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魔法都市
槍と魔法 2
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ルインが呼び出したものは、精霊の力で動く魔法人形『岩の魔法人形』であった。魔法人形も多種多様あるが、岩の魔法人形は木、土に続く強度と強さを持つ魔法人形だ。使用用途は多岐にわたり、今回のような戦闘の補助に加え、日常生活の簡単な雑用までをもこなす。本来は召喚魔法の一種であり、あらかじめ作成していた魔法人形を呼び出す形で運用するのだが、驚くことにルインはそれをこの場で即興作り上げてしまった。
槍を構えるラインハルト目掛け、魔法人形が腕を振り落とす。唸る剛腕が風を切り、その驚異は明らかだ。ラインハルトは迫る腕を後ろに飛びのく形で回避する。すると腕はラインハルトが先までいた地面へと突き刺さり、巨大な穴を開けた。あたりに土塊が飛び散る。司会を遮るその中を、ラインハルトは槍を持って駆けだした。
魔法人形自体は、極端な戦闘能力を持たない。その性能は本体に当たる素体に付与された精霊の質によって若干上下はするものの、目にも止まらぬ速度で動くだとか、あらゆる物を弾くだとか、そういった異常な物は基本作ることができない。だが完全に無視をするには難しい相手でもある。もともと今回の相手は、ラインハルトの突進を防ぐことができる力を持っている。これに加えて二対一の構図に陥るのは流石にまずいと感じたラインハルトは、まず魔法人形の無力化を試みた。
突き刺さった腕を持ち上げる魔法人形の動きは頗る愚鈍だ。即席で作られたせいか、精霊の質はあまりよくないらしい。肉薄するラインハルトに反応する様子もなく隙だらけ。その無防備な腹部目掛け、ラインハルトは疾走する。
彼が放ったのは雷の突き。岩のように固い外角を貫くために、威力を重視した技を選んだ。地面を蹴る度に小さな穴が開く。距離が縮むほどにラインハルトの速度が加速し、遂に目で追えなくなる頃、彼の槍が魔法人形を襲う。
バキン!!
耳を劈く音が一回なり、槍が煌々と輝く腹部を貫いた。そこは精霊を宿した魔法人形の核部。ここが壊れた魔法人形は、瞬く間に元の岩塊に戻っていく。魔法特有の淡い光を放ちながら、岩でできた人形は動かなくなった。
現れた魔法人形を忽ち打倒してしまうラインハルトの力は流石と言えた。だが一つの違和感が彼の脳裏を過る。その違和感とは、ルインが一切の妨害をしなかったことだ。
(ゴーレムを倒すまでに魔法が飛んでこなかった……? 放つ時間は十二分にあったはず。……ということは……)
確かに先程ラインハルトが放った技は、当初の突きに比べ速く強力だった。しかし妨害ができないかと言われれば、そんなことはない。ましてやルインは人間業とは思えない高速発動が可能だ。ならば魔法人形を維持するためにも、何かしらの妨害があって然るべきだった。
魔法人形とは魔法使いが操る仮初めの戦士である。自身が後衛で安全に魔法を唱えるためにも、前衛たる魔法人形は出来得る限り長く維持した方が、後々有利となるのだ。もしこれを手放すとすれば理由は二つ。より優秀な前衛がいるか、もしくは失っても問題が無いほどの一手があるかのどちらかだ。
「さぁ、これはよけられるかな?」
ルインの声が聞こえた。その方をラインハルトが見れば、彼の頭上に輝く、眩い光の球が目に入った。
「雷の矢!!」
ルインは手を前に突きだし叫ぶ。
すると突如、眩い光球の中から、十本もの雷の矢が迸った。その速度はまさに雷の如く、人間の反応速度を超えた速度をもって、草原を駆け巡る。不規則に飛び交う様はどこか幻想的で、ラインハルトは一瞬見とれた。
(まるで生き物のようだ)
しかし放たれた矢は次々と視界から消えて行く。その光景に驚異を覚えたラインハルトは、迫る魔法に対処を開始する。
まず彼は、光球から放たれた矢が視界から消えたことから、視覚が役に立たないと見るや咄嗟に目をつむった。視覚の放棄。代わりにそれ以外の感覚を限界まで研ぎ澄ますことで、来る雷を察知しようとしたのだ。
ラインハルトの研ぎ澄まされた感覚が、前から迫る二本の雷をとらえる。一つは直線を、一つは曲線を描きながら高速で動くそれは、今ラインハルトがいる地点を交差する形で飛来しているように思えた。それを見切ったラインハルトは、流れるように足を踏み出し、二本の矢を辛うじて回避する。
研ぎ澄まされた聴覚が、頭上から迫る四本の矢をとらえた。ばりばりと耳障りな放電音を鳴らしながら地面と垂直に降来する矢。それはさも当然のように、回避した先にいるラインハルトへと降りかかる。
四本の矢を察知したラインハルトは、更に前へと足を踏み出した。これにより雷の矢は標的を外し、地面へと突き刺さる。しかし、いかにラインハルトと言えども全てを回避すること叶わず、一本の矢が脹ら脛を貫いた。
「がぁっ!?」
魔法による一撃故に外傷は見当たらない。だがラインハルトの体の中では雷がのたうち回っていた。激痛が全身を駆け巡る。体から力が抜ける。槍を持つ手も昂る意思とは関係なく言うことを効かない。
やがて研ぎ澄まされていた感覚も薄れていき、意識も徐々に暗闇へと落ちていく。
残す雷の矢は四本。先の六本がラインハルトを襲うまで、光球の周囲を回り続けていた物だ。一連の攻防を経てもなお、ラインハルトは前進を続け今一度ルインへ肉薄しつつある。これを嫌ったルインは、進行方向をつぶす様に残す四本を扇状に放った。
ルインからすれば一歩でも後退してくれれば御の字であった。ましてや先の攻撃により、ラインハルトの動きは鈍くなっている。もしかすればこの攻撃が最後の一撃と成りうる。そう思っての一撃であったが、幸か不幸か、力の抜けたラインハルトの体が泳ぎ、矢と矢の隙間をすり抜けてしまった。
「……成程、豪語するだけのことはある」
ルインは素直に感心した。これまでの戦士はルインの高速で放たれる魔法に成す術もなく敗れ去っていった。中には戦闘前に大層な口を叩いておきながら、逃げ惑う者も現れる始末。これに対しラインハルトは、襲い来る激しい魔法に一歩も怯むことはなく、朦朧とした意識の中でも前進するために足を動かしていた。その不屈の精神が、最後の矢を回避へと導いたのだ。
槍を構えるラインハルト目掛け、魔法人形が腕を振り落とす。唸る剛腕が風を切り、その驚異は明らかだ。ラインハルトは迫る腕を後ろに飛びのく形で回避する。すると腕はラインハルトが先までいた地面へと突き刺さり、巨大な穴を開けた。あたりに土塊が飛び散る。司会を遮るその中を、ラインハルトは槍を持って駆けだした。
魔法人形自体は、極端な戦闘能力を持たない。その性能は本体に当たる素体に付与された精霊の質によって若干上下はするものの、目にも止まらぬ速度で動くだとか、あらゆる物を弾くだとか、そういった異常な物は基本作ることができない。だが完全に無視をするには難しい相手でもある。もともと今回の相手は、ラインハルトの突進を防ぐことができる力を持っている。これに加えて二対一の構図に陥るのは流石にまずいと感じたラインハルトは、まず魔法人形の無力化を試みた。
突き刺さった腕を持ち上げる魔法人形の動きは頗る愚鈍だ。即席で作られたせいか、精霊の質はあまりよくないらしい。肉薄するラインハルトに反応する様子もなく隙だらけ。その無防備な腹部目掛け、ラインハルトは疾走する。
彼が放ったのは雷の突き。岩のように固い外角を貫くために、威力を重視した技を選んだ。地面を蹴る度に小さな穴が開く。距離が縮むほどにラインハルトの速度が加速し、遂に目で追えなくなる頃、彼の槍が魔法人形を襲う。
バキン!!
耳を劈く音が一回なり、槍が煌々と輝く腹部を貫いた。そこは精霊を宿した魔法人形の核部。ここが壊れた魔法人形は、瞬く間に元の岩塊に戻っていく。魔法特有の淡い光を放ちながら、岩でできた人形は動かなくなった。
現れた魔法人形を忽ち打倒してしまうラインハルトの力は流石と言えた。だが一つの違和感が彼の脳裏を過る。その違和感とは、ルインが一切の妨害をしなかったことだ。
(ゴーレムを倒すまでに魔法が飛んでこなかった……? 放つ時間は十二分にあったはず。……ということは……)
確かに先程ラインハルトが放った技は、当初の突きに比べ速く強力だった。しかし妨害ができないかと言われれば、そんなことはない。ましてやルインは人間業とは思えない高速発動が可能だ。ならば魔法人形を維持するためにも、何かしらの妨害があって然るべきだった。
魔法人形とは魔法使いが操る仮初めの戦士である。自身が後衛で安全に魔法を唱えるためにも、前衛たる魔法人形は出来得る限り長く維持した方が、後々有利となるのだ。もしこれを手放すとすれば理由は二つ。より優秀な前衛がいるか、もしくは失っても問題が無いほどの一手があるかのどちらかだ。
「さぁ、これはよけられるかな?」
ルインの声が聞こえた。その方をラインハルトが見れば、彼の頭上に輝く、眩い光の球が目に入った。
「雷の矢!!」
ルインは手を前に突きだし叫ぶ。
すると突如、眩い光球の中から、十本もの雷の矢が迸った。その速度はまさに雷の如く、人間の反応速度を超えた速度をもって、草原を駆け巡る。不規則に飛び交う様はどこか幻想的で、ラインハルトは一瞬見とれた。
(まるで生き物のようだ)
しかし放たれた矢は次々と視界から消えて行く。その光景に驚異を覚えたラインハルトは、迫る魔法に対処を開始する。
まず彼は、光球から放たれた矢が視界から消えたことから、視覚が役に立たないと見るや咄嗟に目をつむった。視覚の放棄。代わりにそれ以外の感覚を限界まで研ぎ澄ますことで、来る雷を察知しようとしたのだ。
ラインハルトの研ぎ澄まされた感覚が、前から迫る二本の雷をとらえる。一つは直線を、一つは曲線を描きながら高速で動くそれは、今ラインハルトがいる地点を交差する形で飛来しているように思えた。それを見切ったラインハルトは、流れるように足を踏み出し、二本の矢を辛うじて回避する。
研ぎ澄まされた聴覚が、頭上から迫る四本の矢をとらえた。ばりばりと耳障りな放電音を鳴らしながら地面と垂直に降来する矢。それはさも当然のように、回避した先にいるラインハルトへと降りかかる。
四本の矢を察知したラインハルトは、更に前へと足を踏み出した。これにより雷の矢は標的を外し、地面へと突き刺さる。しかし、いかにラインハルトと言えども全てを回避すること叶わず、一本の矢が脹ら脛を貫いた。
「がぁっ!?」
魔法による一撃故に外傷は見当たらない。だがラインハルトの体の中では雷がのたうち回っていた。激痛が全身を駆け巡る。体から力が抜ける。槍を持つ手も昂る意思とは関係なく言うことを効かない。
やがて研ぎ澄まされていた感覚も薄れていき、意識も徐々に暗闇へと落ちていく。
残す雷の矢は四本。先の六本がラインハルトを襲うまで、光球の周囲を回り続けていた物だ。一連の攻防を経てもなお、ラインハルトは前進を続け今一度ルインへ肉薄しつつある。これを嫌ったルインは、進行方向をつぶす様に残す四本を扇状に放った。
ルインからすれば一歩でも後退してくれれば御の字であった。ましてや先の攻撃により、ラインハルトの動きは鈍くなっている。もしかすればこの攻撃が最後の一撃と成りうる。そう思っての一撃であったが、幸か不幸か、力の抜けたラインハルトの体が泳ぎ、矢と矢の隙間をすり抜けてしまった。
「……成程、豪語するだけのことはある」
ルインは素直に感心した。これまでの戦士はルインの高速で放たれる魔法に成す術もなく敗れ去っていった。中には戦闘前に大層な口を叩いておきながら、逃げ惑う者も現れる始末。これに対しラインハルトは、襲い来る激しい魔法に一歩も怯むことはなく、朦朧とした意識の中でも前進するために足を動かしていた。その不屈の精神が、最後の矢を回避へと導いたのだ。
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