拝啓、時の下にいる君へ

篠原怠惰

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ヒグラシ編

ヒグラシくんと俺のため

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 「なぁなぁなんで無視すんの?俺なんかした?」
 俺はユウキ。怠惰県立高等学校2年。どこにでもいる高校生だ。
 だが俺には他の奴と違うことがある。それは、朝からうるさい奴が俺の頭の周りを浮遊しているということだこんな奴中々いないだろう。俺自身は無視し続けているがこいつは粘り強く俺についてきて、話しかけてくる。
 どうしてこうなったか、事の発端は今朝のこと。
 突然届いた“未来から”送ったと言う旨のメール、あれが元凶だ。そして、メールと一緒に(?)送られた50センチ程ヒト型の人形がこいつ。“カルマ二号機”と言うらしい。俺が聞く素振りを見せなくても勝手に自己紹介を続けやがった。こいつのメンタルはイカれてるのか?と思ったな。
 まぁ無視し続けて、普通に朝を過ごして、家を出て、今に至ると言うわけだ。
 今も喋り続けるこいつにさすがに呆れ、話しかけることにした。
 「なぁ、カルマ…二号機?」と言うと
 「お、ユウキ!ずっと黙ってるから死んでるのかと思ったぜ!!俺のことはカルマで良いぜ」
 しっかり返してくる。
 「カルマ」
 「なんだ?」
 「お前、なんで来たの?」
 「まぁまぁ、そんなん俺たちが為すべき事を為す時に知れば良いんだよ。心配すんな。どうせすぐ教えることになる。」
 俺が質問したがカルマは今は答える気がないようだ。
 為すべき事…俺にはまだわからなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 学校に着くと、いつもと全く変わらない光景が待っていた。
 楽しそうにするリア充や陽キャ共、隅っこにいる陰キャ共、俺みたいなボッチ。そして
 「よぉ、ゴミ共。今日も元気かぁ?」
 クラスカースト最上位。名前はたしかモガミだった気がする。コイツに逆らえる奴はいない。
 「……」
 「返事が聞こえねぇな…なぁヒグラシ、お前くれぇは返事しねぇとダメだろ。」
 静まり返った教室にモガミの声だけが響く。
 「…もう、俺に絡むのはやめてくれないか?」
 ヒグラシはそれがモガミの気に障ってしまうことをわかった上で、重そうな口を開いて言ったように見えた。
 「…なんだと?これは俺が悪いな。」
 そんなことをモガミが言うのでヒグラシは目を見開いた。意外だったのだ。
 「じゃ、じゃあ」
 「俺がお前を甘くし過ぎたんだよなぁ!!」
 ヒグラシが話そうとすると、モガミが拳をヒグラシの右頬に向けて放った。見ているだけで自分の顔が変形しそうなくらい、痛かった。
 拳を振り上げ、もう1発。
 教室にいる誰もが目の前の事実から目を背けていた。当たり前だ。口を挟めば自分にヘイトが向くとわかっていたのだろう。
 そして、俺も同じだ。こんな風に殴られてはたまったものではない。
 まだ数秒しか経っていないのに、ヒグラシの顔は既に、赤黒く腫れていた。痛々しい。

 「先生にチクんなよ?いいかぁ?お前らもだぞぉ。」
 そう言ってモガミは席につく。
 今までもモガミのヒグラシに対する“嫌がらせ”は何度も見てきたが、ここまで仕打ちが酷いのは初めてだった。

 「ひどいな」
 カルマの声が聞こえた。
 「だな……え?」
 カルマは俺の横に浮いていた。
 「おま!学校にまでくるなよ!!みんなに見られたらどうするんだよ!」
 俺は慌てて小声で怒鳴る。
 「大丈夫。さっきからここにいたけどお前以外には見えないみたい。」
 「みたいって…」
 コイツの行動が不安になってきた。

 「さ、行くよ」
 カルマが突然言った。
 「行くってどこに?」
 俺は困惑した。
 「ヒグラシくんを助けに。お前の為すべき事だよ。」
 「…は?」
 何言ってるんだ、コイツは。と思った。
 思ったが、俺の中にも、騒動を止められなかった罪悪感のようなものがあった。計算しても解の出ない複雑な気持ちだった。
 それに何より、”俺の為すべきこと“をもっと良く知りたいと思った。
 「その顔だと、覚悟は決まったみたいだね。行くよ」
 「そんなに良い顔してたか。じゃあ行くしかないな。」
 俺自身行きたいと言う気持ちを隠していたつもりだが、意味のわからない理論を語ってしまったり興味あるげな顔をしていそうだったり、バレているだろうと思う理由はいっぱいあった。
 それでも、知りたいと思った。
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