正義の味方!

菅原

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1章 

新イベント

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 今日も僕は『首都カージェル』で、新規プレイヤーを探していた。
あくまでも『ルーキー狩り』から守る為であり、断じてストーカーの類ではない。
大通りを歩き、適当に店を見ながらそれらしいキャラクターを探す。

 深夜二時も過ぎてるし、もう今日は落ちようかな、なんて思ったその時だった。
「助けてください!」
後ろから袖を引かれた。
振り向いた僕が見たのは、ひとりの少女。
茶色く長い髪。余り良くない布切れのような服を着ている。
(新しいイベントかな?先週までこんなのなかったし……)
最新のアップデートファイルの内容を頭の中で思い出した時、僕はあることを思い出した。
(確か……NPCノンプレイヤーキャラクターから接触があるイベントは作らないんじゃなかったっけ?)
原理はわからないけど、記憶が正しければそのはずだ。
 つまり彼女はプレイヤーの可能性が高い。
町でモンスターは出ないから、助けを呼ぶ状況も限られてくる。待ちに待ったルーキー狩りかもしれない。
ならば拒否する理由なんてないだろう。
「何があったんだい?僕で良ければ力になるよ」
辺りを警戒していった言葉だが、周囲に怪しいプレイヤーは見えない。
 少女は涙を流していた顔を笑顔に変え、小さく感謝の言葉を言った。
それにほっこりした僕は、袖を思い切り引っ張られる。
「ちょ!?」
バランスを崩した僕は、強かに地面に頭を打って、意識は闇に沈んでいった。


「……と!」
(うー……もう少し)
「ちょ……け……ん!」
(後五分……だけ……)
「冒険者さん!」
耳に聞こえたのは女性の金切り声。
意識が覚醒した僕は、両目を見開き頭を振った。
「なんだ?こいつは。突然丸腰で出てきやがって」
「邪魔しやがるとただじゃおかねぇぞ!?」
目の前にいるのは、汚れた服を着た男が二人。
手には短い剣を持っていて、その刀身が光っている。
 丸腰といったが、僕は元々武器を持っていない。
武器が無くても戦えるように、『武闘家』の職についていて、それに合わせて服装も髪と同じ黒色の格闘着を着ている。

 余りにも突然のことで理解が追い付かない。
見える限りの情報を集めれば、ここはどうやら森の中のようだ。
「あれ?さっきは町の中に……」
僕のその言葉に目の前にいる二人は顔を顰める。
「何訳の分からねぇことを言ってやがる!」
「助かりたかったら大人しくその女を渡しな」
男二人は、困惑する僕の後ろを指さしている。そこには町であった少女がいた。
少女の様子は町の時と変わらず怯えたまま。ならば……
(こいつらの魔法攻撃か?)
正体不明の状態異常、そして空間転移。
 もしルーキー狩りであるならば、こんな見た目でもその性能は馬鹿にできないだろう。
ガチ勢が二人もいたら、うまくいっても彼女を逃がすくらいしかできない。

 しびれを切らしたように、一人の男が剣を振り上げ切りかかってきた。
安直な攻撃ではあるが油断は出来ない。
また、ルーキー狩りメンバーが二人だけとも限らない。
 僕は咄嗟に対通常攻撃用スキル『白羽取り』を発動した。
このスキルは自身のレベルと相手のレベルによって成功率が変わるスキルで、成功すれば敵を行動不能にすることが出来る。
 僕のレベルは100。ルーキー狩りも恐らく100。
その確率は50%。
成功すればいいが、あれがスキル攻撃であれば大ダメージを受ける可能性もある。

 真っすぐ振り下ろされる剣を両の手で迎え撃つ。
結果、白羽取りは無事成功し、相手の白刃を挟み込んだ。
内心で安堵する僕とは違って、剣を振った男は驚愕の顔を見せている。
「なっ、嘘だろ!?」
力任せに剣を引き抜こうとする男と、力比べをしていると、後ろからは感嘆の声が上がった。
「す、凄い……」
 僕はそのまま、対武器用スキル『刃折り』を発動する。
これもまた彼我のレベル差によって成功率が上下するスキルだ。
失敗する前提で発動した刃折りも、無事成功して、挟み込んでいた剣を叩き折った。
「ひっ」
短く悲鳴を上げる男は、折れた剣を呆然と見つめる。
(なんだ、この反応は……ルーキー狩りじゃないのか?)
疑問に顔を顰めた僕を見て、何を思ったのか、奴らは悲鳴を上げながら逃げていった。
 
 何とも情けない態度だ。
僕が今まで戦ってきたルーキー狩りとは天と地の差。
あれも芝居だったのだろうか?なら迫真の演技だな。
「なんだ、あれ」
疑問は口からついて出た。
それに背後から返事が返る。
「知らないんですか?盗賊団を」
「盗賊団?」
そんな組織がいるなんて聞いたことはない。
ネットにある掲示板にもなかったし、NPCにそんな輩はいないはずだ。
「あいつら、ここら辺で悪さしてるベルベット盗賊団です。私の町も被害にあって……」
少女は元気なく俯いてしまった。

 今の僕には正直、彼女の事を気遣う余裕はない。
彼女がプレイヤーか、NPCかどうかの見分けもついていない状態だ。
(なんだこれ……ドッキリ?それとも公表されていない隠しイベントでも……)
可能性は……なくはない。
余りのユーザーの少なさに、攻略情報なんて何か月も遅れた物しか上がらないようなゲームだ。
これだけ手の込んだイベントなら、さぞかし盛り上がるだろう。

 そこで漸く僕はおかしなことに気付いた。
(会話……会話してるぞ!?)
 いくら自分がゲームに入るとは言っても、NPCとは所詮データの集合体。
どうしても会話におかしなところが出てくるものだ。
だが目の前の少女との会話におかしな受け答えはなかったように思う。
 頭を抱えて悩んでいる僕に向かって、少女は声をかけた。
「そうだ!冒険者さん!お礼もしたいので私の住む町に来てくださいませんか!?」
余りにも嬉しそうな顔を見て、僕は考えることを放棄した。
彼女についていけば、答えはいずれ分かるだろうと信じ。
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