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迷宮
激闘
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タウロスが両腕を防御に回すのを見るや、ラインハルトの槍は更に熾烈となる。当初彼は、一瞬で三つの突きを放っていた。しかし、いつの間にかそれは四つ五つと増えていき、タウロスの体表には幾つもの穿痕が生まれていく。
また、タウロスを襲う攻撃はラインハルトの物だけではない。広間の入り口付近にいたカイネルとシェインも、それぞれ魔法と弓矢を駆使しタウロスを牽制している。だがタウロスの体は頗る頑丈で、放たれた光弾や矢は悉く弾き返されてしまう。それでも多少なりとも生まれる隙を狙い、ラインハルトの攻撃が体力を奪っていく。
『ォォ……オオオオオ!!』
我慢できずにタウロスは叫んだ。後方から飛来する攻撃は大して脅威にならない。だが最前で槍を振るう戦士が厄介すぎる。守備に徹していてはいずれ倒されてしまうだろう。タウロスはそれを嫌って、守りに回していた腕を再び振り上げた。
闇雲に降られる豪腕。だがそこに当初の迫力は一切無く、ラインハルトは余裕をもって回避する。そしてがら空きになった胸へ、彼が持つ槍技で尤も威力がある雷の突きを放った。
力の限り地を蹴った足が、爆発的な推進力を生む。閃光の如き速度でラインハルトの槍がタウロスの胸に突き刺さった。その突きは遂に胸を貫き、背中まで貫通した。
『グギャアアア!!!』
痛みに叫ぶタウロスは、腕を振り回しながらのたうち回った。
ラインハルトは堪らず槍を手放し大きく後ろに飛びのく。力を使い果たしたのだろう。飛びのいたラインハルトは着地に失敗し、数度地面を転がった。虚ろになった視界でタウロスを追う。既に絶命間近だったようだ。ラインハルトの二倍もある巨体は地に伏し、苦し気に喘いでいるだけ。やがてラインハルトも気を失い、双方地に横たわり動かなくなってしまった。
ラインハルトの体力は既に限界を越え、身体中の裂傷から血が滴っている。出血は多量だ。放置してしまっては命に係わる。
「ラインハルトさん!」
駆け寄ってきた兎は、慌てて道具袋から魔法薬を取りだしラインハルトへと振りかけた。
瓶から溢れた液体は、きらきらと七色の光を放ちながら傷口を洗い流す。傷口に染みたのか、ラインハルトが苦し気に呻いた。暫くすると流れていた血は収まりを見せ、傷口は少しずつ塞がっていった。
この間、シェインは吹き飛ばされたエンカの介抱をしていた。タウロスの蹄の直撃を避けたものの、同じくらい頑丈な自身の斧に顔を潰されてしまったのだ。幸運にも目玉が飛び出るだとか頭が吹き飛ぶといった最悪の状態にはならなかったが、彼女の綺麗な顔は大きく変形してしまっていて、とても直視できるものではない。
シェインは半ば諦めつつもエンカに寄り添う。口元に手を当て、はっとした。
「エンカさん……っ! まだ息がある!」
頭から流れた血が顔面を真っ赤に染めているが、その口から僅かに空気の流れを感じた。シェインは急いで魔力を練り上げる。辛うじて息はあれども危険なことに変わりはない。先のスケルトン、タウロス戦で消費し魔力も残り少ないが、シェインは何度も何度も魔法による治癒を試みた。
シェイン、兎が二人の介抱を続けている間、カイネルはタウロスの死体を調べていた。胸に刺さったラインハルトの槍を両手で引き抜き、その傷口を繁々と見つめる。異常発達した四肢。体のつくりは人間に近いが、顔がまさしく動物のもで君が悪い。そして調べれば調べるほどに、謎が残るばかりだ。
「迷宮の外……少なくとも王国周辺じゃ見たことがない魔物だ。こんなのがうじゃうじゃいたんじゃ身が持たないぞ。……それに今まで一体どこにいたんだ?」
彼らには、索的能力に優れた者が三人もいる。聴覚に優れた兎。魔術に長けたシェイン。狩人でもあるカイネルの索敵能力は総合的にも高い。だというのにその誰もが、これ程強大な敵を見落としていた事になる。
(何処かに隠れていた? でもあれだけの強さがあれば隠れる必要なんてないよね。何もないところから湧いて出るなんてこともないだろうし)
何よりも恐ろしいのは、これが迷宮に入ってまだ一層目だということ。どれだけ先があるかもわからないというのに、これほど強大な魔物が現れるとは思ってもいなかった。
シェイン、兎の尽力の甲斐あって、ラインハルト、エンカの容態は落ち着いた。だが共に意識は戻っておらず、このまま迷宮の探索を続けるのは厳しい。話し合いの末一行は、貴重な『帰還の魔導紙』を使用して一度引き上げることに決めた。
「シェインさん、カイネルさん、ラインハルトさんとエンカさんをこちらに」
「兎さん。あれはどうします?」
カイネルが指さしたのはタウロスの死体。基本的に魔物の体は、武具や装飾品、魔法道具の材料として扱われ、高額で取引される。タウロスも魔物であれば例にもれず、何かしらに利用することができるだろう。
「……本当に死んでいるのですね? なら一緒に持っていきましょうか。あれが売れれば新しい帰還の魔導紙も買えるかもしれません」
タウロスの体は大きく、非力な三人では引きずることも大変だ。だからラインハルト、エンカ両名をタウロスの元へと運んでいき、帰還の魔方陣を発動した。
眩い光が広間を埋める。各々目を瞑ったり、手で覆い隠してそれを耐えた。その光が収まると一同は、薄暗い部屋の中へと転移していた。
「ここは……」
「迷宮の入り口ですね。さて、とりあえず二人をベッドに寝かしましょうか。そのあとは近くの店でこれらを処分しましょう」
「わかりました」
兎とカイネルは近くの店へと話をつけに。その間シェインは時間と魔力が許す限り、二人に治癒の魔法をかけ続けた。
また、タウロスを襲う攻撃はラインハルトの物だけではない。広間の入り口付近にいたカイネルとシェインも、それぞれ魔法と弓矢を駆使しタウロスを牽制している。だがタウロスの体は頗る頑丈で、放たれた光弾や矢は悉く弾き返されてしまう。それでも多少なりとも生まれる隙を狙い、ラインハルトの攻撃が体力を奪っていく。
『ォォ……オオオオオ!!』
我慢できずにタウロスは叫んだ。後方から飛来する攻撃は大して脅威にならない。だが最前で槍を振るう戦士が厄介すぎる。守備に徹していてはいずれ倒されてしまうだろう。タウロスはそれを嫌って、守りに回していた腕を再び振り上げた。
闇雲に降られる豪腕。だがそこに当初の迫力は一切無く、ラインハルトは余裕をもって回避する。そしてがら空きになった胸へ、彼が持つ槍技で尤も威力がある雷の突きを放った。
力の限り地を蹴った足が、爆発的な推進力を生む。閃光の如き速度でラインハルトの槍がタウロスの胸に突き刺さった。その突きは遂に胸を貫き、背中まで貫通した。
『グギャアアア!!!』
痛みに叫ぶタウロスは、腕を振り回しながらのたうち回った。
ラインハルトは堪らず槍を手放し大きく後ろに飛びのく。力を使い果たしたのだろう。飛びのいたラインハルトは着地に失敗し、数度地面を転がった。虚ろになった視界でタウロスを追う。既に絶命間近だったようだ。ラインハルトの二倍もある巨体は地に伏し、苦し気に喘いでいるだけ。やがてラインハルトも気を失い、双方地に横たわり動かなくなってしまった。
ラインハルトの体力は既に限界を越え、身体中の裂傷から血が滴っている。出血は多量だ。放置してしまっては命に係わる。
「ラインハルトさん!」
駆け寄ってきた兎は、慌てて道具袋から魔法薬を取りだしラインハルトへと振りかけた。
瓶から溢れた液体は、きらきらと七色の光を放ちながら傷口を洗い流す。傷口に染みたのか、ラインハルトが苦し気に呻いた。暫くすると流れていた血は収まりを見せ、傷口は少しずつ塞がっていった。
この間、シェインは吹き飛ばされたエンカの介抱をしていた。タウロスの蹄の直撃を避けたものの、同じくらい頑丈な自身の斧に顔を潰されてしまったのだ。幸運にも目玉が飛び出るだとか頭が吹き飛ぶといった最悪の状態にはならなかったが、彼女の綺麗な顔は大きく変形してしまっていて、とても直視できるものではない。
シェインは半ば諦めつつもエンカに寄り添う。口元に手を当て、はっとした。
「エンカさん……っ! まだ息がある!」
頭から流れた血が顔面を真っ赤に染めているが、その口から僅かに空気の流れを感じた。シェインは急いで魔力を練り上げる。辛うじて息はあれども危険なことに変わりはない。先のスケルトン、タウロス戦で消費し魔力も残り少ないが、シェインは何度も何度も魔法による治癒を試みた。
シェイン、兎が二人の介抱を続けている間、カイネルはタウロスの死体を調べていた。胸に刺さったラインハルトの槍を両手で引き抜き、その傷口を繁々と見つめる。異常発達した四肢。体のつくりは人間に近いが、顔がまさしく動物のもで君が悪い。そして調べれば調べるほどに、謎が残るばかりだ。
「迷宮の外……少なくとも王国周辺じゃ見たことがない魔物だ。こんなのがうじゃうじゃいたんじゃ身が持たないぞ。……それに今まで一体どこにいたんだ?」
彼らには、索的能力に優れた者が三人もいる。聴覚に優れた兎。魔術に長けたシェイン。狩人でもあるカイネルの索敵能力は総合的にも高い。だというのにその誰もが、これ程強大な敵を見落としていた事になる。
(何処かに隠れていた? でもあれだけの強さがあれば隠れる必要なんてないよね。何もないところから湧いて出るなんてこともないだろうし)
何よりも恐ろしいのは、これが迷宮に入ってまだ一層目だということ。どれだけ先があるかもわからないというのに、これほど強大な魔物が現れるとは思ってもいなかった。
シェイン、兎の尽力の甲斐あって、ラインハルト、エンカの容態は落ち着いた。だが共に意識は戻っておらず、このまま迷宮の探索を続けるのは厳しい。話し合いの末一行は、貴重な『帰還の魔導紙』を使用して一度引き上げることに決めた。
「シェインさん、カイネルさん、ラインハルトさんとエンカさんをこちらに」
「兎さん。あれはどうします?」
カイネルが指さしたのはタウロスの死体。基本的に魔物の体は、武具や装飾品、魔法道具の材料として扱われ、高額で取引される。タウロスも魔物であれば例にもれず、何かしらに利用することができるだろう。
「……本当に死んでいるのですね? なら一緒に持っていきましょうか。あれが売れれば新しい帰還の魔導紙も買えるかもしれません」
タウロスの体は大きく、非力な三人では引きずることも大変だ。だからラインハルト、エンカ両名をタウロスの元へと運んでいき、帰還の魔方陣を発動した。
眩い光が広間を埋める。各々目を瞑ったり、手で覆い隠してそれを耐えた。その光が収まると一同は、薄暗い部屋の中へと転移していた。
「ここは……」
「迷宮の入り口ですね。さて、とりあえず二人をベッドに寝かしましょうか。そのあとは近くの店でこれらを処分しましょう」
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