索する。

 長く停滞の時が続いた。
時間は限られているが、一向に上がらぬ成果に焦り出す両名。
その中でカーシンは、ある決心をする。
ある日、彼は集まるヒトの魔法使いに告げた。
「このままでは、あの鉄の巨兵相手に戦うことは難しいだろう。あの時我々を襲った軍勢は六百あったが、今後の戦いでそれ以下になることはあるまい。ならば君等にも、一人で脅威と思わせる力を身に着けて貰わ無ければならない。だが我々に出来たことも、ヒトの力では難しいようだ。……残された道は唯一つ。精霊との契約を持って、この難局を乗り切るとしよう」
それからカーシンは、一つ一つ説明を始めた。

 精霊とは、世界を裏側から調整する『世界の管理者』の一つである。
エルフと同じく神が作り出した者の一つだが、その性質は他と大きく異なっていた。
先ず精霊は、肉体を持たない。肉体を持たぬ精霊は、精神のみの存在であり、その実態は魔力の集合体だ。
次に精霊は、自我を持たない。世界を調整する工程に、余計な考えは必要なしと、神は精霊に自我を与えなかった。
最後に精霊は、感情を持たない。機嫌が悪いからと言って、使命をないがしろにされては、世界に異常をきたしてしまうだろう。
以上三つの特異点により、精霊は一般的に視認することすら出来ない存在であった。
 これと契約することは、契約者に大きな利益と大きな不利益をもたらす。
利益である点を挙げれば、膨大な魔法の力を得られるだろう。これまでも精霊の力を借りて行使していた魔法が、より綿密に繋がることで、更なる練度で繰り出すことが可能となる。
その増幅度合いは、彼らヒトの優秀な魔法使いが手に入れれば、一人でも驚異的な魔法が扱えるようになるだろう。
一方不利益な点を上げれば、属性の固定化だ。現在のヒトの魔法使いは、得手不得手はあるが、多種多様な魔法を扱うことが出来る。だがこれは、精霊との繋がりが希薄故に可能なもので、契約をしてしまえば精霊の力の影響をもろに受けてしまう。
端的に言えば、契約した精霊が持つ属性以外の魔法が、扱えなくなる可能性があるのだ。
 説明された人間の魔法使いたちには、一つの選択が強いられる。
若干威力が心許なくとも、多種多様な魔法を使いこなす万能型魔法使いとなるか、または一つの属性しか扱えないが、圧倒的な威力を有する特化型魔法使いとなるかの二択である。


 ここまでの説明を受け、人間の魔法使いたちは、多くが精霊との契約を望んだ。
彼らの心にはまだ残っていたのだ。
巨鎧兵団に襲われた時の、天から降り注ぐ雷を。
特訓開始時に、エルフの長老が何の気なしにはなった強大な火属性魔法を。
その力に魅入られたリエントも、二つ返事で契約を望んだ。
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