正義の味方!

菅原

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1章 

黒幕

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 声が聞こえた。
若い男性の声だ。
ずきずきと痛む体をグラグラと揺さぶる。
止めてくれ。体が痛いんだ。
身体は柔らかい感触で包まれている。
そのまま安らかな眠りに落ちてしまえそうだ。
だが相変わらず体は揺さぶられている為、それが鬱陶しすぎて眠ることが出来ない。
「いい……加減にしてくれ!」
軋む体を必死に動かし、腕で振り払う。
「きゃっ!」
聞こえた声に少し驚いた。
女の子の声だ。
女の子……?何か忘れているような……
声が余りにも気にかかって、僕はゆっくりと目を開けた。

 目の前には女の子の顔があった。
「あっ!目が覚めましたか!?」
幼い。実に幼い。
よく見れば彼女は、あの部屋で岩にはりつけにされていた女の子だ。
そこに来て僕はようやく思い出した。
彼女を助けに来たことを。黒い熊と戦ったことを。
激闘の末相打ちに持ち込む込めた事を。
 今僕はベッドの上に寝かされているようだった。
どうやら熊は何とか倒せたらしい。
痛みをこらえながら、僕は何とか上半身を持ち上げる。
「だ……大丈夫ですか……?」
思った以上に顔に出ていたらしく、女の子は声を震わせる。
折角助け出したんだから心配をかけてはいけない。
何とか笑顔を作ると、声に出ないように気を付けながら口を開いた。
「あぁ、大丈夫大丈夫。治癒魔法も使えるし、少し待っててくれたら動けるように……」
そこで僕は気づいた。
部屋の間取り。視界いっぱいに広がる景色には見覚えがある。
あの洞窟の中の一室だ。
ということは、まだこの近くに盗賊がいる筈。
僕は咄嗟にベッドから這い出して……
「ちょっと!何してるんですか!」
男性の強い口調で制止された。
声の方を向けば部屋の入口に見覚えのある顔がある。
熊と戦っていた時、部屋に飛び込んできた二人のうちの一人だ。
もう一人は頭を潰され、帰らぬ人になっている。

 駆けつけてきた男性は、直ぐに僕の身体をベッドに横たえる。
その行動に僕は少し混乱した。
彼は敵の筈だ。何故僕を解放するような真似をする。
「まったく、無茶する人だな。あの熊倒しちまうなんて」
「お前は……お前達は、ベルベット盗賊団じゃないのか?」
男を鋭く睨みつける。
だが彼は少し笑って頭を掻いた。
「一応は……。もともとは狩人で、この洞窟は狩人仲間で使ってたんだけど、最近親分おかしくなっちまって……その盗賊団に懇願して入れて貰ったんだ。変な熊も貰うし、やめた方がいいって俺達も言ったんだけどな……」
どうやらこの騒動には黒幕がいるらしい。
あれ程の熊を従える者……強敵だ。早急に対処しなければ……
「あんたは命の恩人だ。それに……これに懲りて盗賊団も足を洗うよ」
「そりゃいい。人間真っ当生きるのが一番さ」
余りにも前向きな言葉につい安心してしまった。
何とか言い返すと、僕の意識はまた闇の中に落ちていった。
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