正義の味方!

菅原

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1章 

おみやげ

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 意識を取り戻しては治癒魔法を使い、また少し眠りにつく。
それを何度か繰り返すと、漸く僕の身体は歩くことが出来るまで回復した。
ベッドから這い出た僕は、腕を伸ばして凝り固まった体を解す。
「んー……!?あいたた!」
やはり全快とはいえず、胸と背中が鋭く痛んだ。
兎も角早く町へ戻ってリッツを安心させてやらないと。
近くにあった荷物をつかみ取り、旅の準備を始めた。
 準備もほどほどに、リッツの妹……確か……リンナちゃんだったかな、と二人の男が現れた。
男の方はなんとも対照的な二人で、かたや筋肉隆々の高身長。かたや細身の小柄な男だ。
「おにいさん!」
リンナちゃんは突然駆け出し、僕の下へと駆け寄る。
落ち着くように頭を撫でると、少し前に話した男の声が聞こえた。
「凄いですね。もう動けるようになるなんて」
「治癒魔法のおかげさ。何度も何度も気を失ったけど……介抱してくれて助かったよ」
小柄な男は照れくさそうに頭を掻いた。
 部屋は変わらず洞窟の中ほどにある小部屋だ。
盗賊、もとい狩人たちはもっと数がいた筈だけど……
「他の人は?」
「親分が死んだのを見て、逃げ出しましたよ。薄情な奴等だ。まぁ、もともと烏合の衆だったんですがね」
僕が気絶させた三人は逃げてしまっていないようだ。
もう一人は熊との戦闘で死んでしまったらしい。

 兎も角町へいったん戻ろうと、リンナちゃんを連れて洞窟を上る。
すると二人の男も後をついてきた。
気になって堪らずに声をかける。
「お前達はどうするんだ?」
「あー……その……できたら同行したいんですが」
先程から背の高い男は黙ったまま頷くだけで、小柄の男とやり取りしている。
彼はしゃべるのが苦手なようだ。
「まだ全快じゃないし、その申し出はありがたいけど……」
「俺は“スコット・フィノア”。弓は得意ですよ。ほら!お前も!」
僕の言葉を遮ったスコットは、寡黙な男を肘で小突く。
「ぼ、僕は“ガンドゥラ・ロイコック”です。力仕事は、任せてください」
ガンドゥラは見た目からして力がありそうだ。
スコットもその体を見るにとても身軽そうで、いかにも狩人っぽい。
 正直、信用するのも不安なのだけど、もし何かしでかす気があるのなら、僕が倒れている時に何か行動していたはずだ。
「僕はガロンだ。宜しく」
いままで大人しくしていたのなら、この先も大人しいだろう。……多分。

 洞窟の入口まで戻ると、スコットとガンドゥラが何かを思い出したように声を上げた。
「ああっ!忘れてた!おいガンドゥラ。すぐあれ持ってこい!」
『あれ』で通じたらしく、ガンドゥラは直ぐに来た道を引き返していく。
不思議に思いながらも、スコットは問題ないと先を進めるので、僕は外への道を歩いていった。
 洞窟を出て太陽の光を浴びる。
とても懐かしい気持ちになり、暫く太陽を仰ぎ見た。
片方の手は今もリンナちゃんと繋いでいる。
 唐突にスコットが口笛を吹いた。
「何してるんだ?」
「狩人には大体相棒がいるんですよ。獲物をしとめる手助けをしてもらうんです」
一体何の話を。
疑問に思いつつも暫く待っていると、彼の相棒が姿を現した。
白い狼だ。
スコットはその狼に近づくと、体毛を撫でる。
「こいつが俺の相棒“トルク”です。ちゃんとしつけてあるんで安心してください」
言葉通り、顔をわしわしと撫でられ気持ちよさそうにする様からは、危険性は感じない。

 狼と戯れていると、洞窟からガンドゥラが姿を現した。
現したのだが……
「お前……それってもしかして……」
「ガロンさんが倒した熊です」
彼が抱えていたのは、あの黒い熊だ。
人の倍以上もあろうそれを、なんと彼は背負って運んで来たのだ。
「こんなのどうするんだよ……」
「折角倒したんだから持って行かないと!武勇伝の一つも信じて貰えませんよ!」
いつの間にかスコットは、狼にそりのようなものを括りつけていた。
そりの前にはトルクに加え、同様の狼が二匹いて、出番を待っている。
ガンドゥラは手慣れた感じで、熊の死体をそりに乗せると親指を立てた。
「よし!準備完了ですよ!ささっ、お二人はそりに乗って!」
全快ならまだしも、心身ともに疲れ果てた現状で、二人の言動に反抗する気力は無い。
促されるまま、イエスマンとなった僕は、リンナちゃんと一緒にそりに乗り込んだ。
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