正義の味方!

菅原

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1章 

正義の味方

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 結論から述べよう。
ここはどうやら現実のようだ。
僕はご飯を頂いた後、庭先を借りていくつかの事を検証していた。

検証1
 ゲームの中では、インベントリボックスの中にアイテムが多数入っていたのだが、それらはどこかに消えてしまっていた。ためしにいつもインベントリボックスを開く動作をしても、うんともすんとも言わず。ウィンドウが開くこともなければ、腰に付けた荷物袋にものが増えることもない。
結構いいアイテム持ってたんだけどなぁ……

検証2
 味覚、嗅覚、声が聞こえるので聴覚、目が見えるので視覚、と確認できたので、今度は触覚を確認する。
近くにあった石をつかみ取る。
すごく……硬いです。硬いし冷たい。さらにそれで手の甲を叩いてみた。
すごく……痛いです。痛覚もあるようだ。擦りむいた傷からは血がにじみ出た。

検証2まで来た時、僕は青ざめた。
あの男たちが持っていた剣。白羽取りを失敗していたら、あれで斬られていたのだ。
その事実を今は頭から振り払い次の検証を始める。

検証3
 スキルの発動をしてみる。
『白羽取り』、『刃折り』は無事発動出来た。ということは武術系スキルは問題なさそうだ。
問題なのは魔法だろう。
僕は検証2でできた傷に向かって、『治癒』を発動する。
詠唱なんて知らないから名前を言っただけだけど、傷口にかざした手のひらから、黄緑の光が出た。
 みるみる痛みは引いて、傷もなかったかのように綺麗に完治する。
どうやら魔法も問題なく使えるようだ。

次の検証は……
「えええええ!?」
背後でヤナが突然大声を出した。
「うぇ!?なになに!?」
僕は驚き、情けない悲鳴を出してしまう。
だがそれには気付かなかったようで、彼女は僕に詰め寄ってきた。
「ガロンさん、魔法も使えるんですか!?」
驚きようからすると、誰でも魔法を使えるというわけではなさそうだ。
「剣も使わないようですし、修道士ってことですか!?」
ヤナのテンションは下がらない。
両腕をぶんぶんと振って、僕に詰め寄ってくる。
 僕は説明するのがめんどく……じゃない、あまり詳しく言う必要もないと思い、頷いた。
「わぁ、凄い!魔法使いで接近戦もできるなんて!」
「普通は出来ないの?」
口をついて出た言葉は彼女の動きを止めた。
ギギ……という擬音が合いそうな感じで、ヤナは首をひねる。
「え……他の方を見た事無いんですか?」
「う……うん。」
少しの沈黙の後、彼女は何を思ったのか、脱兎のごとく駆け出して行った。

 暫くすると、一冊の本を抱えて帰ってくる。
それをテーブルの上に置いた彼女は、僕に手招きをした。
その手に従い椅子に座ると、彼女は本を開く。
「ほらここ!『魔法使いとは、その生涯をかけて、世界の真を読み解く者なり』。つまり魔法使いっていうのは、一生を通して修行する人なんです。近接戦闘なんて勉強してる時間はないんです」
 成程。この世界では、魔法使いが近接戦闘を強化する……俗にいう『殴り型』は存在していないらしい。
そういう事ならさっきの彼女の慌てようも頷ける。
「ガロンさんは、とってもすごい冒険者さんなんですね!」
 何ともざっくりした要約だが、どうやらそのようだ。

 大はしゃぎする娘を見てか、彼女の母親が声をかけてきた。
「ガロンさん。お願いがあるんですが」
「なんですか?」
「実は……娘の護衛をお願いしたいんです。盗賊団の奴等、きっとまた手を出してくると思うので……報酬は、その間部屋を無料で提供します」
 正直悩ましい。
無料で住む場所が確保できるのはいいことだ。ゲームの世界で見たことがあるとはいえ、実質始めてのような場所である。また気軽に話ができる人がいるのも大きい。
 だが、僕の力でどうにかなる問題なのかは懐疑的だ。
少なくともゲームの中で僕のキャラは、同レベル中最弱といってもいいほどに弱かった。
そんな強さで彼女の事を守れるとは到底思えない。

でも……

僕の頭の中には、さっきから一つの単語が浮かんでいる。
ずっと憧れていた存在。その存在にこの世界なら慣れるんじゃないかって。
 正義の味方
自己満足じゃない。皆に必要とされる、本当の正義の味方に……
「わかりました。任せてください」
その熱き思いを胸に、僕は笑顔で答えた。
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