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21章 画策
会食
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約束の時間が近づいてきた。
ローゼリエッタはトキノと共に、ドール・ロゼを後にすると約束していた大衆食堂へと向かう。
「ここら辺の飯屋も王国に負けず劣らず、中々旨いな」
「そうなんですか? ……そういえばよく考えたら私、どこかのお店でご飯を頂いたことなかったです」
「なんだ、もったいねえな。じゃあこの優しいお兄さんが教えてやろうじゃねえか。いいか? おすすめはだな……」
二人は道すがら、そんなことを喋りながら大通りを練り歩く。
キャロル、ジェインとの約束した店は、大通りに面した食堂だった。大通りは既に人でごった返していて、まっすぐ歩くのも儘ならない。そんな道を歩くローゼリエッタは、一人でないことで密かに安どしていた。
「今日も又大勢いるな。逸れるなよ」
そういってトキノは先を歩く。
約束の店の前には、既にキャロルとジェインが待っていた。
キャロルは近寄るローゼリエッタに気が付くと、元気よく手を振って出迎える。
「良かった、迷ってなくて。ここら辺のお店はどこも人気で、人通りがすごいから心配だったの」
確かにキャロルの言う通り、周囲は夕飯時とあって凄い人込みだ。だが今の姿は本当の姿ではない。まだ日が顔を出している時間帯だが、もうしばらくたてば仕事帰りに酒を求める者達が集い、更に人は増えていくのだ。
行き交う人並みの中で、ローゼリエッタはキャロルと手を繋ぐと、傍にいたトキノの紹介を始める。
「実は私のお店のお隣で、知り合いがお店を出していたんです。その人に案内してもらったのでとっても助かりました」
「おお、中々の美人さんじゃねえか。宜しくな姉ちゃん、兄ちゃん」
笑顔で手を上げるトキノ。そのまま手を伸ばし、キャロル、ジェインに握手を求めた。
だがキャロルとジェインは、その差し出された手と、トキノの顔を交互に見ると、驚愕の表情で叫んだ。
「めっ、名匠アガツマ!?」
「まさかロゼのお店って、アガツマさんの隣なの!?」
どうやらアガツマの名はこの街でも轟いているようだ。
二人の叫び声につられて、周囲を歩く者らの視線が集まる。するとトキノは、慌てて二人の口を手でふさぐと、そそくさと店の中に連れ込んでしまった。
周囲の視線は自然と一人取り残されたローゼリエッタに集まる。
その視線に耐え切れなくなったローゼリエッタもまた、急ぎ店の中に駆け込んだ。
大通りに負けず劣らず、店内も人でごった返していた。
その多くは剣を振って生計を立てる生粋の戦士たちだ。町人からの依頼を完了し、仕事終わりの一杯といったところだろうか。
更には入れ替わる客に対応する店員も、所狭しと駆け巡っている。
「嬢ちゃん、こっちだこっちだ!」
店の入り口で熱気に充てられていたローゼリエッタは、遠くから呼びかけられる声に気付く。
持ち主であるトキノはというと、連れ去ったキャロル、ジェインと共に、一つの丸いテーブルでくつろいでいた。
周囲にもテーブルが置いてあり、空席は殆ど見当たらない。
ローゼリエッタは店内を行き交う人にぶつからぬ様気を付けながら、一つだけ開いた空席に座る。
「凄い繁盛していますね」
「ふふっ、凄いのはこれからよ。別の店から流れてくる戦士たちに加えて、農作業で疲れ切った農夫も雪崩れ込んでくるわ。これでも空いてるほうなのよ」
キャロルの言葉をにわかに信じられず、ローゼリエッタは周囲を見渡す。
そうしていると、いつの間に呼んだのか店員がやってきて注文を取り始めた。
「先ずは酒だ! 嬢ちゃんはともかく、お前らは飲めるだろう?」
「ええ、お付き合いしますよ」
「私はあんまり強くないから、軽い奴で……」
酒を注文した後、皆思い思いに好きな料理を注文する。それから料理が運ばれるまでの間で、いよいよ情報の共有が始まった。
場を仕切るのは、一番最年長であるトキノ・アガツマだ。
彼は先ず向かい側に座るローゼリエッタに話を聞くことに決める。
「じゃあ早速だが、革命軍の仕入れている情報を聞きたいとこだな。嬢ちゃんとこではどんなことがわかっているんだ?」
「はい、まずは……そうですね……皆さんが『黒き獣』と呼ぶ物ですが、革命軍の間では病魔を狩る物、通称『魔物』と呼んでいます。この世界の自浄作用とのことで、世界の管理者ではない人間を滅ぼすために、世界が作り出した存在の様です」
呼称は特別大事なものではない。だがその存在理由は極めて重要な話で、人間が棲む界隈で分からなかった『突然出現した理由』を解明する貴重な情報源となる。
ここで、キャロルが割って入った。
「ちょっとごめんなさい。その『世界の管理者』っていうのは誰なのかしら」
「ああ、すみません。そこから説明しないといけませんでしたね。えーと……世界の管理者っていうのは、エルフやドワーフ、セリオンといった人達の事です。彼らが世界を管理してくれているから、この世界は私たちが棲める世界になっているんだそうです」
管理者の名前が連なると、キャロル、ジェイン、トキノの三人は口を開け驚いた。
一般的な人間にとって、エルフやドワーフといった存在は架空にも等しい存在であった。
勿論それらを取り上げた書物や物語も多数存在はしたが、そのどれもが空想の産物であるとされ、事実ここ数百年の間でその存在が確認されたことはない。
とはいえ『森人の森』のように、様々な形で語り継がれていて、その名だけは今でも耳にすることが出来る。
「子供の頃に絵本で読んだことはあったが……本当に存在するのか?」
ジェインの問いかけに、ローゼリエッタは頷く。
「本当です。現に私はエルフ、セリオン、ドワーフの集落でお世話になっていましたし、先だっての王国との戦いでも、皆さん命がけで助けてくれました」
こればかりは納得してもらうしかない。なにせ革命軍を離れた少女には、彼らの存在を証明する証拠が一切ないのだから。
ローゼリエッタの真摯な態度が幸いし、彼女の話は過不足なく受け入れられた。
そこで話は魔物へと戻る。
「それで、その魔物ってのはどうしたらいなくなるんだ? 自浄作用ってことは、俺たち人間は、世界に害ある存在だと認識されたことになるが……」
トキノは少々神妙な顔つきで問いかけた。
仲間が殺され、今こうしている間にもどこかで犠牲は増えているかもしれない。そんなことを懸念しての問いかけだった。
だが、その答えはローゼリエッタにも分らない。
「……ごめんなさい。どうしたらいいかは私にもわからないんです」
「分からないって……貴女は革命軍の意思で動いているんじゃないの?」
横から投げかけられるキャロルの疑問に、ローゼリエッタは答える。
「いえ、今の私がしていることは、革命軍と何も関係ないんです。実は……」
それから料理が来るまでの時間を使って、少女は説明し続けた。
ローゼリエッタはトキノと共に、ドール・ロゼを後にすると約束していた大衆食堂へと向かう。
「ここら辺の飯屋も王国に負けず劣らず、中々旨いな」
「そうなんですか? ……そういえばよく考えたら私、どこかのお店でご飯を頂いたことなかったです」
「なんだ、もったいねえな。じゃあこの優しいお兄さんが教えてやろうじゃねえか。いいか? おすすめはだな……」
二人は道すがら、そんなことを喋りながら大通りを練り歩く。
キャロル、ジェインとの約束した店は、大通りに面した食堂だった。大通りは既に人でごった返していて、まっすぐ歩くのも儘ならない。そんな道を歩くローゼリエッタは、一人でないことで密かに安どしていた。
「今日も又大勢いるな。逸れるなよ」
そういってトキノは先を歩く。
約束の店の前には、既にキャロルとジェインが待っていた。
キャロルは近寄るローゼリエッタに気が付くと、元気よく手を振って出迎える。
「良かった、迷ってなくて。ここら辺のお店はどこも人気で、人通りがすごいから心配だったの」
確かにキャロルの言う通り、周囲は夕飯時とあって凄い人込みだ。だが今の姿は本当の姿ではない。まだ日が顔を出している時間帯だが、もうしばらくたてば仕事帰りに酒を求める者達が集い、更に人は増えていくのだ。
行き交う人並みの中で、ローゼリエッタはキャロルと手を繋ぐと、傍にいたトキノの紹介を始める。
「実は私のお店のお隣で、知り合いがお店を出していたんです。その人に案内してもらったのでとっても助かりました」
「おお、中々の美人さんじゃねえか。宜しくな姉ちゃん、兄ちゃん」
笑顔で手を上げるトキノ。そのまま手を伸ばし、キャロル、ジェインに握手を求めた。
だがキャロルとジェインは、その差し出された手と、トキノの顔を交互に見ると、驚愕の表情で叫んだ。
「めっ、名匠アガツマ!?」
「まさかロゼのお店って、アガツマさんの隣なの!?」
どうやらアガツマの名はこの街でも轟いているようだ。
二人の叫び声につられて、周囲を歩く者らの視線が集まる。するとトキノは、慌てて二人の口を手でふさぐと、そそくさと店の中に連れ込んでしまった。
周囲の視線は自然と一人取り残されたローゼリエッタに集まる。
その視線に耐え切れなくなったローゼリエッタもまた、急ぎ店の中に駆け込んだ。
大通りに負けず劣らず、店内も人でごった返していた。
その多くは剣を振って生計を立てる生粋の戦士たちだ。町人からの依頼を完了し、仕事終わりの一杯といったところだろうか。
更には入れ替わる客に対応する店員も、所狭しと駆け巡っている。
「嬢ちゃん、こっちだこっちだ!」
店の入り口で熱気に充てられていたローゼリエッタは、遠くから呼びかけられる声に気付く。
持ち主であるトキノはというと、連れ去ったキャロル、ジェインと共に、一つの丸いテーブルでくつろいでいた。
周囲にもテーブルが置いてあり、空席は殆ど見当たらない。
ローゼリエッタは店内を行き交う人にぶつからぬ様気を付けながら、一つだけ開いた空席に座る。
「凄い繁盛していますね」
「ふふっ、凄いのはこれからよ。別の店から流れてくる戦士たちに加えて、農作業で疲れ切った農夫も雪崩れ込んでくるわ。これでも空いてるほうなのよ」
キャロルの言葉をにわかに信じられず、ローゼリエッタは周囲を見渡す。
そうしていると、いつの間に呼んだのか店員がやってきて注文を取り始めた。
「先ずは酒だ! 嬢ちゃんはともかく、お前らは飲めるだろう?」
「ええ、お付き合いしますよ」
「私はあんまり強くないから、軽い奴で……」
酒を注文した後、皆思い思いに好きな料理を注文する。それから料理が運ばれるまでの間で、いよいよ情報の共有が始まった。
場を仕切るのは、一番最年長であるトキノ・アガツマだ。
彼は先ず向かい側に座るローゼリエッタに話を聞くことに決める。
「じゃあ早速だが、革命軍の仕入れている情報を聞きたいとこだな。嬢ちゃんとこではどんなことがわかっているんだ?」
「はい、まずは……そうですね……皆さんが『黒き獣』と呼ぶ物ですが、革命軍の間では病魔を狩る物、通称『魔物』と呼んでいます。この世界の自浄作用とのことで、世界の管理者ではない人間を滅ぼすために、世界が作り出した存在の様です」
呼称は特別大事なものではない。だがその存在理由は極めて重要な話で、人間が棲む界隈で分からなかった『突然出現した理由』を解明する貴重な情報源となる。
ここで、キャロルが割って入った。
「ちょっとごめんなさい。その『世界の管理者』っていうのは誰なのかしら」
「ああ、すみません。そこから説明しないといけませんでしたね。えーと……世界の管理者っていうのは、エルフやドワーフ、セリオンといった人達の事です。彼らが世界を管理してくれているから、この世界は私たちが棲める世界になっているんだそうです」
管理者の名前が連なると、キャロル、ジェイン、トキノの三人は口を開け驚いた。
一般的な人間にとって、エルフやドワーフといった存在は架空にも等しい存在であった。
勿論それらを取り上げた書物や物語も多数存在はしたが、そのどれもが空想の産物であるとされ、事実ここ数百年の間でその存在が確認されたことはない。
とはいえ『森人の森』のように、様々な形で語り継がれていて、その名だけは今でも耳にすることが出来る。
「子供の頃に絵本で読んだことはあったが……本当に存在するのか?」
ジェインの問いかけに、ローゼリエッタは頷く。
「本当です。現に私はエルフ、セリオン、ドワーフの集落でお世話になっていましたし、先だっての王国との戦いでも、皆さん命がけで助けてくれました」
こればかりは納得してもらうしかない。なにせ革命軍を離れた少女には、彼らの存在を証明する証拠が一切ないのだから。
ローゼリエッタの真摯な態度が幸いし、彼女の話は過不足なく受け入れられた。
そこで話は魔物へと戻る。
「それで、その魔物ってのはどうしたらいなくなるんだ? 自浄作用ってことは、俺たち人間は、世界に害ある存在だと認識されたことになるが……」
トキノは少々神妙な顔つきで問いかけた。
仲間が殺され、今こうしている間にもどこかで犠牲は増えているかもしれない。そんなことを懸念しての問いかけだった。
だが、その答えはローゼリエッタにも分らない。
「……ごめんなさい。どうしたらいいかは私にもわからないんです」
「分からないって……貴女は革命軍の意思で動いているんじゃないの?」
横から投げかけられるキャロルの疑問に、ローゼリエッタは答える。
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