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1章
1話 プロローグ
しおりを挟む九人の女神って、聞いたことがあるかい?
その大昔、ギリシア神話のゼウスが、記憶の女神ムネモシュネと交わってもうけた九人姉妹さ。
彼女達はそれぞれに特別な役割を与えられていた。
叙事詩、歴史、抒情詩、喜劇、悲劇、合唱、独唱歌、讃歌、天文の九つ。
彼女たちはオリュンポスでは、歌舞で神々を楽しませ、地上の詩人たちは彼女たちの代弁者となり詩作をすると言われていた。
その九人姉妹は“ミューズ”と呼ばれた。
しかし、この話には続きがあるんだ。
完璧な存在というものは誰かから妬まれるものさ。
ミューズはとある死神の想い人である人間と関係を持ってしまった。死神の怒りに触れたミューズは恐ろしい呪いをかけられた。
それまでの順風満帆な歴史から打って変わって不幸が始まってしまったのさ。
仲の良い姉妹たちは、お互いの命が尽きる瞬間を延々と時間を遡り目の当たりにすることになった。
その死神は時を操る神だったんだ。
長く苦しい時間を彷徨った女神たちは遂に全員が自らの命を絶ってしまった。
しかし、死神はそれでもミューズを許すことはしなかったんだ。九人は何度も生き返っては不幸を味わい、死んでいった。
こんな酷い話があるなんて可哀そうだとは思わないかい?
彼女たちは自分たちの周りにいる人たちを幸せにしたかっただけなのに...
何故こんな話をするのかって?
それは、この話は作り話ではない、
大昔、本当にあった話だからだよ。
~~~
静岡県沼津市内浦
その町に住むある少女たちは、高校生でありながら学校でアイドル活動を行うスクールアイドルであった。
梨子「ちかちゃ~ん!」
私は十千万に来て彼女の名前を呼んだ。
志満「あら、おはようりこちゃん」
梨子「おはようございます!あの...千歌ちゃんは?」
志満「う~ん、昨日はなんだか遅くまで起きていたみたいで、まだ起きてないのよね。ごめんね、今起こしてくるから」
梨子「いえ、私が起こしに行きますよ。志満さんお仕事が忙しいと思うので」
志満「あら、そう?ありがとね。りこちゃん♪」
そう言うと私は慣れた足取りで十千万の玄関をくぐった。
ガララ
梨子「千歌ちゃん入るよ~?」
千歌「zzz」
梨子「全く、仕方ないなぁ」
そんなことを言って実際のところは千歌ちゃんの可愛い寝顔を見ることができて、少し得した気分になっている自分がいた。
梨子「ちーかちゃん!起きて!朝だよぉ!」
彼女の耳元で叫ぶと千歌ちゃんはゆっくりと上半身を起こし、紅い瞳を半分覗かせた目で私を見た。
千歌「わあー...りこちゃんおはよ...」
梨子「もう!おはよじゃないでしょ!早く着替えて!学校遅刻しちゃうよ?」
千歌「なんでりこちゃんがここにいるの?」
梨子「志満さんに許可を頂いてお邪魔しています。って、いつものことでしょ?いい加減に朝に寝ぼけるのはやめてよね?子どもじゃないんだから...」
千歌「んもう!チカだってやる時はやるんだよ!見ててよね?りこちゃん。そのうち私の完璧な私生活がインタビューされて、スクールアイドル雑誌に載っちゃうんだから!タイトルは、え~っと...今大人気のスクールアイドル、Aqoursのリーダー、高海千歌の輝かしい私生活に密着!!」
美渡「こらぁちかー!朝から騒がない!さっさと着替えて学校行きなさい!」
千歌「うわぁ!みと姉だ。ごめんね、りこちゃん外で待っててくれる?すぐに行くから!」
梨子「はいはい、」
私はクスりと笑って言われるままに部屋を出た。
10分後
梨子「あ~!待って待って!乗りま~すっ!」
プシュー
梨子「はあ、はあ、間に合った...」
私と千歌ちゃんは全力でバスに駆け込んだ。
千歌「あぶなかったね~、もうちょっとでまた遅刻する所だったよぉ!」
梨子「誰のせいだと思ってるの!なかなか出てこないと思って見に行ったら雑誌とか読んでるし!ほんと信じられない!」
千歌「あはは、ごめん、つい...」
千歌ちゃんは苦い顔で笑った。もう、どうしてこの子は時間にルーズなのかしら。
曜「お、二人とも今日もギリギリだねぇ」ニヤニヤ
私たちのやり取りを見て曜ちゃんはからかってきた。
千歌「よーちゃん!おはよ~!」
曜「おはよーそろー!」ビシッ
梨子「ねえ、聞いてよよーちゃん、千歌ちゃんったらさぁ...」
曜「あははは!」
梨子「笑いごとじゃないでしょ!?」
曜「千歌ちゃんらしいや」
千歌「それどういう意味?」
曜「褒めてるんだよ!」
千歌「さすが曜ちゃん!チカのことわかってるぅ~」
梨子「褒めないで!」
そういえばこの子も何かと騒がしいことが好きな子だったな。幼馴染だから性格が似ているのかな?三年生と一年生からは私が落ち着いた性格で助かったとよく言われるけど、実はこの二人がちょっぴり羨ましかったりもする。もし、もし私もこの内浦で生まれて、千歌ちゃんと曜ちゃんと幼馴染だったら...そんな妄想をたまにしてしまう。
千歌「そんなことよりもさ!昨日の夜遅くまで考えてラブライブ予備予選で歌いたい曲のイメージ、決まったんだ!」
曜「なになに~?」
千歌「それでは発表します。次の曲のテーマは『大切なもの』です!」
梨子「大切なもの...」
千歌「私たち、九人まで増えたでしょ?みんなそれぞれの想いを持ってスクールアイドルをしているけど、歌うときは心が一つになる。やっぱり素晴らしいことだと思うの!こんな大切な仲間と過ごす時間を歌にしたいんだ!」
梨子「へえ、いいと思うよ♪」
曜「私も賛成であります!」ビシッ
本当に困った子だけど、しっかり周りを見て私達を引っ張っていってくれる。千歌ちゃんはAqoursのリーダーなんだなって思える。
私はこの日常が大好きだった。千歌ちゃんと曜ちゃんがいて、頼れる先輩と可愛い後輩がいて。こんな地味な私がアイドルをすることなんて、ちょっと前だったら考えられなかったのに、今ではすっかりハマってしまった。ずっとこんな幸せな日常が続く。そう思っていた。
私はAqoursを選ばなかった。千歌ちゃんの優しさに甘えて、自分のピアノを選んだ。この時から全てが狂い始めた。
私はどうしてAqoursを、千歌ちゃんを選ばなかったのか。私が選択を間違わなければこんなことには...ううん、もしかしたら私たちはもともとそういう運命にあったのかもしれない。
それでも、私は諦めない。絶対に千歌ちゃんを救ってみせる。
千歌ちゃんを...諦めてたまるか。何度でも何度でも何度でも。
あの輝いていた私の大切な日常を取り戻すためならどんなことだってする。
たとえ、私が死んだとしても...
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