BLUE DREAMS

オトバタケ

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アキとハル

入浴

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「ねぇ、いいじゃん」
「ぜってぇ嫌だっ!」
「何でー? ハルは俺のこと嫌いなの?」
「嫌いじゃねぇけど……嫌なんだよ!」

 いっつも一人の入浴じゃ寂しいなーって事で、愛しのハニーに一緒に入ろって猫なで声で頼んでも、頑として縦に振られることはない首。
 正直言うと、風呂ん中でウフフな事したいなって思ってたんだ。
 ベッドの上だけでも満足だけど、いつもと違うシチュエーションってのも体験してみたいじゃん?
 湯気ん中で感じるハルの顔なんて、想像しただけで……。やっべー、俺、抑制の効かねー中坊かよ……。

「ねぇ、責任とってよ」
「なに言ってんだ、勝手に欲情してる犬野郎が」
「ハルのせいだもん」
「は? オレは何もやってないだろ」

 あなたの行動全てが、俺を欲情させるんです!

「な、一緒に入ろ?」
「……やめっ……」

 後ろから抱きしめて、耳元で囁いたらビクッと反応する体。
 首筋に唇を落としてくと、ハルが蕩けていくのが分かる。
 さて、最後の仕上げにいきますか。

「愛してるよ」

 そう囁きながら優しく振り向かせて、唇を重ねる。

「馬鹿野郎……」

 唇を離してニコッて笑ってやると、伏し目がちに呟くハル。
 俺にはちゃんと分かってるよ、それが愛の言葉だって。
 再び唇を重ねて、今度は深く絡め合う。
 ほら、ちゃんと応じてくれるもん。

「いいよな?」
「仕方ねぇな、この馬鹿犬の躾を失敗した報いか」

 桜色に染まったハルの額に軽く口付けをしたら、掌を握り合って風呂場に向かう。

「なぁ、脱がし合いっこしようよ」
「うるせぇ変態犬! 自分で脱ぐから先に入ってろ」

 いいじゃんって擦り寄ってく俺を浴室に押し込み、バタンと扉を閉めてしまうハル。
 チェッて舌打ちを響かせながら、ザバンと湯船に浸かる。

「ハル~」
「今行くから、黙ってろ」

 ゆっくり扉が開き、現れた綺麗な裸体。
 いつ見てもクラクラするぜぃ。
 湯を浴びると全身が雫でキラキラ輝き、俺の欲情最高潮!!
 湯船の中、ゆっくりと俺の向かいに腰をおろすハルを、すぐに抱きしめて唇を重ねる。

「風呂に入るんじゃなかったのか?」
「ちゃんと入ってんじゃん」
「どこ行っても、この馬鹿犬のやる事は一緒なんだな」

 首筋に唇を這わせる俺の後頭部にかかる溜め息。

「ハルが俺をこんな風にしちゃったんだから悪いんだって。この湯さ、俺が乳白色に変えて、温泉気分を味わわせてやるから」
「なっ……この最低駄犬野郎!」

 そんな最低の俺が、最高の君を抱く。
 最低と最高だから引かれ合うわけよ。
 世の中よく出来てるね、本当に。
 今日も俺のお姫様は、本当に最高でした。

 散々楽しんで、出る頃にはすかっり湯も温くなっていた。
 湯の色? 微妙に乳白色(笑)。
 おざなりに頭を拭きながら部屋に戻ろうとすると、

「あれ?」

 足が地に着かないっていうか、ふわ~としてきた。
 なんとかソファーまで行って倒れ込む。

「うわっ、死にそー」

 頭ん中がグルグル回ってる。
 地球が回っているのが、よーく分かるよ。

「あっ、冷て」
「湯あたりするまでやって、本当に馬鹿犬だな」

 額に冷えた缶ジュース当ててくれ、呆れ顔で俺の頬に触れて顔色を確かめてくれるハル。
 俺の我儘に付き合わせた挙げ句にこの有り様、本当に俺って大馬鹿者だな。
 心から反省してます。

 少し休んでだいぶ楽になったんで起き上がると、あからさまな溜め息をつきながらも、安堵したように表情を緩めて隣に腰掛けてくるハル。

「ごめんな、本当に馬鹿で」
「仕方ねぇよ、馬鹿はそう簡単には治んないからな」
「酷っ」
「でも……そんな馬鹿なアキも嫌いじゃないからな」
「ありがと」
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