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第一章 彩子
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雅之は長野から横浜へ出てきたばかりのとき、大学には知った顔もなく、初めに話しかけてきた同級生に誘われ、文芸部に入った。しかしとくに書きたいことはなく、二カ月もしないうちに辞めてしまった。彼は何かに熱中したかった。だから夏休みが終わり、学生生活に慣れていくにつれ、虚しさが募り、とにかく何かをやりたくなって、今度は写真部に入った。はじめは熱中したものの、すぐに冷めてしまった。それでも部内の人間関係は良好だから、辞めようか迷っているうちに、時間が過ぎていった。結局、活動は週に一度しかないので、あまり深く考えず、ただ今という時間を楽しもうと思い直した。仲間たちと過ごした後、時折虚ろになる自分とは、もう向き合うのは止めようと。
やがて一年が過ぎ、春休みに長野に帰省したとき、暇を持て余した雅之は、二年前に高校の同級生から借りた後、卒業前に返し忘れたDVD「絶対に見るな、危険! 発禁映像3」というホラー映像作品を観た。当たりはずれの多いシリーズなので、あまり期待をしていなかった。心霊現象や都市伝説をテーマに、映像制作会社に送られてきたビデオを紹介するという内容で「何々県何々市の某ホテルの廃墟」みたいに、実名は伏せられているが、ネットで調べればおおよその見当はつく。その中で県内の心霊スポットが出ており、それはビールの醸造工場の廃墟だった。この廃墟を紹介するブログに掲載された写真を、他の廃墟も含め、彼はPCに保存した。というのも、時の流れから隔絶され、荒廃した空間が、屈折した感情を掬い上げるようにして、彼を捉えて離さなくなったのである。それは日常生活の連続性を切断し、そこからかけ離れた空間を出現させた。都市のビル群や、その下を行き交う雑踏、際限なく続く車両の往来、そんなありふれたものを眺めると、絶えることのない人の営みが、病院の白い壁面のような酷薄さを感じさせ、彼を息苦しくさせた。そういうものと廃墟は、ちょうど光と陰の関係にある。酷薄な光に背を向けるようにして、彼は廃墟の撮影へと傾斜していった。
そして二度目の夏休みが到来した。このときも実家に帰省はしたものの、子供を連れた姉が遊びに来るという話を母親から聞いて、途端に煩わしくなって、八月中に横浜のアパートへ戻った。夏休みの終わり頃、横須賀のホームセンターを訪れた折、雅之は新たな廃墟を発見した。それはホームセンターの駐車場に面した二階建ての病院である。ネットで調べると、診療報酬の不正請求をはじめ、入院患者の名簿を寺に売却したことまで発覚し、閉院に追い込まれたという真偽の定かでないエピソードが見つかった。都市部に近い廃墟は人の出入りが頻繁で、破壊の跡が凄まじく、人里から離れた廃墟の、静かに朽ちていく美しさは皆無である。こうした廃墟には至る所に落書きがあって、公衆便所の落書きと同様に、ひどく猥雑で、損壊の著しい廃墟では、猥雑さは原色とも言えるくらい暴力的で救いようがない。違法に侵入するから、写真部の撮影会では決して訪れることのない場所である。
ホームセンターの駐車場で車を降りた雅之は、恵愛病院の景観を見渡した。今朝から雲が空を塞いで、壁面に影を落とし、灰色にくすませ、窓や玄関からは淀んだ闇が覗いていた。どんよりとした雰囲気は、想像していた廃病院そのものだった。二階の割れた窓に、裂かれたカーテンの風に靡く様子が、如何にも無残である。野放図に茂る叢に隠れた、正面玄関の脇には、投げ出された車椅子が、草葉に隠見していた。病院の周囲を巡る鉄条網は、正面玄関の箇所が何者かに切断され、取り除かれていた。そこから敷地内へ侵入することができた。駐車場から病院の外観を撮影し、玄関から入ると、内部の荒らされた形跡が一際目についた。入口の自動ドアが破壊され、たて枠にドアが立てかけられており、吹きさらしの有り様で、裂かれたカーテンが、傍らのリネン用のカートに突っ込まれていた。壁も破壊され、鉄筋が剥き出しのところもあった。床一面には医療器具や崩落した天井の残骸が散乱していた。建物の至る所には、果してスプレーで落書きが施されていた。多くの侵入者が出入りしたようだ。床に落ちている領収書や個人情報を記した書類は、夜逃げを思わせる。受付の脇に貼られた「無事故事業所」のステッカーは、平成29年までしか続いていなかった。
雅之は落書きと破壊の跡を撮影し、人が目を背けるものを敢えて撮る、露悪趣味的な喜びを感じた。はじめはここに来た労力を惜しんで、カメラを構えたが、枚数を重ねるうちに、無心にシャッターを切っていた。椅子の撤去された待合から廊下に向かうと、いよいよ辺りは暗くなり、足元が怪しくなった。カビの臭いが鼻をつき、ガーゼマスクを装着した。ペンライトで先を照らし、床に転がる消火器を跨いで、目を凝らしながら進んだ。途中薬品庫のドアに、黒いマジックで「クスリ」と書かれているのが目についた。この不吉な想像が膨らむマーキングも、写真に収めておいた。いつしか廃墟の闇と荒廃が、雅之のうちに溶け込んで、鬱屈とした感情と親和し、胸を騒がす日常から彼を解放させた。すると忘却のような静寂が訪れた。
二階に上がると明るくなった。重く淀んだ空気が払われて、雅之はマスクを外し、ナースステーションに入った。そして窓から駐車場を見下ろすと、煙草に火を点けた。物思いに耽り、いつしか自らの生活を省みて、軽佻浮薄で騒々しい、雑多なものから構成される日常が、悪趣味な喜劇のように思えた。老いて死を迎える笑えない現実さえ、喜劇にしか思えない。呪わしい喜劇に鎖された生活が、彼をひどく憂鬱にさせた。こうした苦痛を伴う内省から逃れ、忘却のような静寂に沈んで、この病院のかつての営みと共に、日常が遠ざかり、荒廃のうちにある静寂が、密かな喜びと安らぎをもたらした。
ナースステーションから出ると、壁に掲げられたプラカードに目が留まった。
「すべては患者さまのために 心に愛を 気配りを」
一階の受付にもこれと同じものがある。けれどこちらの文句には、黒いマジックで末尾に(笑)が足されていた。やはりこれも写真に撮った。
二階の部屋の多くは病室で、備品が綺麗に撤去され、窓はすべて壊されていた。連続する空っぽの部屋を巡り、廊下の端の部屋に入ると、外から誰かの咳払いが聞こえた。にわかに雅之の体は強張った。耳を澄ませつつじっとしていると、次第に足音が近づいて、他の病室へ入ったようだ。スライドドアの剥がれた病室の出入口から、彼は注意深く廊下を窺った。
病室から女が出てきた。一目横顔を覗かせるばかりで、すぐに背を向け、遠ざかっていった。グレーのハイネックのニットに、スキニージーンズという格好の、長い黒髪の女である。黒いレザーブーツを履き、リュックサックを背負っていた。暗い廊下に足音を響かせ、階段の下に姿を消した。後ろ姿を見届け、雅之は深くため息をついた。この建物の関係者か、あるいは、彼と同じ不法侵入者だろうか。あの病室で何をしていたのだろう。さっきそこには何も目を引くものはなかった。もしかすると、見落としがあるのかもしれない。こんなふうに、彼は非常な好奇心を持ったのである。すぐに確認しようと思った。
女が出てきた病室の北側の壁は、半分ほど破壊されていた。暗緑色の鉄筋が細い柱のように並んでいる。鉄筋越しに向こう側の病室が丸見えだった。床の上には壁の破片が散乱し、部屋の隅にはエアコンの室外機が投げ出されていた。蛍光灯の反射板の剥がれた天井から、剥き出しの配線が垂れ下がっていた。室外機の隣に、白い無地のビニール袋が放置されている。先ほどはなかったものである。おそらくあの女が捨てたのだろう。そう思うと、好奇心に促され、ビニール袋の前に佇んで、背後を振り返り、誰もいないことを確かめた。あまり清潔なものではなさそうなので、悪臭を放つことを懸念し、鼻で息を吸わぬよう上体をのけぞらせ、袋から顔を離し、中身を確かめた。ビニール袋には、ガムテープで封をされた茶色い紙袋が入っていた。指で突いてみると、ごつごつした表面の感触が伝わった。かなりしっかりと封をされており、好奇心と同じくらいに恐れを抱いた。不衛生とは思いながらも軍手を脱いでしまった。難渋しながら一枚ずつガムテープを剥がし、中を覗くと、生臭い腐敗臭が鼻を突いた。所々に赤みの差す白い物体が、透明なビニール袋にぎっしり詰まっていた。細かく砕かれ、あるいは切断された、動物の骨のように見える。
廃墟という環境から動物の骨を人骨と思わせ、発見者が騒ぐのを狙った、質の悪い悪戯だろうか。彼は冷静にそう疑った。本物の人骨ではないかという疑いを、込み上げる恐怖と共に押さえつけていた。
と、そのとき、パキンと、何かが割れる音が廊下の方から聞こえた。それはプラスチックやガラスの破片を靴底で割るような音だった。あの女の再来を察し、崩壊した壁をくぐり抜け、隣室へ移った。屈みながら壁の陰に隠れ、壁際からカメラを出すと、バリアングルモニターで様子を窺った。今やレザーブーツの硬質な足音がはっきり聞こえた。間もなく部屋に姿を現した女を、モニターで観察するうちに、知り合いの女と似ているように見えた。逸る気持ちを抑え、一度カメラを引っ込め、レンズをズームさせ、壁際から出すと、女に焦点を合わせた。部屋の中央に佇む彼女の横顔を見る限り、別人とは思えないが、確信を得られないから、正面からもっとよく見ようと、うっかり身を乗り出しそうになった。彼女はショックを受けたように凝然と立ち尽くしていた。ビニール袋が開放され、位置が変わったことに気づいたようだ。こんな場所に女が一人でいること自体異様であるが、ビニール袋に対する彼女の態度は、彼をひどく不安にさせた。
やがて一年が過ぎ、春休みに長野に帰省したとき、暇を持て余した雅之は、二年前に高校の同級生から借りた後、卒業前に返し忘れたDVD「絶対に見るな、危険! 発禁映像3」というホラー映像作品を観た。当たりはずれの多いシリーズなので、あまり期待をしていなかった。心霊現象や都市伝説をテーマに、映像制作会社に送られてきたビデオを紹介するという内容で「何々県何々市の某ホテルの廃墟」みたいに、実名は伏せられているが、ネットで調べればおおよその見当はつく。その中で県内の心霊スポットが出ており、それはビールの醸造工場の廃墟だった。この廃墟を紹介するブログに掲載された写真を、他の廃墟も含め、彼はPCに保存した。というのも、時の流れから隔絶され、荒廃した空間が、屈折した感情を掬い上げるようにして、彼を捉えて離さなくなったのである。それは日常生活の連続性を切断し、そこからかけ離れた空間を出現させた。都市のビル群や、その下を行き交う雑踏、際限なく続く車両の往来、そんなありふれたものを眺めると、絶えることのない人の営みが、病院の白い壁面のような酷薄さを感じさせ、彼を息苦しくさせた。そういうものと廃墟は、ちょうど光と陰の関係にある。酷薄な光に背を向けるようにして、彼は廃墟の撮影へと傾斜していった。
そして二度目の夏休みが到来した。このときも実家に帰省はしたものの、子供を連れた姉が遊びに来るという話を母親から聞いて、途端に煩わしくなって、八月中に横浜のアパートへ戻った。夏休みの終わり頃、横須賀のホームセンターを訪れた折、雅之は新たな廃墟を発見した。それはホームセンターの駐車場に面した二階建ての病院である。ネットで調べると、診療報酬の不正請求をはじめ、入院患者の名簿を寺に売却したことまで発覚し、閉院に追い込まれたという真偽の定かでないエピソードが見つかった。都市部に近い廃墟は人の出入りが頻繁で、破壊の跡が凄まじく、人里から離れた廃墟の、静かに朽ちていく美しさは皆無である。こうした廃墟には至る所に落書きがあって、公衆便所の落書きと同様に、ひどく猥雑で、損壊の著しい廃墟では、猥雑さは原色とも言えるくらい暴力的で救いようがない。違法に侵入するから、写真部の撮影会では決して訪れることのない場所である。
ホームセンターの駐車場で車を降りた雅之は、恵愛病院の景観を見渡した。今朝から雲が空を塞いで、壁面に影を落とし、灰色にくすませ、窓や玄関からは淀んだ闇が覗いていた。どんよりとした雰囲気は、想像していた廃病院そのものだった。二階の割れた窓に、裂かれたカーテンの風に靡く様子が、如何にも無残である。野放図に茂る叢に隠れた、正面玄関の脇には、投げ出された車椅子が、草葉に隠見していた。病院の周囲を巡る鉄条網は、正面玄関の箇所が何者かに切断され、取り除かれていた。そこから敷地内へ侵入することができた。駐車場から病院の外観を撮影し、玄関から入ると、内部の荒らされた形跡が一際目についた。入口の自動ドアが破壊され、たて枠にドアが立てかけられており、吹きさらしの有り様で、裂かれたカーテンが、傍らのリネン用のカートに突っ込まれていた。壁も破壊され、鉄筋が剥き出しのところもあった。床一面には医療器具や崩落した天井の残骸が散乱していた。建物の至る所には、果してスプレーで落書きが施されていた。多くの侵入者が出入りしたようだ。床に落ちている領収書や個人情報を記した書類は、夜逃げを思わせる。受付の脇に貼られた「無事故事業所」のステッカーは、平成29年までしか続いていなかった。
雅之は落書きと破壊の跡を撮影し、人が目を背けるものを敢えて撮る、露悪趣味的な喜びを感じた。はじめはここに来た労力を惜しんで、カメラを構えたが、枚数を重ねるうちに、無心にシャッターを切っていた。椅子の撤去された待合から廊下に向かうと、いよいよ辺りは暗くなり、足元が怪しくなった。カビの臭いが鼻をつき、ガーゼマスクを装着した。ペンライトで先を照らし、床に転がる消火器を跨いで、目を凝らしながら進んだ。途中薬品庫のドアに、黒いマジックで「クスリ」と書かれているのが目についた。この不吉な想像が膨らむマーキングも、写真に収めておいた。いつしか廃墟の闇と荒廃が、雅之のうちに溶け込んで、鬱屈とした感情と親和し、胸を騒がす日常から彼を解放させた。すると忘却のような静寂が訪れた。
二階に上がると明るくなった。重く淀んだ空気が払われて、雅之はマスクを外し、ナースステーションに入った。そして窓から駐車場を見下ろすと、煙草に火を点けた。物思いに耽り、いつしか自らの生活を省みて、軽佻浮薄で騒々しい、雑多なものから構成される日常が、悪趣味な喜劇のように思えた。老いて死を迎える笑えない現実さえ、喜劇にしか思えない。呪わしい喜劇に鎖された生活が、彼をひどく憂鬱にさせた。こうした苦痛を伴う内省から逃れ、忘却のような静寂に沈んで、この病院のかつての営みと共に、日常が遠ざかり、荒廃のうちにある静寂が、密かな喜びと安らぎをもたらした。
ナースステーションから出ると、壁に掲げられたプラカードに目が留まった。
「すべては患者さまのために 心に愛を 気配りを」
一階の受付にもこれと同じものがある。けれどこちらの文句には、黒いマジックで末尾に(笑)が足されていた。やはりこれも写真に撮った。
二階の部屋の多くは病室で、備品が綺麗に撤去され、窓はすべて壊されていた。連続する空っぽの部屋を巡り、廊下の端の部屋に入ると、外から誰かの咳払いが聞こえた。にわかに雅之の体は強張った。耳を澄ませつつじっとしていると、次第に足音が近づいて、他の病室へ入ったようだ。スライドドアの剥がれた病室の出入口から、彼は注意深く廊下を窺った。
病室から女が出てきた。一目横顔を覗かせるばかりで、すぐに背を向け、遠ざかっていった。グレーのハイネックのニットに、スキニージーンズという格好の、長い黒髪の女である。黒いレザーブーツを履き、リュックサックを背負っていた。暗い廊下に足音を響かせ、階段の下に姿を消した。後ろ姿を見届け、雅之は深くため息をついた。この建物の関係者か、あるいは、彼と同じ不法侵入者だろうか。あの病室で何をしていたのだろう。さっきそこには何も目を引くものはなかった。もしかすると、見落としがあるのかもしれない。こんなふうに、彼は非常な好奇心を持ったのである。すぐに確認しようと思った。
女が出てきた病室の北側の壁は、半分ほど破壊されていた。暗緑色の鉄筋が細い柱のように並んでいる。鉄筋越しに向こう側の病室が丸見えだった。床の上には壁の破片が散乱し、部屋の隅にはエアコンの室外機が投げ出されていた。蛍光灯の反射板の剥がれた天井から、剥き出しの配線が垂れ下がっていた。室外機の隣に、白い無地のビニール袋が放置されている。先ほどはなかったものである。おそらくあの女が捨てたのだろう。そう思うと、好奇心に促され、ビニール袋の前に佇んで、背後を振り返り、誰もいないことを確かめた。あまり清潔なものではなさそうなので、悪臭を放つことを懸念し、鼻で息を吸わぬよう上体をのけぞらせ、袋から顔を離し、中身を確かめた。ビニール袋には、ガムテープで封をされた茶色い紙袋が入っていた。指で突いてみると、ごつごつした表面の感触が伝わった。かなりしっかりと封をされており、好奇心と同じくらいに恐れを抱いた。不衛生とは思いながらも軍手を脱いでしまった。難渋しながら一枚ずつガムテープを剥がし、中を覗くと、生臭い腐敗臭が鼻を突いた。所々に赤みの差す白い物体が、透明なビニール袋にぎっしり詰まっていた。細かく砕かれ、あるいは切断された、動物の骨のように見える。
廃墟という環境から動物の骨を人骨と思わせ、発見者が騒ぐのを狙った、質の悪い悪戯だろうか。彼は冷静にそう疑った。本物の人骨ではないかという疑いを、込み上げる恐怖と共に押さえつけていた。
と、そのとき、パキンと、何かが割れる音が廊下の方から聞こえた。それはプラスチックやガラスの破片を靴底で割るような音だった。あの女の再来を察し、崩壊した壁をくぐり抜け、隣室へ移った。屈みながら壁の陰に隠れ、壁際からカメラを出すと、バリアングルモニターで様子を窺った。今やレザーブーツの硬質な足音がはっきり聞こえた。間もなく部屋に姿を現した女を、モニターで観察するうちに、知り合いの女と似ているように見えた。逸る気持ちを抑え、一度カメラを引っ込め、レンズをズームさせ、壁際から出すと、女に焦点を合わせた。部屋の中央に佇む彼女の横顔を見る限り、別人とは思えないが、確信を得られないから、正面からもっとよく見ようと、うっかり身を乗り出しそうになった。彼女はショックを受けたように凝然と立ち尽くしていた。ビニール袋が開放され、位置が変わったことに気づいたようだ。こんな場所に女が一人でいること自体異様であるが、ビニール袋に対する彼女の態度は、彼をひどく不安にさせた。
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