若者たち

ザボン

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第二章◆◆◆暖人

第十二話

一週間が過ぎ、暖人は毎日平穏に過ごしていた。
自分で考えるほど、周りは暖人のあの夜の出来事を話さなかった。
伸一がされたことと、本郷さんの大胆な行動しか話題のネタにされなかった。
ひとまず実家に帰らされた伸一にはちょっと悪いことをしたと思った。
あいつの体毛が生え揃った頃に、また遊びに誘ってみようかな、などエロい事を考えられるほど立ち直っていた。

本郷さんからラインが入った。
(いま、大学にいるんだけど見せたいものがある、時間あるか?)
ちょうど講義が無い時間だったので、学食で会うことにした。

「おう暖人、こないだは楽しかったな」
俺が思い悩んでいたことなど何も気づかないようだった。
「実は須藤からこんな動画が送られてきたんだ」

その動画をみせられて暖人は青ざめた。
それは暖人も認める須藤の特技だった。

バスケの試合で活躍し、黄色い歓声を浴びている暖人の動画。これはバスケ部のカメラに録画されていたもので、暖人が活躍している場面だけに編集されている。
次のシーンは昨夏みんなで海水浴に行った動画。海パンでふざけている暖人は、そのグループのなかで、誰が見ても一番輝いていた。
次から、あの夜の映像となった。
あの夜、伸一を撮るための定点カメラは撮影をつづけていた。
その動画では暖人が伸一のケツにペニスを挿入し、その後本郷さんにペニスを突っ込まれ、痛がっていたが、だんだん声を出して悶えていった。
すると、その顔のアップや、挟まれながら抜き差しされるペニスのアップ、そして果てたあと、うずくまっている姿まで、赤裸々な動画にまとめられていた。しかも、本郷さんと
伸一の顔には、ご丁寧にモザイクか掛けられている。

見終えて愕然としていると、本郷さんは楽しそうに言った。

「須藤はこんな動画にまとめて、どうする気だろう」

「もし須藤が寮にいるようなら、これから行って聞いてみるか」
本郷さんから言われ、一緒に寮へ向かった。この曜日のこの時間は須藤は寮にいることを暖人は知っていた。
寮の部屋には須藤が待っていた。
「おい、須藤。俺の恥ずかしい姿を動画に編集して、どうする気だ」震える声で言った。
上機嫌の須藤は「え、あー本郷さん。見せちゃったんですか?」と、驚く様子も、悪びれる様子もなく言った。
「お前の男優としてのプロフィールビデオを作ってやってたんだ、俺の編集技術で。バスケや海で遊ぶカッコいい暖人と、やらしく悶えるギャップがセールスポイントだ。プロの本郷さんに出来を見てもらおうと思って」

暖人は愕然とした。

「そうだったのか、ラインの本文読まなかった。暖人、誤解がとけて良かったな」
二人はニタニタしていた。
(くそ、今日俺に動画を見せて、寮に越させたのは二人の筋書き通りか)
暖人はやっと気がつき、悔しくて両手を震わせた。
「プロビなら、大学名や名前が書いてあるユニフォーム姿はダメだろ。それに、俺と伸一以外でも、映ってる人の顔全員にモザイクをかけるか、許可とらないと。あと、エロ部分がちょっと弱いな」
本郷さんと須藤は最もらしい話をしはじめた。
二人でどんどん話をすすめる。
「なら、バスケシーンはユニフォーム来てない練習風景に差し替え。顔のモザイクは全員は無理だから、、趣旨を書いてこの動画を一斉配信して許可を取りますよ。エロ部分は、、、」
と、須藤がまるで申し合わせたように返答している。

「何が狙いだ」震える声で俺は言った。

「狙いって、暖人の男優デビューを応援したいだけだよ」と、須藤。
「その友情に先輩として、プロとして応援する」と、すかさず本郷さんも同意した。

須藤はその場に崩れ落ちるように座り込み、かすれる声で悲願した。

「待ってくれ、頼むから待ってくれ、、この動画を誰にも見せないでくれ」

あの夜の、すべてが終わった時点で、録画メモリーを回収するべきだった。このメモリーが誰かの手に渡った時点で、暖人はすでに敗北が決まっていた。

「えー、なんで?ここにいる奴ら、みんなあの場にいたんだから、今更動画を見られてなんの問題があるんだよー」すっとぼけた口調で、須藤が言った。

「ナンデモスル」

暖人は、凍えるような声で、のどの奥から、やっとのおもいで、発した。

「そんなこと言われても、、」
二人して困ったふりをしたあと、

「そうだなぁ、強いて言えば、、プロビのエロ部分を撮り直そう」

その後、須藤と本郷さんは二人で話を決めていって(これも最初から決めていたのだろう)、俺は涙を流しながら小さくうなずき、二人に同意するしかなかった。
仲間や先輩に裏切られた伸一の気持ちが、やっとわかった気がした。

須藤と本郷さんはこんな話をしていた。
「暖人はカッコ良くて完璧な一面と、エロくて情けないギャップを前面に打ち出して行くというコンセプトは良いと思うよ」
と本郷さんが言い、須藤も大きくうなずいた。
「カッコ良くて完璧な暖人の映像は、これまで撮りためてきたバスケ部の合宿や、旅行の時の動画がいくらでも使えます」
すぐさま須藤が言った。

「そうか、それならばその部分はその映像を使うとして、、エロくて情けない撮影に集中しよう。暖人もそれでいいよな」
当然反論なんかできない俺に、更にたたみこむように本郷さんが言った。

「あと、本郷さんには暖人の相手役で出演してもらうとして、、俺一人での撮影は、無理です」

「いやいや待ってくれ須藤、どうかこのことは、この三人だけの秘密にしてくれ」
俺はあわてて土下座した。

「でも、あの動画、実はあの場にいた1年の一人も持ってるんだよ。というか、俺達二人で編集したんだ」

俺は慌てた。
よりによって年下の後輩に、これ以上エロくて情けない姿をさらせと言うのか。

「斉藤も動画編集が得意で、まずあいつに見せたんだよ。そうしたら、このアングルの方が暖人のペニスが引き立つ。とか、この開いた口から垂れるよだれが光ってるカットの方が、エロさが際立つ。とか、スゲーんだよ」と、目を輝かせアピールしてくる。
本郷さんも、「そいつは使えそうだな」と賛成した。

俺は目の前が真っ暗になり、泣き出してしまった。
斉藤は1年の中では伸一とはタイプは違うが肩を並べるイケメンで、暖人がオナニーをするときの妄想では、必ず伸一と斉藤を卑猥なベッドシーンで登場させていた。
あの場に斉藤がいたことは気付いていたが、人間の精神的安定を保つ本能により、あえてその事に触れない思考となっていた。

「よいプロビを作るためだ」と、俺の肩をポンとたたき、須藤は電話をかけに行った。

(全てがすでに決まっていることなのだ。)
俺はどうすることもできず、泣きつづけた。
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