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王様と犬2
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「楓ぇー!!」
遠方で行われた陸上大会が終わり、五日ぶりに寮に戻ってきた。
欲求不満でいつ爆発してもおかしくない俺は、部屋に入るなり尻尾をフリフリして楓に擦り寄っていったんだけど……。
「ウザい」
「イデッ!」
楓が俺を無視して黙々と読んでいたハードカバーの本の背表紙が、ベシッと額に当たる。
痛みでじわっと浮かんできた涙でぼやける視界には、何もなかったように読書にいそしむ爽やかな青年の姿が映る。
毎度の事ながら、何なんでしょう、この温度差は!?
いじけた俺は、燦々と太陽の光が降り注ぐ窓際に置かれた観葉植物と壁の間の僅かなスペースに体育座りをして一緒に光合成しながら、「本当に愛されているのかしら?」って恋に悩む乙女を気取ってみる。
窓の外では二羽のスズメが仲良さそうに体を寄せ合っていて、俺の気分を逆なでしてくる。
くそっ、お前ら、とっ捕まえて焼き鳥にしてやるぞ!
鳥の分際でイチャつきやがって……。真のイチャつきとはどういうものなのか、俺様が見せてやるぅ!
「楓ぇー」
再び燃えだした俺は床をハイハイで移動して、ソファーに腰掛ける楓の膝に頬を擦り寄せる。
「だーもー、何なんだよ!?」
ガタン、と凄い音を立てるテーブル。
楓が本を叩きつけたその振動は、床を伝わって俺にも響いた。
「甘えたいお年頃なの」
それくらいで動じる俺じゃないもんね。
更にべったり、楓に擦り寄っていく。
「そんなにやりたいわけ?」
「うん!」
楓の冷たい視線が、俺の異様に熱い一点に突き刺さる。
深い溜め息の後、重い腰をやっとあげた楓は自室へと向かう。
俺の熱い想いが楓様を動かしたぜ!って、目頭を熱くしながらその後を追う。
カーテンを通り抜けて入ってくる僅かな日光で丁度いい明るさのそこは、イチャイチャするのには絶好じゃないですかっ!
鼻息荒くベッドに飛び乗って、クローゼットの中を覗いて何かを探している楓が来るのを待つ。
「はい、これ」
やっと探し物を見つけたらしい楓が俺の元にやって来たが、ベッドに乗ることなく俺を見下ろし、手の中のモノを面倒臭そうに差し出してきた。
もしかしなくても、これって……。
「何っすか、これ?」
「見ての通りのもの」
見たままで解釈すると、いわゆるひとつの大人の玩具なんですが……。
「そんなにやりたいなら、自分でやればいいじゃん」
呆然とする俺に向けられる、冷酷な笑み。
「お風呂でやってね。あっ、当然だけど、ちゃんと掃除しといてよ」
ポトンと俺の腹の上に自らの分身を落とした楓は、軽い足取りで自室を出ていった。
これをぶっ挿して、自ら扱けと?
ピンクのソレをしげしげと見つめながら理性と本能が闘うが、結局足は風呂場へと向かってしまった。
二十分後――
何なんだよ、この脱力感は……。なんて馬鹿なんだ、俺は……。
「これ、シャンプーの中に混ぜてやろうかな……」
掌の上のドロッとした液体を見ながら呟くが、大切な楓を怒らせる事はしたくないんで排水口へと流す。
「愛だよ、愛……」
ついでにひとっ風呂浴びて、掃除も済ませてリビングに戻ると、ソファーに楓の姿はなく、キッチンからいい香りが漂ってきていた。
急に、腹の虫が騒ぎだす。時計を見ると、午後一時を少し過ぎたところだった。
「楓、何作ってんの?」
「ソファーで大人しく待ってなさい」
旨そうな匂いの元にフラフラと近寄っていくと、フライパンを器用に操る楓にシッシッと追い返された。
溢れ出る涎と鳴り続ける腹の虫に耐えること数分、待ちに待った昼食が運ばれてきた。
「はい、エサね」
「エサって……」
ぷうって頬を膨らませて皿を置く楓を見上げると、何か文句あるの?って冷たい目で睨まれてシュンとしてしまう、絶対に楓様に敵わない俺……。
「うめぇー」
「当たり前でしょ、俺が作ったんだから」
本日の昼食、楓手作りの特製ソース焼そばをむさぼり食う俺を見て、製作者は呆れ顔だが少し嬉しそうだ。
「……ん?」
ごくんと口一杯の焼そばを飲み込んだ瞬間、背中に当たる固い床の感触、目に映る真っ白な天井、首筋に吸いつく情熱的な唇。
「楓さん、お食事中ですよ?」
「うるさい」
楓様お得意の気まぐれ発情により乱暴に食われてしまう、箸を握ったままの俺。
「やっぱ、楓のが一番気持ちいいよ……」
「当たり前じゃん」
何だか異様に情熱的なのは、楓も我慢してたって事?
やっぱり、ちゃんと愛し合ってるんだね、俺達……。
愛って、なんて素晴らしいんだろう。
うぉー、俺は楓と愛し合えて幸せだぜぃ!
三十分後――
「うわっ、焼そば固まっちゃってるじゃん」
「固焼そばだと思えばいいでしょ」
遠方で行われた陸上大会が終わり、五日ぶりに寮に戻ってきた。
欲求不満でいつ爆発してもおかしくない俺は、部屋に入るなり尻尾をフリフリして楓に擦り寄っていったんだけど……。
「ウザい」
「イデッ!」
楓が俺を無視して黙々と読んでいたハードカバーの本の背表紙が、ベシッと額に当たる。
痛みでじわっと浮かんできた涙でぼやける視界には、何もなかったように読書にいそしむ爽やかな青年の姿が映る。
毎度の事ながら、何なんでしょう、この温度差は!?
いじけた俺は、燦々と太陽の光が降り注ぐ窓際に置かれた観葉植物と壁の間の僅かなスペースに体育座りをして一緒に光合成しながら、「本当に愛されているのかしら?」って恋に悩む乙女を気取ってみる。
窓の外では二羽のスズメが仲良さそうに体を寄せ合っていて、俺の気分を逆なでしてくる。
くそっ、お前ら、とっ捕まえて焼き鳥にしてやるぞ!
鳥の分際でイチャつきやがって……。真のイチャつきとはどういうものなのか、俺様が見せてやるぅ!
「楓ぇー」
再び燃えだした俺は床をハイハイで移動して、ソファーに腰掛ける楓の膝に頬を擦り寄せる。
「だーもー、何なんだよ!?」
ガタン、と凄い音を立てるテーブル。
楓が本を叩きつけたその振動は、床を伝わって俺にも響いた。
「甘えたいお年頃なの」
それくらいで動じる俺じゃないもんね。
更にべったり、楓に擦り寄っていく。
「そんなにやりたいわけ?」
「うん!」
楓の冷たい視線が、俺の異様に熱い一点に突き刺さる。
深い溜め息の後、重い腰をやっとあげた楓は自室へと向かう。
俺の熱い想いが楓様を動かしたぜ!って、目頭を熱くしながらその後を追う。
カーテンを通り抜けて入ってくる僅かな日光で丁度いい明るさのそこは、イチャイチャするのには絶好じゃないですかっ!
鼻息荒くベッドに飛び乗って、クローゼットの中を覗いて何かを探している楓が来るのを待つ。
「はい、これ」
やっと探し物を見つけたらしい楓が俺の元にやって来たが、ベッドに乗ることなく俺を見下ろし、手の中のモノを面倒臭そうに差し出してきた。
もしかしなくても、これって……。
「何っすか、これ?」
「見ての通りのもの」
見たままで解釈すると、いわゆるひとつの大人の玩具なんですが……。
「そんなにやりたいなら、自分でやればいいじゃん」
呆然とする俺に向けられる、冷酷な笑み。
「お風呂でやってね。あっ、当然だけど、ちゃんと掃除しといてよ」
ポトンと俺の腹の上に自らの分身を落とした楓は、軽い足取りで自室を出ていった。
これをぶっ挿して、自ら扱けと?
ピンクのソレをしげしげと見つめながら理性と本能が闘うが、結局足は風呂場へと向かってしまった。
二十分後――
何なんだよ、この脱力感は……。なんて馬鹿なんだ、俺は……。
「これ、シャンプーの中に混ぜてやろうかな……」
掌の上のドロッとした液体を見ながら呟くが、大切な楓を怒らせる事はしたくないんで排水口へと流す。
「愛だよ、愛……」
ついでにひとっ風呂浴びて、掃除も済ませてリビングに戻ると、ソファーに楓の姿はなく、キッチンからいい香りが漂ってきていた。
急に、腹の虫が騒ぎだす。時計を見ると、午後一時を少し過ぎたところだった。
「楓、何作ってんの?」
「ソファーで大人しく待ってなさい」
旨そうな匂いの元にフラフラと近寄っていくと、フライパンを器用に操る楓にシッシッと追い返された。
溢れ出る涎と鳴り続ける腹の虫に耐えること数分、待ちに待った昼食が運ばれてきた。
「はい、エサね」
「エサって……」
ぷうって頬を膨らませて皿を置く楓を見上げると、何か文句あるの?って冷たい目で睨まれてシュンとしてしまう、絶対に楓様に敵わない俺……。
「うめぇー」
「当たり前でしょ、俺が作ったんだから」
本日の昼食、楓手作りの特製ソース焼そばをむさぼり食う俺を見て、製作者は呆れ顔だが少し嬉しそうだ。
「……ん?」
ごくんと口一杯の焼そばを飲み込んだ瞬間、背中に当たる固い床の感触、目に映る真っ白な天井、首筋に吸いつく情熱的な唇。
「楓さん、お食事中ですよ?」
「うるさい」
楓様お得意の気まぐれ発情により乱暴に食われてしまう、箸を握ったままの俺。
「やっぱ、楓のが一番気持ちいいよ……」
「当たり前じゃん」
何だか異様に情熱的なのは、楓も我慢してたって事?
やっぱり、ちゃんと愛し合ってるんだね、俺達……。
愛って、なんて素晴らしいんだろう。
うぉー、俺は楓と愛し合えて幸せだぜぃ!
三十分後――
「うわっ、焼そば固まっちゃってるじゃん」
「固焼そばだと思えばいいでしょ」
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