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第一章 最強聖女の復讐

第18話(最終話)「終幕」

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どんどん魔物たちに占領され、
最終的にデルソーレ王国は滅亡した。
私はその様子を上空から眺め終えた後、
ソルティア様の第一神殿にやって来た。

「ソルティア様……全てが終わりました」

『ええ、見ていましたよ。
ルミエール、あなたは満足していますか?』

「えぇ。やっと……やっと!!
お母さんを殺した奴らに復讐ができた!
でも……どうして?どうしてこんな、何とも言えない
満足しているけれど虚しい気持ちになるのですか?」

私はここ6年間流したことのなかった涙が、
頬を伝っていくのを感じながら、
理解できない、説明のしようもないこの気持ちが
一体何なのか分からなくて嗚咽する。

私がやったことは正しいはず。
なのに、どうしてこんな気持ちになるのだろうか。
お母さんの教えを反したから?
それならもう、終わった後なのだからどうしようもない。
虐げられてきたとはいえ、六年間一緒に
過ごしてきた義家族が亡くなったから?
いいや、私には彼らへの恨みしかなかった。
だったら、どうして?

 『ルミエール……。
それは貴女が優しい子だからです。
貴女は王家を恨んでいました。
フィーリアを殺した彼らを心から恨んでいました。
けれど、貴女はそれでも王子に認められて、
いつかは国王夫妻にも認められて、
立派な淑女になろうと努力してきましたね。
たった一時でも、彼らと幸せ時間を
暮らした記憶があった貴女は、
少しだけ、彼らに寄り添いましたね。
貴女は恨みに恨んでいた。
けれど、それと同時に彼らを愛していました。

……ルミエール、私の愛し子よ。
少しお休みなさい。貴女はよく耐え抜きました』

 
ソルティア様は悲しげな表情をしながら、
私をギュッと抱きしめてくださいました。
もう、こうして誰かに優しく
抱きしめられることなんてないだろうと
思っていたのに。

あぁ……何だか、とても眠いの。
きっとこれはソルティア様の温かな光のお陰ね。
王城ではいつも安心して熟睡することはできなかった。
何しろ、使用人達も私を虐げてきたから。

六年ぶりに、ゆっくり休める。
そう思ったら私の瞼はゆっくりと落ちていって、
───私は眠りについた。







光の女神ソルティアは、
王家の者たちの魂がある空間へとやって来ていた。
魔物たちに殺され、死んでしまった彼らは
次の転生に備えて、その異空間で順番を待っていた。

『我が国の王家の者たちよ』

「ソルティア様ッ!?!」

ただ、呆然と自分たちが死んだと
理解できていない彼らは、
お互いを罵り合っていた。
その姿は、本当に生前は国の王族だったのかと
疑いたくなるほど、常識のなっていない姿だった。

『我が愛し子を虐げた愚か者たちよ。
お前たちにはこれから先、
幾度となく転生し新たな人生を歩もうと、
必ず希望のない人生が待ち受けましょう。
それは我が愛し子を虐げた罰です。
あなた達に、希望に満ちた日々はないものと思いなさい』

「なッ!!どうしてですか、ソルティア様ッ!!」

『自らのしてきたことを思い返しなさい。
それが分からぬようならば、貴方はそれまでです』

クシオン殿下は今後も転生し、
新たな人生を始めたとしても、自分たちには
幸福な人生などないと光の女神に 
言い渡されたことで、
怒りに顔を真っ赤に染めている。
しかし、相手は女神だ。
人間の小僧が怒ったところで、痛くも痒くもない。

「そんな……ルミエール嬢が、
ソルティア様の愛し子だったなんて……」

今後の自分の置かれた状況を察した
エメラルダスは自分の今までやってきた行いに
後悔し、涙する。
だが、今理解されても遅いのだ。
全てが終わった後なのだから。

彼ら、デルソーレ家には幸福な未来などやってこない。
幸福だったのは、彼らにとって王家として
栄光を築いてきた生前の人生のみだろう。
これからは、地獄のような人生が待っている。
そう考えるだけで、彼らはブルりと背筋を震わせた。



──それから、ルミエールはというと。
光の女神の神域で、聖なる光に  
守られて眠りについていた。
いつか彼らへの復讐だけを胸に生きてきた彼女は、
ようやく安らかに眠ることができた。
そして、デルソーレ王国は聖女による復讐により
魔物たちに破壊つくされ、同時に世界で有数の
〖聖女〗を失った────。

「お休みなさい、私の愛し子光の聖女よ。
どうか次に目覚めるときはヒカリに満ちていますように」
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みんなの感想(2件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

悠月 風華
2021.09.23 悠月 風華

ありがとうございます〜〜!!

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花雨
2021.08.11 花雨

お気に入り登録しときますね(^^)

悠月 風華
2021.08.11 悠月 風華

ありがとうございます〜〜!!((*_ _)

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