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初めてがこんなんでいいの!?
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明日から、夏休みが始まる。
放課後、明日からは毎日先輩に会えなくなってしまうんだな、と寂しく思いながら、いつものように社会科資料室に向かう。
先輩はまだ来ておらず、ひとりだと広く感じてしまう室内を窓際まで進み、むっと籠った空気を入れ換えるために窓を開ける。入ってくるのもガンガンに照らす太陽熱を存分に含んだ熱風だけど、風の流れができるだけで少し涼しくなったような気がする。
「先輩、まだかな」
窓に背を預け、入口を眺める。一年は一階、二年は二階に教室があるので、二階の先輩の方が四階のここに先に来ていることが多い。付き合い始めてからは、俺が先に着いたのは数えるほどだ。扉を開けたらある先輩の太陽みたいにキラキラ輝く笑顔がないと、調子が出ないというか、物足りないというか。先輩が俺の中に深く根付いてるんだなって思ったら、首筋が擽ったくなって笑みが溢れてしまった。
暫くこの部屋ともお別れなんだな、と扉から室内に視線を移す。お喋りしながら一緒に歴史書を読んで、日本刀以外の知識も増えた俺は、社会の成績がぐんと上がった。先輩のお陰だよって伝えたら、先輩はどんな顔をするだろう? 破顔して抱き締めてくれるんだろうな。それから、ご褒美だって言って雄の顔に変わり……。
「うわぁ……」
脳裏に浮かんでしまった光景に、変な声が漏れてしまう。一気に体温が上がって汗ばんできた顔を掌で扇ぎながら、脳内の淫らな映像を消そうと試みるも、なかなか消えない。
穏やかな読書タイムが済むと、濃厚なキスを交わして昂った互いを抜きあう。放課後はきっちりタイムテーブルが組まれたように、そんな時間を過ごしていた。
「遅れてすまない」
パタパタと顔を扇ぎ、なんとか熱が収まってきたところで扉が開き、息を切らした先輩が申し訳なさそうな顔をして入ってきた。早く俺に会いたくて走ってきたんだと分かる姿に、嬉しくてニヤけてしまう。俺の顔を見た先輩の表情も緩んでいく。
「蒼井くん」
両腕を伸ばして歩み寄ってくる先輩の胸に、一歩踏み出して包まれる。ぎゅうっと抱き締められて、ひとりで待っている時に感じていた物足りなさは消え、温かいもので満たされていく。心の中のだだっ広い草原が、満開のヒマワリ畑に変わっていくみたいに。
少し体を離した先輩が、髪、額、鼻、頬、と顔中にキスを落とし始める。チュッチュッと可愛らしい音を立てる唇の甘酸っぱい感触が擽ったくて肩を竦めると、ねっとりと情熱的に唇を塞がれた。
「ん、んふぅ……」
歯列をなぞった舌が俺の舌を捕らえ、離れ離れの時間が寂しくて堪らなかったと甘えるように、絡み付いてくる。俺も寂しかった、と応えた舌に煽られたのか、劣情を刺激する動きに変わった。
いつの間にか股間に伸びていた掌で反応を始めたソレを触れられ、腰が砕けそうになってしまう。舌の動きと掌の動きで、完勃ちになってしまったソレから先走りが溢れているのか、下着の濡れる感触がする。それさえも快感に変換され、体が急速に熱くなる。
「せ、せん……ぱぁい」
唇を塞いでいた先輩の口が股間に移動し、爆発寸前のソレを咥えてくれた。熱く湿った口腔に包まれて、それだけで脳天から爪先まで甘い痺れが走り抜けるのに、ねっとりと舌を這わされてジュルッと吸われて、呆気なく吐精してしまった。
「蒼井くん……」
ずるずると床に座り込んで乱れた息を整えていると、俺の名を呼ぶ掠れた声が旋毛にかかった。顔を上げると目に入った、ズボンを押し上げている硬い塊に喉が鳴る。引き裂く勢いでファスナーを下げて、取り出した立派な一物に口付けをする。
「んふっ……」
熱い吐息を吐きながら小さな声を漏らした先輩を見て、俺の中の雄が暴れだす。根元から先端に向けて舌を這わせ、溢れ始めた先走りを一滴も零すものかと吸いとり、パンパンの双袋を掌で転がしてやる。
「あっ……あ、あおい、くぅん」
余裕のなくなった先輩の声を聞き、張り裂けそうなソレを喉奥まで飲み込んできつく吸い上げてやる。すると熱い液体が、俺の一部になりたいと叫ぶように、俺の体の奥深くを目指すように吐き出された。
ゴクリと喉を鳴らすと、先輩の遺伝子が食道を流れていくのがはっきりと分かった。先輩と混ざりあえたんだという幸せに、うっとりとしてしまう。
「蒼井くん、夏休みの予定はあるのかい?」
快楽の余韻も収まり、服を整えて椅子に座ると、遅れて向かいの椅子に腰掛けた先輩が尋ねてくる。
「特にないですけど」
「では、一緒に宿題をしないかい?」
「宿題、ですか?」
「社会資料室を使わせて欲しいと申請を出したんだ。先程、許可がおりてね。夏休み期間中もここを使えることになったんだよ」
「マジっすか?」
夏休みも変わらずにここで先輩と会える。嬉しい知らせに、痛いくらいに頬の筋肉が吊り上がってしまう。
先輩も日本刀を見た時と同じくらいの、いや、それ以上に嬉しそうな顔をしている。先輩も俺に会いたいと思ってくれているんだって分かるその表情を見たら、幸せすぎて筋肉が元の位置に戻ってこなくなった。
「今度の日曜なんだが、蒼井くんは暇かな?」
「暇ですけど」
予定を尋ねてくるってことは、デートのお誘いだろうか?
先輩は土曜日に剣術を習っているため、俺とは会えない。日曜も予定が入っていることが多いけれど、暇な時は俺と会ってくれる。
日本刀展に出掛けた時と同様、着流しで待ち合わせ場所に現れる先輩にも慣れた。相変わらず先輩に向けられる女の子達のハートだらけの視線に苛立つこともあるけど、先輩の翡翠みたい双眸が見ているのは俺だけだと分かる今は、そんな視線に優越感に浸れる余裕もできた。
「両親が出掛けていないので、うちに遊びに来ないかい?」
「先輩の、うち……」
まだ互いの家を訪れたことはない。両親がいないから来ないかって誘うってことは、つまり両親がいるとできないことをしようってことなんじゃ?
毎日キスして抜きあっているが、まだセックスはしていない。俺の心の準備が整うまで待ってくれるって話だったが、俺自身は先輩にだったら抱かれても構わないって思い始めている。ここで行くと頷けば、体を開いてもいいと了承したと先輩は受け取るだろう。
「行きます」
「そうか、ありがとう」
先輩も緊張していたんだろうか、ほっと息を吐いて微笑んだ。
とうとう日曜に先輩とひとつになるんだなって思うと、やっと元の位置に戻った頬の筋肉がまた吊り上がってしまいそうになる。満面の笑みを浮かべてしまったら、ヤるのが楽しみで仕方ないって言ってるみたいで流石に恥ずかしい。
「蒼井くんは、メイド服、セーラー服、ナース服、彼シャツ、どれに萌えるかな?」
「へ?」
顔がだらしなく緩まないように筋肉を必死に抑えていると、わけの分からない質問をされて素っ頓狂な声が漏れてしまった。真意を探ろうと先輩を見ると、好奇心いっぱいに翡翠みたいな双眸を輝かせていた。
エロい雰囲気に持っていくのにエッチな映像を見るつもりなのかな? 好きなシチュエーションのを見て萌えて、そのまま流れで初エッチができるようにって先輩の気遣いなのかな?
「強いて言えば、ナース服ですかね」
女の子が乱れる様を見るより先輩の熱の籠った瞳で見つめられた方が燃え上がるんだけどな、と思ったけれど、俺の答えに満足そうに頷いた先輩に何も言えなかった。
「すげぇ家……」
日曜日。教えてもらった道順で辿り着いた歴史のありそうな日本家屋の前で、感嘆の声を上げる。立派な門には『権藤』の表札が掛かっているので、先輩の家に間違いないだろう。
『はい』
表札の下にあるインターフォンを押すと、すぐに先輩の声が返ってきた。
「蒼井です」
『よく来てくれたね。今、門を開けに向かうよ』
俺だと分かると一気に弾んだ声になり、早口で告げてきた先輩。プツリと勢いよくインターフォンが切れたので、駆け足で迎えに来てくれるんだろう。
この門を潜ったら、後戻りはできない。大人へと続く門なんだな、と侍が出てきそうな重厚な門に変な名前を付けてしまった自分に失笑していると、ゆっくり門が開いた。
「いらっしゃい、蒼井くん」
出迎えてくれた先輩の姿を見て絶句してしまう。目を擦ってみるが、目に映る光景は変わらない。これは夢ではないようだ。
「俺では萌えなかったかな?」
予想していた反応が返ってこなかったことに落胆したのか、先輩はしゅんと項垂れてしまった。
「いや、ちょっと吃驚して……」
門が開いた先に超ミニのナース服を纏った先輩がいて、吃驚しない方がおかしいだろ。
改めて先輩を見る。金髪の頭上にピンクのナース帽がちょこんと乗り、股間が見えそうなくらい短いピンクのナース服を着ている。白く長い生足の足元には黒い鼻緒の男物の下駄を履いていて、平時ならばそのアンバランスさに吹き出すところだろうが、パニクッてる今は作り笑いすらできない。
「ネットに踊らされてしまったのか」
「へ?」
「男性が萌える格好だというから、わざわざ取り寄せてみたのに……」
地面を睨み、悔しそうに呟く先輩に唖然とする。俺を萌えさせるために、ナース服を着てくれたってことか?
「吃驚したけど、その……綺麗ですよ」
「萌えてくれたかな?」
「はい」
実際、先輩のナース服姿には違和感がない。俺の答えに嬉しそうに微笑む様は、白衣の天使そのままだ。
「さぁ、中に入ってくれ」
「おじゃまします」
綺麗に手入れされた日本庭園を通り、家の中に案内される。玄関を入ってすぐの壁の前には鎧兜が置いてあり、廊下には戦国武将の家紋がずらっと飾られている。まさしく先輩の家、という室内に笑いが込み上げてくる。
「ここが俺の部屋だよ」
「失礼します」
通された先輩の部屋は予想通り畳だった。壁際に文豪が使っていそうな文机と、年季を感じさせる本棚がある。反対の壁際にはベッドがあるが、和風テイストのデザインなので違和感なく室内にマッチしている。
「え……」
先輩らしい部屋だな、と室内を眺めていると、いきなりベッドに押し倒された。覚悟はしていたけれどこんなに性急に?
のし掛かっている先輩を見上げると、既に瞳が熱を帯びていた。それを確認した途端、俺の中の劣情に火がついた。
「どこが悪いのか、しっかり調べましょうね」
優しい口調だが、興奮が混じっている声色で言われて、一気に体温が上昇する。俺のシャツをはだけさせた先輩の唇が、聴診器を当てるように肌を這っていく。
「鼓動が早いですし、少し体温も高めですね。お注射を打たなければなりませんね」
「お注射?」
「そうです。怖いですか?」
ナースプレイなのか、先輩の口調が違うが気にならない。予習してきたエロ資料の影響で、先輩の言動が変わるのはいつものことだ。それより注射って、先輩の太くて硬くて煮え滾るように熱いアレのことだよな。
「怖くないです。お注射してください」
頭に血が上ってクラクラしてきた俺は、恥ずかしげもなくおねだりする。ゴクリと派手な音を立てて唾を飲み込んだ先輩が、俺の衣服を剥ぎ取っていく。熱い舌が全身を這い、ビクリと腰が跳ねてしまった箇所を執拗に攻められる。
「せ、せんぱぁい……そこばっか、やっ」
痛くなるくらい乳首を舐めたり噛んだりされ、強すぎる快感に涙が溢れてくる。
「そうですね。こちらも弄って欲しいと泣いていましたね」
先輩の口は、完勃ちして先走りを垂らしている股間に向かう。先走りを舐めとるように艶かしく舌を動かされ、ひっきりなしに駆け抜ける快感に腰が揺れてしまう。すると、突然肛門に違和感を感じて固まってしまった。
「大丈夫ですよ。お注射が痛くないように、しっかり準備しましょうね」
不安げに見上げた俺に、本物のナースのような慈愛に満ちた笑みを返してくれる先輩。初めて異物を受け入れることに緊張していた体は、その顔を見て強張りを解いていく。
「あ、あぁん、せ……せん、ぱぁい」
大好きな先輩の指を受け入れ始めたソコだが、ある一点に触れられた途端に雷が落ちたような衝撃が走り、先輩の指を締め付けてしまう。恐らく前立腺に触られたんだろう。先輩もそれに気付いたのか、ソコばかりを弄ってくる。
「や、やだぁ」
気持ちよすぎておかしくなりそうで、いやいやをするように首を振る。
「大丈夫ですよ」
指を抜いた先輩が、宥めるように髪を撫で、涙を吸いとってくれる。そのまま先輩の唇は俺の唇に重ねられ、熱情をぶつけるような濃厚な口付けをされる。
「お注射してもよろしいですか?」
酸欠寸前のところで先輩の唇が離れていき、必死で酸素を取り込んで呼吸が落ち着いた頃、満を持して先輩が聞いてきた。
「お願いします」
「では、お注射できるように準備をしていだだけますか?」
先輩が手渡してきたコンドームを受け取り、いよいよなんだなと、期待と不安で激しく脈打つ心臓を落ち着かせるため、ひとつ息を吐く。
コンドームを着けやすくするためかベッドに腰掛けた先輩。俺も起き上がり、ベッドを降りて先輩の正面に膝立ちする。
「へ?」
ナース服の短いスカートを捲り上げて現れたものに唖然としてしまう。
「男性人気一番の品だそうだ」
フリフリのレースがいっぱい付いた、可愛らしいけど布地の少なさが卑猥な、女性物の下着を指差してはにかむ先輩。まさか女性物を穿いているとは思わずに驚いたけれど、雄の形に成長して、小さな下着からはみ出している立派な一物を見て、まだ未通の後ろが疼いてしまう。
手早くコンドームを着けて、先輩を見上げる。淫靡なナースはニヤリと艶やかに口角を上げて、手を差し出してくる。
「お注射しましょうね」
ベッドに引き上げられ、お注射を打たれた俺。一本じゃ症状は収まらなくて、二本目も打って貰った。
初エッチがこんな変態プレイでいいの? まぁ、先輩と俺なんだから仕方ないよな、ハハハ。拒絶して、先輩が被害妄想したら困るしな。
放課後、明日からは毎日先輩に会えなくなってしまうんだな、と寂しく思いながら、いつものように社会科資料室に向かう。
先輩はまだ来ておらず、ひとりだと広く感じてしまう室内を窓際まで進み、むっと籠った空気を入れ換えるために窓を開ける。入ってくるのもガンガンに照らす太陽熱を存分に含んだ熱風だけど、風の流れができるだけで少し涼しくなったような気がする。
「先輩、まだかな」
窓に背を預け、入口を眺める。一年は一階、二年は二階に教室があるので、二階の先輩の方が四階のここに先に来ていることが多い。付き合い始めてからは、俺が先に着いたのは数えるほどだ。扉を開けたらある先輩の太陽みたいにキラキラ輝く笑顔がないと、調子が出ないというか、物足りないというか。先輩が俺の中に深く根付いてるんだなって思ったら、首筋が擽ったくなって笑みが溢れてしまった。
暫くこの部屋ともお別れなんだな、と扉から室内に視線を移す。お喋りしながら一緒に歴史書を読んで、日本刀以外の知識も増えた俺は、社会の成績がぐんと上がった。先輩のお陰だよって伝えたら、先輩はどんな顔をするだろう? 破顔して抱き締めてくれるんだろうな。それから、ご褒美だって言って雄の顔に変わり……。
「うわぁ……」
脳裏に浮かんでしまった光景に、変な声が漏れてしまう。一気に体温が上がって汗ばんできた顔を掌で扇ぎながら、脳内の淫らな映像を消そうと試みるも、なかなか消えない。
穏やかな読書タイムが済むと、濃厚なキスを交わして昂った互いを抜きあう。放課後はきっちりタイムテーブルが組まれたように、そんな時間を過ごしていた。
「遅れてすまない」
パタパタと顔を扇ぎ、なんとか熱が収まってきたところで扉が開き、息を切らした先輩が申し訳なさそうな顔をして入ってきた。早く俺に会いたくて走ってきたんだと分かる姿に、嬉しくてニヤけてしまう。俺の顔を見た先輩の表情も緩んでいく。
「蒼井くん」
両腕を伸ばして歩み寄ってくる先輩の胸に、一歩踏み出して包まれる。ぎゅうっと抱き締められて、ひとりで待っている時に感じていた物足りなさは消え、温かいもので満たされていく。心の中のだだっ広い草原が、満開のヒマワリ畑に変わっていくみたいに。
少し体を離した先輩が、髪、額、鼻、頬、と顔中にキスを落とし始める。チュッチュッと可愛らしい音を立てる唇の甘酸っぱい感触が擽ったくて肩を竦めると、ねっとりと情熱的に唇を塞がれた。
「ん、んふぅ……」
歯列をなぞった舌が俺の舌を捕らえ、離れ離れの時間が寂しくて堪らなかったと甘えるように、絡み付いてくる。俺も寂しかった、と応えた舌に煽られたのか、劣情を刺激する動きに変わった。
いつの間にか股間に伸びていた掌で反応を始めたソレを触れられ、腰が砕けそうになってしまう。舌の動きと掌の動きで、完勃ちになってしまったソレから先走りが溢れているのか、下着の濡れる感触がする。それさえも快感に変換され、体が急速に熱くなる。
「せ、せん……ぱぁい」
唇を塞いでいた先輩の口が股間に移動し、爆発寸前のソレを咥えてくれた。熱く湿った口腔に包まれて、それだけで脳天から爪先まで甘い痺れが走り抜けるのに、ねっとりと舌を這わされてジュルッと吸われて、呆気なく吐精してしまった。
「蒼井くん……」
ずるずると床に座り込んで乱れた息を整えていると、俺の名を呼ぶ掠れた声が旋毛にかかった。顔を上げると目に入った、ズボンを押し上げている硬い塊に喉が鳴る。引き裂く勢いでファスナーを下げて、取り出した立派な一物に口付けをする。
「んふっ……」
熱い吐息を吐きながら小さな声を漏らした先輩を見て、俺の中の雄が暴れだす。根元から先端に向けて舌を這わせ、溢れ始めた先走りを一滴も零すものかと吸いとり、パンパンの双袋を掌で転がしてやる。
「あっ……あ、あおい、くぅん」
余裕のなくなった先輩の声を聞き、張り裂けそうなソレを喉奥まで飲み込んできつく吸い上げてやる。すると熱い液体が、俺の一部になりたいと叫ぶように、俺の体の奥深くを目指すように吐き出された。
ゴクリと喉を鳴らすと、先輩の遺伝子が食道を流れていくのがはっきりと分かった。先輩と混ざりあえたんだという幸せに、うっとりとしてしまう。
「蒼井くん、夏休みの予定はあるのかい?」
快楽の余韻も収まり、服を整えて椅子に座ると、遅れて向かいの椅子に腰掛けた先輩が尋ねてくる。
「特にないですけど」
「では、一緒に宿題をしないかい?」
「宿題、ですか?」
「社会資料室を使わせて欲しいと申請を出したんだ。先程、許可がおりてね。夏休み期間中もここを使えることになったんだよ」
「マジっすか?」
夏休みも変わらずにここで先輩と会える。嬉しい知らせに、痛いくらいに頬の筋肉が吊り上がってしまう。
先輩も日本刀を見た時と同じくらいの、いや、それ以上に嬉しそうな顔をしている。先輩も俺に会いたいと思ってくれているんだって分かるその表情を見たら、幸せすぎて筋肉が元の位置に戻ってこなくなった。
「今度の日曜なんだが、蒼井くんは暇かな?」
「暇ですけど」
予定を尋ねてくるってことは、デートのお誘いだろうか?
先輩は土曜日に剣術を習っているため、俺とは会えない。日曜も予定が入っていることが多いけれど、暇な時は俺と会ってくれる。
日本刀展に出掛けた時と同様、着流しで待ち合わせ場所に現れる先輩にも慣れた。相変わらず先輩に向けられる女の子達のハートだらけの視線に苛立つこともあるけど、先輩の翡翠みたい双眸が見ているのは俺だけだと分かる今は、そんな視線に優越感に浸れる余裕もできた。
「両親が出掛けていないので、うちに遊びに来ないかい?」
「先輩の、うち……」
まだ互いの家を訪れたことはない。両親がいないから来ないかって誘うってことは、つまり両親がいるとできないことをしようってことなんじゃ?
毎日キスして抜きあっているが、まだセックスはしていない。俺の心の準備が整うまで待ってくれるって話だったが、俺自身は先輩にだったら抱かれても構わないって思い始めている。ここで行くと頷けば、体を開いてもいいと了承したと先輩は受け取るだろう。
「行きます」
「そうか、ありがとう」
先輩も緊張していたんだろうか、ほっと息を吐いて微笑んだ。
とうとう日曜に先輩とひとつになるんだなって思うと、やっと元の位置に戻った頬の筋肉がまた吊り上がってしまいそうになる。満面の笑みを浮かべてしまったら、ヤるのが楽しみで仕方ないって言ってるみたいで流石に恥ずかしい。
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「へ?」
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「強いて言えば、ナース服ですかね」
女の子が乱れる様を見るより先輩の熱の籠った瞳で見つめられた方が燃え上がるんだけどな、と思ったけれど、俺の答えに満足そうに頷いた先輩に何も言えなかった。
「すげぇ家……」
日曜日。教えてもらった道順で辿り着いた歴史のありそうな日本家屋の前で、感嘆の声を上げる。立派な門には『権藤』の表札が掛かっているので、先輩の家に間違いないだろう。
『はい』
表札の下にあるインターフォンを押すと、すぐに先輩の声が返ってきた。
「蒼井です」
『よく来てくれたね。今、門を開けに向かうよ』
俺だと分かると一気に弾んだ声になり、早口で告げてきた先輩。プツリと勢いよくインターフォンが切れたので、駆け足で迎えに来てくれるんだろう。
この門を潜ったら、後戻りはできない。大人へと続く門なんだな、と侍が出てきそうな重厚な門に変な名前を付けてしまった自分に失笑していると、ゆっくり門が開いた。
「いらっしゃい、蒼井くん」
出迎えてくれた先輩の姿を見て絶句してしまう。目を擦ってみるが、目に映る光景は変わらない。これは夢ではないようだ。
「俺では萌えなかったかな?」
予想していた反応が返ってこなかったことに落胆したのか、先輩はしゅんと項垂れてしまった。
「いや、ちょっと吃驚して……」
門が開いた先に超ミニのナース服を纏った先輩がいて、吃驚しない方がおかしいだろ。
改めて先輩を見る。金髪の頭上にピンクのナース帽がちょこんと乗り、股間が見えそうなくらい短いピンクのナース服を着ている。白く長い生足の足元には黒い鼻緒の男物の下駄を履いていて、平時ならばそのアンバランスさに吹き出すところだろうが、パニクッてる今は作り笑いすらできない。
「ネットに踊らされてしまったのか」
「へ?」
「男性が萌える格好だというから、わざわざ取り寄せてみたのに……」
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「吃驚したけど、その……綺麗ですよ」
「萌えてくれたかな?」
「はい」
実際、先輩のナース服姿には違和感がない。俺の答えに嬉しそうに微笑む様は、白衣の天使そのままだ。
「さぁ、中に入ってくれ」
「おじゃまします」
綺麗に手入れされた日本庭園を通り、家の中に案内される。玄関を入ってすぐの壁の前には鎧兜が置いてあり、廊下には戦国武将の家紋がずらっと飾られている。まさしく先輩の家、という室内に笑いが込み上げてくる。
「ここが俺の部屋だよ」
「失礼します」
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「え……」
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「お注射?」
「そうです。怖いですか?」
ナースプレイなのか、先輩の口調が違うが気にならない。予習してきたエロ資料の影響で、先輩の言動が変わるのはいつものことだ。それより注射って、先輩の太くて硬くて煮え滾るように熱いアレのことだよな。
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「大丈夫ですよ。お注射が痛くないように、しっかり準備しましょうね」
不安げに見上げた俺に、本物のナースのような慈愛に満ちた笑みを返してくれる先輩。初めて異物を受け入れることに緊張していた体は、その顔を見て強張りを解いていく。
「あ、あぁん、せ……せん、ぱぁい」
大好きな先輩の指を受け入れ始めたソコだが、ある一点に触れられた途端に雷が落ちたような衝撃が走り、先輩の指を締め付けてしまう。恐らく前立腺に触られたんだろう。先輩もそれに気付いたのか、ソコばかりを弄ってくる。
「や、やだぁ」
気持ちよすぎておかしくなりそうで、いやいやをするように首を振る。
「大丈夫ですよ」
指を抜いた先輩が、宥めるように髪を撫で、涙を吸いとってくれる。そのまま先輩の唇は俺の唇に重ねられ、熱情をぶつけるような濃厚な口付けをされる。
「お注射してもよろしいですか?」
酸欠寸前のところで先輩の唇が離れていき、必死で酸素を取り込んで呼吸が落ち着いた頃、満を持して先輩が聞いてきた。
「お願いします」
「では、お注射できるように準備をしていだだけますか?」
先輩が手渡してきたコンドームを受け取り、いよいよなんだなと、期待と不安で激しく脈打つ心臓を落ち着かせるため、ひとつ息を吐く。
コンドームを着けやすくするためかベッドに腰掛けた先輩。俺も起き上がり、ベッドを降りて先輩の正面に膝立ちする。
「へ?」
ナース服の短いスカートを捲り上げて現れたものに唖然としてしまう。
「男性人気一番の品だそうだ」
フリフリのレースがいっぱい付いた、可愛らしいけど布地の少なさが卑猥な、女性物の下着を指差してはにかむ先輩。まさか女性物を穿いているとは思わずに驚いたけれど、雄の形に成長して、小さな下着からはみ出している立派な一物を見て、まだ未通の後ろが疼いてしまう。
手早くコンドームを着けて、先輩を見上げる。淫靡なナースはニヤリと艶やかに口角を上げて、手を差し出してくる。
「お注射しましょうね」
ベッドに引き上げられ、お注射を打たれた俺。一本じゃ症状は収まらなくて、二本目も打って貰った。
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